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LPガス分野の技術開発戦略
本報告書は、わが国のエネルギー戦略の基本原則である3E(エネルギー安定供給(Energy Security)、経済成長(Economic Growth)、地球環境保全(Environmental Protection))を念頭に置きつつ、2030年を視野におき、クリーンエネルギーであるLPガスについて長期ビジョンを抱き、その達成に向けた問題解決のための重要な政策ツールである技術政策に関する戦略を検討したものです。
本報告書策定にあたっては、LPガス業界の方々をはじめ多くの方々のご協力を得て、3回の委員会、10回の分科会・ヒヤリングを開催し検討を重ね、ここに「LPガス分野の技術開発戦略」として取りまとめました。
この「LPガス分野の技術開発戦略」を基本として、今後のLPガス分野の技術開発が進展し、LPガス業界の発展に結びつくことが期待されます。
1. 総論
1.はじめに
LPガスは、全国総世帯数の55%(2千5百万世帯)の家庭用生活エネルギーとして利用されるほか、業務用、工業用、自動車用等の様々な分野で使用されており、我が国一次エネルギー供給の約5%を占める国民生活に密着したエネルギーである。本論は、2030年を視野におき、資源・エネルギーシステムのうちLPガスについて長期的ビジョンを抱きつつ、その達成に向けた問題解決のための重要な政策ツールである技術政策について長期戦略を検討したものである。

2.LPガスの供給面についての基本的考え方
まず、今後、長期的視野に立って、LPガスの我が国エネルギー供給における位置づけがどうなるのかについて簡単に論じたい。

(1) LPガスのクリーン性
総合エネルギー調査会需給部会中間報告においても「LPガスは環境負荷が相対的に小さく、化石エネルギーの中ではLNGと共にクリーンエネルギーとして位置づけられる。」とされている。今後、環境問題が一層重要になっていく中で、LPガスのクリーン性に注目すれば、ガス体エネルギーの位置づけの高まりに伴い、その役割が高まることが期待される。しかしながら、供給基盤の安定及び価格競争力の確保がなされることがその前提となる。
(注)ライフサイクルアセスメントで評価すると、CO排出量でみても、天然ガス(メタン)より環境負荷が小さいとの報告もある(日本エネルギー経済研究所)。

(2) ガス体エネルギーの一翼
1. ガス体エネルギーのうち、都市ガスは、LNGを中心に消費者密度の高い都市部を中心に国土面積の約5%に集中的に導管によりガスの供給を行っている。今後も引き続き、エネルギー供給全体の中で、LNGの位置づけは高まることが予想され、さらに長期的には、天然ガスパイプライン構想や燃料電池など分散型エネルギーの普及の可能性もあり、ガス体エネルギーの位置づけが高まることが予想される。LPガスは、ガス体エネルギーの一翼を担っているが、主に都市ガス供給区域以外の地域へ主としてシリンダーによる個別供給を行っている。今後、都市ガス導管が国土の大半を網羅するようなことは想定しにくいことから、今後ともLPガスは、導管供給以外の地域(国土の95%に相当)を中心に引き続き重要な生活エネルギーとして供給されるものと考えられる。

2. LPガス業界と都市ガス業界は、今後、規制緩和が進む中、一層の相互参入の増加が見込まれる。一方、LPガス業界と都市ガス業界は、高効率GHP(ガスエンジンヒートポンプ)の共同開発・普及にみられるようなガス機器の共同開発・普及また、分散型エネルギーの普及への共同の取組が期待されているなど、LPガス業界と都市ガス業界は、相互補完関係に立った連携も増加していくであろう。また、LPガスは都市ガスを補完するという観点から都市防災にも貢献することとなろう。

3. その際、都市ガス事業を巡る公益事業規制の緩和・撤廃のあり方、国土縦貫天然ガスパイプライン構想や燃料電池など分散型エネルギーの普及、さらにはgas to gas 技術の普及などがLPガスのエネルギー供給における位置付けに影響を与えることになろう。

(3)供給安定性の課題
LPガスの供給面では、供給の約8割を輸入に依存し、輸入の約8割を中東に依存するなど供給基盤が脆弱である。LPガスがエネルギー供給の重要な担い手であり続けるためには、供給脆弱性の克服が重要な課題である。
そのためには、まず輸入ソースの偏在性を是正すること、日本企業関与のプロジェクトからの供給を増やしていくことが課題である。また、輸入量のうち、天然ガス随伴LPガスの量(約3百万?。全体の2割)が増大傾向にある。天然ガス随伴のLPガスの割合が増えていけば一次エネルギー上の位置づけ、即ち、「石油製品としての位置づけ」は見直しがなされる可能性もある。

(4)価格競争力の課題
エネルギー分野における各種規制緩和を受けて、エネルギー間競争が激化するなどLPガス産業を取り巻く環境は大きく変化している。今後、電気、都市ガスといった競合エネルギーに対して価格競争力を有することができるかどうかがエネルギー供給の位置づけを決することになろう。
輸入価格を抑えるという観点からは、供給面の課題克服は、産ガス国からの価格主導に対する牽制になろう。さらに国内流通等のコスト(特に、家庭向け小売市場は9割を占める)については、価格競争を活性化するとともに、充てん所の統廃合、バルク供給の推進等による流通コストの削減が重要である。

3.LPガス分野技術基本戦略
1. LPガスは家庭業務用に使用されるほか、自動車用燃料、発電用燃料、化学原料等産業用にも幅広く利用されている。したがって、その技術開発分野も幅広く、安全を確保する保安技術、高温における耐久性のある材料の開発、高効率で燃焼させ、発生した熱を利用するための機械技術、燃焼を制御する電子技術、エチレン等化学製品の材料を合成する化学技術等多数の分野が複合した総合技術である。LPガス技術のこうした特徴を踏まえ、我が国のエネルギー戦略の基本原則である3E(エネルギー安定供給(Energy Security)、経済成長(Economic Growth)、地球環境保全(Enviromental Protection))を念頭に置きつつ、クリーンエネルギーであるLPガスの特性を活かした技術開発戦略について、短期・中期・長期各々の視点から検討を行った。

2. なお、現行の国の研究開発支援スキームは、(財)エルピーガス振興センターの委託研究開発のみとなっている。しかしながら、今後は以下の理由から、補助金制度の導入も検討すべきであると考えられる。
基礎的なテーマよりもむしろ応用、実用化技術開発に重点をシフトさせていくことが、適当である。
応用・実用化技術の研究開発については、民間企業の研究開発を支援することが、効率的であり、委託制度よりも補助金制度が望ましい。
補助制度の下では、研究課題やスキームについても柔軟に設定でき、研究成果の実用化に向けての取扱いも容易である。

3. 戦略視点としては、次のとおり。
供給脆弱性克服のための技術開発
LPガスのクリーン性を生かした分野開発
都市ガス業界との連携(共同開発、機器の普及)
顧客との密接な関係を生かした普及

(1)LPガス安定供給分野の技術開発
1. 基本的方向
LPガスは我が国総世帯の55%にあたる2500万を超える世帯で生活に不可欠な重要な家庭用エネルギーとして利用されている一方で、その供給基盤は脆弱であることから、供給安定性の確保に資する技術の開発が必要である。

2. 技術的対応
短期的
技術開発の内容: LPガスの供給ソースの多角化を図るとの観点から、中東地域以外で産出される低品質のLPガスを利用できるよう、我が国の規格に適合しない豪州、アフリカ等のLPガスの精製技術の開発を推進する。
技術動向: (財)エルピーガス振興センター(LPGC)においてベンチスケール実験装置にて技術的な目途を得た。12年度において実証プラントによる試験を実施する予定。

中期的
技術開発の内容: 環境規制の動向によっては、供給余剰となる可能性があるブタンを改質し、プロパンガスを製造する技術を開発する。
技術動向: 研究所等による基礎的段階

長期的
技術開発の内容: 将来の石油資源の供給減少に備え、天然ガスからLPガスを製造する技術及びLPガスに代替するガス体エネルギーの開発
技術動向: 研究所等による基礎的段階

(2)環境対応分野の技術開発
1. 基本的方向
LPガスは環境負荷が小さく、クリーンエネルギーとして位置付けられ、COやNOx排出削減に大きく貢献できる可能性がある。LPガス分野の技術開発としては、クリーンエネルギーとしての特性を活かした消費機器の改良、開発等により、地球環境負荷の低減を図る必要がある。

2. 技術的対応
短期的
技術開発の内容:
1. 筒内直噴型LPガスエンジンの開発を推進する。
2. 新燃焼技術(ターボジェット燃焼、触媒燃焼等)の開発・実用化を図る。
3. マイクロガスタービン等のコジェネシステム(熱電、熱動力併給)の開発・実用化を図る。
技術動向:
1.2.については、LPGCにて研究開発を実施中。
3.については、LPGCにて一部調査を実施中

中期的
技術開発の内容:
1. 住宅用分散型電源や自動車用燃料電池として期待される固体高分子型燃料電池(PEFC)が市場に投入されることを想定し、PEFC用LPガス改質器等の周辺機器の開発を行う。
2. 新燃焼技術(酸素富化燃焼、振動燃焼、薄膜燃焼等)の実用化を図る。
技術動向:
1.2.ともに一部の研究所等で基礎的な研究がなされているに過ぎない
(振動燃焼については、極めて限られた用途で実用化されている)。

長期的
技術開発の内容: 技術開発の内容:家庭用燃料電池、燃料電池自動車等の普及等水素エネルギー時代になることを想定し、既存LPガスインフラを利用した水素供給社会の実現に資する技術開発
技術動向: ほとんど研究はなされていないと考えられる。

(3)流通合理化・供給効率化等分野
1. 基本的方向
我が国LPガス産業の流通面をみると、流通構造が複雑であり、「供給体制の効率化の推進も重要な課題」(総合エネルギー調査会)と指摘されている。LPガスがエネルギー間競争の中で、消費者に選択されるエネルギーとなるには、流通合理化、供給効率化により価格を下げていくことは重要な課題と考えられる。したがって、LPガスの流通合理化・供給効率化に資する技術開発を推進することが望まれる。

2. 技術的対応
短期的
技術開発の内容:
1. 充てん所におけるバーコードシステムの共通化
2. 充てん所における充てん効率の向上
3. 容器の軽量化等による配送コストの削減
技術動向:
1.については、LPGCにて基礎的な調査を実施中
2.3.については、一部海外にて実用化がなされている。

中期的
技術開発の内容: バルクシステムの高度化による配送省力化・流通合理化
技術動向: 一部で研究がなされているが、検討段階

長期的(一部再掲)
技術開発の内容:
1. LPガス利用総合システムの開発
2. 家庭用燃料電池、燃料電池自動車等の普及等水素エネルギー時代になることを想定し、既存LPガスインフラを利用した水素供給社会の実現に資する技術開発
技術動向:
1. 一部で研究がなされているが、検討段階
2. ほとんど研究はなされていないと考えられる。

(4)保安技術分野
1. 基本的方向
LPガスは適切に使用すると安全で便利なエネルギーであるが、その扱いを誤ると火災・爆発などの事故につながるおそれもある。一方、LPガスの消費に当たってはこれまでの個別使用を中心としたものから、バルク供給システムによるLPガス供給の集合化が進展していくことが予測される。
また、燃料電池等LPガス機器の技術革新に伴い、エネルギーの新しい変換方式が実用化していくことが予測される。
環境負荷の低減という要請の中で、少子化・高齢化が著しく進んでいく社会において、LPガスを誰でも安全にかつ安心して利用できるシステムを構築するためには、海外の技術等の動向を踏まえた保安面の技術開発が必要である。

2. 技術的対応
短期的
技術開発の内容:
1. 大容量消費設備への供給技術
2. 容器の軽量化技術
3. 消費者ミスによる事故防止技術
4. 集中監視システム及び保安業務の高度化
5. 機器等の経時変化対策技術
6. ガス設備評価システムの開発
7. 質量販売対応型安全機器の開発
技術動向:
1.〜7.については、高圧ガス保安協会にて基礎的な調査を実施中
1.2.4.については、一部海外にて実用化がなされている。

中期的
技術開発の内容:
1. バルクシステムの高度保安技術
2. 緊急時の保安対策技術
3. LPガス冷媒の安全技術
技術動向:一部で研究がなされているが、検討段階

長期的(一部再掲)
技術開発の内容:
1. 家庭用燃料電池等の安全技術
2. 家庭内等のオールLPガス化時の安全技術
技術動向:
1.については、ほとんど研究はなされていないと考えられる
2.については、一部で研究がなされているが、検討段階

2. 各論
2−1 安定供給対策
1.安定供給分野の技術施策
今後、アジア地域の需給の逼迫が続く中で、供給途絶の事態に対し、民生用需要が大きい我が国のLPガスの安定供給を確保するためには、中東地域以外の地域への供給地域多角化の検討を進めていく必要がある。
i. 供給多様化を促進するためには、スエズ以西からの輸送コストの他、我が国の要求するスペックをクリアすることが不可欠であり、このスペック問題が供給多様化を進めるに当たり、最大の課題であるとの指摘もある。
今後、LPガス増産計画がある中南米、北アフリカ、オセアニア豪州等のLPガス輸出国のLPガス品質は、残渣分、硫黄分等の不純物を含み、我が国の品質に合致しないLPガス(低品質LPガス)であるため、利用しがたいのが現状である。このため、これら地域のLPガスを我が国国内で利用する精製技術が必要である。

LPガス品質ガイドライン(日本LPガス協会(JLPGA)指標)

商業用プロパン 商業用ブタン
密 度 (15℃)、g/cm3 0.500〜0.620
蒸気圧 (40℃)、MPa{kgf/cm2} 1.53{15.6} 0.52{5.3}
組成
mol%
エタン+エチレン 5.0以下 報告事項
プロパン+プロピレン 92.0以上 報告事項
ブタン 報告事項 95.0以上
ブチレン 報告事項 2.0以下
ブタジエン 0.5以下
ペンタン 報告事項 2.0以下
銅板腐食(40℃、1h) 1以下
残渣分 75℃(質量ppm) 60以下
105℃(質量ppm) 10以下
硫黄分(質量ppm) 50以下
※含有水分は特に規定しないが、通常50ppm以下である。

低品質LPガスの品質性状

プロパン プロパン+ブタン
FERNDALE(TEXACO)
VELLINGHAM,
WASHINGTON
AMOCO
FORTSASKATCHEWAN
ALBERTA,CANADA
SALIM CRUZ
MEXICO
密 度(15℃)、g/cm3 0.505 0.506 0.527
蒸気圧(40℃)、MPa{kgf/cm2} 1.36{13.9} 1.33{13.6} 1.10{11.2}
組成
mol%
エタン+エチレン 2.3 2.0 1.7
プロパン+プロピレン 97.0 96.2 71.9
ブタン 0.7 1.8 25.9
ブチレン

0.0
ブタジェン


ペンタン

0.5
銅板腐食(40℃、1h) 1 1 1
残渣分 75℃(質量ppm) 36 5 25
105℃(質量ppm) 34 3 23
硫黄分(質量ppm) 16 97 70
含有水分(質量ppm) 10 52 97

産ガス各国の状況
対象国 輸出可能量
(千t)
インフラ 品質の特徴等
2000年 2010年
豪州 800 2,000 過去に重質分トラブル有り
北米(ファンデール) 139 191 残渣分、水分、硫黄分が多い
シンガポール 8 9 水分が多い
インドネシア 30 30 P(プロパン)、B(ブタン)
ミックス
タイ 13 16
メキシコ 679 1,097 〃、オレフィンが多い
アルゼンチン 1,253 1,830
ベネズエラ 2,070 5,579
ナイジェリア 1,580 1,780 硫黄分が多い(詳細不明)
アルジェリア 6,356 7,317

ii. LPガスの石油随伴の比率を下げていくには、埋蔵量が多い天然ガスからLPガスを効率的に製造する技術(GAS TO GAS)の研究も重要と考えられ、LNG製造・輸出には適さない中小規模天然ガス田について、LPガス抽出と天然ガスによるLPガス(又は後述のDME(ジ・メチル・エーテル))製造を行うプロジェクト開発が進展する可能性がある。
また、2003年から米国カリフォルニア州においてクリーン燃焼剤であるMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)のガソリンへの添加が禁止されるなど、MTBEの使用減少が予想され、その原料であるブタンガスが余剰となる可能性がある(ただし、中国、インドにおいてブタン需要が急増するとの予測もあり、注視が必要)ことから、ブタン利用技術、あるいはブタンからプロパンガスを製造する技術開発も注目される可能性がある。

iii. DMEについては、資源エネルギー庁石炭課にて、5t/dベンチプラントによる製造試験を実施中である。利用技術については、石炭課の検討会(「ジメチルエーテル戦略研究会」)により、有力な新エネルギーとして多方面から検討がなされているところである。
DMEはセタン価が高く、軽油に似た特性を示すため、ディーゼル機関用燃料として、特にガソリン・LPガスエンジンの代替が難しい大型ディーゼルトラックの燃料として有望である。DMEの流通全般について、技術的にはLPガス業界の物流施設が利用できることから、LPガス業界としては、DMEの利用・普及に如何に関与しうるか、普及のための課題の抽出を含め、これらの調査研究も重要である。

上記ii. iii.のガス製造技術はプラント設備のイニシャル、ランニングコストが上乗せされることから、経済性が成立しうるかがポイントとなろう。

(参考)ジ・メチル・エーテル(DME)物性表

DME メタン プロパン メタノール 軽油
化学式 CHOCH CH CHOH
沸点(℃) -25.1 -161.5 -42.0 64.9 180〜360
液密度(g/cm3、20℃) 0.67 0.49 0.79 0.84
ガス比重(対空気) 1.59 0.55 1.52
飽和蒸気圧(atm、25℃) 6.1 246 9.3
爆発限界(%) 3.4〜17 5〜15 2.1〜9.4 5.5〜36 0.6〜7.5
セタン価 55〜60 0 5 5 40〜55
真発熱量 (kcal/Nm3 14,200 8,600 21,800
(kcal/kg) 6,900 12,000 11,100 5,040 10,200
着火温度(℃) 235 650 470 450 250

(参考)DMEのディーゼルエンジンへの適用



長所 課題
(1) 着火温度が低く、セタン価が高い
(2) 噴射時の気化性がよい(PM発生防止)
(1) 沸点、粘性などが軽油と異なる点への対応が必要



(1) 低圧噴射が可能(PM発生防止対策不要)
(1) 粘性が低くプランジャからの燃料リークが発生するため、シール性の向上が必要
(2) 潤滑性が低いため、噴射ノズル、噴射ポンプなどの摩耗対策が必要




(1) 燃焼時に媒が発生しないことからEGR(排気再循環)の大幅増により低NOx化が可能
(2) 硫黄分を含まず、触媒等による排ガスの後処理が容易
(1) CO、アルデヒドの発生量が軽油ディーゼルに比べ多く、酸化触媒等による排ガスの後処理が必要

2.具体的な技術開発
(1)低品質LPガス利用技術(開発中)
低品質LPガスの不純物除去技術として低コストな吸着法(金属担持活性炭とモレキュラーシーブとの組合わせ)を採用し、残渣分、硫黄分、水分等の不純物を除去する技術を開発中である。ベンチスケールレベルでは、その有効性を確認、特に残渣分の除去技術については注目される成果を得ている。現在、パイロットプラントによる試験研究を準備中である。なお、分解系ガス(重質分を分解したときに生産されるLPガス)に含まれるオレフィン、ジエン等が高濃度に存在する場合についてのさらなる検討が必要である。
一方、我が国のLPガス品質は、サウジアラビア規格を基準とした中東産ガス国のLPガス品質に基づいて、日本LPガス協会が定めた品質ガイドラインに沿った品質となっている。この「スペック問題」が障壁となって、新規開発プロジェクト等からの輸入ソースの多角化が進めにくい状況にある。そこで、LPガスの安定供給・品質の安定化の観点から、我が国の受け入れ規格・国内運用基準を見直す必要があると考え、低品質LPガス利用技術開発事業の一環として「スペック検討委員会」を設け検討を行っている。

(2)天然ガス改質LPガス製造技術及びブタン改質プロパンガス製造技術
ブタンを改質しプロパンガスを製造する技術開発及び天然ガスを改質してLPガスを製造する技術開発であり、いずれも基礎的な研究段階である。

(3)DME製造・利用技術
DMEは、技術的には、LPガスの流通施設がそのまま使用できること、LPガスの供給安定性を補完する役割も期待できることから、石炭課の検討会の結果を踏まえ、LPガス業界としては調査研究や普及可能性についての検討を行うことが必要と考えられる。

2−2 環境対策
1.地球環境問題(CO)とNOx、SPMの対策
(1)LPガス分野における環境対策
LPガス分野における環境対策は、LPガスが燃料として利用されたときに排出される地球温暖化の原因物質であるCOと酸性雨や光化学大気汚染物質の原因となるNOxであると考えられる。

(1)COの排出量
我が国の一次エネルギー総供給見通しから算出されるCO総排出量は、2020年において、341〜346百万トンと推定される。うち、LPガス起源によるCO排出量は、14〜15百万トン(約4%程度)と推定され、97年度から2020年まで若干の増に留まる見込みである。
しかし、我が国はCOP3のコミットメントである「温室効果ガス排出量を90年比で6%削減」という目標の達成のため、エネルギー起源のCOについては、2010年度まで、少なくとも1990年度比安定化までの削減を求められており、LPガス分野においてもCOの排出削減の努力がなされなければならない。また、LPガスは他の石油系燃料と比してCO排出量が少ないことから、LPガスの石油製品の代替分野が拡大すれば、CO排出削減に大きく貢献できる可能性がある。
97年度におけるLPガス分野でのCO排出量は、多い順に家庭部門(5百万t)、産業部門(4百万t)、業務部門(2百万t)、旅客・運輸部門(2百万t)となっている。

(2)NOxの排出量
NOxは、酸性雨や光化学大気汚染物質の原因になり、特にNO2は高濃度で呼吸に悪影響を及ぼす。平成6年度の全国のNOxの排出量は220万t/年と推定され、そのうち移動発生源(自動車)からの排出量は55万t/年と推定される。うち、75%(41.3万t)がディーゼル車から排出されている。(平成10年度自動車排出ガス原単位及び総量に関する調査)

(3)SPMの排出量
浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter、SPM)は、肺や気管等に沈着し高濃度で呼吸器に悪影響を及ぼす。SPMのうちディーゼル排気微粒子は発ガン性や気管支ぜん息等の関連が疑われている。SPMの濃度の平均値は近年ほぼ横這いが続いている。(平成11年度環境白書)
LPガスの燃焼によるSPMの排出は0である。
自動車からの排出量は全てディーゼル車からの排出であり、6万t/年と推定される。うち、62%(3.7万t)がディーゼル普通貨物車から排出されている。(平成10年度自動車排出ガス原単位及び総量に関する調査)

(2)燃焼の効率化、新システムによる排出量削減
LPガス分野において、COを削減していくには、LPガスを高効率で燃焼又は改質すること、燃焼等により発生した熱を効率的に利用することが必要であり、家庭業務用の燃焼器具の高効率化や高効率の筒内直噴エンジンの開発が重要である。さらには、燃料電池といった新たなシステムの開発が重要である。
また、LPガスは、N(窒素)分は通常含まれておらず、排出されるNOxのほとんどはサーマルNOxと考えられることから、LPガス分野においてNOxの排出を削減していくには、低温での燃焼等新たな燃焼方式の開発が必要である。

(3)ディーゼル等石油製品代替による排出量削減
LPガスは、採掘から消費までを考慮した総合的なCO排出量が少ない、S(硫黄)の含有率が低く、Nをほとんど含まず、また燃焼しやすいことからSPMの発生がないクリーンエネルギーであることから、LPガス以外の石油製品を利用している機器の代替燃料としてLPガスの利用用途の拡大を図ることができれば、全体としてのCO排出削減に大きく貢献できる可能性がある。
また、NOx、SPMの主要な発生源であるディーゼルエンジンに代替しうる高効率の筒内直噴LPガスエンジンの開発・普及により、NOx、SPMの削減に大きく貢献できる。

2.環境分野の技術施策
(1)燃料電池開発
燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に直接反応させて電気を取り出す発電装置である。燃料電池の燃料として炭化水素系燃料を用いる場合、燃料電池システムの構成は大別して、改質器等の前処理装置、燃料電池本体及び排熱等を回収する周辺機器に分けられる。
燃料電池は、従来の内燃機関に比べ効率が高く、静粛性に優れるほか、大気汚染の原因となるNOx、SOxの排出量が少ないという特徴を有していることから将来の自動車用エンジンに替わる可能性を有するとともに、住宅用の分散型電源や熱供給システムとしての利用が大いに期待される。
燃料電池は、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体高分子型、固体電解質型、固体酸化物型等各種タイプがあり、その特徴が異なる。このうちリン酸型は、ほぼ商用化段階に達している。その他は研究開発段階と位置付けられるであろう。固体高分子型は、出力密度が高い(0.5〜1.0W/cm2(他形式型:0.2〜0.3W/cm2))、作動温度が低い、電解質が固体(リン酸型は液体)等の特徴を持ち、小型高効率で、振動に強いこと等から、特に近年、家庭用・自動車用燃料電池として広く研究開発の対象になっている。
これら研究開発の燃料は、天然ガス(都市ガス)、メタノールが主流で、LPガスを対象とした研究は一部で行われているだけである。
LPガスには、プロパンガス(C)とブタンガス(C10)があり、一般家庭用プロパンガスの利用のみならず、地域、需要家によっては、LPG車のみならず一般家庭、業務用も含めブタンガスの利用も考えられる。

燃料電池の種類と特徴

リン酸型
PAFC
溶融炭酸塩型
MCFC
固体電解質型
SOFC
固体高分子型
PEFC
電解質 リン酸溶液 炭酸塩 セラミックス 高分子膜
運転温度 200℃ 650〜700℃ 900〜1000℃ 70〜90℃
実用化規模 〜1,000kW 1〜10万kW 1〜10万kW 〜1,000kW
利用形態 分散型 集中型 集中型 コジェネ、移動体
理論発電効率 35〜42% 45〜60% 45〜65% 30〜40%
開発状況 ほぼ商用化 商用化実証 試験研究 実証段階※
開発動向 我が国は世界的レベル 石川島播磨が開発。
中部電力が1000(250*4)kW燃料電池を実証運転
我が国では三菱重工及びTOTOグループが開発中 高分子膜ではデュポン社が圧倒的シェア
※水素ボンベ、カセットボンベを利用した可搬型燃料電池は一部実証機化
(出典)エネルギーの有効利用と環境保全、政策総合研究所平成11年12月

LPガス分野で燃料電池の技術開発を考える場合、リン酸型燃料電池は、既に実用域に達しており、民生用(産業用)分野での普及が本格化するものと期待される。固体高分子型燃料電池は、家庭業務用、移動体用の燃料電池として都市ガス、電力、電気機器メーカー、自動車メーカー等を中心に精力的に研究されていることから、固体高分子型燃料電池本体の開発はこれらメーカーと共同し、開発していくことが不可欠である。
LPガス業界としては、家庭業務用、自動車用燃料電池システムを開発する観点から、燃料電池システムを構成する高効率改質器、脱硫器、排熱回収装置(システム)等の周辺機器開発、最適運転技術開発等の技術開発が必要である。さらに、起動性、停止性、負荷変動に対する追随性を含めた連続運転、発停運転による耐久性試験等が必要であり、システム全体の高効率化、コンパクト化、低コスト化等の技術開発に積極的に取り組んでいく必要がある。
以上のように技術開発については、都市ガス業界各メーカーが既に取り組んでおり、LPガス業界としては、これらの業界からの研究開発成果を生かしながら、LPガス改質器等の開発に視点をあてるとともに試験運転によるデータ蓄積、システム開発に取り組むことが重要である。
また、各社の技術開発の補助金制度の導入が重要である。

(1)脱硫装置
使用する燃料に硫黄分が含まれていると改質装置の触媒が被毒することから、脱硫が必要である。現在流通しているLPガスの硫黄分は微量であり、脱硫は比較的容易である。既存の脱硫触媒はNi−Mo系、貴金属系などがある。将来的には、高効率な脱硫装置の開発が必要である。
また、LPガスには、ガス漏れ等を感知するため、着臭剤が添加されているが、着臭剤にはS分が含まれていることから、燃料電池用のLPガスとしては、S分を含まない着臭剤の開発や家庭業務用、自動車用を考えた場合、脱硫工程で排出されるZnS(HS+ZnO → ZnS+HO)の処理方法も課題である。

LPガス、都市ガス、メタノール、灯油、ガソリン、軽油のS分表(単位:ppm)

LPガス 都市ガス メタノール 灯油 ガソリン 軽油
S分濃度 50 30 500
S分の原因 輸入LPG5
着臭剤1
輸入LNG0
着臭剤1
CH
からの改質
原油にはS分があり、精製工程でも残留
(プレミアムガソリン10)

(2)高効率改質器
脱硫されたLPガスは、改質装置により改質される。LPガス改質器の開発は、LPガス業界が中心となって開発すべき課題であり、早急な開発が必要である。
改質方法としては、水蒸気改質法と部分酸化法が一般的である。水蒸気改質法は、触媒を用いる外熱式改質法で、炭化水素と水蒸気とで接触反応により水素を製造する方法で、著しい吸熱反応である。熱効率向上のために、炭素に対する水蒸気の量を低減可能な触媒が求められる。一方、部分酸化法は、無触媒で部分酸化反応を主体とする内熱式改質法で、起動時間が短い。通常若干のスチームを添加するので水蒸気改質反応も併起する。この方法は、原料面における制約が少ない。また、触媒を用いる選択的部分酸化法も研究されている。それぞれの特徴を把握し、どの方法を採用するか十分に検討する必要がある。
水蒸気改質反応式(プロパンの場合)
+3HO → 3CO +7H
+6HO → 3CO+10H

部分酸化反応式
+(3/2)O → 3CO +4H

燃料電池の用途を家庭業務用、自動車用とすれば、小型化を図らなければならず、現状のリン酸型燃料電池に使用されているNi系触媒、1L/kW程度では能力不足であり、家庭業務用定置式あるいは自動車用では、0.6L/kW程度以下の能力をもった高効率改質器の開発が必要である。

(3)CO変換触媒等の開発
LPガスはHとCOに改質される。COが直接燃料電池に送り込まれると被毒するため、固体高分子型燃料電池では、10ppm以下(リン酸型では1%以下)にしなければならない。家庭業務用、自動車用を視野に入れると、高効率化を図らなければならない。

(4)排熱回収装置(システム)の開発
リン酸型燃料電池の場合、作動温度が200℃程度であるため、熱を蒸気として回収することが可能である。しかし、固体高分子型燃料電池では、作動温度が100℃ 以下であるため、温水のみの回収となることから、低温熱を高効率に回収するシステムの開発が必要である。

(5)燃料電池自動車燃料としてのLPガスの評価
LPガスは、既に自動車用燃料として約30万台の実績があり、(1)ガソリンに比べて改質が容易、改質時のCO発生量が少ない、(2)他のクリーンエネルギーに比べ供給インフラの整備が進んでいる、(3)メタノールのように腐食性を持たない等の特徴を持つことから、燃料電池自動車用燃料の有力な選択肢の一つと考えられる。
燃料電池自動車は2005年頃から本格的な実用化がスタートすると想定されるが、相当数の普及は2030〜2040年頃との見方もあり、それまではLPG車は超低公害自動車、ディーゼル代替として重要な地位を示す可能性がある。
なお、既存インフラ(ガソリンスタンド)にLPガススタンド、メタノールスタンドを併設するのに要する費用は、LPガスで35〜42百万円程度、メタノールで21〜23百万円程度と見積もられる。

燃料供給インフラの整備状況(平成10年度)及び既設ガソリンスタンドに併設する場合の費用

LPガス メタノール 圧縮天然ガス
(CNG)
電気 ガソリン、軽油
インフラの整備状況 1,874 10 49 26 56,444
併設費用(百万円) 35〜42 21〜23 98〜104 26〜36

(2)LPG車(LPガスエンジン)(開発中)
1. LPG車は、従来からタクシーを主体とする燃料経済性を重視するガソリン車代替用途としてほぼ全てのタクシー市場を確保してきたが、近年、燃料経済性、エンジン性能面で相対的に競争力鈍化の傾向にあり、個人タクシーを中心にガソリン転換が進んでいる。

LPG車数の推移 (単位:台)

7年度 8年度 9年度 10年度 7〜10伸率
タクシー 238,924 238,439 239,081 237,771 △0.5
自家用 48,737 45,423 41,586 37,924 △22.1
貨物 7,272 7,883 8,888 9,950 36.8
特殊 8,712 8,442 8,369 8,401 △3.6
乗合 3 2 2 2 △33.3
合計 303,648 300,189 297,926 294,048 △3.2
(出典)財団法人自動車検査登録協力会

LPガスは、他のクリーンエネルギーに比べ、燃料供給インフラの整備が進んでおり、経済性の面でもタクシー等の実績が示すとおり、かなりの優位性がある。
また、NOx、THC(トータルハイドロカーボン)、PM(粒子状物質)の排出量がディーゼルエンジンと比較すると非常に少ない一方、現状では、CO排出量は多い。
NOx、THC、PM等大気環境の点からはディーゼル代替として大きな環境対策効果が見込まれる。このような観点から近年では、小・中型貨物車への利用が徐々になされているものの、大型貨物車においては、大型LPガスエンジン技術の開発が遅れていること、生産台数が少ないため高価であること等からディーゼル代替は進んでいないが、東京都のディーゼルNO作戦からディーゼル対策の実質的な対応策として期待される。

LPG車の排出ガス測定試験結果
種別 LPガストラック
トヨタ・ダイナ
ディーゼルトラック
いすゞ・エルフ
比較項目
総排気量 4,104CC 4,334CC
積載量 3トン積配送車 3トン積配送車
排気ガス

(g/kWh)
NOx 0.03 5.47
CO 14.1 2.43
HC 0.16 1.02
PM 0.52
モード G13モード D13モード
効率 燃料消費率(g/kWh) 336 286
エネルギー消費率(MJ/kWh) 15.4 12.3
CO排出量(g/kWh) 985 938
最大出力(ps/rpm) 130/3,600 130/3,600
最大トルク(kg・m/rpm) 31.5/1,600 31.0/1,800
(出典)LPガス自動車の排出ガス及び騒音測定試験結果報告書
平成11年3月 日本LPガス協会・LPガス自動車  普及促進協議会

2. 最近の規制緩和(1999年9月末)により、LPガス加圧直噴エンジンを自動車に使用することが可能となったことから、オランダから加圧直噴エンジンシステム導入が進められているが、約2割の効率向上が期待できる。国内メーカーもこれらに関心を深めており、今後、LPガスエンジンの高性能化、高効率化と排ガス規制強化に対応する技術開発を進め、ユーザーに受け入れられる車両の開発を行う必要がある。
具体的には、筒内直噴方式による成層燃焼・希薄燃焼、可変バルブ機構等の技術開発によりCO排出量が少ない高効率・低公害・高性能LPG車の開発をLPGCにおいて研究開発中である。
なお、熱効率向上(CO排出量削減)のため希薄燃焼を進めると、エンジンからのNOx排出量は低減するが、現状のNOx触媒は希薄燃焼下では機能しにくいため、自動車から排出されるNOx量が増加する傾向がある。このため、空気比1.4〜1.7倍でも機能する触媒の開発が必要である。

現在開発中の筒内直噴LPガスエンジン車の開発目標値
種別 LPガス 直噴軽油ディーゼル
現 状
比較項目 筒内直噴エンジン
(開発中)
現状
エンジン 総排気量 4.6L 4.1L 6.9L
気筒配置 4気筒 4気筒 6気筒
最大積載量 4トン 3.5トン 4トン
排気ガス
(g/kWh)
NOx 1.4 1.46 5.49
CO 0.01 28 1.26
HC 0.20 0.77 0.74
PM 0.27
熱効率 G13モード G13モード D13モード
30〜32% 23% 30〜35%
CO排出量(g/kWh) 750 900 800〜850
最大出力(ps/L) 40 32 33
最大トルク(kg・m/L) 10 10
コスト イニシャル 1.5〜2.5 1.2
ランニング 0.9〜1 1.4
注1) G13モード、D13モード:運輸省による排出ガス規制及び燃費認証試験の走行パターンのひとつ
注2) コストについては、現状の直噴ディーゼル車を1とした場合の比較。


(3)コージェネレーション技術
コージェネレーションは、1種類以上の1次エネルギーから連続的に2種類以上の2次エネルギーを発生させるシステムであり、一般的にはガスタービン、ガスエンジン、ディーゼルエンジン等により発電を行うとともにその排熱を利用するシステム(熱電併給)のみを指す場合と、それらの動力を発電以外(例えば圧縮機の駆動)に利用するシステム(熱動力併給)も含める場合がある。

(1)燃料電池コジェネレーション技術
LPガス分野での技術開発は、家庭業務用への導入を視野に入れると、一般的に店舗、家庭においては設置スペースが制限されることから、各システムの高性能化により小型を図る必要がある。

(2)マイクロガスタービンコジェネレーション技術
軍需用、自動車用エンジンのターボチャージャーを転用した超小型ガスタービン(マイクロガスタービン、30kW〜200kW)が、アメリカのメーカーを中心に開発されつつある。タービン入り口温度が900℃程度であることから、発電効率は30%前後であり、規模的に類似のガスエンジンと同等であるが、小型軽量、排ガスおよび振動が少ない、低騒音化が比較的容易(高周波騒音が大きい)等から環境特性に優れ、都市型分散電源としての要件を備えている。
また、固体高分子型燃料電池と異なり、数10〜100kW級のマイクロガスタービンコージェネレーションでは、排熱温度が、250℃程度であることから、電力及び低圧蒸気又は温水の供給が可能である。
LPガスをマイクロコジェネレーションシステムに使用した場合、昇圧ブロアが不要であり、都市ガスに比べると効率は高くなる。LPガス分野におけるマイクロガスタービン発電装置技術開発では、高速発電機の開発、熱交換器(再生式、多管式、蓄熱式等)の開発ならびに周辺技術開発が必要である。
また、マイクロガスタービンを固体電解質型燃料電池と組み合わせた複合発電は極めて高効率の発電が期待されることから、マイクロガスタービンの将来的な技術開発の一つとして位置づけられる。

(3)ガスエンジンコジェネレーション技術
ガスエンジンコジェネレーションは既に実用化され、ガスエンジン使用のコジェネレーションシステムは全体の約36%を占めている。
ガスエンジンコジェネレーション技術におけるLPガス分野の技術開発は前述の高効率ガスエンジンの技術開発が適用できる。
小型分散型発電としては、燃料電池、マイクロガスタービン、ガスエンジンが競合するものと考えられるが、最終的には、使用形態、環境特性、コスト競争等によりシェアが決まるものと考えられる。
家庭用コジェネレーションシステムは規模が小さいため、熱は、温水として取り出すこととなり、家庭内の暖房、給湯を賄うこととなる。家庭で消費される以上の温水は貯湯槽を設置しても最終的には廃棄されることとなるから、家庭用コジェネレーションシステムは「発電機付き貯湯式給湯器」として位置づけるべきである。
家庭用では、昼夜間の必要電力量の差が大きく、家庭用コジェネは昼間は100%負荷運転を行い。夜間は出力を押さえた運転をせざるを得ないことから、部分負荷運転特性に優れる燃料電池システムが有望であると考えられる。

(4)各コジェネレーションシステムの比較
燃料電池、ガスタービン、ガスエンジンの各コジェネレーションシステムの特徴をまとめると以下のとおりである。

200kW級コジェネレーションの比較

燃料電池(注1) ガスタービン ガスエンジン
発電効率 40% 29% 31%
部分負荷 定格性能が変わらず 部分負荷効率低下 やや低下
総合効率 81 79 77
電力 40 29 33
41 50 45
起動時間 冷起動3時間 冷起動15秒 冷起動1分以内
NOx 1〜2ppm 30ppm未満 100ppm未満
(三元触媒使用)
SOx 未検出 未検出 未検出
CO 266t-C/年 346t-C/年 324t-C/年
設備費 20,000千円 8,000千円 17,000千円
メンテナンス
コスト
3円/kWh 1.7円/kWh 5円/kWh
ランニング
コスト
16,000千円 17,000千円 19,500千円
発電コスト 23.7円/kWh 25.4円/kWh 28.5円/kWh
総合特性 環境特性(排ガスエミッション、騒音等)に優れている 環境特性にも優れ、経済性も有利 経済性に優れているが、環境対策が重要
注1:リン酸型燃料電池

(5)GHP、パワーパック技術
1) GHP(ガスエンジンヒートポンプ)
原理は電気式エアコンと同じであるが、駆動モーターの代わりにガスエンジンを使用してコンプレッサーを駆動させ、冷媒を室内機に送り込み冷暖房を行う機器。
GHPは、起動時から高い出力が得られる、受電設備が不要である等の特性を持っている。また、暖房時には燃焼排ガスの排熱を回収(冷房時には排熱は大気放出)し、暖房に利用できる利点があることから、効率的には電気式エアコンとほとんど差はない。
我が国では、店舗、ビル等の業務用を中心に平成11年度末で357千台(LPG用193千台、都市ガス用164千台)のGHPが稼働しており、毎年約4万台程度が設置されている。
総馬力数は、3,264千HP(LPG用1,800千HP、都市ガス用1,464千HP)に達しており、これは907万kWに相当する。
GHPの技術開発としては、前述の高効率LPガスエンジンとほぼ同様である。
なお、LPガスと都市ガスの販売業界の連携により、本年3月末に「超高効率GHP開発プロジェクト」が発足し、高効率化が急速に進展しているEHPに競争力を持つGHPの開発を目指している。これは、両業界の普及・量産効果により、コスト削減が期待できるものであり、今後、燃料電池等でもこのような連携が期待される。
GHP
COP:2005年の目標値1.5(現在1.0〜1.1)
1次エネルギー消費ベースで30%以上の省エネルギーとなる。

EHP
COP(7.11〜28kW級):3.05(2005年)3.07(2007年)
発電効率 42%(2005年、需要端効率:38.4%)
[現在の発電効率 39.7%(需要端効率:36.0%)]
両者を組み合わせた1次エネルギーのCOP: 1.34(2005年)
1.44(2007年)

2) パワーパック(調査研究中)
現在、GHPと給湯器は個別に設置使用されており、機器単体の効率的使用には限界がある。熱利用の効率化を図る観点から、これらの機器・機能を組み合わせ、システム化(パワーパック)することにより大幅な省エネルギー化を図るとともにユーザーの給湯・空調設置費用および設置面積(容積)を低減し、かつ利便性、快適性を高めることができる。

パワーパックシステムによる省エネルギー効果を試算すると以下のようである。
ケース1: 年間を通じてGHPを運転し、その稼働エネルギーで給湯エネルギーをまかなう。
ケース2: 空調運転期の8ヶ月間は、GHPを稼働する。(ケース1と同じ)
中間期の4ヶ月は、GHPを低負荷短時間稼働させ、給湯エネルギーをまかなう。

省エネルギー効果
ケース1: 67%
ケース2: 39%

(4)バーナ技術
1. LPガス分野において、家庭業務部門から排出されるCO排出量は、5割以上であり、LPガス分野において当該部門におけるCO削減は取り組むべき大きな課題である。
家庭業務用では、基本的には、2030年頃までは現在と同様に燃焼によるエネルギー利用形態が継続すると考えられる。2030年を前後して燃料電池等の開発状況により、エネルギー利用の大きな変換期が訪れる可能性がある。

2. 現在、家庭用エネルギー消費のうち、LPガスは給湯、調理が主体であるが、今後衣類乾燥機、食器洗浄器、生ゴミ処理器等へと利用分野が拡大する可能性がある。
これら拡大する用途に対して、大気汚染物質や温暖化物質の排出を抑制した高効率・低公害型機器の開発が必要になる。
そのために、新たな燃焼技術、すなわち、酸素富化燃焼技術、振動燃焼技術、薄膜燃焼、ターボジェット燃焼、触媒燃焼等の燃焼技術開発が必要であるとともに、燃焼排熱回収により更なる高効率化を目指す技術開発が必要である。また、高齢化対応の機器開発も必要である。

3. その他効率化の進んでいる産業分野における燃焼技術を家庭業務用へ応用するための技術開発も意義がある。以下のような燃焼技術が検討される。
1) 酸素富化燃焼
 酸素状態にて燃焼させる技術である。20〜25%程度熱効率が向上する。実験室レベルではバーナー、燃焼技術は確立されているが、実用化・商用化に当たっては、酸素供給技術の確立が課題である。
 装置自体が大型となるため、用途としては工業用、商業用への利用が考えられる。熱効率が向上するため、熱交換器がコンパクトになるため、家庭用には給湯機器への利用が考えられるが更なる技術開発が必要。

2) 振動燃焼
 コンパクトな燃焼空間で、ガスと空気の混合気を瞬時に燃焼させ、その膨張圧力で排気ガスを排出した後、圧力差によって新しいガスと空気を吸引し、その混合気を再び燃焼させるサイクルを連続的(80回/秒)に繰り返す燃焼方式。
 加熱効率が従来のバーナー(浸管バーナー)の1.5倍程度、NOx排出量も従来に比べ1/5程度にできるが、ガス量を絞ることが困難、バルブ開閉時に騒音、振動が発生する等の問題がある。フライヤー等の業務用機器等では既に実用化されているものの一般的には普及していない。このため、バルブレスパルス燃焼、アクティブノイズコントロール等の技術開発が必要である。

3) 薄膜燃焼
 空燃比をある一定の割合に調節することにより、被加熱物表面に火炎が膜のように広がる燃焼方式。断熱境界膜が形成されず、高効率な燃焼方式であるが、空燃比の制御と従来の熱交換器が使用できないことから実用化されていない。

4) ターボジェット燃焼(開発中)
 ガスと空気を予混合させ、高圧ターボブロアによってバーナーに圧送、燃焼させ、その高速・高温燃焼ガス噴出により被加熱物の断熱境界膜を破壊し加熱する燃焼方式。ポーラス体などを組み合わせ熱放射を付加したものもある。従来のバーナーに比べ高効率、低NOxを達成できる。

5) 触媒燃焼(開発中)
 ガスを触媒マット表面で通常の火炎燃焼より低い温度で穏やかに燃焼(酸化反応)させ、遠赤外線を効率よく発生させるバーナーである。熱対流ではなく、遠赤外線により被加熱物を直接加熱できるため、高効率に被加熱物を加熱できる。暖房用機器等への応用が考えられる。


従来型の燃焼方式とターボジェット燃焼方式、触媒利用低温燃焼方式の比較

ブンゼン式バーナ
(従来)燃焼方式
触媒利用低温燃焼方式 ターボジェット
燃焼方式
一次:二次
空気比率
70%:30%
一次空気と二次空気で燃焼を完結させる
0%:100%
全二次燃焼
100%:0%
全一次予混合燃焼
加熱方式 火炎による
熱伝達
遠赤外線による
熱放射
高速・高温燃焼ガス
噴出による熱伝達
及び熱放射


暖房機 70% 84%
コンロ 45%
58%
貯湯式ボイラ 70%
84%
CO2




暖房機 100 83(17%削減)
コンロ 100
77(23%削減)
貯湯式ボイラ 100
83(17%削減)
NOx排出量削減 100ppm 60ppm以下 60ppm以下

(5)環境分野技術開発施策によるCO及びNOxの削減試算
(1) CO削減量試算
LPG車(対ディーゼル車比較)
ディーゼル車
4トン積みディーゼル車(排気量7L、無加給)の市街地走行燃費=6.5km/L 年間走行距離:240km/d*300d/y=72,000kmの場合
年間軽油消費量=11,080L(9,207kg)、 CO発生量=28,680kg/y
高効率LPガスエンジン車
[ディーゼル車と同等の熱効率達成を目標としている。]
市街地走行燃費=4.6km/L 年間走行距離:240km/d*300d/y=72,000kmの場合
年間LPガス消費量=15,650L(8,725kg)、CO発生量=26,415kg/y
CO削減量:2,265kg/y/台
4トン積み車年間販売台数(35,000台)の10%がLPG車に転換されると、7,927.5トン/年の削減となる。

(2) NOx削減量試算
LPG車(対ディーゼル車比較)
ディーゼル車
D13モードNOx排出量:4.5g/kWh
NOx排出量=3.2g/km
年間走行距離:240km/d*300d/y=72,000kmの場合
年間NOx排出量=230kg/y
高効率LPガスエンジン車
G13モードNOx排出量:1.4g/kWh
NOx排出量=0.98g/km 
年間走行距離:240km/d*300d/y=72,000kmの場合
年間NOx排出量=71kg/y
NOx削減量:159kg/y/台
4トン積み車年間販売台数(35,000台)の10%がLPガス車に転換されると、556.5トン/年の削減となる。

2−3 流通合理化・供給効率化分野
1.LPガスの流通合理化・供給効率化
i. LPガスは、輸入基地→二次基地→充てん所→販売業者という多段階の流通経路を経由して需要家に配送されており、消費者利益の増大、競合エネルギーに対する競争力を強化する観点から流通の合理化、供給体制の効率化の推進が重要な課題となっている。

ii. LPガスが消費者に選ばれるエネルギーであり続けるには、流通合理化・供給効率化によるコスト削減とそれを反映した価格低減が必要である。

2.技術施策
(1) 充てん所における効率の向上
機械化された充てん所における充てん装置には、単缶式と回転式が使用されているが、充てん所のスペース、充てん要員等の面から我が国では、回転式充てん機が多く使用されている。最新の充てん機では、充てんの自動化が進んでおり、充てん所における新たな技術開発の余地は少ないと考えられる。
充てんの効率化を図るには、充てん時間の短縮が考えられるが、容器に採用されているバルブ径とポンプ差圧から、現在は30L/分程度が限界と考えられる。また、諸外国では、容器バルブの口が上型なのに対し、我が国では、横向きとなっていることから、容器バルブの口の方向を揃える必要があり、完全自動化された充てん機においても人力によるの口方向の微調整が必要なことがある。このため、容器バルブの口の上型化、容器バルブ口径を大きくする等検討の余地がある。
最近の規制緩和により、容器置き場の2階化が可能となったが、欧米諸国の例では、3階が空容器置き場、2階が充てん所、1階が積み出し場からなる多層化された充てん所が見られ、効率的な構造となっている。また、配送トラックへの積み出しも、我が国の多くの充てん所では、1本ずつトラックに人力により積み込んでいるのに対し、欧米では、容器をパッケージ化し、積み込みの効率化を図っている例がある。

(2) バーコードシステムの共通化(調査研究中)
i. 現在、LPガスの流通は、充てん所が中心的な役割を担い、充てん所でLPガスを容器に充てんして配送を行うとともに、各種データ(充てん量、容器の所在、容器の製造年等)を充てん所で一括管理し、そのデータを販売事業者に通知する販売情報管理システムができている。

ii. しかしながら、このシステムは系列事業者ごとに独自のシステムを構築しているため、販売事業者は特定の充てん所で充てんしなければならず、わが国のLPガス流通構造の簡素化の阻害要因のひとつとなっている。

iii. 事業者間で、この販売情報管理システムの共通化を図れば、充てん所における代行充てん・共同利用が可能となり、配送コストの低減、流通の合理化が推進されると考えられ、早期に実現させる必要がある。

iv. このシステムのために現在は、容器に紙製のバーコードを貼付し、充てん所でバーコードリーダーにより1本ずつ読みとっているが、主として屋外の風雨にさらされる条件下で使用され、回収−充てん−設置が繰り返し行われるため、バーコードの汚れ、キズなどにより時として読みとりができなくなる場合がある。

v. そこで、IDタグによる新たなLPガス容器管理システムが考えられる。IDタグでは、電波でコード信号を受信するため、汚れ等に左右されず確実に読み取りができるようになる。

vi. IDタグは、開発後8年ほど経過し一部の分野では既に実用化されているが、単価が高く、さらにLPガス分野で使用するにあたっては、スキャナーの防爆対策が必要である。
参考 バーコードの20〜30円に対して、IDタグは160円(10万個ロット)、120〜130円(100万個ロット)程度である。

vii. バーコード情報は、容器番号、容器重量、容器容量、耐圧試験年月等であるが、IDタグではメモリー容量が大きく、種々の情報を入れることができる。電子部品の低コスト化は急速に進み、今後転換される可能性はあると考えられるが、IDタグを有効に使うためのトータルシステムの調査研究が必要である。

(3) 容器の軽量化
LPガスを充てんした50kg容器の総重量は100kgにもなることから、トラックの積載重量との関係で、LPガス配送量が制限される。このため、容器の軽量化を図り、配送の効率化を図ることが必要である。
現在、開発が進められているFRP(強化プラスチック)素材による容器は鋼製容器に比べ重量が1/2程度になることから、LPガスを充てんした50kg容器の場合25%の重量軽減となり、配送効率の向上や配送人員の労働条件の改善にも資するものである。(保安技術分野に再掲)

(4) バルクシステムの高度化
バルク供給は、配送の省力化・流通合理化につながるともに、今後の労働力不足を踏まえた配送能力維持の観点から普及が強く期待されているところである。(LPGビジョン検討委員会報告(平成9年6月))
バルク供給システムの普及にあたり、現在バルク貯槽等の設置、保安設備、バルクローリなど工事費を含めてハード面のコスト高が阻害要因となっている。
また、充填時の騒音低減のために、現行ディーゼル車と同程度の価格の4tシャシ用LPG車の開発が望まれる。

(5) LPガスの最適利用システム
LPガス消費機器については、省エネルギー化が図られてきたが、機器単体の効率的使用には限界がある。熱利用の効率化を図る観点から、これらの機器・機能を組み合わせ、システム化することが必要である。現在、GHPと給湯器のパワーパック技術等が検討されているが、消費機器の効率的な利用には消費機器を総合的に制御するシステムの開発が必要である。
具体的には、快適性、利便性を損なわない範囲での、(1)ピークカット、(2)消費量の平準化を図る。これには、制御システムに合致した制御情報(水、電気、ガス等)、消費機器類を統合する集中制御システムの開発が必要である。
これらのシステムにより、消費の最大ピークに合わせた機器能力から、必要とされる能力の機器への転換も図ることができる。例えば、台所にてお湯を大量に利用するときは、室内の温度情報等から床暖房用を自動的に一時的に能力を落とし運転する。あるいは、台所と浴室が同時にお湯を利用するときは、支障のない範囲で湯量を自動的に調整することなどが可能となり、省エネルギーと快適・利便性が同時に達成できる。また、LPガス供給の集合化等により、複数の消費者を総合的に制御できれば、一層の省エネルギーが達成できる。

2−4 保安対策分野及び災害対策の視点
LPガスは適切に使用すると安全で便利なエネルギーであるが、その扱いを誤ると火災・爆発などの事故につながるおそれもある。一方、LPガスの消費に当たってはこれまでの個別使用を中心としたものから、バルク供給システムによるLPガス供給の集合化が進展していくことが予測される。また、燃料電池等LPガス機器の技術革新に伴い、エネルギーの新しい変換方式が実用化していくことが予測される。環境負荷の低減という要請の中で、少子化・高齢化が著しく進んでいく社会において、LPガスを誰でも安全にかつ安心して利用できるシステムを構築するためには、海外の技術等の動向を踏まえた保安面の技術開発が必要である。

1.LPガスの供給面での保安対策
(1) バルク供給システムの高度保安技術
バルク供給システムの普及促進のために、プレハブ式ユニットによるバルク貯槽の地下埋設法の開発、供給効率向上のためのバルクローリの充填速度向上、耐腐食性軽量(FRP製)地下埋設容器の開発、バルク貯槽あるいは容器の設置場所での使用中における再検査方法、低環境負荷型でかつ安全なバルクローリ等を開発する。

(2) 大容量消費設備への供給技術
大容量消費設備を使用する際の安全性を確保するため、大容量小型べ一パライザー、大容量消費設備用の中圧供給技術等を開発する。

(3) 容器の軽量化技術
LPガスを充てんした50kg容器の総重量は100kgと重いことから、配送の効率化と併せて配送員の高齢化に対処するため、軽量でかつ安全な容器等を開発する。

2.LPガスの消費面での保安対策
(1) 消費者ミスによる事故防止技術
消費者のミスによる事故を防止し、供給・消費機器、システム機器等の安全性を向上させるため、自己診断機能と異常時にガスを自動停止する機能等の安全機能を備えた機器を開発する。
また、LPガスの事故データを用いて機器操作の方法、着火位置、漏洩ガス量等の事故原因が推測できる事故解析システムを開発し、このシステムの解析結果を用いて消費者がLPガスの使用時に多少のミスを起こしても安全サイドに誘導する機器等を開発する。また、人が漏れたガスを感知しやすくするガスの知覚技術を研究する。

(2) 集中監視システム及び保安業務の高度化
今後の高度情報化社会における消費先でのLPガスの保安の確保のため、他の機能(電気、ホームセキュリティー等)との一体化、デジタル対応伝送装置、固定電話レス対応機器等を開発する。また、LPガス消費者の生活環境の変化に対応し、集中監視システム等から得られた保安情報を活用し、販売事業者が保安業務を適切に遂行できるような高度保安情報処理システムを開発する。

(3) 機器等の経時変化対策技術
LPガス機器の信頼性を向上させるため、使用されている金属、ゴムなどの有機物などの組合せによる経時変化の評価を行い、機器設計のためのデータベースを作成し、高耐食性などを備えた長寿命で、維持管理が容易な機器を開発するとともに使用期限を過ぎた場合には、機器自ら警告を発するなどライフエンド技術を備えた機器を開発する。
また、埋設管等からの検出が困難なガス漏えいを簡便に検知する技術及び修復する技術を開発する。

(4) ガス設備評価システムの開発
供給設備の設計、消費世帯の増加時などの基準適合性の判定をガス容器本数、保有燃焼器等のデータによって行う適正評価システムを開発する。また、LPガス容器庫、バルク供給設備等LPガスを大量に貯蔵する設備の爆発等による周囲への影響を評価するシステムを開発する。

(5) 緊急時の保安対策技術
地震と災害時に強いLPガスの特性を生かし、都市ガスと共用できる燃焼機器、LPガスの可搬型次世代高効率発電機、緊急時における集中監視センターの相互補完システム等を開発する。

(6) 質量販売対応型安全機器の開発
質量販売における安全性を向上させるため、流量監視機能と遮断機能の組み合わせによるガス漏えい等を防止する安全器具を開発する。

3.新LPガス消費形態の保安対策
従来のLPガスの消費形態は、ガス燃焼機器等のように燃焼させてその際に発生する熱を利用したものであったが、今後のLPガスの新しい利用形態として、例えば、燃料電池、マイクロガスタービン等による発電への利用、地球環境に配慮した代替フロン対策として空調機、冷蔵庫の冷凍機器への利用が今後考えられる。
このため、燃料電池、マイクロガスタービンなど新しい消費形態のLPガス機器等に対応した安全技術を開発する必要がある。
(1) 燃料電池等の安全技術
LPガスを使用した燃料電池に係る触媒によるLPガス改質時に発生するCOガスや水素ガスの漏えいによる事故を防止するため、安全技術を開発する。また、その他の新しい消費機器等について、調査研究を行い、LPガスの漏えい検知・警報システムなどの安全技術の開発を行う。

(2) LPガス冷媒の安全技術
家庭内での利用が考えられているLPガス空調機及び冷蔵庫、自動車用クーラーの冷媒ガスとしてLPガスを使用した時に、ガス漏えい等による事故を防止するため、漏れたLPガスの不燃化などの安全技術の開発を行う。

(3) 家庭内等のオールLPガス化時の保安技術
LPガスの利便性を向上させることにより、用途拡大が期待される中、オールLPガス化住宅における安全技術について調査研究を行い、安全技術の開発を行う。

4.地震等災害対策からの視点
阪神淡路大地震の際、電気、ガス、水道のライフラインが寸断されたことは、記憶に新しいところである。これらライフラインの中で、LPガスはおよそ2週間で復旧を果たした。(電気は約1週間、都市ガス、水道は約3ヶ月)
被災地内外のLPガス販売事業者の努力も大きかったが、LPガスは容器(ボンベ)による簡易な形態で供給可能であるという特徴は、LPガスが災害に強いエネルギーであることを実証した。
災害時に避難所等として利用される学校、病院等の拠点では、災害時に最低限の機能を維持していくことが必要である。このためには、導管等ラインによらないエネルギーにより、必要部分のエネルギーを確保する検討が必要である。
例えば、災害時に電気を確保するには、LPガス、灯油、軽油等を利用した非常用発電が考えられるが、経済的に負担が大きい。このため、必要最小限のエネルギーをLPガス、灯油、軽油等を利用したコジェネレーションで常時賄えば、経済的な負担も少ない。
経済的には灯油、軽油等を利用したコジェネレーションが優れていると考えられるが、LPガスを利用した場合は、非常時の調理用エネルギーにも使用できる。また、常用で使用するのであれば、LPガスが最も環境負荷は少ない。このような観点から、技術開発ではないが、常用・非常用併用のコジェネレーションシステムのケーススタディが必要と考えられる。

LPガス分野技術戦略策定委員会委員名簿
委員長 河合 正人 (日本LPガス団体協議会会長)
委員長代行 後藤 新一 (機械技術研究所 エネルギー部 燃焼工学研究室長)
委員 宮本 登 (北海道大学 大学院 教授)
後藤 忠夫 (日本LPガス協会)
小林 眞一郎 (社団法人全国エルピーガス卸売協会)
今井 巌 (社団法人日本エルピーガス連合会)
嶋森 渡佐雄 (社団法人日本エルピーガス連合会)
園部 博 (社団法人日本エルピーガス連合会)
柳 也主男 (社団法人全国エルピーガススタンド協会)
大内 丈夫 (高圧ガス保安協会)
玉田 一実 (アタム技研株式会社)
西田 賢次 (コスモ石油ガス株式会社)
田村 秀樹 (出光興産株式会社)
奈佐 隆 (岩谷産業株式会社)

LPガス分野技術戦略策定委員会委員開催スケジュール
第1回: 平成12年1月17日(月)
○趣旨説明と今後の方針
○報告書(案)の審議
第2回: 平成12年1月31日(月)
○報告書(案)の審議
第3回: 平成12年5月22日(月)
○報告書(案)の取りまとめ

図表目次
図−1 LPガス輸入国別構成比
表−1 世界のLPガス需給見通し
表−2 長期エネルギー需給見通しにおける設定条件
表−3 長期エネルギー需給見通し(LPガス)
表−4 LPガスによるCO排出量及び排出量見通し
図−2 低品質LPガス精製技術実証プラントフロー
図−3 DME製造プラントフロー
図−4−1 自動車排出ガス量・車種別NOx排出量
図−4−2 自動車排出ガス量・車種別PM排出量
図−5−1 燃料電池システム
図−5−2 燃料電池プロセスフロー
図−5−3 燃料電池改質器の構造と反応
図−5−4 家庭用燃料電池概念図
表−5 リン酸型燃料電池プラント運転状況
表−6 燃料電池の開発動向
図−5−5 負荷率と効率の関係
図−6 自動車用燃料電池システム
図−7 LPガスエンジンにおけるLPガス噴射システムの変遷
図−8−1 マイクロガスタービン外観
図−8−2 マイクロガスタービンコジェネレーションシステム
図−9 ヒートポンプ概要、ヒートポンプサイクル
表−7 GHP出荷実績推移
図−10 家庭用パワーパックシステムの概念図
図−11 新燃焼バーナ概念図 ・・・・ 触媒燃焼
・・・・ ターボジェット(燃焼短炎燃焼)
・・・・ ターボジェット(燃焼衝突燃焼)
図−12−1  容器コンテナ1
容器コンテナ2
図−13 バーコードシステム共通化概念図
図−14  バルク供給システム概念図1
バルク供給システム概念図2
図−15 最適利用システム概念図
図−16 安心・安全で質の高い生活を送ることができるLPG社会の形成



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