LPGC WEB通信
Vol.136 2025.09.10発行
令和7年度南関東地方LPガス懇談会が開催されました
経済産業省資源エネルギー庁の委託事業「石油ガス流通・販売業経営実態調査」として、当センターが実施する南関東地方LPガス懇談会が、去る8月7日に開催されました。
対象の埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県の消費者委員、事業者委員、学識経験者委員、自治体等行政関係者が出席しました。
本年度のテーマとして予め設定した、
(1)保安(LPガス事故の発生を防ぐために)
(2)LPガスの料金透明化・取引適正化について
各テーマについてそれぞれ活発な意見交換が行われました。
本年度も、テーマに基づきエリアを越えた共通課題に対し、従前にも増して議論が深まりました。
1
LPガス懇談会について
(1)目的 LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、 事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、 関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法 全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
学識経験者委員……知見を有する大学教授等
自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
行政…………………経済産業省、地方経済産業局
オブザーバー………LPガス業界団体
報道関係
2
議事次第
(1)開会挨拶
関東経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課 半仁田課長
LPガスは全国的な供給体制により、国内全世帯の約4割へ供給されており、可搬性や備蓄性に優れていることから、大規模災害においても迅速な復旧が可能なエネルギーでございます。昨年元日に発生した能登半島地震においてもLPガスタンクを設置した福祉施設などが避難所として活用されるなど、災害時のエネルギー供給の最後の砦としての役割が果たされているものと考えております。
LPガスがこれからも消費者の皆様に信頼され、選択されるエネルギーであるためには、こうした災害時エネルギー供給の観点とともに、本日の懇談会テーマの1つとして挙げられております、料金透明化・取引適正化に向けた対応についても重要と考えております。いわゆる無償貸与や貸付配管といったLPガスを巡る商慣行を是正するために、昨年4月に液化石油ガス法にかかる法令が改正・公布されまして、その後昨年7月に、過大な営業行為の制限及びLPガス料金などの情報提供にかかる規則が施行され、本年4月からは三部料金制の徹底ということで、設備費用の外出し表示や計上禁止にかかる規則が施行されたところでございます。これら一連の制度見直しの実効性を確保するためには、規制当局である国や自治体の皆様による法執行体制の整備と着実な運用とともに、関係省庁や業界団体の皆様との連携についても不可欠であると考えております、と挨拶がありました。
(2)懇談 司会・進行:国際大学学長 大学院国際経営学研究科 橘川教授
テーマI.「保安」について
(1)学識経験者委員による経済産業省ガス安全室の事前プレゼンテーションに関し概要のとり纏め
(2)消費者委員からの質問・意見等
(3)消費者委員の質問・意見に関する事業者委員からの回答・意見等
テーマI.に関して以下の議論がありました。
今回の保安に関して、災害時に最初に私たち消費者が行う、ガス栓を閉めるという行動は、慌てているとなかなかできないということで、官民上げて、消費者団体も繰り返し呼びかけをしていくということが大事なのだと常々感じていました。最近の保安ではガスボンベには二重にチェーンを巻くなど様々な工夫がされています。ガスボンベを使っているような地域では徹底されていると見聞きしております。これは事業者の努力の賜物で今後も続けていっていただきたいと思います。
点検の時に「点検に参ります」というハガキをいただきました。「不在でもお伺いします」と書いてありましたので、外のものを点検してお帰りになるのかと思っていました。でも結果論として台所に上がってもらって検査機器でチェックしてもらって配管も元栓も異常なしということをおっしゃっていただきましたが、最初は外の点検が終わってお帰りになったのかなと思ったら、台所に上がって検査をしていました。誰が上がっているのかとびっくりしました。検査の時に「外だけではなくて元栓も見るので台所に上がります」ということを明記していただければ結果としては安心だと思ったので、私たちもこれから勉強会でそこのところを皆さんに周知していきたいと思いますし、とても大事なことだと思っています。ご案内をする時に「点検に伺います」だけだと家庭の方は「検査の人はどうやって見るのだろう?」という方もいらっしゃると思いますので、「内・外の検査もいたします」ということを明記していただきたいと思います。
点検について、詐欺の問題でハードルが高くなっていまして、消費者宅に行っても信用してもらえないとか、「保安点検に来ました」と言うと会社に電話がかかってきて「こういう人が来たんですけど本当でしょうか?」という話があって、今まではそこまでしていなかったのですが、まずアポイントの電話が行きますっていうハガキを送った後にアポイントの電話をさせていただいて、その時に何々という者が行きますと言うことをお話するという現状があります。4年に1回なので、その時には理解してもらっても 4 年後には覚えていないというのも事実であり苦労しているところでございます。
保安検査の件ですが、電話をしても出てくれない。それで訪問しても出てくれないということで、1回は必ず消費者宅に伺って書類を書いて電話番号まで書いたものをアポ取りのためにポストに入れています。それから保安検査が始まるわけですが、その辺が今の社会を反映していると思います。でもそうすることで消費者とのコミュニケーションにつながりますので大事なことではないかと思っております。
テーマII.「LPガスの料金透明化・取引適正化」について
(1)学識経験者委員による資源エネルギー庁・エルピーガス振興センターの事前プレゼンテーションに関し概要の取り纏め
(2)消費者委員からの質問・意見等
(3)消費者委員の質問への事業者委員からの回答・意見等
(4)自治体から取り組みに関する報告 (5)行政のLPガスの料金透明化・取引適正化の取組みについて
テーマII.に関して以下の議論がありました。
事前に通報フォーム等でアプローチをしているというところで、自主取組宣言をするような事業者も出てきていると伺い、いい方向に進んでいると捉えております。ただ、いまだにそれを知らないという事業者もいると伺い、また新たな抜け道が出るのではないかという懸念があります。
三部料金制の周知徹底というところで、料金表などへ印刷するという試みをしている事業者もあるようです。しかし、書き方についての工夫や統一というようなことも必要ではないかと思います。それぞれの事業者にお任せするとさまざまな書き方になり、引っ越しを繰り返すような方や転勤が多い方には、各地域で書き方が違っていると分かりにくいということがあります。LPガス業界についても今後は、ユニバーサルデザインの原則を取り入れた誰でも一目で分かる規格の料金表の創成をお願いしたいと思います。
設備料金の名称について「設備料金」「設備使用料」「設備利用料」など、いろいろな名目で用いるようですが「設備料金」というように統一していただいたほうが消費者側は分かるのではないかと思います。また、設備料金の根拠が分かりにくいです。消費者が理解できるように設備料金の根拠について詳しく説明をしていただきたい、併せて消費者に分かっていただく努力もお願いしたいと思います。
神奈川県秦野市に住んでいる会員宅に投げ込まれたチラシをご紹介いたします。表面には「適正価格のご案内」と書いてありますが、言葉巧みにLPガス取引契約の切り替えに誘導していきます。「ガス料金の引き下げをご希望の世帯にはご説明に伺わせていただきます。QRコードか電話で」と消費者から訪問を促すようにしています。明らかに特商法(特定商取引法)を逃れようとするやり方です。裏面には「希望する日を教えてください。私たちが行きます」と書いてあります。そこで言われるのは「あなたの家のLPガスの価格は高いでしょう。私たちが安いところを紹介しますよ。」となります。これはブローカーのやりではないかと思います。8月8日まで行われていますので、今日この時間も悪しき方法で切り替えをさせるというブローカーの手口があるということでご紹介させていただきたいと思いました。これを野放しの状態にはできないと思います。適切な規制をかけていただきたいと思います。
商慣行につきましては長い間行われてきたことがやっと是正された形になっています。協会として言えることは、自治体も事業者も本当に大変な時期だと思います。今後より良い方向に向かうよう、協会、事業者ともども努力して、消費者に安心安全な価格での販売ができればと思います。
基本料金、従量料金、設備料金等につきまして、LPガス料金が高いと言われているのは重々承知しております。協会としてLPガス料金について言える状況ではないので、今しばらくお待ちいただきたいと思います。
神奈川県は全国的に見てもブローカー問題の激戦区です。ブローカーがチラシを撒いており四苦八苦しているのが現実です。秦野市や厚木市など定期的にチラシをばら撒くため地域でも問題が大きいので、警察とタイアップし、問い合わせも逐一受けつけるといった形を取っていますので、消費者団体のご協力もいただきたいと思います。
今回の法改正について、取引適正化のガイドラインに関わる部分が多いと思いますが、ガイドラインについては以前から立ち入り検査の際に詳しく検査しており、主に無償配管を中心に指導してきました。今回の改正があった4月以降、改めてこれに関して立ち入った事業所は30件くらいあり、その結果、書類上でいいか悪いか判断できる部分は請求書がメインになり、過大な営業行為が過去にあったかを確認するのは難しい状況でした。唯一、書類上で確認できた請求書について、三部料金制で表示されているところはいくつかありましたが、今回の改正で三部料金制の設備料金がなければ「なし」と書くという点が徹底されているところはあまりなかったです。請求書で三部料金制が入っていてもそこを明確に書くように指導しました。
去年は銚子や房総半島の先など田舎のエリアへ立ち入り検査に行きましたが、その辺りで大手の事業者がやってきて営業をかけているという情報が入りました。そして消費者だけでなく、建築関係や新しく建ったアパートのオーナーに売り込みをしているという情報提供があって、事業者も困っているという実情を聞きました。ある事業者にどういった情報提供があったのか話を聞いたところ、チラシをいただきましたが、広域で展開している事業者でした。経済産業省にも情報提供してご対応をお願いしますと話をさせていただきました。こういった問題になると一地域というよりも広域で、国も自治体も連携して取り組んでいかなければならないと考えていますので、協会、経産省、経産局、監督部とも情報を密に交換しながら対応していきたいと考えています。
(3)総括:国際大学学長 大学院国際経営学研究科 橘川教授
全体を総括し橘川教授より以下のコメントがありました。
印象的だったのは保安の問題で、特にさまざま横行している詐欺行為との関係で、正規の点検をどうやって消費者に伝えていくかという新しい問題が起きていることがはっきりしたと思います。これは取引適正化の問題と非常に関わる話ですので、そういう意味でも取引適正化を適切に進めることが大事ではないかと思いました。
取引適正化についてはまだまだ課題が残っていることは間違いありません。一方で、一連の改正の結果、着実な成果があるということも自信を持っていかなければいけないと思います。今日の話でも通報フォームが1つの大きな武器にはなり得るとのことでした。行政の立ち入り検査は人的資源が限られていますので、通報フォームが手がかりになるケースが多いと思います。証拠がある形で通報フォームを活用することが全ての始まりになるのではないかと思いますし、そのほうが行政も動きやすいのではないかと思います。
実効性を高めるために2つのことが重要だと思います。1つはブローカーに対する規制です。他の業界では行われていない行為というのが過大な営業行為の定義です。確かに代理店というのは電力の販売でも都市ガスの販売でもあります。しかし、LPガスで行われているようなブローカーというのは、電力業界や都市ガス業界には存在しないわけで、これは取り締まりの対象になると思います。営業の自由を損ねるのではないかという法的な議論はありますが、もっと重要なことはブローカーが暗躍することが LPガスの命綱である保安を損ねているという点だと思います。
2つ目は、今のところ罰則規定や立ち入り検査、場合によっては事業者名の公表といったことの対象はLPガス事業者ですが、忘れてはいけないのが今回の取引適正化では戸建てまでは及んでいません。基本的には賃貸集合住宅に限られた話であり、賃貸集合住宅の消費者が契約する相手はアパートのオーナーや不動産事業者です。消費者からすると問題があるオーナーや不動産事業者の名前を明らかにすることが大事であって、LPガス事業者の名前が明らかになるというのはお門違いな規制になるのではないかと思います。これは液石法ではできなくて、宅建業法を変えなければいけないので国交省マターになります。我々が追撃の矢を緩めますと国交省は頬被りして逃げると思うので、国交省でも経産省がやってきたようなワーキンググループを持ってもらい、宅建業法の改正まで行くような大規模な消費者運動を起こしていかなければいけないのではないかという印象を持ちました。
(広報室)