LPGC WEB通信 Vol.93 2022.02.10発行
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令和3年度LPガス懇談会を振り返って |
LPガス地方懇談会(以下「懇談会」という。)は、「令和3年度石油ガス流通・販売業経営実態調査」(以下「本事業」という。)の一環として、LPガス料金透明化・取引適正化等の観点から関連する諸問題について、消費者団体、LPガス事業者(以下「事業者」という。)、や関連団体、行政、学識経験者が一堂に会し意見交換・議論・提言等を行うことで、関係者相互の理解を深め、LPガス産業の健全な発展に資することを目的として、次の通り全国9カ所の経済産業局管内単位で開催され、延べ314名が参加した。本年度も新型コロナウイルス感染(以下「コロナ感染」という。)禍が続きWeb方式(Cisco Webex方式)による実施となった。 (令和3年度LPガス懇談会一覧) |
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(令和3年度LPガス懇談会 出席者数) |
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1 主なポイント |
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(1) 懇談会実施形式面での状況 前年度同様コロナ感染状況は改善されず、Cisco Webex を利用したWeb会議方式での懇談会の実施となった。懇談会のテーマに関する資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)、エルピーガス振興センター(以下「振興センター」という。)のプレゼンテーションはYouTubeによる事前配信とした。 また、懇談会での初めての試みとして、本事業活動の一環で事業の方向づけ、総括等を議論する調査・広報委員会の消費者委員5名に懇談会への参加を求め、委員間の相互理解の向上、議論の多様化を図った。 (2) 委員の変更 消費者委員は、例年各都道府県より消費者団体を代表して就任を願っている。本年度は消費者団体や本人の都合等で、全国で50名の委員のうち26 %にあたる13名が前年度から入れ替わった。 また学識経験者委員は、従来通り懇談会開催地域に根差した地元大学の教授に就任を依頼し、9地方全ての懇談会で重任となった。懇談会のテーマに関する学識経験者委員各位の理解がいっそう深まった重任ととらえられるとともに、継続的に参加いただくことで、より広汎かつきめ細かい指摘等が発信された。 (3) テーマ設定及び議事次第・進め方等 懇談会の議論のテーマは継続性が必要との観点から、従来通り「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」、及び「LPガスの災害対応能力について」が取り上げられた。 「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」のテーマでは、令和3年6月の経済産業省、国土交通省の連携によるLPガス事業者、不動産業者への集合住宅入居前のLPガス料金(以下「料金」という。)公表要請という節目となる動きを踏まえた、活発な議論を呼び込むよう努めた。関連して、各経済産業局から本テーマに関する自治体、事業者等関連団体等への連携状況に関し発表を求めた。 次に「LPガスの災害対応能力について」をテーマに、多様化、大型化し続ける自然災害時に被災地で活用されたLPガス・関連機器設備の災害対応能力について再認識するとともに、国の補助金に基づくLPガス災害バルク導入と活用促進状況等を前年度に続き取り上げた。また消費者側からの災害バルク対応設備を必要とする声も反映されるよう導入に心掛けた。 |
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(議事次第) ① 開会挨拶 各経済産業局 資源エネルギー環境部 ② 懇談 議事進行:各地方学識経験者委員 テーマⅠ.LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について ・プレゼンテーションⅠ「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 ・プレゼンテーションⅡ「令和2年度及び3年度の流通経営調査の概要」 一般財団法人エルピーガス振興センター ・発表 各経済産業局における取引適正化に向けた取組みについて 各経済産業局 資源エネルギー環境部 テーマⅡ.LPガスの災害対応能力について ・プレゼンテーションⅢ「LPガスの災害対応能力について」 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 ・プレゼンテーションⅣ 「災害バルク広報サイトプレゼンテーション」 一般財団法人エルピーガス振興センター ③ 総括 学識経験者委員 |
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(進め方) 議事進行は従来通り学識経験者にお願いした。懇談会の時間は前年度と同じく2時間とし、各テーマに関するエネ庁、振興センターのプレゼンテーションは参加者にYouTube で事前配信し懇談会が始まるまでに内容を把握しておくことを前提とした。また、学識経験者委員がプレゼンテーション内容を議事冒頭に要約して紹介した。 調査・広報委員会委員にはプレゼンテーションを視聴しての感想や意見等を議論最初の発言者として指名して発言いただき議論の口火を切ることとした。 議論の節目では国の政策的観点からエネ庁のコメントを求め、最後に学識経験者が総括して懇談会を締めくくった。 (4) 議論の要旨について テーマⅠ.LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について 令和3年6月に発出された経済産業省、国土交通省からの集合住宅の料金公表要請に関しては、消費者委員、事業者委員双方から取引適正化への大きな一歩を踏み出したとして多くの歓迎や好意的評価が与えられた。しかし、今後実効がどこまで伴うかは不透明であり、事業者委員からもはっきりとした具体的な進展は懇談会時点では報告されていない。さらに、様々な住宅オーナー、住宅管理者の集まりである不動産業界との円滑な連携の必要性が指摘された。また、「要請」では不十分で一定の制度化や義務化を求める声もあったが、これに対しエネ庁からは当面自主的対応を要請し、先ずは「やる気」の喚起から始めるとの回答があった。 料金透明化・取引適正化の問題が解決しないのは料金を構成するコストの積み上げが不明確であり、よって三部料金制によって消費者が納得する表示が必要、との声が消費者委員、事業者委員双方から上がったものの、実施実績は極めて少なく、課題として残されている。 事業者の規模による格差がいっそう浮き彫りとなった。高齢化の進む中小事業者はHPを持たない等デジタル化が遅れていること、生活機器設備の無償貸与が絡んだ小売市場の競争についていけないこと等の実態が事業者委員から報告された。 LPガス業界として高齢者に優しい対応を求める声もあがった。高齢化する消費者に対するガス配送時の声がけや見回り、デジタル化についていけない高齢者への丁寧な料金説明・集金やLPガス関連情報提供等、都市ガスでは手の届かないきめ細かいサービスの必要性が指摘された。 今年度も神奈川県消費者団体の事業者への電話による料金公表全数検査の結果が発表された。回答率は前年度の48.1%から65.1%に上昇、大きな改善が見られた。しかしまだ1/3の事業者は問い合わせに答えておらず、自分の商品の価格を言えないという商売上のモラルの欠如を指摘する意見もあった。また、この全数調査を横展開すべきという指摘があり今後の検討課題である。 LPガスは自由料金、消費者は事業者を選ぶことができる、といった基本的な点に関する消費者意識の欠如、勉強不足という声が消費者委員から多く聞かれた。関連して消費者に対する事業者、行政側からの分かりやすい説明や啓蒙の必要性も指摘された。 テーマⅡ.LPガスの災害対応能力について 気候変動にともなう災害の多様化と共に、災害がいつどこででも起きるという意識が消費者にも根付き、停電時の活用等LPガスの優れた災害対応を認識、評価する発言が随所で聞かれた。 災害バルクを導入するにあたっては、イニシャルコストが電気仕様の設備に比べ高いため、競争力がない。ランニングコストを加味したトータルなメリットを説明すること、自治体首長にLPガスの災害対応能力を丁寧に説明する機会を持つようはたらきかけること等、事業者と消費者が一体となった地道な努力の継続が求められた。 災害バルクと関連設備を災害時のみ使用する体制では実際の災害時にうまく機能しないことがある。常に平時の利用を進めつつ災害対応すべきである。また、都市ガスインフラの弱点を補う役割として都市ガスエリアにこそLPガス災害対応設備の設置が必要との意見もあった。 事業者と自治体との防災協定は概ね締結済みである。また、全国各地の事業者委員から中核充填所を中心とした防災訓練がコロナ感染下の合間を縫って実施されていることが報告された。 |
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2 全懇談会を通して |
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前年度のWeb会議の経験が参加者側にも開催者側にも活かされ、大きな課題であった通信上のトラブルが格段に減少し、概ね安定した懇談会を進めることができた。今後のコロナ感染状況が未だ不透明な中、LPガス業界・関係者間の様々な交流の場を持つには、時間と費用の削減効果も考慮すれば、Web会議も選択肢のひとつである。 プレゼンテーションの事前視聴は多くの参加者から好評を得て定着化した感があり、Web会議のみならず対面の会議においても議事を効率的に進める上で適切な手段である。 テーマⅠ.LPガスの料金透明化・取引適正化の問題に関しては、令和3年6月の集合住宅の料金公表要請が最も大きな出来事であった。目的の達成には一定の時間を要するとの意見が多いが、ようやく問題解決のスタート台に立った感があり今後の推移が注目される。 高齢化によるデジタル化への遅れは事業者側にも消費者側にも共通の問題となっており、周辺関係者からの支援が求められる状況である。 3年前、総務省行政官局が示した経済産業局、自治体、事業者団体間の連携の必要性に関し各経済産業局から発表があった。今年度もコロナ感染状況は改善せず、現場面談による活動は各局で計画されたものの十分な実施に至らず、Web、メール等で情報交換するなど工夫した対応が発表された。 テーマⅡ. LPガスの災害対応能力に関しては消費者委員の災害への意識の向上やLPガスの災害対応能力への認識は一段と高まったものと思われる。これが最終的に一般消費者にまで浸透することが今後の課題である。 災害バルクの導入に関してはコスト高と自治体・首長の認識が薄弱なことが問題との意見が多い。ランニングコストを含めた長期的視点に基づき自治体・首長への粘り強い説明が求められる。 |
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3 事後アンケートの結果 | |
今後の参考とすべく、懇談会開催効果及び課題について出席者に意見を求め、後日提出された。 (設問と回答結果の抜粋) ① 懇談会の満足度について(5段階) 結果 |
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② 懇談会で得たこと、良かったこと 結果(主な意見を集約表記) |
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③ 懇談会で不要または改善が必要だと感じたこと 結果(主な意見を集約表記) |
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④ その他の意見 | |
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⑤ テーマ選定について | |
4 今後の課題 | |
Web方式による懇談会は運営、進行面で安定感を得、時代の流れとともに意見交換の場における主たるツールと位置づけられるだろう。他方、対面形式の機会がなくなっているが、対面形式のメリットを活かすべきとの声も少なくない。今後のコロナ感染状況次第ではあるが、Webと対面をうまく組み合わせ、より実り多い懇談会の実施を検討すべきと考える。 令和3年6月の経済産業省、国土交通省による集合住宅の料金公表要請の成果が見えてくるのはこれからであり、今後の懇談会の場でも事業者委員、消費者委員双方が注視を続けることが求められる。 カーボンニュートラルの時代を迎え、LPガス業界、LPガス消費者がどのような意識と立ち位置で進んで行くべきか、行政の方向づけを踏まえ懇談会関係者皆で考えていくことが必要である。 |
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【ご参考】本年度各地方懇談会の概要(LPGC WEB通信掲載順) |
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(広報室/中村) |