LPGC WEB通信  Vol.91  2021.12.15発行 

中国地方LPガス懇談会の概要
 去る11月1日に「中匡地方LPガス懇談会」を開催しましたので、懇談会の概要を報告します。
本年度のテーマとして予め設定した、
①料金透明化・取引適正化の現状と対応
②災害対応の現状と課題
の各テーマについてそれぞれ資源エネルギー庁からのプレゼンテーションの後、テーマ毎に活発な意見交換が行われました。
本年度も、テーマに基づき自県を超えたエリア全域の共通課題に対し、他県の事例も参考としながら、従前にも増して議論が深まりました。
昨年度同様に新型コロナウイルスの感染防止策としてWEB会議による開催とし、資源エネルギー庁石油流通課および振興センター事務局のプレゼン内容を動画化し、事前に視聴頂きました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内を対象にWEB会議にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
                調査・広報委員会消費者委員
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部


議事の概要
(1)開会挨拶
中国経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課  課長  長谷川 健二
 LPガスは国民生活の重要なエネルギー源で、近年は分散型で災害に強いことが評価され、学校体育館、避難所等へのLPガス仕様のGHPの導入が進んでいる。一方、使用世帯数の減少、省エネ化等を背景に、需要量が減少するなど、厳しい環境に直面しているが、LPガスが選ばれるエネルギーとなるためには、消費者との信頼関係の構築が望まれる。料金透明化、取引適正化の取り組みについては、今年の6月に、課題であった賃貸集合住宅への入居前のLPガス料金情報の提示について、経済産業省、国土交通省から関係団体に協力依頼を行った。このような取り組みにより、LPガスは国民生活を支える重要なエネルギーとして認知され、選ばれるエネルギーに繋がると思う。本懇談会が、出席者にとって有意義なものになることを祈念する、との挨拶があった。

(2)懇談
議事進行:広島経済大学 メディアビジネス学部 教授 北野 尚人

テーマⅠ:LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について

 議事進行の北野教授から資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)、エルピーガス振興センター(以下「振興センター」という。)の事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会平野委員から次のような発言があった。

 都市部におけるLPガスの需要は減少傾向にあると感じるものの、全体ではLPガスと都市ガスが半々の割合で使用されているとの情報をアンケート結果で知った。健康で衛生的な市民生活にLPガスは必要不可欠であり生存に必要なエネルギーである。主婦連合会では2014年に、LPガス供給会社に標準料金の公表や書面交付を義務付け、応じない場合には社名を公表するなど、LPガス事業者(以下「事業者」という。)選択のための情報提供の徹底を意見書として提出した。プレゼンを視聴すると、7年前から殆ど変化が無いように感じるが、今年経済産業省より、賃貸集合住宅の入居者に対して不動産会社が事前にLPガス料金(以下「料金」という。)を提示する等の指導があったことは歓迎すべきことである。
 ネット環境を利用した料金公開には消費者側の得手不得手があり、よって契約は書面交付が基本である。消費者にとって料金は物を買う上での基本要件であり消費者基本法でも保護されており、お願いベースではなくしっかりと進めてほしい。

 続いて消費者委員から次のような発言があった。
 平野委員が言われたように、ガス会社選択のための情報提供の徹底をお願いベースではなくしっかりと進めてほしい。(鳥取県/廣戸委員)LPガスの事業者が地域の見守り役を担うといった深い関係になっている地域もあり、事業者と消費者との関係が地域によって様々であることから、料金の提示を一律に求めることが出来難い環境もある。(平野委員)私が住んでいるのは山間地域で大半の家がLPガスを使用している。LPガスは個人業者、農協等が販売しているが、情報が無いので料金の比較ができない。(島根県/鳥居委員)
自身の居住地域のLPガス事業者が廃業して新しい事業者に引き継がれた。新しい事業者から提示された料金については、他に情報が無く、比較検討は出来ないが、新しい事業者が信頼でき良かったと感じている。都市ガスを勧められたが、信頼できる事業者と取引を続けている。(岡山県/瀧澤委員)実家は県北にありLPガスを使用している。同地域は特定の事業者で寡占状態にある。広島市内は都市ガスを使用していると思っていたが、一部のマンションではLPガスのボンベを見かける。契約によって料金が違うことを事前プレゼンで初めて知った。消費者に対して契約によって料金が違うという事実を広報して行くことは課題である。それらを通して消費者は自身の知識を深める必要がある。(広島県/難波委員)ガスの適切な対価を支払う仕組みが大切であり、ガスとはおよそ関係のない機器・設備が上乗せされた料金は看過できない。不動産会社と事業者が真摯に話をして適切な料金の適用を図るべきである。集合住宅では入居者が事業者を選べない仕組みなので、適正を欠くガス料金の基では安心して住むことは出来ない。消費者はそのような実態を十分に把握できていないと思う。従って、6月1日に出されたエネ庁の協力要請を起点として、料金の不透明さを払拭して行く必要がある。(山口県/吉冨委員)現在、都合により3社の事業者と付き合っているが、事業者によって料金が違うという事を知らなかった。(鳥取県/廣戸委員)

 次に事業者委員から料金透明化・取引適正化に関し以下の発言があった。
 料金透明化については、ネットないしは店頭表示にて100%料金公表できていることを事業者間で確認している。但し、消費者が事業者選択の際に、複数の事業者の料金を比較検討した上で選択しているのか、普段からの付き合いの中で選択しているのかは定かでない。また、契約後に料金が変更された時に料金変更の情報を取っているか等は不明である。料金変更の際には、全ての事業者が料金表を持参して説明している。料金透明化についてはクリアできていると思う。集合賃貸住宅の料金問題について、事業者が設備負担を料金に転嫁するということは当地では殆ど聞かない。また、料金を見てどの集合賃貸住宅に入居するかを決めるというようなことは殆どない。集合住宅の選択に当たっては、立地、利便性、設備の良し悪しなど、料金以外の要素が選択の対象となっている。(鳥取県/水谷委員)料金については、全会員がホームページ(以下「HP」という。)や店頭で情報開示しているが、消費者がそれを見ているかどうかは分からない。一方で、事業者数が漸減傾向にある中、保安上有事にすぐに駆け付けられる距離の範囲内で事業者選択をせざるを得ない。但し、そのような限定的環境でも料金に関する問い合わせには迅速に対応するよう、協会として事業者に要請しているので、安心して情報交換して欲しい。事業者によって地域への密着度が違い、提供するサービスの体系も違うので、それによって多少の料金の違いもあり得るが、会社の姿勢、対応の仕方等をよく見てご判断頂きたい。集合住宅の料金情報開示については県協会として現在対応の準備中である。(島根県/森本委員)料金表については県協会として、会員300事業者(400拠点)に対して情報開示を徹底している。残念ながら、HPまたは店頭提示していない事業者が昨年で4%程度あったが個別に指導している。また、料金の値上げ、値下げについてもHPでの公開や料金表によるお知らせを指導している。岡山ではHPでの料金公表は全体の20%程度なので消費者が直ぐに料金比較できないという事はあり得る。LPガスと他業種を兼業している会社のHP開設率でも40%程度で、HPが無い事業者が未だかなり多い状況にある。無償配管(ガス給湯器配管以外)が県南地域で増えている。県外事業者の流入により競争が激化していることが原因だ。高齢化、オール電化による得意先の自然減が続いており、納入件数を増やしたい大手業者がこの様な活動をしていると思われる。政府の指導、後押しもあるので、時間はある程度かかるかも知れないが、今後極端な無償配管や設備の無償貸与は減ってくると思う。(岡山県/髙山委員)他県同様、当県内においても多様な地域性があり、それに伴って料金については地域差が生じている。現在HPでの料金提示は全体の2~3割であるが、店頭表示に加えてHPの開設を促進して料金の透明化を図って行きたい。料金提示は消費者に対して14条書面の提示と共に料金表をお渡しして行っており、適切な対応が出来ていると思う。集合住宅については不動産業者任せでなく、ガス事業者が自ら不動産業者と連携を取り、責任を以て料金提示できる体制の構築を目指す。(広島県/武信委員)料金公表に関しては、HPおよび店頭表示は100%実施している。但し、店頭表示については、お客様が店頭へ出向いて常にそれを見るというのは難しいと思う。集合住宅の設備無償貸与問題については将来減って行くとは思うが、現状問題解決は難しい状況にある。消費者の事業者選択については、保安上の問題から一定の距離の制約の範囲内で事業者を選ぶことになる。三部料金制については前進していないのが実態だ。(山口県/服部委員)

 続いて、3年前から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経済産業局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、中国経済産業局(資源エネルギー環境部 資源・燃料課 細田統括係長)から次のようなコメントがあった。
 当局に届いた苦情や取引適正化に向けた取り組みについて情報提供する機会を捉えて、管内各県担当者との情報交換を実施している。今年6月の集合住宅の取引適正化について関係団体へ要請がなされた件についても各県の担当者へ情報提供した。また、県や局からの行政指導だけでは対応が困難な場合もあり、各県LPガス協会とも情報交換を行っている。
 局管内の事業者への立ち入り検査では、「標準的な料金メニューの公表」「書面交付時の説明」「料金を変更する際の消費者への事前通知」「苦情および問い合わせの処理」について確認している。令和2年度は2件の立ち入り検査を実施、令和3年度はコロナ禍の状況を見ながらではあるが1件の立ち入り検査を予定している。

 テーマ1 料金透明化・取引適正化の議論を踏まえ、エネ庁坂田企画係長から以下のコメントがあった。
 消費者委員の皆さんから料金比較が困難であるとのご意見を頂いたが、各事業者委員からの説明にもある様に料金の公表は徐々に進んでおり、店頭ないしはHPでの料金公表がほぼ100%に近づいて来ていることからも、消費者にとって料金については比較のしやすい環境になりつつあると考えている。
 他方、HPでの公表はなかなか進んでいないことから、事業者の努力にも期待するところである。小規模事業者にはHP開設が難しいという面もあるので、消費者の皆さんには電話での問い合わせなども一つの手段として捉えて頂きたい。
また、LPガスに関する取引の実態や利用する際のシステムについて、消費者の理解を促進するための広報活動を展開する必要性を感じている。


テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 北野教授からエネ庁、振興センターの事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会消費者委員の平野委員から以下コメントがあった。
 災害への対応は私たちの命に係わる極めて重要な問題である。避難所に災害バルク等の設備が備わっていることは、いざという時の安心に繋がる。そのためにも自治体に対して積極的に働きかけて導入促進を図ることが重要である。また、災害時にそれらの恩恵を受ける立場の消費者の側から導入をアピールすることも必要である。

 続いて事業者委員から以下発言があった。
 LPガスが避難所の稼働に効果的であるということから、自治体の防災担当者を招き、災害バルクの実機を用意して紹介・説明するなど導入に向けた提言を行っているが、予算上の制約がハードルとなっているのが実態だ。(鳥取県/水谷委員)災害バルクおよび非常用発電機の設置に関する補助金活用の提案を行い、老健施設や病院関係を中心に導入を進めている。また、災害時に避難所となる公民館や体育館についても災害バルク、非常用発電機、空調をセットにして教育委員会や各市町村へ提案している。(島根県/森本委員)自治体に災害バルクの話をしても反応が鈍い。現在は老健施設や民間病院への補助金を活用した導入が中心。災害バルク等の設備の設置場所情報を共有できる仕組み作りが必要である。(岡山県/髙山委員)災害バルクの導入は未だ進んでいない。平成29年末に県下の全自治体と災害支援協定を締結し、災害時の体制強化を図っている。また、災害支援協定の関係とは別に、青年委員会により自治体や公民館への災害対策用器具(炊き出しセットやコンロ等)の寄贈事業を展開している。
先の西日本豪雨時のLPガスボンベ流出事故の後、回収要綱を制定して令和2年6月より運用している。(広島県/武信委員)一昨年来、県主導で学校関係の空調について事業者を交えて勉強会が開催されている。その成果として、昨年萩市をはじめ3市でGHPが導入された。
市議会議員を集めて災害バルク、発電機、空調に関する勉強会を開催する市もあり、今後より一層の導入促進を図りたい。(山口県/服部委員)

 消費者委員の吉冨委員から以下コメントがあった。
災害バルクは災害時に強いとの印象を持っているが、これ一つで万能というものではなく他の手段との上手な組み合わせの中でLPガスを使うことを考える必要があると思う。


 最後に北野教授が議論全体を以下のとおり総括し懇談会を締めくくった。
 今日の2つのテーマの共通点として情報開示を徹底することが消費者の選択肢を確保するために重要となる。
 また、そのためにも告知手段はHPと店頭掲示に留まらず、今後はパソコンやスマホ等のデジタルを上手に活用することで、消費者により易しく情報提供することが可能になる。
 地域性はたいへん重要で、土地柄や人間関係や距離の近さなどは非常に大切な要素であり、一律ではなくきめ細かい配慮が必要である。
 毎年同様のテーマが残っているため、数量目標の設定と効果測定が必要で、より高い効果を出すことが出来る。


              
(広報室/中村)