LPGC WEB通信  Vol.90  2021.11.10発行 

近畿地方LPガス懇談会の概要
 去る10月14日に近畿地方LPガス懇談会(福井県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)を開催しましたので、懇談会の概要を報告します。
本年度のテーマとして予め設定した、
①料金透明化・取引適正化の現状と対応
②災害対応の現状と課題
の各テーマについてそれぞれ資源エネルギー庁からのプレゼンテーションの後、テーマ毎に活発な意見交換が行われました。
本年度も、テーマに基づき自県を超えたエリア全域の共通課題に対し、他県の事例も参考としながら、従前にも増して議論が深まりました。
昨年度同様に新型コロナウイルスの感染防止策としてWEB会議による開催とし、資源エネルギー庁石油流通課および振興センター事務局のプレゼン内容を動画化し、事前に視聴頂きました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内を対象にWEB会議にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
                調査・広報委員会消費者委員
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部


議事の概要
(1)開会挨拶
近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課 課長  古島 竜也
 LPガスは全国約2,400万世帯が使用する国民生活に密着したエネルギーである。また災害時には分散型エネルギーとして被災地を支える重要な役割を担っている。近年電力・都市ガスの小売り自由化により、エネルギー間の競争が激化しており、取引価格の適正化への取組みが課題である。関連して今年6月1日には国からLPガス事業者(以下「事業者」という。)、不動産業界に対し集合住宅の料金を入居前公表するよう協力要請があったところ。本懇談会ではこのような論点がテーマとして挙げられており、参加者各位の活動事例の発表等活発な意見交換をお願いしたい、との挨拶があった。

(2)懇談
甲南大学 法学部 教授 土佐 和生

テーマ1:LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について

 議事進行の土佐教授から資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)、エルピーガス振興センター(以下「振興センター」という。)の事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会片野委員から次のような発言があった。
LPガスは電気、水道と並んで生活インフラを支える重要なエネルギーであり、誰もが安心して使用できる必要がある。安全はもちろん、安心、納得して使用したい。LPガスの料金(以下「料金」という。)問題には国も真剣に取組んでいるようだが、消費者契約は非常に重要である。消費者も経済力、判断力等種々の観点から多様である。消費者が安心して取引できるよう皆で考えていきたい。

 続いて消費者委員から次のような発言があった。
 生活設備費用の料金への転嫁については契約時にはっきり伝えて欲しい。(福井県 齊藤委員)。消団連の北海道懇談会に参加し、大学生が入居する際の料金トラブル事例等を知った。消費者の料金を知る権利や選択する権利が奪われていると感じる。県内では料金に関する苦情は比較的少ない。そのため相談があると県LPガス協会(以下「県協」という。)に丸投げする傾向がある。解約時の費用等が複雑化しており事業者は相談員に対して正しい相談対応を指導して欲しい。(滋賀県 廣瀬委員)。府内では最近はLPガスに関する相談件数は少ない。事業者のホームページ(以下「HP」という。)の活用率が2割というのは低すぎるが、中小事業者にはハードルが高いようだ。他方、事業者が紙ベースでもきちんと消費者に情報伝達できていれば、加えてHPの開設を求めるのは酷だ。消費者の年齢層が高いとHPへの対応も難しいので、事業者と消費者の情報伝達状況をより正確に把握する必要がある。(京都府 右近委員)。集合住宅の料金問題は最近少なくなったとはいえ、なお散見されている。入居者が事前に料金を知ることができるのは素晴らしいことで消費者の安心につながる。事業者の高齢化に伴いHPの活用度、WEBアンケートへの回答率が落ちている。紙媒体でのアンケートを利用するなど高齢事業者への配慮が欲しい。(大阪府 角田委員)。地元では料金トラブルはないが、一部高齢事業者からガスを購入する消費者もある。ガスが無くっても交換に来ないこともあった。消費者も高齢化が進んでおり、高齢者への配慮がいっそう望まれる。(兵庫県 中道委員)。HPの活用度が低いという結果が出ているが、紙媒体の活用等高齢事業者に対応する情報伝達方法も必要だ。三部料金制は消費者にも分かりやすいので浸透するよう努力願いたい。(奈良県 山本委員)。最近は料金が高いという苦情は少なくなった。事業者の努力と思う。集合住宅入居後に料金を知り不満があっても他の事業者を選べないのが実情だ。よって入居前に料金体系の把握が必要である。都市ガスの届いていない県南部はLPガスに依存するが高齢者が多い。高齢者はHPを見ることが少ないので、紙媒体等で料金を説明する工夫が必要だ。事業者も高齢化が進んでおりHPへのハードルは高いと思う。(和歌山県 田村委員)。

 次に事業者委員から料金透明化・取引適正化に関し以下の発言があった。
 県内では集合住宅に過大投資し問題となっているような話は聞かない。仮に投資しても料金は均一に設定し、トラブルのないように扱っていると思う。一般商品でも高いものもありLPガスが特に高いという言われはない。(福井県 渡辺委員)。生活設備費用の料金への上乗せという話は最近あまり聞かない。ボンベが共通化して販売店がどこか分からない、という話を時折聞く。事業者と消費者のつながりがLPガス業界の合理化によって減少しているのが実情だ。マージンを要求するような悪質不動産業者がまだあり、取引適正化の障害である。最近LPガスの輸入価格が上がっており料金に跳ね返ってくるため、改めて料金の透明化への説明が必要となる。(滋賀県 川瀬委員)。今のところ府LPガス協会には集合住宅料金に関するトラブル相談は届いていない。年一回LPガス担当相談員の方々と情報共有しているが料金トラブル事例はほとんど無くなった。しかし業界として残念なのは高齢化に伴い、供給設備や古いボンベの撤去といった相談が多いことだ。HP活用も事業者の高齢化のためか19%と少ないが、消費者と顔を合わせての対話を継続することも大事なことと考えている。6月1日の国の要請は各支部長に連絡指導するとともに、府LPガス協会HPでも周知している。(京都府 畑委員)。府としては全国ワーストの料金公表実績であった。これに対しては保安講習会等様々な場面で料金公表を事業者に要請してきた結果、現在公表率は99.4%である。HPの活用率は12.6%と低いが、できない事業者は店頭表示や顧客訪問時の丁寧な説明で対応することが必要だ。また6月1日の国による集合住宅料金の事前公表要請は入居者の安心につながり非常に良いことだ。ただし、料金改定時にもきちんと住宅管理会社にも伝えなくてはならない。事業者が住宅管理会社に料金表を渡した時、それが独り歩きして競争となり過剰投資の土壌とならないよう注意が必要だ。(大阪府 大先委員)。県内では集合住宅に関する料金トラブルは聞いていない。供給業者が分からない、というトラブルは散見される。国の要請は12支部長に周知した。事業者から不動産業者への料金開示は進むと思うが、不動産業者から消費者まで浸透するには一定の時間がかかると思うが、この取組みは良いことだと思う。(兵庫県 髙須委員)。過去、集合住宅入居後の料金トラブルが発生していたが、最近は無くなった。6月1日の国の要請にしたがい、今後も集合住宅の料金に関しトラブルが発生しないよう努めたい。保安講習会でも事業者に周知している。(奈良県 松倉委員)。県内では集合住宅の料金トラブルはあまり聞いていない。6月1日の国の要請に対しては、講習会や書面で会員に周知している。過剰な生活設備費用の肩代わりといった話は聞かない。最近は新築の集合住宅の着工数も減り、その意味でもトラブル事例が少ないのではないか。HPは本来事業者の業容拡大のツールである。地元密着で固定的な顧客を中心に扱っている中小事業者に対し、料金公開だけのためのHPを求めるのは本末転倒である。(和歌山県 佐伯委員)。
 また、福井県の自治体消費者担当坂井相談員から、基本料金部分に保安等のコストが含まれていることが消費者に理解されていない、との指摘があった。

 続いて、3年前から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経済産業局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、近畿経済産業局(資源・エネルギー環境部 資源・燃料課 門田課長補佐)から次のようなコメントがあった。
 各府県自治体との連携の重要性は認識しているが、前年度はコロナ禍で活動ができなかった。次年度は各所からヒアリングを行い、状況把握に努めたい。また経済産業局、各自治体の要望を出し合い共有したい。なお今年度についてはコロナ禍で計画が立てられなかったが、この先緊急事態解除の動向を踏まえできる事を考えていきたい。

 テーマ1 料金透明化・取引適正化の議論を踏まえ、エネ庁吉野課長補佐から以下のコメントがあった。
 料金透明化に関しHPは有効な手段だがそのターゲットをどんな層とするか、高齢者がインターネットに馴染まない、といった点で必ずしも響かないところがある。議論にもあったように面談や紙による情報伝達もあり、HP一辺倒ではないと感じられる。事業者からアプリを使った消費者サービスの設定について相談を受けたが、利用する消費者層を考えなくてはならない。若い消費者はアプリ対応に問題ないが、高齢者は概して苦手である。事業者は消費者目線に立ったサービスを考える必要がある。
 消費者がガスの供給事業者が分からない、という話があったがボンベの社名プリント等で判別できないものか。これに対しては事業者から以下回答があった。配送が別会社で配送センターのボンベになっており供給会社が分からないケースがある。(滋賀県 川瀬委員)。消費者が高齢でそもそも供給事業者がいるという意識がないケースがある。(兵庫県 髙須委員)。


テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 土佐教授からエネ庁、振興センターの事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会消費者委員の片野委員から以下コメントがあった。
豪雨災害も増え災害対応はどの地域でも他人ごとではない重要な課題だ。非常時にはどの事業者も自分の強みを生かして地域社会に貢献願いたい。地域が元気でないと事業の継続もおぼつかない。広報によるLPガスの強みのアピールが大事で、それが消費者とのコミュニケーションとなる。

 続いて事業者委員から以下発言があった。和歌山県佐伯委員からは先般の和歌山市の断水に伴うLPガス設備のトラブルも併せて次のような発言があった。県では津波の被害が心配されるため、各自治体との防災協定を全て締結した。今後自治体と実際の災害時の役割分担について協議を進める。和歌山市の断水時の経験を3点紹介したい。①追い炊き可能な風呂ガマに水を張ったが、水圧がないため安全装置が働いて給湯器が稼働しない、という問い合わせが殺到した。②給水開始時の濁った水は給湯器のフィルターに悪影響を及ぼす旨の和歌山市の注意喚起があり、非常に効果的であった。③電気温水器・エコキュートにトラブルが生じた。水を出し切ったため底にたまった錆や泥が詰まってトラブルになった。給水が止まり「エラー」が出たがその解除対応ができなかった。家電メーカーのコールセンターに問い合わせることになるが順番待ちで復帰に時間がかかった。取扱説明書の常備が不可欠だ。
 さらに事業者委員から次のような発言が続いた。
 防災協定はすべての自治体で確立され、防災体制は整っている。災害対策マニュアルも作成し保安講習会等で事業者に周知している。また自治体の防災訓練にも参加している。その際LPガス発電機、炊き出しセット等を自治体、消費者に紹介している。高齢者への訪問、災害バルク等LPガス設備の予算措置に関し自治体へのはたらきかけも続けている。(兵庫県 髙須委員)。府LPガス協会各支部と市町村が災害協定を締結し防災対応している。9市町村と協定未締結のため全て締結するよう努めている。2年前の大阪北部地震被災前に箕面市の避難所である学校体育館20カ所にLPガスの空調設備導入が完了しており大変役に立った。その後各支部が活動し現在公立学校35校の体育館にLPガス空調設備を導入済み。さらに体育館への空調設備導入を決めた学校は58校、導入を予定している学校は54校、合計10自治体147校が何らかの形でLPガス災害対応設備の導入に向け進んでいる。府のLPガス世帯数は8%を切ったが、万が一都市ガス供給が止まった時の対応として必要なエネルギーであることをPRしている。(大阪府 大先委員)。自治体との防災協定を締結している。発災から72時間のなかで事業者となすべきことをマニュアル化し周知している。災害状況は各種チャンネルから二重三重に詳細把握できる体制である。県内各充填所には炊き出しセット等供給設備を貸出し災害に備えている。(福井県 渡辺委員)。全支部と市町村で防災協定を締結済み。県協として訓練にも参加する予定である。避難所においてLPガスが「備蓄」できるという観点を前面にPRしている。(滋賀県 川瀬委員)。全自治体との防災協定を締結済み。府市議会議員との連携の下、災害時、停電時のLPガス関連機器設備のメリット、補助金制度等について福祉施設等もふくめ各方面にPRを続けている。(京都府 畑委員)。県との防災協定を締結し、災害対応マニュアルを作成している。また県協会員に対し防災基金の積み立てもお願いしている。緊急時の県協と支部の連絡のため衛星携帯電話も備えている。支部と自治体との防災協定が不十分なところがあるので今後締結に向け努力したい。(奈良県 松倉委員)。大阪府の消費者角田委員から以下のコメントがあった。防災協定は事業者が積極的にリーダーシップをもって進めて欲しい。LPガス災害対応設備の導入にあたっては事業者と消費者が連携し市長に直訴した経緯がある。病院には防災以外にも調理手段としてのメリットもPRした。大切なエネルギーとしてのLPガスを事業者と消費者が一緒になって広めていただきたい。また8kgボンベの導入については容量が少ないので10kgかそれ以上のものも活用できるようにお願いする。
 さらに福井県消費者齊藤委員からカーボンニュートラルの時代にLPガスが進む方向について質問があった。これに対しエネ庁吉野課長補佐から以下回答があった。現状LPガスをすぐに使わなくするということはない。将来、分散型エネルギーであるLPガスを全て例えば電気に置き代えるという議論も考えていない。ただし石油の消費も減るなか、元々石油由来のLPガスの消費量も減少するだろう。そこで現在、LPガスを石油由来からグリーンLPガスに変えていく検討を、輸入元売り会社を中心として進めているところ。しかしLPガスを「作りだす」には課題が多く、その課題にどう取り組んでいくか検討を進めているところだ。


 最後に土佐教授が議論全体を以下のとおり総括し懇談会を締めくくった。
 集合住宅の料金問題は平成29年の料金透明化・取引適正のガイドラインが制定されて以降手つかずの課題であった。今年6月の経産省・国交省による集合住宅の料金提示に関する要請は一歩前進である。消費者が契約時に契約内容をしっかり把握したうえで商品やサービスを選択するという点が重要である。高齢の消費者に対し、HPの公開だけで料金透明化が実質化するか、という問題も残っている。消費者自体も多様化しており、事業者には個別のきめ細かい対応が求められる。災害対応は待ったなしだ。災害がいつ、どこで発生してもおかしくない。災害で亡くなる命をひとりでも減らすよう、事業者には具体的、現実的な対応努力をお願いしたい。


(広報室/中村)