LPGC WEB通信  Vol.89  2021.10.11発行 

東北地方LPガス懇談会の概要
 去る9月16日に東北地方LPガス懇談会(青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県)を開催しましたので、懇談会の概要を報告します。
本年度のテーマとして予め設定した、
①料金透明化・取引適正化の現状と対応
②災害対応の現状と課題
の各テーマについてそれぞれ資源エネルギー庁からのプレゼンテーションの後、テーマ毎に活発な意見交換が行われました。
本年度も、テーマに基づき自県を超えたエリア全域の共通課題に対し、他県の事例も参考としながら、従前にも増して議論が深まりました。
昨年度同様に新型コロナウイルスの感染防止策としてWEB会議による開催とし、資源エネルギー庁石油流通課および振興センター事務局のプレゼン内容を動画化し、事前に視聴頂きました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内を対象にWEB会議にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
                調査・広報委員会消費者委員
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部


議事の概要
(1)開会挨拶
東北経済産業局 資源・エネルギー環境 部長 奥村 浩信
 東北経済産業局(以下「経産局」という。)にとってエネルギーの安定供給と安全の確保は最重要課題である。LPガスの料金(以下「料金」という。)の透明化・取引適正化において料金公表には一定の進展が見られるものの、集合住宅の取引適正化に関しては課題が残っている。今年6月には資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)からLPガス事業者(以下「事業者」という。)に対し集合住宅の料金に関する情報を入居者に事前開示するよう要請が発出されたところである。このような状況下、LPガスが消費者からの信頼を得られるよう、本日の懇談会では関係者が忌憚ない意見交換を行い今後の業界発展につなげていただきたい、との挨拶があった。

(2)懇談
東北大学大学院 経済学研究科 教授 吉田 浩

テーマ1:LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について

 議事進行の吉田教授からエネ庁、エルピーガス振興センター(以下「振興センター」という。)の事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会委員の中本委員から以下コメントがあった。
 今年から始まった料金の透明化・適正化(以下「透明化・適正化」という。)に関するエネ庁の取組みは高く評価する。料金が事前に分かることで月間の生活費が正確に把握され、大きな前進である。今後はこの取組みを消費者が理解すること、そして消費者が料金を問合せ、事前に知ることで透明化・適正化がいっそう進むものと思う。行政側には消費者にもこの取組みの周知をお願いしたい。アンケート調査からは事業者の二極化が分かるが、小規模事業者の経営健全化が懸念される。中小事業者にとってホームページ(以下「HP」という。)の開設が負担なら、その前段階として料金の店頭表示、電話での問合せへの回答態勢を整えて欲しい。神奈川県での電話対応調査では回答者が全体の半数程度である。全事業者が電話での料金問合せには回答すべき。アンケート調査の回答率がWeb調査になってから低下している。今後事業者がLPガスの供給をWebで管理する方向であるなら、少なくともWebアンケートには回答するべく、県LPガス協会(以下「県協」という。)からも周知、指導願いたい。

 続いて、透明化・適正化に関し参加者間で以下のような意見交換が行われた。
 LPガスは自由料金で、料金も原油価格の変動等にリンクして変わるという点を消費者は認識すべき。各種エネルギー料金の中で、ガソリン等は見やすい表示がある反面、LPガス料金は最も分かりにくい。公共料金ではなく事業者と個別に料金が決まる点は消費者も知っておくことだ。集合住宅の入居者は入居前に住宅オーナー側にしっかり料金の説明を受ける事。生活設備費用が料金に転嫁されることがあるという点を知ることが必要だ。(山形県消費者 高橋委員)。
 以下の点を質問したい。①透明化・適正化が進まない理由、②6月開始の集合住宅入居前の料金説明要請に関する不動産業界の受止め方、③入居前の料金説明実施状況の検証は如何か、④HP開設に関する県協の支援策は、⑤悪質ブローカーの訪問販売への対策。(宮城県消費者 加藤委員)。これに対しエネ庁、宮城県事業者委員から以下の回答があった。
 エネ庁の回答。①店頭表示は進んでいるものの、中小事業者のHP開設が進んでおらず、料金透明化が不十分であり改善が必要だ、②LPガス料金を含めた家賃を入居前に開示することはより明確な入居者への説明につながり、不動産業界にとって必ずしもマイナスではないと認識している、③6月からの要請は即座に効果が現れるものではなく、ある程度長い目で見る必要がある。進捗状況については、振興センターのアンケート項目に今年から設問として追加するなどして把握に努めている、⑤経産局、自治体の立入検査時に注意喚起している。(以上、エネ庁 坂田企画係長)。また振興センターから以下補足説明があった。①については、事業者は基本的には既存顧客には料金の公表開示はできているが、それ以外の一般消費者にも幅広く料金公表することにやや無関心な傾向が感じられる。⑤の回答として「お客様相談所」が国の支援のもとで各県協に設けられており、悪質なものについては立入検査等と連携して活用できると思う。(嘉村専務理事)。
 ④に関連するコメントとして、県ではHP開設事業者は30%、うち75%が料金開示に活用している。しかし、消費者からは実際の料金と乖離があるとの情報もあり、昨年末に県危機管理部消防課の協力を得て、生活設備費用を明記するよう販売通知書の改定を行った。6月中旬には経産省、国交省の要請関連資料を全会員に送付済み。保安講習会でも県の担当から料金開示の説明を受けている。(宮城県事業者 渡邉委員)。透明化・適正化は3年前から事業者への立入検査の重点事項として定めている。集合住宅の料金事前提示要請も保安講習会の際に周知徹底している。(宮城県消防課 伊藤主任主査)。

 過疎化の著しい地域では小規模事業者が多いが、これ等事業者はLPガス供給のみならず、幅広く地域住民生活と密着しており、そのことがLPガス業界の強みである。一方で小規模事業者はHPを活用できていないが、店頭に料金を提示し、取引している顧客には料金の説明はできている。こういった点がアンケート調査ではなかなか反映されない。自治体の立入検査時には連携して透明化・適正化の指導をしている。東北は過疎化で諸経費もかさむため料金が高いという声もあるが、その状況の説明が消費者に十分届いてない。(青森県事業者 葛西委員)。入学や就職で新しく賃貸住宅に住む入居者には、不動産会社の丁寧な料金説明が必要だ。料金の事前公表は当たり前であり、スマホ等インターネットでの比較検討ができる事が望ましい。(福島県消費者 田崎委員)。県内には中小事業者が多く、HPの活用が難しい。活用には国や県協の支援が必要だ。集合住宅料金の事前公表に関しては国からの「依頼」では弱く、実効性が疑問である。(岩手県消費者 磯田委員)。県内は過疎地域が多いなか、中小事業者が日夜安定供給に努めていることは理解願いたい。Webの設定を押し付けすぎると、これら中小事業者の事業が進まなくなり、結果ライフライン難民の発生につながる。県協としてもWebの設定に相談があれば協力するが、Web化を条件とした制度を定める段階ではない。(岩手県事業者 菊池委員)。

 続いて、3年前から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経産局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、経産局(資源・エネルギー環境部 資源・燃料課 成田課長)から以下のような発表があった。令和元年度から1年ごとに秋田、宮城、青森各県関係団体と透明化・適正化に関する意見交換を行った。今年度(青森)は立入検査状況、事業者の経営環境、透明化・適正化への取組み、消費者相談事例等に関する意見交換を実施した。平成29年度から14件の立入り検査を実施、14条書面の記載、説明等、透明化・適正化に向け指導した。また保安研修会で消費者相談対応、法令改正等透明化・適正化等に関し講演した。さらに、経産局に寄せられた消費者相談にも個別に対応している。このような取組みを繰り返すことが重要と考えている。
 経産局の立入検査と県の検査との違いについて宮城県加藤委員から質問があり、対象事業者として県内で活動する事業者は県の、東北複数県にまたがる事業者は経産局の管轄であり、立入検査の中味は基本的には相違がないとの回答があった。

 テーマ1のまとめとしてエネ庁坂田企画係長から以下コメントがあった。HPの開設につては地域事情があることは理解できる。HPでの料金公表が全てではなく、神奈川県の電話調査のように電話における回答等、消費者の求めに適切に応ずることが重要だ。集合住宅の料金開示については、消費者のほうから事前に料金を確認するという意識も必要だ。行政からも消費者への周知を進めていきたい。

テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 吉田教授からエネ庁、振興センターの事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会消費者委員の中本委員から以下コメントがあった。
 北海道胆振東部地震とその後のブラックアウトではLPガスが活躍した。今後低炭素社会の実現を目指す中で地産地消のエネルギーが求められるが、今すぐというわけにはいかず、当面分散型エネルギーであるLPガスに寄せられる期待は大きい。エネルギー基本計画でもLPガスは災害対策上貴重なエネルギーと位置付けられており、脱炭素社会に進むにあたっても、生活を守るエネルギーとして活用されるべきだ。

 続いて、LPガスの災害対応に関し参加者間で以下の意見交換があった。
 LPガスの災害対応能力に関し十分な認識がなかったが、東日本大震災ではガスによる発電で助かった経緯がある。空調にも使えるといった強みも含めて消費者への幅広い啓蒙活動が必要だ。(青森県消費者 月舘委員)。「災害に強いLPガス」ということを前面に出し、避難所や公共施設にLPガス災害対応設備を導入できるよう自治体にはたらきかけている。LPガスで冷房、発電ができるという事を知らない人も多く、LPガス業界として更なる、啓蒙努力が必要だ。(福島県事業者 小西委員)。災害に強いLPガスの下、安心して暮らしているが安全な使い方を認識することも重要だ。事業者が適宜器具の点検を実施してくれて安心できる。料金も近隣では格差が無く問題ない。(秋田県消費者 山野内委員)。県協では一昨年から全ての自治体に対し学校の教室、体育館へのLPガス設備導入のはたらきかけを実施しており、何件かの成果が現れつつある。災害時の強みをもっとアピールすべきである。(秋田県事業者 高橋委員)。
 九州地方で災害があったが、LPガスが活躍したものと想像される。LPガスの災害時の活用事例をまとめて広報、共有すると良い。(秋田県消費者 山野内委員)。
 山形県消費者 高橋委員から、2030年カーボンニュートラルに向け業界として如何に対応するのかとの質問があった。これにはエネ庁坂田企画係長から以下回答があった。将来的にはLPガスの消費量は減少する見込みもあるが、足下のLPガスの供給は継続する。カーボンニュートラルへの動きが加速化しても、分散型エネルギーとしてのLPガスの災害時の強みは変わらない。関連して自治体との連携による防災訓練等必要な準備は継続する。
 LPガスの災害時の強みは十分理解するが、再生可能のエネルギーも多様化しており、これらとの連携、具体的な役割分担を考えることも重要だ。また、各地で過疎化が激しくなっているので小学校を地域単位とした災害対応を検討願いたい。(福島県消費者 田崎委員)。

 また、県協と自治体との連携状況は如何かと、宮城県消費者加藤委員から質問があり、自治体、事業者から以下の回答、コメントがあった。県協保安講習会での指導、ボンベ流失対応関連等で県協と連携している。(宮城県消防課 伊藤主任主査)。県、赤十字支部、各自治体と災害時防災協定を締結している。締結した自治体には毎年、災害バルク、空調・発電設備等導入を継続的に提案している。昨年度は7ヵ所に発電機の導入も実現できた。(宮城県事業者 渡邉委員)。全自治体と災害時防災協定を締結している。最近では発電機2台が導入された。炊出しのみならずもっと幅広くLPガスの利便性をアピールしたい。(秋田県事業者 高橋委員)。


 最後に吉田教授が懇談会全体をとおして以下のまとめと共に懇談会を締めくくった。
 透明化・適正化については新しい取組みも始まり、今後いっそう進めていくということが確認された。料金公表についてはWebでも、電話でも、掲示でも、課題はそれぞれあるが要はその方法論を詰めて、透明化・適正化の動きを止めないで進めることが共通認識となった。災害対応についてはLPガスの有用性を、事例集を作成するなどして、広報に努めることが必要である。東北地方は高齢化が進む一方、異常気象で大きな被災をする懸念もあり、地域存続のための貴重なエネルギーであるLPガス供給システムを残していくために知恵を出し合っていきたい。


(広報室/中村)