LPGC WEB通信  Vol.89  2021.10.11発行 

北海道地方LPガス懇談会の概要
 去る9月7日に「北海道地方LPガス懇談会」を開催しましたので、懇談会の概要を報告します。
本年度のテーマとして予め設定した、
①料金透明化・取引適正化の現状と対応
②災害対応の現状と課題
の各テーマについてそれぞれ資源エネルギー庁からのプレゼンテーションの後、テーマ毎に活発な意見交換が行われました。
本年度も、テーマに基づき自県を超えたエリア全域の共通課題に対し、他県の事例も参考としながら、従前にも増して議論が深まりました。
昨年度同様に新型コロナウイルスの感染防止策としてWEB会議による開催とし、資源エネルギー庁石油流通課および振興センター事務局のプレゼン内容を動画化し、事前に視聴頂きました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内を対象にWEB会議にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
                調査・広報委員会消費者委員
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部


議事の概要
(1)開会挨拶
北海道経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課長 田口晴彦
 LPガスは災害に強いエネルギーとして3年前の北海道胆振東部地震やその後のブラックアウト時に北海道民の生活を支えた重要なエネルギー。他方、エネルギーは競争の時代になっており、LPガスは「選択されるエネルギー」でなくてはならず、そのためには消費者との信頼関係の構築が望まれる。北海道経済産業局(以下「経産局」という。)としても自治体、関係機関等と連携しLPガス料金(以下「料金」という。)の透明化・取引適正化を進めていく所存である。これらの点を踏まえ本懇談会での活発な議論をお願いしたい。

(2)懇談
北星学園大学文学部 教授 大島寿美子

テーマ1:LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について

 議事進行の大島教授から資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)、エルピーガス振興センター(以下「振興センター」という。)の事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会委員の林委員から以下コメントがあった。
 2017年に料金透明化・適正化に向けてのガイドラインが制定された際、積み残しになっていた集合住宅の料金に関し、6月1日に経産省、国交省から関係団体に向け入居前の料金開示の要請が出されたことは誠に喜ばしい。消費者としてのLPガス事業者(以下「事業者」という。)の選択への道筋がついたと評価したい。他方、不動産業界は複雑で一筋縄ではいかない面があり、行政にはしっかり見守っていただきたい。今後消費者団体としても消費者に料金選択の余地があることを啓蒙する所存だが、事業者にもしっかり対応願いたい。事業者の料金公表は進んでいるようだが、消費者には公表された料金で売られるべきで、さもないと信頼関係を失う。競争の少ない地域での料金の高止まりにも注意願いたい。

 続いて2名の消費者委員から独自の調査に基づき資料に沿って発表があった。
○北海道生活協同組合連合会 川原委員
 6月1日の経産省の要請では国交省、消費者庁も一体となって不動産業界に対してのはたらきかけも行われており、潮目が変わった、山が動いた、という認識だ。消費者側の評価も高い。この取組みの着地点はLPガスが消費者から選ばれるエネルギーとなることである。そして、この変化を確かなものとするには法的措置も必要だと考える。
 北大生協関連の集合住宅の料金調査を実施した。結果は以下のとおり。2016年と2020年の比較において基本料金、5m3ベースの料金は上昇傾向である。2020年では価格差が最大4,533円/月と相変わらず大きい。同一地域、同一業者でも3,000円強の差がある。給湯器費用を事業者が負担する傾向が強い。住宅オーナーの多くがLPガスは高いと認識し、都市ガス、電気への切替えも検討している。全事業者(アンケート26社)が二部料金制で、三部料金制は皆無。集合住宅の設備無償貸与は、それを断る事業者、仕方なく応ずる事業者、積極的に進める事業者、様々であるが、最終的被害者は仕組みを何も知らされていない消費者である。償却済みの設備の費用負担が続くという悪例もあり改善が必要だ。今後団体としても、事業者、消費者、行政との連携を更に強化するとともに、メディアへのはたらきかけ、消費者への啓蒙を推進し、LPガスが選ばれるエネルギーとなることを目指したい。

○北海道消費者協会 武野委員
 LPガスに関連する相談事例に関して以下説明する。相談事例では高額な料金案件43%、契約・解約案件22%、料金滞納16%、その他の順。高額料金については、自由料金制とはいえ入居後に料金を知り高いと感じる場合が多い。これは契約内容の事前説明不足、契約書面の未交付に起因している。6月1日の集合住宅料金への取組みは消費者にとって朗報である。加えて、集合住宅へ入居後の事業者変更にも事前説明があるべき。契約書は消費者、事業者相互利益のため締結が必要だ。生活設備費用の受益者負担はやむを得ないがその透明化や説明が必要だ。アンケートでは7割の事業者が生活設備費用を料金に転嫁せずとあるが、全消費者に広く薄く転嫁しているとの疑念が残り、そうであれば不当な価格転嫁といえる。
 価格調査結果は次のとおり。今年8月調査では道内のLPガス価格差は2.3倍、同一地域(空知)でも2.1倍と単一商品としては異常に大きい。ガソリン、灯油は原油価格に概ねリンクするが、LPガスは2011~12年頃の原油100㌦時代の価格が高止まりしている。また道内のLPガス価格は全国価格と比べても高い。カーボンニュートラルの時代を迎えLPガス業界の対応が難しい中、生き残るには透明性の確保、説明責任を果たしていただきたい。

 続いて、料金透明化・取引適正化に関し事業者委員(北海道LPガス協会、以下「道協」という。)から以下の発言があった。
 6月1日のエネ庁からの要請については、まだ時間が経っておらず会員に十分な周知ができていない。集合住宅入居者からのクレームが無いよう、今後道協会員への周知に努めたい。7月上旬に13支部の支部長を集めエネ庁要請への協力を依頼した。道協から会員に向け書面でも要請した。契約書面の交付については北海道の立入検査も受け、消費者の受取印の保管等指導を受けており事業者は皆、法令に基づいて取引しているものと認識している。契約書として14条書面を交付しており、交付はほぼ100%実施されているものと認識している。ただし、「契約書」という書面での締結は少ないと思う。14条書面の交付が不備で行政から指導を受けている事業者はほとんどいないと思う。(鉢呂委員)。
 北海道の事業者は2000社弱あるので、ごく一部で書面の交付をおこたっている事例があるようだ。集合住宅の事業者が代わる時のトラブルについては、悪質なものはないと思うが事業者の消費者への丁寧な説明をするよう指導に努めたい。(柵山委員)。
 議論を進めていく中で、問題点は絞り込まれてきており、LPガス業界にとって良いことだ。もう一歩のところまできていると思う。集合住宅での設備無償貸与には力関係がある。事業者がやむなく無償貸与要請を受け、その費用が料金に転嫁されている点が問題。無償貸与はあっても最小限が望ましく、無理強い側への規制も必要ではないか。基本料金は事業者コストで各々異なるが、基本料金に見合う付加価値の提供が求められる。また、北海道の料金が高いのは面積が広いため物流コストが割高となる事に起因していると思う。(梶原委員)。

 自治体からはLPガスに関連する相談事例等に関し以下発言があった。
 最も多い相談は料金が高額である点。ほとんどが集合住宅料金に関する苦情や相談である。入居者はガス会社を自由に選べないことが不満である。住宅オーナーが事業者を一方的に変更し、契約当事者である入居者に何ら通知がない。事業者にはこのような苦情を踏まえ、料金の透明化に努めるとともに、消費者が事業者を選択できるような環境を構築願いたい。国には今回の事業者、不動産業者への要請を消費者にも周知、啓蒙していただきたい。(北海道環境生活部くらし安全局消費者安全課 鶴ヶ崎課長)。
 LPガスに関する相談事例は全体の約0.5%(51件)。相談事例として、都市ガスへの切替え時に約10万円の機器費用の請求を受けたがその内容、記憶が不確かとの相談があり、お客様相談所を案内した。アパートに入居したら都市ガスの4倍の料金となり不当との相談があり、集合住宅料金の抱える問題を説明したが相談者は都市ガス住居に移転を検討することとなった。国には事業者ばかりでなく、消費者にも料金問題の課題等啓蒙いただきたい。(札幌市市民文化局市民生活部消費生活課調査指導係 原係長)。

 続いて以下のような議論、意見交換が行われた。
 14条書面の交付の確認に関し、事業者側の状況は如何か。(大島委員)。自治体の立入検査が3~4年に1回実施され、書面交付は重要項目としてチェックされているので、ほとんどの事業者は書面交付が実行できていると思う。(鉢呂委員)
 エネ庁吉野課長補佐から料金問題の議論に関し次のようなコメントがあった。今年度の振興センターのアンケート調査でも集合住宅料金への対応に関し設問がある。引き続き追跡調査を継続したい。今後の課題として消費者への啓蒙、集合住宅入居予定者への料金公表に関する周知が重要である。入居予定者から住宅オーナー側に料金を問い合わせるような環境が求められる。事業者が料金提示するにあたっては消費者の立場に立ち、二部料金制、三部料金制等々消費者に分かりやすいという観点で考えるよう指導している。
 消費者からは、料金問題をとりまく課題は絞り込まれている。それを踏まえ、本懇談会のような意見交換の場を年1回ではなくもう少し頻度を上げて実施したい。事業者側は如何か。(川原委員)。そのような提案は適切なものだ。但し、LPガス業界/不動産業界といった縦割りの中での議論では具体策に届くのに時間がかかる点が課題である。(梶原委員)。
 14条書面の交付徹底は理解したが、LPガス取引では契約書の締結は不要か。(武野委員)。「契約書」と14条書面上の取り決めの間にギャップがある。自治体の検査は14条書面の交付について実施されていると思うが如何か。(吉野課長補佐)。立入検査では、14条書面の説明を受けた旨の消費者印があるかどうかもチェックしている。昨年度は消費者印のない例が3件あった。液石法では14条書面交付の規定はあるが契約書締結の規定はない。(北海道経済部環境・エネルギー局環境・エネルギー課 大西主査)。2008年特定商取引法改正時にLPガスは訪問販売の対象になった。よって訪問販売での取引には契約書が必要となった。そこで全国LPガス協会が契約書と一体となった14条書面書式を作成し、事業者に共有した経緯がある。それを使えば14条書面兼契約書という形となると思う。ただし古くから取引を続けている場合契約書はないかもしれない。契約書がなくて困るのは事業者側である。なぜなら設備負担の取り決めが見えないと解約精算時に必要な請求ができないから。また、北海道の料金が高いが、卸価格が高いこと、保安等に係る人件費、物流費が嵩むことも要因ではないか。これらの点は、事業者の丁寧な説明と消費者の理解が求められる。(林委員)。
 消費者から事業者の料金説明が分かりにくいとの相談を受けた際の対応は如何か。(島崎委員)。事業者には消費者目線で対応願いたい。北海道、札幌市の消費者窓口部署の相談対応も参考になると思う。また、全国LPガス協会で設けている相談窓口を紹介する方法もある。(吉野課長補佐)。道協でお客様相談所を設けており、LPガスに特化した問題であればそちらを紹介する方法もある。(事務局 嘉村専務理事)。

 3年前から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経産局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、経産局(資源エネルギー環境部 資源・燃料課 加納課長補佐)から以下のような発表があった。経産局は取引適正化の実効性を確保するため、北海道、札幌市への情報提供、道協との定期的意見交換を進めている。これを踏まえ2020年度は情報交換会を2回計画していたがコロナ感染のため書類送付による情報共有を行った。また本省との共同立入検査も次年度に延期となっている。

テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 大島教授からエネ庁、振興センターの事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会消費者委員の林委員から以下コメントがあった。
 自然災害が増えているが、消費者のLPガス災害対応に関する知識の向上が必要だ。都市ガス地域にもLPガスのボンベを置くことも必要で、それには自治体の協力が必要だ。また、都市ガスインフラの破損時等の対応にも有効である。防災訓練時にはLPガスの災害対応の優位点を消費者に周知すべきである。事業者には消費者が災害対応のためにLPガスを必要としていることを認識し頑張ってもらいたい。
 続いて、本テーマに関し委員から以下のとおり発言があった。
 釧路市中心部は都市ガス供給が多いが、地盤も弱く災害時にはガス供給が止まることがあり、復旧にも時間がかかる点が不安である。自然災害が多様化、大型化している状況下、消費者協会でも災害バルクシステムは以前から災害に強い優れたエネルギーであることは認識していた。発電ばかりでなく空調も可能で、都市ガスエリアにも有効である。消費者にも啓蒙を進めているところである。(武田委員)。
 道協をあげて官公庁に避難所となる設備等に災害バルクを設置するようはたらきかけている。一部自治体では学校に災害バルク、発電機等の設置実績があるが札幌市では実現できていない。ブラックアウト時には災害バルクが設置されている施設とそうでない施設では機能に大きな差があった。国の補助金活用も含め粘り強く設置に向け運動を続けたい。


 最後に大島教授から、LPガス業界にはこの1年で大きな動きがあったが、これをステップとして、消費者、事業者、行政が一体となって問題の解決に進んで欲しい、とのコメントがあり懇談会を締めくくった。

              
(広報室/中村)