LPGC WEB通信 Vol.88 2021.09.10発行
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南関東地方LPガス懇談会の概要 |
経済産業省資源エネルギー庁の委託事業「石油ガス流通・販売業経営実態調査」として、当センターが実施する「LPガス懇談会」を、去る8月25日にWEB会議上の「南関東地方LPガス懇談会」より開始し、対象の埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・静岡各県の消費者委員及び事業者委員、学識経験者委員、行政が出席しました。 本年度のテーマとして予め設定した、 ①料金透明化・取引適正化の現状と対応 ②災害対応の現状と課題 の各テーマについてそれぞれ資源エネルギー庁からのプレゼンテーションの後、テーマ毎に活発な意見交換が行われました。 本年度も、テーマに基づき自県を超えたエリア全域の共通課題に対し、他県の事例も参考としながら、従前にも増して議論が深まりました。 昨年度同様に新型コロナウイルスの感染防止策としてWEB会議による開催とし、資源エネルギー庁石油流通課および振興センター事務局のプレゼン内容を動画化し、事前に視聴頂きました。 |
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1 LPガス懇談会について |
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(1)目的 LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、 事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、 関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。 (2)方法 全国9ヵ所の各経産局管内を対象にWEB会議にて開催する。 (3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等 調査・広報委員会消費者委員 事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等 学識経験者委員……知見を有する大学教授等 自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署 経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部 |
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2 議事の概要 |
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(1)開会挨拶 |
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関東経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課長 新田 祐治 |
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本懇談会は消費者と事業者の相互理解を深める場として毎年実施している。併せてLPガスが「選ばれるエネルギー」となるための方策を考える場である。本日は参加者の方々から忌憚ない意見をいただきたい。本日いただいた意見等は今後のLPガス関連行政に反映させたい、との挨拶があった。 |
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(2)懇談 | |
国際大学大学院 国際経営学研究科 教授 橘川 武郎 | |
テーマ1:LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について 冒頭、議事進行の橘川教授から資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)及びエルピーガス振興センター(以下「振興センター」という。)の事前プレゼンに関し要約解説があった。 調査・広報委員会消費者委員の平野委員から料金問題、事前プレゼン等に関し以下コメントがあった。 自身の所属する主婦連合会でも過去にLPガスの料金(以下「料金」という。)公表や高額な料金に関し経済産業省(以下「経産省」という。)に意見書を提出するなど、料金透明化・取引適正化は重要問題と認識している。今般、経産省と国交省がこの問題で動きだしたことは歓迎すべきだが、消費者保護の観点からは更に強い対応、措置が望まれる。公正取引委員会、消費者庁との関りも求められる。 続いて神奈川県消費者今井委員から電話による料金公表全数調査に関し以下の報告があった。 今年度は全体で65.1%の公表率であった。一昨年度が32.9%、昨年度は48.1%、と毎年改善されLPガス事業者(以下「事業者」という。)の料金問題に関する意識も向上している。県LPガス協会(以下「県協」という。)の啓発努力も大と認識している。他方、他県の資料では山梨県が100%、静岡県が93.6%の料金公表率である。神奈川県事業者には今後100%の公表率に向けて努力願いたい。また、集合住宅の料金問題については消費者団体も消費者を啓蒙しなくてはならないし、事業者、行政の協力も必要だ。 今井委員の報告について、神奈川県事業者髙橋委員から以下発言があった。そもそも商売をするにおいて価格が提示できないということがあってはならない、という観点から、事業者・会員に料金公表の徹底を求めてきた。しかしまだ公表率は低く、80%くらいまでは伸ばしていきたい。神奈川県はこの問題の震源地のように言われているが県協としてはあきらめず啓蒙に努めたい。来年も消費者の調査をいただき更なる改善を目指したい。 以降、料金透明化・取引適正化等に関し出席者間で次のような意見交換が続いた。 不動産業者による入居前の料金公表が要請されたことは喜ばしい。しかし公表の実効性が不透明なので継続的な見守りや何らかの強制力も必要ではないか。料金が高く不透明なため、LPガスが将来若者から「選ばれない」エネルギーとなるのではないかと心配している(東京都消費者 林委員)。料金公表率は向上したが、公表通りに消費者が買っているかが問題。取引の長い顧客ではいつの間にか割高な料金となっている場合もある。公表通り販売されているかも消費者で調べて欲しい。(東京都事業者 尾崎委員)事業者の切り替え時の相談事例が多い。建売り住宅の場合も住宅会社とガス事業者で色々とり決めているようだが、この場合も入居時に生活設備の費用負担等も含め消費者に十分な説明が必要である。(静岡県消費者 菅ケ谷委員)。事業者から住宅オーナー側に生活設備費用負担を持ちかけているという、事例があるがどういうことか。資料によれば山梨県事業者の料金公表率は100%だが信じがたく、確認願いたい。(山梨県消費者 斉藤委員)。他県某社から県内の住宅オーナーへの費用負担のはたらきかけがあったことは事実。県協から指摘しても他県企業でもあり聞き流され残念なことだ。県協として料金公表アンケートに「公表している」と答えたかどうか確認する術はない。県協支部に確認したベースでは皆公表しているとのことである。但し、顧客数100件程度の限定的な範囲で供給する事業者には料金公表していないところもあり100%とは言い切れない(山梨県事業者 望月委員)。県内ではあまり料金問題での相談事例はなく、2年ほど前から料金の計算書も届くようになった。このような懇談会等の成果の表れだと思う。(埼玉県消費者 加藤委員)。山梨県と同様、特定顧客しか供給していない事業者が料金公表していない例があり県協支部等をとおして指導している。住宅オーナーに設備費用負担を持ちかける事業者が県内にもある。集合住宅料金に関し経産省と国交省の連携ができたことは大きな前進だ。(埼玉県事業者 川本委員)。振興センターのアンケート回収率向上への対策はいかがか。小規模、高齢化事業者への回収向上策があるか。(千葉県消費者 佐久間委員)。本質問には振興センター(嘉村専務)から、インターネット環境にない事業者でも回答の意思があれば電話、FAXを利用して回収する工夫を考えている旨説明があった。県内ではメール等を活用して料金公表を推進するよう指導している。現在料金の店頭表示が75.3%、ホームページ(以下「HP」という。)表示が24.7%である。(千葉県事業者 小倉委員)。100%料金公表といってもHPと店頭表示合わせてである。HPがあっても公表していないケースがあり100%は疑問だ。店頭で表示されてもわざわざ見に行く消費者はおらず、やはり電話での公表に答えてもらいたい。最近集合住宅の空室が見られる。事業者が住宅オーナーに無償貸与を働きかけても料金が上がって入居利率が下がると投資回収は見込めないと思う。事業者向けアンケートの設問で生活設備費用負担の金額を問えないか。消費者が入居前に料金を知ることが大事で、その点について行政、事業者、消費者団体による幅広い広報活動が必要だ(神奈川県消費者 今井委員)。Web化が進みインターネットを使えない高齢者にはペーパーで請求書が届くが、1件あたり110円の手数料を要求する大手事業者があるという相談事例もある。デジタル弱者はまだまだ多く、高齢者や弱者にやさしいLPガスであって欲しい。(東京都消費者 林委員)。築15年アパートの1室の給湯器が故障したところ、修理→取替え→アパート全世帯取替と話が進み、結局そのアパートの契約を他事業者にとられた例がある。中小の事業者はそのような競争に対抗できず顧客を失っているのが実態だ。(東京都 事業者 尾崎委員)。 続いて関東経済産業局から料金透明化・取引適正化に関し、自治体や事業者との連携に関し次のように報告があった。 コロナ感染下のため自治体との意見交換は、ほとんどできなかった。消費者の相談対応ではブローカーへの苦情が散見されている。料金、検針等に関する電子化に高齢者がついていけない実情がみられる。保安講習会での講演は継続しているが立入検査実績はコロナ感染下のため1件にとどまっている。 テーマ1の議論を踏まえ、エネ庁橋爪企画官から以下のコメントがあった。 集合住宅における生活設備の無償貸与は違法ではないが、その結果料金が高くなっている。そのことが、消費者には入居後にしか分からず事業者選択の余地がないことが問題だ。無償貸与により料金が高くなりLPガスが「選ばれないエネルギー」とならないように6月からの要請をスタートした。今後の県庁の立入検査においてはこの要請が実効を得ているか、ぜひヒアリング調査をお願いしたい。 これに対し神奈川県からは、このような要望があることを念頭に今後の立入検査に臨みたい旨の意思表示があった。(消防保安課)。 |
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テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」 | |
橘川教授からテーマ2のエネ庁及び振興センターの事前プレゼンに関し要約解説があった後、調査・広報委員会消費者委員の平野委員から以下コメントがあった。 LPガス関連設備は災害に対して非常に有効である。ただし、自治体施設等では既存設備をLPガス設備に置き換えることは予算等の観点から困難だ。また一家庭ベースでもLPガス災害対応設備を備えていると便利だが、災害時だけの使用にはハードルが高い。例えば都市ガスからLPガスへの切り替えが可能ならLPガスはもっと浸透するだろうし、LPガスの利便性のアピールも求められる。また、オートガスの減退への歯止めや多様なエネルギーを使いやすい環境にすることも必要だと思う。 続いて、各事業者委員から以下の発言があった。 経験上災害時だけ使用しても設備はうまく機能しない。したがって、日常使う学校の体育館の空調へのLPガス導入を進めている。また、県協と自治体とは防災協定を結び各種訓練を実施している。(埼玉県事業者 川本委員)。県協では一昨年の豪雨停電被害を踏まえ先般、自治体に対しLPガス移動式発電機、GHPエアコン、LPガス車等防止設備の説明会を実施した。また会員にも同様の説明会を実施の予定。(千葉県事業者 小倉委員)。都協会としては河川氾濫等を想定した「災害対策マニュアル」を作成している。それに応じて東京都の貸与で38台のMCA無線を拠点に配置し災害時の連絡体制をとり、月1回使用訓練を実施している。災害時に限り20kg容器くらいまでは法規制の緩和をお願いしたい。(東京都事業者 尾崎委員)。都市部都市ガスエリアへのLPガス災害対応が課題だ。横浜市の公立学校に1校県協の供給でLPガス設備を導入している。今後川崎等都市ガスエリアに広めたい。また、行政にはLPガスの特性を生かした質量販売に関し見直し、規制緩和願いたい。(神奈川県 髙橋委員)。県内4カ所の中核充填所をベースに災害対応体制をとっている。ここ数年は災害が発生していないため、危機意識が欠如しないよう注意が必要だ。また、災害時を踏まえボンベによる質量販売への法的緩和をお願いしたい。(山梨県事業者 望月委員)。消費者も行政担当も、LPガスの災害対応システムは常日頃から準備が必要だという点を十分認識すべきであり、そのような啓蒙、PRが求められる。FRP容器を災害対応用に都市ガス世帯にも備蓄できたらいいと思う。この点、災害が多発、甚大化しておりより真剣に検討願いたい。(東京都消費者 林委員)。 質量販売の規制緩和に関し複数の意見があったこと等に対し、エネ庁橋爪企画官から次のようなコメントがあった。 質量販売はアウトドア需要の喚起等に有効だ。難しいのは使用を消費者に委ねることである。ガス安全室によれば質量販売による事故数が相対的に多い。露店では機器が改造されているケースも見られ管理上の懸念がある。災害における有効性と両にらみで考えていく必要がある。また、災害対応としては中核充填所の数が不十分な県が散見されており更なる充実が課題である。 |
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最後に橘川教授が議論を以下のとおりとりまとめ懇談会を締めくくった。 料金と透明化・取引適正化については今年度に具体的な国の動きがあった。これは過去の懇談会での議論の成果である。今後この動きがどれだけの実効性を上げていくか、消費者も含めた見守りが必要だ。本当に実効性が伴っているのであれば、料金表は三部料金制になるはずだ。行政には不動産関連事業者の他に、さらに住宅メーカーにも監視が届くよう努力願いたい。 少数限定的顧客しか供給していない事業者が料金公表しないという情報があった。これは市場の独占である。競争がないためLPガスの輸入コストが下がっても小売価格が下がらないといった現象につながる重大な問題である。 公表料金と実際に消費者が買う価格にズレがあるという点も気になったところだ。このズレの実態に関しては消費者団体のアンケート調査等でも追及していただきたい。 災害対応面では都市ガスエリアにこそLPガス設備の設置が望まれることがはっきりした。また水害に弱いLPガスという点に焦点があたり、改善がみられていると思う。LPガス事業者と自治体との防災協定が全国96%で締結されているとの報告があり、これは大きな進歩ととらえたい。 |
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(広報室/中村) |