LPGC WEB通信 Vol.81 2021.02.10発行
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令和2年度LPガス懇談会を振り返って |
LPガス懇談会(以下「懇談会」という。)は、「令和2年度石油ガス流通・販売業経営実態調査」の一環として、LPガス料金透明化・取引適正化等の観点からその諸問題について、消費者団体、事業者団体、行政、学識経験者が一堂に会し意見交換・議論・提言等を行うことで、関係者相互の理解を深め、LPガス産業の健全な発展に資することを目的として、次の通り全国9箇所の経済産業局管内単位で開催され、延べ297名が参加しました。本年度は新型コロナウイルス感染(以下「コロナ感染」という。)防止のためWeb方式(Cisco Webex方式)による実施となりました。 (令和2年度LPガス懇談会一覧) |
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(令和2年度LPガス懇談会 出席者数) |
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1 主なポイント |
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(1) コロナ感染防止への対応 コロナ感染防止対策のため、従来のように参加者が同一会場に会し、同じ空気感の下で意見交換する懇談会の実施は不可能となりました。代わりにCisco Webex を利用したWeb会議方式での懇談会が実施されました。懇談会では発言者の安定した音声、画像の確保が求められましたが、不慣れのため一部音声の聞き取りづらいところ、画像が立ち消える時等不具合が散見され、会議設営、進行上の課題を残しました。 他方、Web会議により出張・移動の費用と時間の削減効果は大でした。コロナ感染禍終息後も社会全体の傾向として、Web方式が会議方式の有力な選択肢のひとつとなることは否めず、引き続きWeb会議の質的向上を指向しなくてはなりません。 (2) 委員の変更 消費者委員は、例年各都道府県より消費者団体を代表して就任していただいていますが、必ずしも毎年重任ではありません。本年度は設定テーマと方向性に合致した方への変更や消費者団体や本人の都合による変更等で、全国で約3割にあたる14名が前年度から入れ替わることとなりました。 また学識経験者委員は、従来通り懇談会開催地域に根差した地元大学の教授に就任いただくこととしており、北海道の新任委員を除く8地方で重任していただきました。 (3) テーマ設定及び議事次第・進め方等 懇談会のテーマは継続的議論が必要との観点から、従来通り「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」、及び「LPガスの災害対応能力について」を引き続き取り上げるとともに、今年度の特殊事情として大きな社会問題となっているコロナ感染禍でのLPガスの実態について「新型コロナウイルス感染拡大下の状況」と題するテーマを追加テーマとして設定しました。 先ず「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」のテーマでは、平成29年~30年に実施された液石法省令等の改正及びガイドラインの制定・改正により業界の取り組みが進んできたものの、消費者とLPガス事業者(以下「事業者」という。)間の意識の差もあり、お互いが納得のいく状況には道半ばとの声が多く、これらの現状と課題について本年度はより踏み込んだ議論とすべく、テーマのひとつに取り上げました。 次に、「LPガスの災害対応能力について」をテーマに、多様化、大型化し続ける自然災害時において被災地で貢献したLPガスの災害対応力や、非常時の活用の効果等について再認識するとともに、国の補助金に基づくLPガス災害バルク導入と活用促進状況等を前年度に続き取り上げました。 上記2件の継続的なテーマの議論に加えて、コロナ感染禍という過去誰も経験のない事態の中で、LPガスというエネルギーがどのような困難に直面し、どのような対応がなされたか等々、参加者全体での幅広い情報共有を図りました。 議事進行は前年度同様、学識経験者にお願いしました。Web会議となったため、会議時間は前年度の3時間から2時間に短縮し、短縮分を補うべく資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)、エルピーガス振興センター(以下「振興センター」という。)のプレゼンは参加者にYouTube で事前配信し懇談会が始まるまでに内容を把握しておくようお願いしました。 |
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(議事次第) ① 開会挨拶 各経済産業局 資源エネルギー環境部 ② 懇談 議事進行:各地方学識経験者委員 テーマⅠ.LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について ・プレゼンテーションⅠ(LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について) 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 ・プレゼンテーションⅡ(元年度及び2年度の流通経営調査の概要) エルピーガス振興センター ・発表 LPガスの料金透明化・取引適正化にかかる関係機関との連携状況等について 各経済産業局 資源エネルギー環境部 テーマⅡ.新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等 テーマⅢ.LPガスの災害対応能力について ・プレゼンテーションⅢ(LPガスの災害対応能力について) 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 ・プレゼンテーションⅣ (災害バルク広報サイト) エルピーガス振興センター ③ 総括 学識経験者委員 |
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(進め方) 議事は参加者が予めYouTubeを視聴してエネ庁、振興センターの事前プレゼン内容を承知しているという前提で開始し、議事の進行シナリオは事務局が議事進行の学識経験者委員との事前確認をもとに作成しました。事前プレゼンに関し参加者、特に消費者委員から事前質問があった場合は、事務局にてとりまとめの上進行シナリオに反映しました。意見、質問の発出が消費者委員、事業者委員、行政という所属単位で、また特定の県に偏らないよう学識経験者委員にお願いしました。学識経験者委員は北海道を除き過年度の懇談会議事進行の経験者でしたが、初めてのWeb会議による回線上の不具合等トラブルの発生時にも、総じて冷静な対応で安定感のある議事進行を実施していただきました。 (4) 主たる要旨について テーマⅠ.LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について LPガスの価格(以下「料金」という。)の公表に関しては、相変わらず店頭表示にて料金公表済みとする事業者と、わざわざ店頭まで料金を見に行かないとする消費者間での意識のズレが解消できていないようです。解決策としてホームページの有効活用が消費者委員、事業者委員双方から指摘されました。しかしLPガス事業者には小規模のホームページを有しない事業者が多く、これら事業者へのホームページの浸透が課題だとの事業者委員の意見が大勢を占めました。 57%の事業者が集合住宅の生活関連機器設備費用を負担しているが、そのうちの70%以上がその費用を料金に転嫁していない、とする振興センターのアンケート結果には消費者委員の多くから疑問の声が聞かれました。このような疑問を解消するためには三部料金制を採用しコスト内訳を明確にする必要がある、との意見が幅広い委員層から提起されました。生活関連機器設備費用の料金への転嫁については、入居時に明確な説明がなされるよう、不動産業界も含めた行政の指導が期待されました。これに対してエネ庁からは、既に国土交通省及び公正取引委員会と協議をすすめている旨明らかにされました。他方、不動産業界側に要請するばかりではなく、LPガス業界としても今後この商習慣にどう向き合っていくのか、改めて方向付けを定めるよう指摘がありました。 振興センターのアンケート調査については回収率が11%と低く、結果の信憑性を疑問視する意見があり、回収率のアップが今後の課題となっています。 テーマⅡ.新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等 主として事業者委員によるコロナ感染下の状況報告、感染防止対策等が共有されました。需要面では、家庭用の消費量は従来と変わりがないが業務用、自動車用の落ち込みが激しい。特に業務用の顧客のなかにはガス料金の支払い苦慮する業者もあり、県のLPガス協会はこれら顧客の料金支払いには柔軟に対応するよう指導しています。事業者委員のコメントによれば検針、検査については感染防止の観点から、マスク着用、検温、消毒の徹底はもちろん、訪問は顧客と相談の上実施している事業者が大半です。総じて事業者の安定供給への努力や苦労が見て取れる報告が共有されました。 テーマⅢ.LPガスの災害対応能力について 近年特に目立った豪雨水害時における、ボンベチェーンの二重掛け、ガスの放出防止型高圧ホースの装填への徹底が数多く報告されました。また、避難所となる施設、特に学校体育館へのLPガスの空調・発電設備は災害時の極めて効果的な対応手段として、その導入の必要性や実績が委員間で情報共有されました。消費者委員にはLPガスで発電ができる、ということの認識がいっそう進んでおり、安心・安全のため公共施設、避難所への発電設備導入を願う意見が多く出ており、行政その他関係者を動かす声となることが期待されます。また、災害バルク設置への国の補助金制度の活用は関係者には定着感があり、多くの導入実績が報告されました。 |
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2 全懇談会を通して |
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初めてのWeb方式での懇談会ということで、会の設営、進行面での課題は残しました。他方、会場への移動コスト、時間の節約というメリットもありました。また事後アンケートによれば、YouTubeによる事前プレゼンは概ね好評であり、今後色々な場面でこの方法の活用が期待できそうです。コロナ感染が、今後の懇談会の実施形式を改めて考える上での様々な材料を残してくれた年度となりました。 LPガスの料金透明化・取引適正化の問題に関しては、エネ庁は外部機関との協議をはじめるなど、積極的な対応を進めています。一方でエネ庁から事業者に対しては集合住宅料金に関する旧来の商習慣を改めるべく、業界全体として足並みをそろえるよう指摘がありました。これらの動きは料金問題を考える上で従来になく踏み込んだもので、今後のLPガス業界の動向が注目されます。一昨年、総務省行政官局が示した経済産業局、自治体、事業者団体間の連携の必要性に関し各経済産業局から発表がありました。連携の必要性が示されて以降、各経済産業局は総じて自治体、事業者団体と必要な意見交換、情報共有をすすめてきていますが、今年度はコロナ感染防止のため、活動は概ね様子見状態と報告されています。 コロナ感染禍の状況、対応の議論においては事業者の安定供給への努力、消費者に対する慎重な対応や配慮が見て取れました。消費者委員から評価のコメントも多く、この災禍を踏み台としていっそう消費者と事業者の信頼関係の向上につながることが望まれます。 自然災害が多発、多様化するなか、コロナ感染禍とも相俟って災害時の避難所のありかたにも従来以上の工夫が必要となってきています。このような状況下、災害バルクに対する国の補助金制度も拡大し、災害に強い分散型エネルギーとしてのLPガスの評価は事業者、消費者を問わずいっそう高まっていることが、懇談会の議論からもよく分かります。学識経験者委員、エネ庁からは、事業者、自治体ばかりでなく、今後は消費者も一体となってLPガスの災害対応能力を広く発信し、関連設備の導入につなげるべきとの指摘がありました。 |
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3 事後アンケートの結果 | |
今後の参考とすべく、懇談会開催効果及び課題について出席者に意見を求め、後日提出いただきました。 (設問と回答結果の抜粋) ① 懇談会の満足度について(5段階) 結果 |
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② 懇談会で得たこと、良かったこと 結果(主な意見を集約表記) |
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③ 懇談会で不要または改善が必要だと感じたこと 結果(主な意見を集約表記) |
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④ その他の意見 | |
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⑤ テーマ選定について | |
4 今後の課題 | |
新型コロナウイルス感染禍という事態が、図らずも今後の様々な会議のあり方を見直す引き金となりました。LPガス業界においては本事業における懇談会はもとより、消費者と事業者、行政の信頼関係を維持、強化するための関係者間の意見交換は今後も必須であり、Web会議のより円滑な運営への習熟は今後の課題となります。 アンケートによれば、懇談会で取り上げているテーマについては継続的な議論が必要であるとの意見が多いようです。他方、地方ごとに抱える課題や問題意識に温度差もあり、この点を踏まえて消費者、事業者が納得できる段階へ少しでも近づくような議論を継続する必要と思われます。 |
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【ご参考】本年度各地方懇談会の概要(LPGC WEB通信掲載順) |
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(北関東地方) https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202010contents2.html (南関東地方) https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202010contents3.html (東北地方) https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202011contents2.html (中部地方) https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202011contents3.html (近畿地方) https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202012contents1.html (北海道地方) https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202012contents2.html (中国地方) https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202012contents3.html (四国地方) https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202101contents2.html (九州・沖縄地方) https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202101contents3.html |
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(広報室/中村) |