LPGC WEB通信  Vol.78  2020.11.10発行 

東北地方LPガス懇談会の概要

 去る9月15日に東北地方LPガス懇談会(青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県)を開催しましたので、両懇談会の概要を報告します。
各地方の消費者委員及び事業者委員、学識経験者委員、行政の間で、本年度のテーマである、
 ① 料金透明化・取引適正化の現状と対応
 ② 災害対応の現状と課題
について、それぞれ資源エネルギー庁のプレゼンテーションに続き、自県を超えた意見交換が行われました。
 コロナ禍中におけるの新たな試みの一つである、WEB会議によるリモート会議運営については、事後アンケートの結果からも概ね好評を得ています。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  Web会議によるリモート会議
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
東北地方LPガス懇談会
 
(1)開会挨拶
 東北経済産業局 資源エネルギー環境部 奥村 浩信 部
 新型コロナウイルス感染(以下「コロナ感染」という。)下において、LPガス事業者(以下「事業者」という。)の感染防止対策の徹底等による事業継続、消費者への安定供給への努力に感謝する。今回の懇談会はリモート開催となったが、標題の3つのテーマに関し参加者間で忌憚ない意見交換をしていただき、相互の信頼関係のさらなる強化につなげてほしい、と述べました。

(2)懇談
 司会・進行:東北大学大学院 経済学研究科 吉田 浩 教授
 会議冒頭、今年はコロナ感染下という異例の事態にもかかわらず、LPガスの消費者、事業者、関連行政の各位がLPガスを育てていこうという熱意のもとに参集されたものと理解している。今回の議論でLPガスというエネルギーをより良いものにしていきたいと思うのでよろしくお願いする、と述べました。

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」
 
 宮城県の消費者団体の加藤委員から、戸建てと集合住宅でLPガス価格(以下「料金」という。)が異なることが消費者にはなかなか理解できない。事業者の回答を集約したアンケート結果だけでは、実態が分かりづらい。ついては資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)によるモニタリングの実施計画やその時期はどうか。また、生活機器設備費用を負担している事業者の71.6%が料金に転嫁していないというアンケ―結果に驚いている。事業者は一体どうやって負担分を捻出しているのか疑問である、と問題提起がありました。
 加藤委員の質問(一部事前の書面による質問も含め)に対しエネ庁家田課長補佐からは、3年前の2月に液石法省令改正があり、その年とその翌年はエネ庁で料金透明化・取引適正化に関し調査した。前年と今年は全国LPガス協会に調査を実施していただいており、今後も同協会と相談しながら、どういう形でモニタリングを続けていくか検討したい。料金の変更に関しては値上げでも値下げでも周知されるべき。契約解除後の供給設備の撤去期間は特に認められている場合を除き法令上原則7日以内である。生活機器設備費用の料金への転嫁がないとすれば、そのコストは事業者が利益から捻出していることになるが、事業者側で実情が分かるのではないか。アンケート調査の年度間比較は大事ではあるが、回答者数に年度ごとのブレがあるので、この点をどう考えるか検討したい、と回答がありました。

 引き続き、料金透明化・取引適正化に関して事業者委員から以下のコメントがありました。アンケートで生活機器設備費用を料金に転嫁してないとする事業者が71.6%というのは高すぎる数字と感じる。仙台市内では基本料金2,400円でその明細は明らかにされていないのが実情だ。(宮城県 渡邉委員)。事業者も消費者負担を少なくする努力はしているが、不動産斡旋業者にも共通の認識をもってほしい。住宅オーナーや消費者に耳触りの良いことを言って、結果事業者にしわ寄せがくるケースがある。行政側からの働きかけでこのようなことがなくなるよう対応をお願いしたい。(福島県 小西委員)。
 さらに消費者委員からは次のような意見が続きました。生活機器設備は事業者が負担する場合は無償貸与、またオーナー負担の場合家賃に転嫁されているという理解であった。ガス代に転嫁されているときいて驚いている。LPガス関連機器以外の生活機器設備もガス代に転嫁されるのは問題である。(山形県 石塚委員)。集合住宅内でも入出居の関係で隣と料金が違ったりすると不公平感が出て問題だ。住宅オーナー、事業者、消費者間で十分説明、納得のいく状態をつくる必要がある。(福島県 田崎委員)。
 これに対しエネ庁家田課長補佐から、生活機器設備費用の料金転嫁は法令上認められている。他方、契約時や料金請求時に計算根拠がきちんと説明されなければならない。また、LPガスに関係のない生活機器設備の分まで料金転嫁されるのは消費者として違和感もあろう。この点、どこまでの料金負担が望ましいか等全国LPガス協会でも意見をまとめてもらい、国交省、公正取引委員会等にも働きかけたい、と述べました。
 吉田教授からは事業者が料金の説明をするにあたり、中小事業者も利用できるような共通の標準フォーマットがあれば問題解決の一助となるのではないか、との指摘がありました。

 一昨年から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経済産業局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、東北経済産業局(資源エネルギー・環境部 資源・燃料課 平山課長)から以下のような発表がありました。自治体との連携については、平成30年度は青森県、南東北(宮城県、山形県、福島県)、令和元年度は秋田県と立入検査等に関し情報交換の会をもった。さらに、令和元年度は「北海道・東北六県高圧ガス及び液化石油ガスブロック会議(関東北保安監督部東北支部主催)」、「業務主任者保安研修会(東北液化石油ガス保安協会主催)」に参加し、立入検査状況の把握、料金透明化・取引適正化にかかる関係法令等について説明の機会をもった。令和2年度はコロナ感染の状況を勘案し今後の活動方針を検討中である、とのことです。


テーマⅡ.新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等
  議論の導入として吉田教授より今回のコロナ感染の状況を社会的、経済的見地から幅広く分析された説明がありました。
 コロナ感染下の実情について事業者委員からは次のような発言がありました。業務用需要は若干ダウンしているが、家庭用需要に大きな変化はない。コロナ感染下で点検業務に支障をきたしているケースが散見される。4カ月の点検延長制度がある一方書面等でも柔軟に対応しているが、業務には若干支障がでている。(青森県 木戸委員)。需要量に大きな増減はない。昨今災害が多発しておりライフラインとしてのLPガスの安定供給に万全を期しているが、コロナ感染下の避難所での避難方法とそれに伴うLPガス供給のスキルが十分検討されておらず課題である。(岩手県 菊池委員)。今年は保安講習会を9回実施し、都度LPガスの安定供給に対する社会的責任を徹底してきた。また、今後コロナ感染下におけるBCP(事業継続計画)に関する講演会の開催も予定されている。県内の事業者からは感染者は出ていない。(宮城県 渡邉委員)。他県の事業者と同様の対策を講じている。個別には社内コロナ対策を徹底し、時差出勤や消費者との面談時の諸注意、社員同士の密を避けるなど企業として工夫している。(秋田県 高橋委員)。3~4月の需要量がやや落ちたようだ。東北での感染者は比較的少ないが、今後の感染拡大に備えてしっかり準備していきたい。(山形県 鈴木委員)。県平均で4~6月の売り上げは3%ダウンであった。業務用主力の販売店では20~30%ダウンの店もある。顧客への感染防止のため訪問時の服装装備、訪問後の消毒等対策は徹底している。通常の業務に戻る明確な基準がない点が事業者として苦しいところである。(福島県 小西委員)。


テーマⅢ.LPガスの災害対応能力について
 宮城県の加藤委員から事前質問があり、関連してエネ庁家田課長補佐が次のように取り纏めて回答しました。LPガスの保存期間については、LPガスは半永久的に劣化しないといえるが、他方容器という面からするとバルク容器なら20年、シリンダーは5~6年で検査が要求される。その間にLPガス自体が劣化、変質したという情報はない。また、災害対応に関する国の支援としては災害用バルク容器を使ったLPガスの発電機やGHP(ガスヒートポンプ)の導入に関し補助金制度を設けており、今年度は補正予算分を含め40億円超の財源がある。次年度以降も引き続き補助金を確保していきたい。学校へのLPガス空調設備の導入については、文科省としてまずは一般教室の冷暖房化が優先されており、体育館への導入は経産省や総務省の予算が充てられる。他方、都市ガス地域への災害に強いLPガス関連機器設備導入が各自治体の判断で進んでいるところもある。

 消費者委員からは以下の発言がありました。災害が多発しており、停電が心配だ。ぜひ全地区の避難所にLPガス対応の発電機、災害対応設備の導入をお願いしたい。(秋田県 山野内委員)。避難所へのLPガス供給を事業者が担っていると知った次第だが、自治体側の対応体制等はどんな具合か。(宮城県 加藤委員)。東日本大震災の際は、翌日からLPガスで炊き出しを行った。軒下在庫は1か月分ほどあり、LPガスは災害時の貴重なエネルギーである。停電時にもLPガスの発電が効果的である。また、コロナ感染下での避難所の運営や対応が課題であり、防災マップの見直し等すすめているところである。(岩手県 千葉委員)。災害バルクの導入は安心につながる。災害バルクの設置されている施設を広報すべきだ。災害対応をLPガスに偏重せず、他燃料との代替・補完体制をとることが望ましい。(福島県 田崎委員)。事業者にはオール電化の家庭にもLPガスのメリットが伝わるような営業活動をお願いしたい。(山形県 石塚委員)。

 事業者委員、自治体からは以下の発言があった。県のLPガス協会は全市町村と災害支援協定を結んでいる。自治体、消費者と一体で災害時におけるLPガスの重要性を認識し、避難所への空調、GHP、発電機導入実績を積み上げてきている。(秋田県 高橋委員)。県のLPガス協会からは病院、教育機関等への導入の働きかけを受けている。(山形県 自治体)。

 吉田教授からはLPガスの災害対応設備の導入事例の紹介がありました。行政庁舎、病院、福祉施設、学校・幼稚園等々に導入されている。福祉施設への導入は結構多いが、学校は教室、体育館で監督官庁が異なるなど制度上複雑で、その必要性のわりには少ないのではないか。また、東北は震災があったせいもあろうが、災害バルク導入実績では先進地域だ。消費者も一緒になって、LPガスの災害時のメリットを全国に発信してほしい、とのコメントがありました。
 エネ庁家田課長補佐からは、北海道胆振東部地震や最近の台風による停電を経験し、避難できない人々をかかえる団体の災害対応への意識が向上している。自治体のかかわる施設には災害バルクとLPガス発電機が必要であり、県のLPガス協会ばかりでなく消費者からもその必要性を自治体に訴えてほしい旨の発言がありました。


(3)総括コメント
               経済産業省 資源エネルギー庁 石油流通課 家田 和幸 課長補佐
 今回のように立場の違う関係者が一堂に会し意見交換、共通認識をもつことは大切である。消費者委員の方々は今回得た情報やLPガスの有効性、事業者の安定供給への努力等を一般消費者にも発信してもらいたい、とコメントし懇談会を締めくくりました。


(広報室/中村)