LPGC WEB通信  Vol.73  2020.06.10発行 

世界LPガス協会ロックオール氏の国際セミナー2020の講演原稿
 今年のLPガス国際セミナーは諸般の事情からやむを得ず中止とさせていただきましたが、世界LPガス協会CEOジェームズ・ロックオール氏の講演資料につきましては、同氏より公開の許可を頂きましたので、今月号で公開致します。


世界LPガス協会CEO ジェームズ・ロックオール氏


“ The LPG Contribution to a Responsible Energy Future ”
「将来の責任あるエネルギーとしてのLPガスの貢献」
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<WLPGAのJames Rockall CEOのプレゼンテーション内容>
この度は東京を再訪出来た事を嬉しく思います。また今年の講演者として御招き頂き有難うございます。
1.題目スライド
今日の話は、今までとは視点を変えて、責任ある将来のエネルギーへのLPGの貢献についてお話ししたいと思います。これは、マーケットに特化したプレゼンではありませんし、将来の需給の予測をするわけでもありません。我々の分野に極めて重要であることと、おそらく貴方の将来に大きな影響を与えるであろうことを問題提起したいと思います。
今まさに世界的に知られている我々LPG産業への脅威(真のチャンスととらえるべきと思います)があります。

ここでビデオをご覧いただきたいと思います。


2.スライド2「グレタさんの演説」
私たちはあなたたちを注意深く見ている。それが、私のメッセージだ。
 こんなことは、完全に間違いだ。私はここに立っているべきではない。私は海の反対側で学校に戻っているべきだ。それなのにあなたたちは、私たち若者のところに希望を求めてやってくる。(そんなことが)よくもできるものだ。あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢と子ども時代を奪い去った。でも私は運が良い方だ。人々は苦しみ、死にかけ、生態系全体が崩壊しかけている。私たちは絶滅に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話だけ。何ということだ。
 過去三十年以上、科学は極めて明瞭であり続けた。必要な政策も解決策もまだ見当たらないのに、目を背け、ここに来て「十分やっている」なんてよくも言えるものだ。あなたたちは私たちの声を聞き、緊急性を理解したと言う。でもどれだけ悲しみと怒りを感じようと、私はそれを信じたくない。なぜなら、もし本当に状況を理解し、それでも座視し続けているとしたなら、あなたたちは悪だからだ。そんなことを信じられない。
 十年間で(温室効果ガスの)排出量を半減するというよくある考え方では、(気温上昇を)一・五度に抑えられる可能性が50%しかなく、人類が制御できない不可逆的な連鎖反応を引き起こす恐れがある。
 あなたたちは50%で満足かもしれない。でもこの数字は(後戻りできない変化が起こる)転換点のほか、(永久凍土が溶けることなどで温暖化が進む)ほとんどのフィードバック・ループ、有害な大気汚染による温暖化、公平性や気候の正義といった側面を考慮していない。この数字はあなたたちが空気中に出した何千億トンもの二酸化炭素(CО2)を、私たちの世代が、(現時点で)ほとんど存在していない技術で吸収することを当てにしている。だから、50%の危険性は私たちには全く受け入れられない。私たちはその結果と共に生きていかなければならない。
 地球の気温上昇を一・五度に抑える確率を67%にするには、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最善の見立てでは、二〇一八年一月一日時点で世界に残されたCО2排出許容量は四千二百億トンだった。現在では三千五百億トンを下回った。よくも従来通りの取り組みと技術的な解決策で何とかなるなんて装うことができたものだ。現状の排出レベルでは、残されたCО2排出許容量に八年半もたたずに達してしまう。
 現在、これらの数字に沿って作られた解決策や計画は全くない。なぜなら、これらの数字は都合が悪すぎるからだ。そしてあなたたちはまだ、このようなことを口にできるほど成熟していない。
 あなたたちには失望した。しかし若者たちはあなたたちの裏切り行為に気付き始めている。全ての未来世代の目はあなたたちに注がれている。私たちを失望させる選択をすれば、決して許さない。あなたたちを逃がさない。まさに今、ここに私たちは一線を引く。世界は目を覚ましつつある。変化が訪れようとしている。あなたたちが好むと好まざるとにかかわらず。
 ありがとう。
(ニューヨーク・共同)
出典: 東京新聞2019年9月25日 朝刊
―上映後
この女性、グレタさんはご存知の通り非常に発言力があり、影響力のあるグループの代表です。彼女を信じるか信じないかはあなた次第ですが、明らかなのは彼女を完全に無視することはできない、ということです。


3.スライド3
 LPGの特徴はクリアに他燃料と違い、独特な特性があるにもかかわらず、LPGは他の化石燃料と一緒くたにされるリスクがあります。
 我々はLPGがどんなに素晴らしい、どんなにクリーンな燃料で、我々が主張していることが正しいということのデータを持っています。

4.スライド4
 正しいことは重要ですが、それだけでは十分ではないときがあります。我々の世界は分極する事が増加しており、英国のブレグジットや米国の民主党と共和党の対立、また気候変動が増加しております。 他にも事実がある時、事実はもはや十分とはみなされず、専門家たちがいつも信頼できるとみなされない時、どんな信条も生き残ることができます。

5.スライド5
 我々は化石燃料を、それは多くのものに悪ですが、環境や生態系の破壊者であることを見てきました。皆様はこれら全てに合意できないかもしれません。あなたは気候変動を否定するかもしれないし、地球が平面と考えるかもしれません。

6.スライド6
 貴方が何を信じているかの問題ではなくて、貴方が対象としている聴衆が何を信じているかが問題であり、ますます、貴方が働く環境は他者に決定されるようになっています。

7.スライド7
-ビデオ上映
世界の国々や都市は、ガソリン及びディーゼル車を禁止しつつあります。
ロンドン 2030年、シュツッツガルト(ベンツの本拠地)2019年、スウェーデン2020年(旧式のディーゼル車禁止)、ブリュッセル2020年(旧式のディーゼル車禁止)、パリ2030年までにガソリン・ディーゼル車全廃、メキシコ市2025年、インド2030年(経済性が合えば)、アイルランド2030年、イスラエル2030年

ヒーティング・オイルを変更する国々は次の通りです。
ベルギー2035年(ボイラー用新ヒーティング・オイルを禁止)、ノルウェー2020年、
こうした動きの中、我々LPG業界は今まで以上に我々の声を聴いてもらう必要があります。

-スピーチ
日本は2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ表明を承認しました。
もちろん、LPGには大きな機会が有ります。世界のオートガス産業は2040年には倍増し、LPGが船舶燃料や発電用に使われ、アフリカの民生用需要がLPGに向かっていることをお伝えしました。
しかし、もしその好機を完全に実現したいのであれば、脅威についても注意を向ける必要があります。

8.スライド8
我々の持つ二つの選択肢は、今やるか、やらないかであります。

9.スライド9
我々はこの問題を将来に先送りするか、


10.スライド10
SOSを世界に伝えるかであります。
もしくは、我々が、即効性のあるスローガンやSMSといった今日の世界に力強く効果的な説得力のある新しいメッセージを作ることが出来ます。


11.スライド11
我々は、LPGの位置づけに関しての新しい戦略計画を作りました。それは受動的な問題ではなく、将来の責任あるエネルギーに向けての一つの解決策です。我々は受動的ではだめで、我々の将来が確保されることを期待しています。今こそアクションが必要です。我々は影響を与える必要があり、今まで通り信頼される必要があります。これに導くための、新しい3年間の戦略を持っています。

12.スライド12
我々の新しい計画は、3つの重要要素があります。LPGを将来のエネルギーの解決策とすること、責任ある事業の実践策を奨励すること、世界におけるLPGの需要増大を促進することです。

13.スライド13
我々の新しい使命は、3つあり、一つめは、将来のエネルギーへの挑戦の解決策としてLPGを提唱すること、二つめは有効で責任ある事業として支援すること、三つめは改革を奨励し、事業の成長を支援することです。この3つのゴールを我々の使命にしましょう。

14.スライド14
しかし、我々の計画は人々にそれを知らせることで初めて、効果的となります。我々は今すぐ我々のメッセージを伝えることが必要ですし、私が次にお話ししたいことです。

15. スライド15
我々は、世界中で一貫して適用できる鍵となるメッセージを連続して作り上げました。我々は、6つの影響のある分野に注目していて、健康、天候、経済、効率性、資源と未来に注目しています。そのうち3つに焦点を当てたいと思います。

16.スライド16
まずは、気候変動から始めたいと思います。世界の多くの地域で、気候変動は現在、他のことよりも多く、語られております。私は最近シドニーから戻ってきましたが、多くの人々は、間違いなくあの大規模森林火災は気候変動に関連していると思っています。

数か月前、3年毎に開催される世界エネルギー会議に出席するため、私はアブダビにおりました。世界のエネルギー産業のトップの演説は、エネルギーと気候変動のみでした。元BPのブラウン卿は、「世界は、今すぐに気候変動への適応するために、二酸化炭素の排出をコントロールする必要がある。」と述べられています。

UAEのエネルギー大臣は「2050年までにUAEでは、70%二酸化炭素の排出削減するために、エネルギーMIXで50%をクリーンエネルギーとする。」と発言されました。
EU大統領は、2050年までに欧州は世界で最初のカーボンニュートラルの大陸となる。」と宣言しました。
英国は主要国としては初めて2050年までに排出量ネットセロとする法案を可決しました。

しかし、幾つか望みはあります。EUの田園地帯の3分の2のエネルギーは高炭素の燃料が必要で、現実的には100%再生可能エネルギーに置き換えることが出来ません。EUはそれは「まだ転換期」であり、一部の人々を置き去りにすべきではない、と議論をしています。
EUにまたがるLPG企業「リキッドガスヨーロッパ」は汎用性とハイブリッド・ソリューションでカーボン抑制することを強調して、クリーンエネルギーのコストを最小化することがLPGとバイオLPGの役割であるというキャンペーンを行っています。
皆様と気候変動に関してのメッセージを共有させていただきます。

17.スライド17
-ビデオ上映
LPGの利点一覧
○健康
○気候
○経済発展と社会発展
○資源効率化
○効率化
○将来のエネルギー

LPGは気候変動と戦っています。現在炭素は固形・液体燃料に集中しております。LPGのCo2排出量は、ヒーティング・オイルより20%低く、石炭より50%低くなっております。オートガス車は、CO2排出が石油に比べ▲10~▲20%低く、NOXも低くなっています。何といってもLPGは世界中で入手可能です。
また、LPGはハイブリッド仕様で電気モーターと一緒に使用され、Co2排出も石油と比べ低く、「すす」発生しません。「すす」は地球温暖化に20%影響していると考えられています。またLPGは局所的な分散型エネルギー発電の理想的なパートナーです。
LPGはデリバード(配達された)の効率的燃料です。

18.スライド18
炭素削減は絵空事ではなく、我々は、健康について話す必要があります。大気質と気候変動は、コインの表裏であるものの、気候変動は長期的問題ですが、大気質は直ぐに対応すべき問題です。「未来のために、今日を犠牲にするな」これは、世界の発展途上地域の多くに非常に関連していることです。質の悪い室内の大気が、年間4.3百万人の命を奪っています。LPGへの転換でこれを防ぐことが出来ます。例えば、WLPGAでは、2030年までに10億の人々がLPGへ転換する事で、年間に1百万人の命が救えると考えています。これらが世界規模でのLPGの話ですが、これらは過去必要であったにもかかわらず、できていなかったことです。

家庭用に近いことが韓国で起きています。韓国は世界第2のオートガス市場です。市場規模は減少しつつありますが。韓国では昨年オートガス市場を拡大する法案が可決され、それによると今から2030年までの間に40%市場が大きくなります。韓国LPG協会のロビー活動の成果で、大気質が改善されました。そうです、この議論は有効なのです。

19.スライド19
ここで慣行に関する動画を見ていただきたいと思います。
-ビデオ上映

現在、30億人が裸火や質素なコンロで調理していて、バイオマス、灯油、石炭といった燃料を使っており、室内の空気汚染は深刻なものとなっています。
現在4百万人が若年死しており、その数はマラリアや結核、HIVでなくなる方々よりも多くなっております。
室内のばい煙は、通常の2~3倍の慢性閉塞性肺疾患を引き起こすリスクがあります。

薪や石炭は、LPGの150倍のCOを発生します。
野外の汚染に関しては、2014年世界人口の92%がWHOの大気質ガイドラインのレベルに合っていない状況です。

2016年に世界の都市部と田園地帯での大気汚染は、3百万人の若年死の原因となっております。
昨今オートガスのバスとタクシーでの使用が呼びかけられ、世界でのオートガス車台数は25百万台となっており、石油代替燃料としては最も多い数です。
途上国でのLPG使用は、人々の生活と環境に大きなインパクトを与えました。

20.スライド20
私が申し上げたい3つ目のエリアは、未来です。一つの産業として、我々は過去を見がちです。それは過去を祝福し成功を認識することです。しかし、動きが早く変化が激しい現代で、若い人たちが新しい機会に出会うことができるように、我々はもっと先を見通すことが必要です。我々の産業も構造変化が必要な時に来ています。

LPGは、化石燃料を代表するエネルギーではありません。我々は、クリーンなエネルギーサービス、それは価値あるサービスと可用性、価格と積極的に環境のインパクトをお客様へ提供する産業です。これは、今現在、現在のLPG同様に再生可能プロパンを提供することに合致します。業界はこれに投資すべきであり、これについて議論をすべきであると考えております。

我々はどうやって、我々の産業が時代遅れとなっている、との理解を変えることができるか、
また我々はお爺ちゃんから受け継いだLPGビジネスを誇りに思っているが、孫の代には果たしてどうなっているか、を考える必要があります。
これが三つ目で、最後のアニメーションです。

21.スライド21
-ビデオ上映
 LPGは、都市部でも田園地帯でも持続可能な未来のエネルギーです。離島や山岳地帯、 
遠隔地域で、工場やビジネス、家庭でとあらゆる分野・場所で効率的なエネルギーです。
 LPGは固形燃料に比べ、より低いコストで使用出来る燃料であり、時には固形燃料から
天然ガスへの転換する際に橋渡しの存在となることもあります。
LPGは将来のクリーンエネルギーとして、コーナーストーンの存在です。

22.スライド22
我々は、我々の産業の歴史の重要な瞬間に立っております。各国政府とまた社会そのものとますます、いやいやながら化石燃料の将来を見ているが、幾つかのマーケットでは不適切となるリスクを冒しています。もし我々が、これまでしてきたように、LNG産業やディーゼル産業、電力産業のように議論をしたいのであれば、再生可能LPGが、将来の供給量が確実である事を提示できるようにする必要があります。

23.スライド23
これが、我々LPG業界が化学用途需要以外の50%が、2050年までに再生可能製品とする理由です。

24.スライド24
このプロジェクトはまだ開始後2ヶ月しか経っていませんが、再生可能LPG「rLPG」の合成は10以上のプロセスが確認できており、130近くのプロジェクトや200のパートナー候補がおります。我々は、世界の輪が業界の有力な会社に支えられた、世界的なワーキンググループを形成しました。もし皆様の会社が未だWLPGAの会員でないのであれば、是非加盟頂き、我々の努力をサポートしていただきたいと思います。

25.スライド25
ここで、将来の責任あるエネルギーの一つであるLPGの貢献についての考えをまとめさせていただきます。

26.スライド26
自動車産業が違う市場で違う方法でエネルギー転換を行ってきた例から類推します。

27.スライド27
最後に開発された市場と大きな田園地域では、ギアはローですが、消費者の燃料をバイオマスから、クリーンな燃焼燃料や健康の改善、気候や社会経済の発展へ変えることが出来ます。

28.スライド28
ギアをセカンドへ変えると、我々は液体燃料からガスへ替えることに気づきます。オートガス市場は大きな機会ですが、それだけでなく、商業用の暖房や発電、船舶・海洋用途他大きな市場があります。

29.スライド29
サードギアで、我々はいくつかの最も発達した市場にインパクトを与え始めます。再生可能エネルギーと効率よく、低いカーボン・ハイブリッドのシステム、トヨタのJPNタクシーのようなものを創造します。

30.スライド30
最後にトップギアに入ると、再生可能LPGにより、可搬性や高エネルギー効率、ほぼゼロの微粒子(NEAR-ZERO PARTICULATES)が、ゼロカーボンにといったLPGの伝統的な利点が、消費者を元気づけることができます。

31.スライド31
最後に、とても重要なことですが、今年ドバイで第33回世界LPGフォーラムを召集します。今回は我々の新しいコンセプト、LPGフォーラムを中心として、LPG週間(産ガス国から消費者を結ぶ完全なLPGのサプライチェーン)で討論と議論を多くの行事とアクティビティとともに実施します。議題をご覧になって、参加し、展示し、スポンサーになって、あるいは単に訪問するだけでも結構です。お見逃しなく。ご清聴ありがとうございました。
 以上 
 (調査研究部 田中)