LPGC WEB通信  Vol.71 2020.02.10発行 

令和元年度LPガス懇談会を振り返って

 LPガス懇談会は、資源エネルギー庁の委託事業「令和元年度石油ガス流通・販売業経営実態調査」の一環として、LPガス取引適正化の観点からその諸問題について、消費者団体、事業者団体、行政、学識経験者が一堂に会し意見交換・議論・提言等を行うことで、関係者相互の理解を深め、LPガス産業の健全な発展に資することを目的とする会議です。
本年度も次の通り全国9箇所の経済産業局管内主要都市にて開催され、延べ339名が出席しました。

(令和元年度LPガス懇談会一覧)


(令和元年度LPガス懇談会 出席者数)



主なポイント
(1)新企画と効果
 各委員による意見表明や報告を基に双方向の議論展開に発展するよう、進め方や議事構成を見直す等懇談会運営方法について毎年改善を加えていますが、本年度の学識経験者委員は各開催地方の地元大学の教授に就任いただき、これまでの事務局による議事進行から各教授にお願いすることとしました。その結果、各地方に馴染み深く既成概念に捕らわれない進行により、これまで以上にスムーズで自由闊達な意見交換となり、議論が深まりました。
 またペーパーレス化を図るべく、会議資料を収めたタブレット端末を会議席に配布して閲覧いただきました。タブレット端末は初めてという一部の消費者委員からは、初めは操作に戸惑ったがすぐに慣れ、カラー表示でわかり易く、思いのほか使い勝手が良かったとのご意見をいただきました。災害バルクPR用の動画も、スクリーンではなく手許のタブレット端末で鑑賞いただきました。今後の会議運営に、積極的に取り入れていきたいと思います。

(2)委員の変更
 消費者委員は、例年各都道府県より消費者団体を代表して就任いただいていますが、必ずしも毎年重任ではなく、設定テーマと方向性に合致した方への変更、また消費者団体や本人の都合による変更等で、本年度は全国で約4割の20名が昨年度から入れ替わることとなりました。
 また学識経験者委員は、懇談会開催地域に根差した地元大学の教授にご就任いただくこととし、北海道、中部、四国の各地方で新たにご就任いただきました。

(3)各地区共通のテーマ設定及び議事次第・進め方
 「LPガスの料金透明化・取引適正化」については、平成29年~30年に実施された液石法省令等の改正及びガイドラインの制定・改正により業界の取り組みが進んできたものの、未だ不十分との意見が多く、これらの現状と課題について本年度も継続的に議論すべきとして前半のテーマに挙げました。
 また後半は「LPガスの災害対応能力」をテーマに、これまで多発した震災や台風・豪雨豪雪等の自然災害及び広域停電において被災地で貢献したLPガスの災害対応力や、非常時及び常用の必要性について再認識するとともに、本年度予算が大きく増額となったLPガス災害バルク導入補助金のPRと活用促進等を取り上げました。

(議事次第)
①開会挨拶 各経済産業局 資源エネルギー環境部
②懇談   議事進行:各地方学識経験者委員
 テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」
   ・プレゼンテーション:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課
   ・消費者委員からの説明:各地方代表消費者委員
   ・経済産業局管内の行政等の連携状況及び取引適正化に関する検査維持の状況説明:
    各地方経済産業局及び代表自治体
   ・平成30年度流通経営調査と令和元年度調査の概要説明:エルピーガス振興センター
   ・各事業者委員による取組状況の説明、各消費者委員による意見発出及び意見交換

 テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」
   ・プレゼンテーション:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課
   ・災害バルク補助金の交付状況と広報戦略説明:エルピーガス振興センター
   ・各事業者委員による取組状況の説明、各消費者委員による意見発出及び意見交換
③総括   学識経験者委員


(進め方)
 意見交換の進め方は、発表や説明及び意見発出が経済産業省、経済産業局、自治体、消費者委員、事業者委員ごとに、また県ごとに偏らないよう極力相互のやり取りを重視しながら、予め大まかな流れは事務局にて設定し、当日の運びは議事進行の学識経験者委員に、全員からの意見発出と自由で活発な意見交換重視を前提にお任せしました。
 学識経験者委員は、前述の新任3地方・3名の大学教授を含め、専門分野は、経済・商業、法律、情報科学、教育、社会工学等多方面に亙り、それぞれの視点から注釈を加えながらの進行により、ご出席各位はより一層理解を深めながらの意見交換となりました。
 また、消費者委員からは、代表説明者を除き質問・意見票等の事前資料の提出を求めず、当日テーマと議論内容に沿い自由にご意見・ご質問をお出しいただくようお願いしました。

(4)要旨について
 テーマⅠ.では、資源エネルギー庁石油流通課からの料金透明化・取引適正化の経緯と現状についてのプレゼンテーションに続き、消費者委員より説明がありました。所属の消費者団体が独自に実施する、LPガス料金についての調査によると、販売事業者の取り組みが進み改善に向かいつつあるものの不十分な部分が一部あり、LPガス業界にはエネルギー自由化のなかで料金透明化・取引適正化をさらに進めてほしいとの意見が多くあったとの内容でした。
 続く経済産業局からの説明では、管内自治体や事業者団体と連携しながら取引適正化に向け取り組む状況が示されました。これは一昨年、総務省北海道管区行政評価局による道内の調査でLPガス取引適正化が不十分との結果となったことから、北海道経済産業局、道内自治体、販売事業者団体の連携強化の必要性が示され、北海道経済産業局が中心となって取り組んだことが全国的な動きとなり、各地方経済産業局も同様の展開となった背景があります。
 さらに、都道府県の各液石法担当部署からも同様に、地域の連携下における指導状況をご説明いただきました。
 当センターからは、昨年度の資源エネルギー庁委託事業「流通・販売業経営実態調査」の結果を報告するとともに、臨席の事業者委員に本年度の継続調査に対する協力要請を行いました。
 これらの説明や意見を受け、事業者委員による取り組み状況を含め、自由な意見交換が展開されました。

 テーマ2.では、資源エネルギー庁石油流通課よりLPガスの災害対応能力の強さについてプレゼンテーションがあり、続いて当センターよりLPガス災害バルク導入補助金についての概要と補助金によるこれまでの導入状況、及び本年度の予算に対する応募の進捗状況について報告するとともに、災害時におけるLPガスの必要性や実効性への理解と今後の普及促進を目的として実施した、展示会や専用WEBサイト、導入事例動画等の広報手段を紹介しました。
 一部の地方では、経済産業局や自治体よりLPガス災害対応について説明がありました。
この後、消費者委員からのLPガスによる災害対応への期待と、事業者委員による取り組み状況について、自由な意見交換となりました。



全懇談会を通して
 これまでのWEB通信にて各地方懇談会毎の概要をご案内した通り、「料金透明化・取引適正化」の問題について、国はこれまで法省令改正・ガイドライン制定及び改正を進めましたが、事業者委員からは進む改善もあるが苦慮する一面も報告されました。また消費者委員からの意見表明からは、大部分の販売事業者が料金公表を実施したこと等評価できる進化はあるが、集合住宅における適正化等で不十分な点が残っているとの指摘があり、引き続き本件における関係各位の努力と進捗確認が必要であるとの認識を共有することとなりました。
 一方で、多発した大災害において途絶や大きな二次災害がなく、発電や空調分野における大きな貢献によりLPガスの災害に対する対応力と強靭性があらためて評価され、本年度のLPガス災害バルク導入補助金が増強され、来年度はさらなる増額が予定されていますが、より一層PRに努め、導入を促進すべきとの結論となりました。
 最後に、元来の優位なエネルギー特性に加え、平時は信頼される料金・取引関係をベースに安心・安全・快適な生活を支え、有事にあってもそれを継続できる、この環境を整えることで、LPガスは常備すべきエネルギーであるとの認識を高め業界の発展につなげてほしいとの総括コメントが、多くの学識経験者からありました。


事後アンケートの結果
今後の参考とすべく、懇談会開催効果及び課題について出席者に意見を求め、後日提出いただきました。
(設問と回答結果の抜粋)
① 懇談会の満足度について(5段階)
 結果

② 懇談会で得たこと、良かったこと
 結果(主な意見を集約表記)
○消費者、事業者、行政夫々の立場からの生の情報・意見を聴け、共有できた。
○消費者委員意見は必ずしも均一ではなく、様々な意見もあることがわかった。
○大学教授によるスムーズで意見し易い進行、中立的な総括が良かった。
○自由で忌憚ない討議、かつ議論が噛み合い深まった。
○事業者を指導すべき点や課題への対応が明確となった。(自治体)
○他府県と同様の状況、または違いが良く分かった。

③ 懇談会で不要または改善が必要だと感じたこと
 結果(主な意見を集約表記)
  • 多かった意見
    ●自治体の発言が少ない。
    ●意見交換の時間が足りない。
    ●料金透明化・取引適正化の議論は毎回同様の繰り返し、縮小化しては?
  • その他挙がった意見
    〇消費者委員からの業界に対する要望・課題を提示に対し事業者が回答する進め方を希望する
    〇消費者委員の現状把握レベルがまちまち
    〇委員の若返りに期待

④ テーマ設定での議論展開について
 結果

⑤ ペーパーレス及びタブレット端末操作に関して
 結果
(多かった意見)
〇非常に良かった、全く問題ない、ペーパーレス及びタブレット端末は賛成。
〇使い慣れているので問題なかった。今後も継続してほしい。
○操作は初めてだったがすぐに慣れ、不明な点は補助があり問題なく使えた。
○事前配布のデータで必要箇所のみ印刷した。膨大な資料を持ち帰る必要がなかった。
○グラフ等カラーで確認でき、小さい字も拡大できるので見易かった。
(その他意見)
●慣れているのでペーパーが良い。
●書き込みができない。メモ用紙の配布を希望する。
●ペーパーも併用願いたい。


今後の課題
 本年度の懇談会では、前述のアンケート結果にもあるとおり、得られた効果も多くありましたが、課題も浮き彫りにされました。
 懇談会の果たすべき役割にはさらなる期待が年々高まっており、次年度も当事業を受託すべく準備する中で、LPガス政策と時流に沿ったテーマ設定は勿論、懇談会運営上の次の課題について引き続き検討すべきと考えています。
  1. 国の政策浸透は地方毎の取り組みが不可欠であり、各経済産業局、自治体、事業者による業界動向の進捗確認
  2. 1に必要な情報提供者、プレゼンターの選定
  3. 建設的に意見し、かつ影響力のある消費者委員の選定
 これまで通り消費者・事業者・行政が一体となり、より一層充実した意見交換により、各地方LPガス懇談会がLPガス政策の早期浸透への足掛かりとなって、健全なLPガス産業の発展に寄与するよう企画して参ります。

【ご参考】本年度各地方懇談会の概要(LPGC WEB通信掲載順)
(北関東地方)
https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201909contents2.html

(南関東地方・東北地方)
https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201910contents2.html

(近畿地方)
https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201911contents4_1.html

(北海道地方)
https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201911contents4_2.html

(四国地方)
https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201912contents3_1.html

(中部地方)
https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201912contents3_2.html

(中国地方)
https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202001contents3_1.html

(九州・沖縄地方)
https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/202001contents3_2.html
(広報室/野村 晃久)