LPGC WEB通信 Vol.69 2019.12.10発行
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WLPGフォーラム アムステルダム大会の報告(後編) |
第32回WLPGフォーラム アムステルダム大会報告 |
今年のWLPGフォーラムが9月25日(水)から26日(木)にオランダの首都アムステルダムで「ENERGY IN TRANSITION ( 過渡期にあるエネルギー ) 」をテーマに開催されました。フォーラム及び展示会場の参加者は108ヶ国から2,028名で、昨年のヒューストン大会の81ヵ国、1,251名から大幅に増えました。尚、今年の大会には日本から32名の方が参加されました。 また、展示会には145社(昨年は93社)が参加し、日本からはI・T・O㈱が出展されました。 第33回WLPGフォーラムは2020年の11月2日(月)~4日(水)にアラブ首長国連邦のドゥバイで「Bringing Energy to Life」をテーマに開催されます。 今月号ではアムステルダム・フォーラムの2日目の9月26日(木)の内容をお届けします。 |
<第32回世界LPGフォーラム アムステルダム大会> 会場 :「RAIアムステルダム」コンベンションセンター (RAI Amsterdam) 日 程: 2019年9月25日(水)~26日(木) 場 所: オランダ王国アムステルダム市 テーマ: ENERGY IN TRANSITION (過渡期にあるエネルギー) |
<フォーラム内容> |
9月26日(木) 於;「RAIアムステルダム」 |
<<世界LPGフォーラム>> |
9:30-10:45 セッション3:デジタル世界のLPG 進行:コー・モレナール eXQuo社 Mr. Cor Molenaar, CEO, eXQuo このセッションではまず各パネラーにデジタルとビジネスに関し意見をお願いします。 クロニス・カパリディス、Hudson Analytix/Hudson Cyber社 Mr. Chronis Kapalidis, Europe Representative, Hudson Analytix, Hudson Cyber この分野で重要なのは、一に有効性、二にデザイン性、三にセキュリティである。それにくわえスタッフの教育と消費者への対応が大事なポイントである。 マティアス・モスターツ、Linde社 Mr. Matias Mostertz, Digital Accelerator Lead, Linde 同感である。重要なのはスタッフのトレーニングとプラットフォームの有効性、並びに環境に対する配慮である。また、テクノロジーの速い変化についていくことと、顧客の要望に応えることも重要である。 オーレリオ・フェレイラ、Ultragaz社 Mr. Aurelio Ferreira, Director Development & Marketing, Ultragaz 消費・消費者に関する情報データを収集し、それをデジタル化する。環境への対応も必要。様々なアイデアをスクリーニングし顧客の要望に対応することが大事である。 マヌエラ・クルル・マンシネリ、Krull Smart Solutions社 Ms. Manuela Krull-Mancinelli, Digital Transformation & Innovation Manager, Krull Smart Solutions 皆さんのいったことにくわえて、デジタル・ツールを持つこと、デジタルを活用したモデルを作成することがポイントである。 アンドレ・ピメンテル、Anova社 Mr. Andre Pimentel, Head of Sales & Marketing, Anova 重要なのはオペレーションの効率性であり、推進する際の効率性である。それには基準モデルを作り、マネジメントの対応力が必要である。 カパリディス この分野で成功するには経営のトップから始めること。まず準備して、 リスク評価を行い、問題なければ採用し、事業の進展状況をみて修正することが必要である。 モスターツ 高業績を上げるには、戦略でもなくロードマップでもなく、まず実行すること( just do it )である。 フェレイラ 顧客には十分な経験があるので、その意向を尊重すること。 ピメンテル まずはビジネスモデルを定義し、評価し、経営者がチェックすること。 進行:コー・モレナール 次にバイオLPGを浸透させるために必要なことをお聴きしたい。 カパリディス 重要なのは、エンドユーザーのニーズを把握すること、コストをミニマイズすること、サプライチェーンを構築すること。 モスターツ B to C。全ての顧客が必要と考えている。顧客のニーズを的確に把握すること、それは低炭素のLPGを買いたいのではなく、環境に有効なエネルギーを買いたいという希望である。顧客の変化についていくこと。 マンシネリ ディストリビューションモデルを明確にすること。マシンtoマシンの世界である。 進行:コー・モレナール それではデジタルとビジネスについてポイントを要約してください。 ピメンテル 新しいコミュニケーションを構築すること。この分野は新しいテクノロジーが適用されるビジネスであり、ビジネスモデルを販売する形態である。ユーザー側をコントロールするテクノロジーが必要である。 カパリディス 顧客の動きを把握すること、それにはコミュニケーションが重要である。どこにリモートビジネスのエリアがあるか掴むこと。迅速な対応が必要である。リスクアセスメントも大事。 モスターツ 顧客のニーズを的確に把握すること、それはLPGを買いたいのではなく、環境に有効なエネルギーを買いたいという希望である。顧客の変化についていくこと。 マンシネリ 二つのイノベーションがあり、開示するイノベーションと非開示のイノベーション。競争相手を意識すること。 |
11:15-12:30 セッション4:コミュニケーション;受動的から積極的に 進行:タムシン・ランキン Amtrol-Alfa社 Ms. Tamsin Rankin, Founder andManaging Director, Amtrol-Alfa ジャン・スマイルド、Red Bull社 Mr. Jan Smilde, General Manager, Red Bull 「Giving Wings」 企業のブランドイメージをポジティブなイメージとして訴求すること。最近のライフスタイルに合わせて企業をどう変えるか、それをどう伝えていくか、伝える方法をどう変えていくかを考えること。ポイントは自分のメッセージをステークホルダーにどう熱く伝えていくか。核となるものに戻り、関連する製品と企業イメージを考える。受け入れる側のイメージを大事にして伝えることである。 ルーシー・クック、UKLPG社 Ms Lucy Cook, Communications Manager, UKLPG 「会話をリードする;衝撃的なコミュニケーションにおける有効なコンテンツの重要性」 コミュニケーションには、積極的コミュニケーションと受動的コミュニケーションの2種類ある。積極的コミュニケーションは、メディアの興味を集めることであり、受動的は出来事が起きた時に対応する(いかにダメージを小さくするか) コミュニケーションであり反応型である。積極的コミュニケーションの成功事例をみると、メディアを通じた訴求であり、コンテンツが王道である。リサーチ分析によると消費者の購入の70%はデジタルコンテンツを通じて行われたとの調査結果である。 気候変動対応として英国LPG協会の例を上げると、流れは「化石燃料から脱せざるをえない」→「バイオLPGに行かざるをえない」→「積極的なロビー活動が必要」となる。そこでコミュニケーションとカンバセーションを、どうはかっていくかが大事になってくる。LPGの名称も変更した。PropaneとPetroleumには汚いとのイメージがあるようで、Clean Liquid Gasを使うようにした。今は“LPG産業は2040年までにバイオLPGに替える”ことを訴えている。様々な機会にツールを用いてビジョンを示すことにより、多くのインパクトを与えるようにしている。引き続き、このビジョンのキャンペーンを続けていく。 ワンジュク・マンヤラ、PIEA Ms. Wanjuku Manyara, General Manager, PIEA 「構造化された共有コミュニケーション戦略」 LPGが環境によいとのプロモーションを行っている。クリーンなエネルギーを使うことが消費者にとってよいことであり、LPGがクリーンで安全なエネルギーであることを訴えている。政府から枠組みが提示され、入手しやすいことと、ブランドが信用されるように投資することが重要である。また、事故が起きたときの原因分析と対応も必要である。LPG消費をどうやって増やすのか、競合相手のシリンダーを使わせない戦術もある。シリンダーのブランドラベルを張り替えるという話もあるが、そういう違法性は排除する。消費者に次のアクションを取らせるためには何をやるかが大事である。まず、消費者に伝えるべきこと、例えば気候変動対応としてクリーンなエネルギーを使うことや安全性を訴えることが重要である。基準/規則といった法律とのコラボも大事である。 アブドゥルカリム・アル・ヌヤイディ、Gasco Saudi社 Dr. Abdulkarim Al Nujaidi, CEO, Gasco Saudi 「転換におけるコミュニケーションの管理」 ガスコ社は1963年に設立されたLPG販売会社で、サウジ唯一の事業者である。 ガスコ社の取組を紹介する。転換の様相をビジネスととらえ、目標とする聴衆とコミュニケーションをとる。顧客とのコミュニケーションは、積極的コミュニケーションと受動的コミュニケーションの両方をおこなう。積極的コミュニケーションは社会への発表であり、受動的コミュニケーションはそれぞれの顧客に向けるものである。また、ガスコ社では、積極的コミュニケーションとしてブランド大使システムを導入している。顧客にガスコ社のブランド大使になってもらい、購入とともにガスコ社のブランドの拡大を担ってもらうシステム。また事業のパートナーを対象にしたコミュニケーションも大事である。過去は受動的コミュニケーションの方が効果あったが、今後は積極的コミュニケーションが重要である。 進行:ランキン 脱炭素社会にむけてLPG業界がとるべきコミュニケーションについて聴きたい。 クック LPGを、自信をもってどう伝えるかが大事である。自信をもって、2040年までにバイオLPGにすることを、熱意をもって確実に伝えることである。 マンヤラ 現状の状況を政府にと消費者にきちんと伝えること。LPGが環境によいことを確実に伝えることが解決になる。 アル・ヌヤイディ コミュニケーションキャンペーンでは、積極的コミュニケーションが将来的に有効である。消費者に便益であること、安全であることを伝えることが重要である。消費者の視点にたって、何を訴求していくかを見極めることが必要である。 |
14:15-15:30 パワー・プレイ パワー・プレイでは3つのグループに分かれ、以下のテーマで討論されました。それぞれの討論の概略を報告します。 1. LPGを新しい船舶代替燃料にする=40名参加 2. 安全に興味をもたせる=17名参加 3. バイオLPGを新しいレベルにする=70名参加 1. LPG船舶燃料 ・LPG燃料船の最初の6隻が来年就航する。 ・理論上は全ての船舶でLPGを燃料に使える。 ・小型船舶LPGエンジンであれば、既に入手可能である。 ・メリットがあるものの、LPGは危険であるというイメージを払拭する必要がある。 ・LPGは入手が容易で、扱いやすく、サルファ-がなく、NOxは20%低い、効率的なエネルギーであることをうたった、普及のロードマップを作る。 ・懸念は、船から船へ供給する給油技術が研究中であること。業界誌で宣伝するべきである。 ・船員教育にLPG課程を設けるべき。 ・LPGは既にインフラが整備されており、コストも安く環境に優しいエネルギーであることを宣伝するべき。 結論は、海運でLPGは未来の燃料である。 2. 安全 ・安全の確保は重要である。 ・スマートデバイスを活用して安全を確保する。 ・安全確認を従業員のみで済ませるのではなく、確認したことを報告させることにインセンティブを与えるとよい。 結論は、安全の確保にゲーム的な要素を取り入れると効果があり、デジタル化が安全性を改善する。 3. バイオLPG ・再生エネルギーが次のレベルである。廃棄物からLPGを作ることはプロセスができたが、量の確保が困難である。 ・バイオLPGの事業化は簡単ではない。多くの実証プラントが失敗し、最悪のケースとしては、事業化に成功したときには既に世の中からLPGが消えていた事態となるかもしれない。 ・現在バイオLPGを副産物として生産している製造者に、LPG業界がパートナーとなることが必要である。 ・原料としては家庭ゴミが有望である。 ・できるだけ早くバイオLPGの生産体制を作ることに参加者全員が同意した。 ・バイオLPGの生産コストがLPGより高くなることは間違いなく、それが開発の進まない原因の一つで。 ・名称についても様々な議論があった。 結論は、バイオLPGのビジネスモデルがLPGと競合することが懸念であるが、LPG業界はそれを覚悟してバイオLPGに取り組むべきである。 |
15:45-16:45 変遷から目的地に:未来には何があるのか? 進行:サミュエル・モーバンク、 欧州LPG協会 Mr Samuel Maubank, CEO, Liquid Gas Europe サンチャゴ・ペレス、Gasliquados社 Mr. Santiago Perez, General Director, Gasliquados EUの中で2050年までにCO2排出量を削減することが課題。解決策を見つける中で、LPGの役割を見極める。欧州のGreen Dealであらためて感じたのは、LPGは移行期にあるが、どうやって解決策を見つけるかが課題であるものの、移行期であることは機会があることでもある。LPGについてさらに研究し、IOT含めたテクノロジーの進化を取り込む。バイオLPGはいかに経済的に活用していくかが大事な課題。コミュニケーションは消費者にいかに訴えていくかが課題である。供給は安定した価格の提供が重要である。発電を石炭・重油焚きからLPGに替えることが将来に残していく取組である。 デジタル化+テクノロジー化して顧客に対する接し方を変えていく。いろいろな課題を全てオープンにし、皆に解決法を見せていく。これまでのLPGのイメージをどう変えていくかが重要である。 デイビッド・カバーニャ、Cavagna社 Mr. David Cavagna, CEO, Cavagna LPG産業に情熱をもって取り組んでいる。顧客にどういうビジネスがあるか訴え、説得するのが事業では大事である。顧客にビジネスをどうやっていくのか、きちんと伝わっているかが問題。LPGがよいエネルギーであるかが伝わっていない。クリーンでポータブルなエネルギーであることを伝え、だから重要なエネルギーであることを顧客に納得して貰うのである。顧客のニーズについて顧客ときちんと対話していくことが重要。LPG産業のアイデアを顧客にインプットし、そこからマーケティングに戻る。情熱をもってこの転換移行期に取り進めている。 エスター・ブッシャー、SHV社 Ms. Esther Busscher, Head of Group Public Affairs, SHV 大事なことは現実を確認することである。様々な国の協会が集まり、現実を認め、業界外の現実を認めていく。オランダだけの問題でなく他に拡がっていくので、きちんと自分の問題として考えてみる。業界内だけではなく、外の業界をパートナーにして取り組まなければならない。バリューチェーンの中身が変わりつつあるのか、チェーンそのものが再構築されていくのか確認する。 デジタル専門家が少ないことに気づいた。デジタル的解決にアプローチしていく。コミュニケーションとしては我々のストーリーをスマートに有効に伝えていくことが必要。脱炭素に貢献できる優れたエネルギーであることを自信をもって伝える。最終消費者を我々に取り込んでいくためにソーシャルチェーンネットワークを作っていく。政治家への働きかけでなく、我々の地元のネットワークで拡散していく。 ヘンリー・カボン、DCC LPG社 Mr. Henry Cubbon, Managing Director, DCC LPG このフォーラムに参加することはセラピーを受けたことと同じ。今回の参加で見つけたものを持ち帰り、できるだけ活用すること。参加者に若者が少ない、我々が行動を起こすべきであることを痛感した。バイオLPGにはリーダーシップが必要と聞いた。参加者各々リーダーであり、業界が直面している課題と問題に我々リーダーが立ち向かう。規制当局と対面している我々が一つになって同じシナリで取り組む。顧客のニーズと視点から取り組むことが重要であると再認識した。 進行:モーバンク 脱炭素社会に向かってエネルギーの移行期である。欧州で強く進められ、インドでもクリーンエネルギーであるLPGへの転換に同様に取り組んでいる。パネリストからコメントをお願いする。 ペレス エネルギーの移行というよりバリューの移行に変わってきている。トップダウンのやり方も重要な一方でボトムアップも重要。情熱も必要。それをメッセージにこめてストーリーを作っていく。脱炭素化のメッセージを伝えていくことが重要。 カボン 協会と企業が一体となった取り組みが必要。そこでリスクを減らしていく。気候変動は日々変化し悪化している。顧客が感じている危険性にどうメッセージを伝えていくか。積極的に次の世代に伝えていきたい。 モーバンク 人々は今、コモディティを探していない。LPG業界はコモディティから離れ、その周りのサービスを重視している。 ペレス 我々はLPGという解決策を売っていることを顧客に伝える。解決策を買いたいのが顧客である。 カボン 顧客が変化している。ミレニアム世代の時代である。デジタル世代の顧客の視点が必要である。シリンダー残が自動検知されアプリの連絡だけでデジタル的に進んでいくシステムを導入している。 カバーニャ 我々自身のビジュアル化、可視化が必要である。消費者に我々を示し、見える存在になる。 |
(調査研究部/亀川 泰雄) |