LPGC WEB通信  Vol.68 2019.11.11発行 

近畿地方LPガス懇談会の概要

 去る10月3日に近畿地方LPガス懇談会(福井県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)を開催しました。
本年度の、全国各地方共通のテーマである、
 ① 料金透明化・取引適正化の現状と対応
 ② 災害対応の現状と課題
について、資源エネルギー庁のプレゼンテーションに続き、消費者委員及び事業者委員、学識経験者委員、行政の間で、自県を超えた意見交換が行われました。
 永年、近畿地方LPガス懇談会で総括のコメントをいただき、本年度は進行も併せてお願いした、甲南大学法科大学院の土佐教授は、意見交換の中で特に液石法や独禁法等の法的見地からの解説も挟まれたので、出席委員の理解がより一層深まったものと思われます。



LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
(1)開会挨拶
近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 大西宏志 電源開発調整官
 昨年度の経済産業省による集合住宅入居者に対するLPガス料金調査では、約7割の世帯で料金が高いとの意見であった。この状況下にあって今後もLPガスが選ばれ続けるよう、国としてこれまで料金透明化・取引適正化実現のため、法省令改正やガイドライン制定を進めてきたが、さらにこの懇談会にて相互信頼のもとに議論し、より一層最善の取り組みをお願いしたい、と述べました。


(2)懇談
 進行:甲南大学法科大学院 土佐 和生 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」


 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 直井 雄基 企画係長
 LPガスは他のエネルギーと比べ、料金情報が不案内であることから、契約前、契約時、契約中、契約終了時の各段階における課題と、これらに対する法的措置のこれまでの経緯について、説明がありました。
また、本年度のLPガス懇談会においてペーパーレス化の一環としてタブレット端末による資料閲覧を行っていることに触れ、今後の行政手続きもペーパーレス化が進むが、LPガス関係の手続きも同様であり、液石法の14条書面も電子媒体による交付も可能とするといった方向性も、今後の可能性として示唆しました。

 これに対し、奈良県生活協同組合連合会専務理事の山本委員からは、日本生協連による「わが家の電気・ガス料金しらべ」のインターネット調査結果等を示し、LPガスの料金透明化・取引適正化が遅れている現状を伝えました。LPガスと都市ガスの料金比較においては、LPガスが割高であるが、何よりも料金表示に改善が必要であり、基本料金/従量料金の明示がない検針票の実例や、ホームページでの標準料金メニューの紹介が少ないとの調査結果から、料金の高低よりも透明性の向上が課題であると指摘しました。

 続いて、近畿産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課の門田課長補佐より、取引適正化に関する管内の自治体や事業者団体との連携について状況説明があり、これを受け自治体を代表して大阪市消防局の栗山保安担当からも、取り組みについて説明がありました。
 ここで土佐教授より、各経産局と自治体の液石法事業者検査における役割分担の説明に加え、地域の連携が深まった理由について、立入検査が保安に偏り取引適正化に関する検査が疎かとならぬよう情報共有するため、との注釈がありました。

 各府県の事業者委員からは、事業者への独禁法に注意しながらの料金に関する指導や、集合住宅のLPガス料金問題に対する指導は困難を伴うこと、太陽光発電の売電価格低下に伴い自家用に使用されることでオール電化が益々進むこと等、課題が多い中で料金透明化・取引適正化に向けた会員に対する周知徹底等に取り組んでいる状況が説明されました。
 土佐教授は、価格競争を阻害する恐れのある協会会員への料金指導は注意が必要であること、また集合住宅においては、経済産業省が入居者への標準約款を管轄する国土交通省と協議し、入居時情報としてLPガス料金情報を提供した方が良いとの対応となっている、と補足しました。
 また、直井企画係長からも、料金の法的な制限は自由経済のもとで限界があるが、真面目に取引する事業者がマイナス効果とならぬよう、検討している旨が示されました。

 その他の消費者委員からは、事業者団体より自治会等へのLPガス料金や取引に関する学習会開催の要望(兵庫県消費者団体連絡協議会副会長 中道委員)、国の措置や事業者の取り組みで一歩前進したことは評価するが、契約開始時の複雑な14条書面については消費者が容易に理解できるよう、さらに法整備を進め改善してほしいとの要望(コンシューマーズ京都事務局 右近委員)等が上がりました。

 意見交換のあと、当センターより昨年度の資源エネルギー庁委託事業「流通・販売業経営実態調査」の結果を報告、並びに本年度調査についての協力要請を行いました。



テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 直井 雄基 企画係長
 昨年の大阪府北部地震や台風15号のような大災害が多発する中、他の系統エネルギーに比べ災害に対する強靭な対応能力のあるLPガスの災害バルクの導入を、補助金制度の活用及びPRの強化によりさらに充実させていきたいとの表明がありました。
 同様に災害対応能力を活かすべく、平成23年の東日本大震災を発端として整備した「中核充填所」の運営等の在り方に触れ、地域貢献のみでは事業者による継続運営が難しくなってきているのが現状であり、今後の支援等については予算を含め検討課題としたいとの補足がありました。

 続いて、同補助金事業を受託する当センターより、補助金についての概要とこれまでの補助金によるLPガス災害バルクの導入状況、及び昨年度の約5倍の31.5億円(昨年度補正予算額を含む)となった本年度の予算に対する応募状況について報告しました。申請件数は232件、30億4千万円となり、これまでの設置実績の全国分布としては東高西低となっているが、従前に比べ豪雨災害によるものと思われる西日本からの応募や、設備に発電機を含む応募が増加しています。
 また、より一層の広報が必要であることから、東京ビッグサイトで開催されている「危機管理産業展2019」に災害バルクや発電機、炊き出しセット等を紹介・出展中(会期:10月2日から4日)であることと、11月には専用WEBサイトを公開する旨を報告しました。さらに、展示会やWEBサイトで使用する、LPガス災害バルク導入事例の動画を、タブレット端末上で鑑賞いただき、災害時における実効性や必要性への理解を深めていただきました。

 事業者委員からは、昨年の大阪北部地震や台風では協会にて作成した災害対策マニュアルに則って行動し、LPガス被害を最小限に止めたことや、泉佐野市に対し議員と共にアプローチし、3年間で全18公立小中学校の内6校にLPガス災害バルク導入の運びとなったこと(大阪府LPガス協会会長 大先委員)が報告されました。
 さらに、対面取引は電力・都市ガスにはないLPガスの強みであり、家族構成等の各世帯情報を災害時に活かすとともに、補助金の活用については現在ゼロであるがより一層周知を進めていきたい(福井県LPガス協会会長 渡辺委員)等、各県の取り組み状況報告や意見がありました。

 また、消費者委員からは、LPガスがここまで災害対応力が強いとは思わなかった(消費者サポートネット和歌山副理事長 田村委員)、福井県は原発県であるせいか補助金によるLPガス災害バルクの導入が全国唯一ゼロであり、大阪府のように協会や自治体により積極的に進めてほしい(福井県消費者グループ連絡協議会会長 齊藤委員)等、災害バルク普及への期待が寄せられました。



(3)総括コメント
              甲南大学法科大学院 土佐 和生 教授
 ここ数年集中して取り組んできた、テーマⅠ.の「料金透明化・取引適正化」であるが、わが国は法治国家であり、これらの遵守を貫徹・徹底していくべきである。特に14条書面交付や、集合住宅における取引適正化については、国や自治体の取り組みだけでは限りがあり、消費者が自由に自主的・合理的に事業者を選択していくことが、事業者によるこれらの遵守が進むことになり、延いてはわが国の経済発展に繋がるので、こうして国全体としての取り組みを各立場により進めていくことが重要である。
 また昨今のわが国にとり、テーマⅡ.の災害対応は重要課題であり、エルピーガス振興センターより案内のあった、lpg-saigaibulk.com(LPガス災害バルク広報専用WEBサイト)を是非ブックマークしてお帰りになり、LPガス災害バルクの導入を広めていただきたい、とPRして全体を締めくくりました。



◆開催風景

開会挨拶する近畿経済産業局資源エネルギー環境部 大西電源開発調整官、
右は行政の連携状況を説明した同資源・燃料課 門田課長補佐


料金透明化・取引適正化の現状を説明する資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課 直井企画係長

調査結果や地域の実情をもとに意見する消費者委員

取引適正化について行政の地域連携状況を説明する大阪市消防局の栗山消防司令補

取り組み状況を説明する事業者委員

 
会議進行及び総括コメントする土佐教授



(広報室/野村 晃久)