LPGC WEB通信  Vol.68  2019.11.11発行 

WLPGフォーラム アムステルダム大会の報告(前編)

 今年のWLPGフォーラムが9月25日(水)から26日(木)にオランダの首都アムステルダムで「ENERGY IN TRANSITION ( 過渡期にあるエネルギー ) 」をテーマに開催されました。フォーラム及び展示会場には108ヶ国から2,028名が参加し、昨年のヒューストン大会の81ヵ国、1,251名から大幅に増えました。尚、今年の大会には日本から32名の方が参加されています。
 また、展示会には145社(昨年は93社)が参加し、日本からはI・T・O㈱が出展されました。
 第33回WLPGフォーラムは2020年の11月2日(月)~4日(水)にアラブ首長国連邦のドゥバイで「Bringing Energy to Life」をテーマに開催されます。
 今月号ではアムステルダム・フォーラムの初日9月25日(木)の内容をお届けします。


展示会場の様子

I・T・O㈱の展示と内海社長

<第32回世界LPGフォーラム アムステルダム大会>
会場 :「RAIアムステルダム」コンベンションセンター
    (RAI Amsterdam)
日 程: 2019年9月25日(水)~26日(木)
場 所: オランダ王国アムステルダム市
テーマ: ENERGY IN TRANSITION (過渡期にあるエネルギー)


 <フォーラム内容>
9月25日(水) 於;「RAIアムステルダム」
<<世界LPGフォーラム>>
9:00-9:15    開会の辞
 開会にあたり、世界LPG協会のペドロ・フィルホ理事長並びにジェームズ・ロックオールCEOから、世界LPGフォーラムをオランダで初めて開催すること、2050年の脱炭素社会に向けて同協会はLPGを過渡期にあるエネルギーと位置付け取り組んでいること、このフォーラムでは各地域での脱炭素への取り組み状況について多くの発表があること、等の挨拶があった。


フィルホ理事長


ロックオールCEO

9:15-9:45 歓迎挨拶 
 アーサー・ファン・ディック北オランダ州知事から「今オランダでは気候変動に対応するためCO2、窒素の排出削減に取組んでおり、エネルギー源をどうするかが問題になっている。交通、発電の分野を含め、非化石燃料を導入しなければならない。ソーラー発電や風力発電では容量が少なすぎ、化石燃料よりCO2排出量が少ない原子力発電がさらに開発されるであろう。2050年の炭素0社会までに、より多くのエコエネルギー、再生可能エネルギーが出現するであろう。現在の処、解答は電化とバイオエネルギーのように見える。LPGは2050年まで、より炭素排出量の少ない過渡期のエネルギーとして活用されるものの、ここに参集しているLPG産業に携わる方々には申し訳ないが、2050年以降は役目を終える」との挨拶があった。

 
北オランダ州知事

10:15-11:45  ラウンドテーブル:過渡期にあるエネルギー
進行:ソニア・ファン・レンセン EU energy、 環境ジャーナリスト
   Sonja Van Renssen ; EU energy and Environment Journalist

 2050年までに地球温暖化に対策を打たねばならない。それにはLPGの改変、バイオエネルギーの実現可能性、LPGと天然ガスのシナジーにも目を向けることも必要であろう。まず、パネラーの考えを聴きましょう。

(個別のプレゼン内容)
ブラム・グラバーCEO、SHV社
Mr. Bram Graber, CEO, SHV

 エネルギーの移行期にあたり、LPGの世界も変わってきている。どう対応していくか、3つのポイントを挙げる。
 一つ目は、社会に向けて話をすることである。そこでは、我々LPG業界の中でする話と異なるレベルの話をする。これからの見方、考えをメディアに伝えることである。
 二つ目は、ここの会場の方、つまり業界の方と話をする。将来の解決策を一緒に考えていくことである。
 三つ目は顧客である。彼らは新聞、メディアを通じて我々の活動を見ている。大事なことは、我々が消費者のニーズを中心に考えることである。

ジョー・カン、世界ガス協会理事長
Mr. Joe Kang, President, International Gas Union

 韓国が3年間世界ガス会議のホストを務めている。エネルギーの変遷に関し、先日アブダビでエネルギー・コンソーシアムがあったが、そこでは中東諸国から、石油生産への依存からエネルギー源の多様化にトライすることが表明された。世界のエネルギー消費量が増加しており、炭素排出量を改善しなければならない。過去の排出量の推移をみると無視できない。今ほどエネルギーが注目されたときはない。
 天然ガスとLPGは競合するものの、最もクリーンな炭化水素エネルギーとして互いに協力できるエネルギーである。エネルギー改変を考え、イメージを替えるべきときである。LPGが提供する役割は、化石燃料から天然ガスへの移行期(過渡期)のエネルギーである。天然ガスは継続して使用可能であり、低コストで大量に貯槽できる。アジア諸国で天然ガスの使用が少ないように、エネルギー・インフラがまだまだ乏しい国がある。

スニル・マスール、インド石油公社
Mr. Sunil Mathur, Indian Oil Corporation

 インドは調理用LPGに関して最も多くのキャンペーンをしている国である。直近の3年で大きな変化をおこした。8,200万世帯の生活レベルをクリーンな環境にしていくことが目標で、これは健康面だけでなく、女性の家事時間を軽減することで女性を支援する活動でもあり、LPGを活用したライフスタイルの改善である。
 LPG利用者と対話すると、天然ガス、LPGのインフラ整備に対する社会の努力が必要とされている。キャンペーンは予定の3年間より早く達成できたので、次はエネルギーの移行として、LPGの入手をより簡便にすることに取り組む。

ジョイ・アラフィア、理事長兼CEO、西部プロパンガス協会
Ms. Joy Alafia, President and CEO, Western Propane Gas Association
 仕事をしている米国カリフォルニアは、気候変動対応としてのエネルギー対応が最も進んだ地域であり、天然ガスの利用を活発に議論している。また、プロパンからバイオエネルギーに変え。さらに持続可能エネルギーに変えていくことも議論している。クリーンエネルギーへの移行としてはまずプロパンであり、プロパン・クリーンエネルギー週間を米国で実施している。
 エネルギーをいかに変えていくかの議論の方向性は、実際に存在するエネルギーの最適化であり、そのために国民の60%が炭素税の支払に賛同しており、80%のエネルギー事業者が持続可能エネルギーを認めている。炭素低減社会に関するビジネスでプロパン市場も変化をきたしており、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換は次のビジネス・チャンスである。いかに変革を続けていくか、エネルギー効率を向上できるか、技術の進歩、を懸念している。ディーゼル燃料減少のために政府助成金でクリーンエネルギーに転換する現実的な取組みが必要であり、電気自動車普及のためのインフラ整備も必要、コスト的な魅力も必要であり、国民の教育が重要である。

スティーブン・ヘイウッド、SHV社
Mr. Steven Heywood, SHV

 仲間作りが大事である。ガス分野で今おきていることをいかにやっていくか、今後何をやっていくか、社会とどう統合していくか、話し合うことが大事なスタートである。そこで醸し出されたストーリーを周りに広めていくこと。信頼できるソースからの情報を伝達することが大事である。エネルギーの移行段階で、各分野が信頼しあってやっていくことが重要である。また、オプションとしてどの可能性があるのか、ビジョンを作っていく必要がある。それらを最終的に国際的な条約に纏めていければよいと思っている。

(ラウンドテーブル、Q & A)
グラバー
 地域によってLPG業界への信頼度が異なる。ガス業界への不信感である。欧州ではLPGにとって都市部より地方が大事で、今までの議論は都市部の問題についてである。地方で暮らす人にとって、LPGは重要なエネルギーである。今後は都市部でも地方でも重要なエネルギーになるように努力する。中国ではエネルギーの移行が現実に進んでいるのに対し、欧州では議論があるものの実行が遅れている。
 まずは、木、石炭から天然ガス、LPGへの転換が進み、次に再生LPG(バイオLPG)を積極的に活用していくべきで、いかにバイオLPGを導入していくか検討する。増産の可能性が問題であり、再生可能エネルギーの増産には20~30年はかかるといわれているが、研究する価値はあり、また研究するべきである。

カン
 ガス業界の動きは軽い。業界イメージを変える必要がある。LPGと天然ガスの利用は地域性が強いものの、今後はガスがどこでも必要になる流れである。再生可能エネルギーを研究しながら進める必要がある。ビジネス・チャンスは、政治的、社会的議論によって改善できる。技術的問題には投資家からの理解を得られている。変革も必要で、強調したいのは技術と変革である。

Q 電気が注目されているが、ガス業界の考えは?
カン
;天然ガスが上に位置付けられ、再生可能エネルギーがその次となる。

Q ゼロカーボンを2050年までに達成できるか?
マスール
;国によって異なる解決法が必要である。インドではバイオマス燃料からの脱退に取り組む。インド政府は2030年までにガス・アクセス社会に変えていく。それに新しい技術革新を取り入れていく。新しい技術へのインフラ整備も重要となってくる。
アラフィア;どのクリーンエネルギー、再生可能エネルギーにするかコミットしていくことが大事である。例えば、プロパンなのか、天然ガスなのか。再生可能エネルギーへの移行を、どのようなプロセスで進めていくかコミットすることも大事で、いかに再生可能なプロパンを作っていくのか拡めることが重要である。

Q ビジネスモデルの変更について、どう考えているか?
ヘイウッド
;ガス産業では、政治家にインプットして進めるか、政府と事業者の間のギャップを埋めることが大事である。事業者の考えているストーリーを政治家に話し、理解を得ることが重要である。
カン;消費者に話すことも大事で、顧客とエネルギーについて議論することが重要である。

Q競合への対応について?
マスール
;LPG産業をプロテクトしていきたい。

Q水素を原料とするエネルギーがでてきているが、LPGに拘るのか?
グラバー
;数十年LPGダウンストリームを経営している。再生可能LPGについては、供給者は誰になるのか、誰がサポートしてくれるのかまだわかっていない。フランスではLPG発電所を作った。イタリアではバイオエネルギーは人気となったが、原料が汚染の原因となったのでLPGに戻った。消費者の意向を聴き為政者と議論していく。
カン
;国際的には天然ガスと水素である。大気汚染は早く解決する必要がある。インドでは天然ガスが多くなっている。インド、中国は人口の少ない欧州での進化を取り入れる必要がある。
グラバー
;政策上の要求が強くなっているが、事業者が決めるのは消費者の希望や要求、つまりマーケットの要求である。
アラフィア
;消費者へPRキャンペーンでシナリオを明確に伝えること、消費者の教育が大事である。
ヘイウッド
;LPGへの信頼のレベルを高めることが重要である。そうすれば消費者の反応は、これまでの歴史、これからのシナリオを理解しようとする姿勢を見せる。
アラフィア
;再生可能LPGについては、課題を全て示して議論し、やるべきことを決めて伝えていくことが重要である。
レンセン
;必要なことは、脱炭素にまずプライオリティを置くこと、できることとできないことを明確にすること、気候変動に対応すること、様々なカテゴリーの人と議論しシナリオを作っていくこと、これらをより多くの人に知ってもらうこと、である。

Q ここ 10~20年の脱炭素社会への対応、特に規制とコストは?
マスール
;新しいエネルギーのコストダウンには時間を要するが、使用しない選択肢はない。結局、消費者はその時点で最も安いエネルギーを買うだろう。
アラフィア
;環境問題で議論されているが、価格レベルも重要である。厳しすぎるカリフォルニアは規制の見直しも必要である。
グラバー
;供給量の確保が重要である。
カン
;安定した価格設定と量の確保がないと持続性がない。それに気候変動対応と価格レベルが重要である。
ヘイウッド
;ガス業界の信頼を確保していくことが大事である。

 

13:30-14:00  歓迎挨拶
 アラード・カステライン ロッテルダム港CEOから「カーボン0社会に向けたオランダの取組状況は、CO2 Neutral 2050の対応として、天然ガス社会から水素エネルギー社会への転換を図る。具体的には現在の石炭火力発電、天然ガス発電を水素発電に置き換える。同社は、Blue & Green Hydrogenという水素電気分解工場を設置する。CO2 Neutral Transportを目指し、Carbon Foot Freeの最適化を図っており、Carbon Capture Usage & Storageプロジェクトとして、輸送面のデジタル化、使用エネルギーの移行に取り組んでいる。将来には無人船舶が登場するであろう。水素エネルギーの他には、Waste - to - Chemistry(廃棄物化学工業)による廃棄物からバイオメタノールを製造するプロジェクトに期待している。」とのプレゼンがあった。
 
ロッテルダム港CEO

14:00-15:30  セッション1:過渡期にある供給
進行:ニコラ・ウィリアムズ、Clarksons社
   Ms. Nicola Williams, Clarksons

 このセッションを始めるにあたり、まずアーガス社のアップルトン氏に需給の最近の状況をまとめていただき、その後、パネラーと討論に入る。

(概況報告)
デイビッド・アップルトン、BD Executive、Augus社
Mr. David Appleton, BD Executive, Augus
 
2018年の供給は伸張し年間3億トンとなった。特徴としては、北米のシェール拡大、中東増産、価格上昇が挙げられる。また、需要の44%が家庭用であり、米国輸出は3,500万トンとなりLPG取引の流れは北米と中東が発端となる。アジア需要をみれば、最近10年は日本、韓国は減少、インド、中国は増加、東南アジアは拡大している。
 現時点では供給が需要を追い越す状況であり、短期的には価格下落となる。北米の生産は引き続き拡大し、中東、豪州も拡大するであろう。不確定な要素として米中貿易戦争、この結果米国から中国へのLPGは0となった。また数日前にサウジで起きた爆撃による石油設備火災の混乱は、価格に影響を与えることは確実である。


(ラウンドテーブル、Q & A)
アラン・ゲルダー、VP Refining、Woodmac社
Mr. Alan Gelder, VP Refining, Woodmac
 米国は今や最大の輸出国となった。LPGの増産は続き、2024~2025年には現在の2倍となろう。

ロブ・ドナルドソン、Senior Vice President、Targa社
Mr. Rob Donaldson, Senior Vice President, Targa
 10年ほどLPGの輸出を担当しているが、生産者と輸出設備を結ぶパイプラインの整備等を通して生産者を支援しながら、輸出を伸ばしてきた。供給は引き続き増えていく。2~3年の短期において、これまでの設備投資の効果が目に見えて出るだろう。メジャーのシェブロン、エクソン・モービル、シェル等も生産の拡大に取り組んでいる。
 米国のLPG貯蔵能力は500億バレルで、貯蔵面でも世界のリーダー的な国である。石油貯蔵能力も3~4,000億バレルある。需給調整機能を果たすために、この貯蔵能力を維持していく。


ゲルダー
 輸出については輸出量と価格がポイントである。輸出量はPDHが増えることにより、アジア向けがかなり増える。価格は下がっていくだろう。

ドナルドソン
 各需要を充足する供給量が必要である。現在、輸出設備の一部をフラクターとして使用しているので、貯蔵能力を大きくすることで対応している。また、ガス抽出プラント、パイプライン等の設備を整備して対応してきた。一方で、アジアの需要が更に拡大していかないと新たな投資を行うことはない。

マッシ・ニアジ、General Manager、SHV社
Mr. Massih Niazi, General Manager, SHV
 
中国とインドについて説明したい。中国の市場は年率5%で成長しており、2018年は成長率が下がったが、これは新しい石化プラントができなかったため。今後10年間で10のPDHが新設されるので、また需要は拡大していくであろう。インドは市場の50%が輸入品である。政府補助金による家庭用需要が大きく増加している。今後のリスクは、中国は貿易戦争であり、インドは補助金の継続である。

石川重男、副社長執行役員、ENEOSグローブ社
Mr. Shigeo Ishikawa, EVP, ENEOS GLOBE
 
簡単に日本の概況を述べると、需要は年間4,000万トンであり、増加はしていないものの減少は止まった。輸入の50%は米国からである。

ウォルト・ハート、Vice President、IHS社
Dr. Walt Hart, Vice President, IHS
 
供給面での問題は中東の不安定さであろう。中東の輸出は全体で3,000万トンと米国が少し上回る。サウジは生産設備が爆撃されて生産に影響が出ている。他国での生産は順調である。サウジの原油生産量は570万トン/日から220万トン/日に落ちているのでLPGの生産も落ちている。
 サウジ国内の石化需要が高いので、LPGの年間輸出量は500万トンからどこまで下がるか問題である。米国のLPG生産は順調であるが、サウジ減産分までカバーできない。
 中国は米国から買わず、中東、アフリカから輸入を続けるだろう。尚、米国のプロパンは実は輸出を織り込むと余剰ではない。


モリー・モリス、Vice President、Equinor社
Ms. Molly Morris, Vice President, Equinor
 ノルウェーの原油生産はここ数年減産が続くものの、比較的に緩やかな減少である。一方でLPGの輸出は増えている。

ニアジ
 
ロシア市場は2005年と比べると2倍になった。多くの西シベリアのガスプラントで生産が増え、黒海のターミナル経由で欧州に輸出されている。LPGは抽出ガスから生産され200~220万トンが輸出されている。欧州は5~10年単位で、欧州品とロシア品が相まって供給されていくだろう。ロシアから中国への輸出もあり、現在270万トンである。ロシアから中国への輸出はインフラが問題で、今後整備され多くの輸出が行われる。

モリス
 
ノルウェーでは2020年1月から価格が3.5%下落する見込み。原油の価格も変動していく。原油が価格下落によって減産されるとLPG生産も減少し、その結果LPG価格は上昇することになる。原油生産は市場が変わってきており、メキシコ等の重質油は減産する反面、軽質原油が増えてきている。

ゲルダー
 需要市場は変わっていく。気候変動に対する議論の進展、政治リスク等が変動要因。一方で供給側の計画をみていく必要がある。

ドナルドソン
 政治リスクに敏感である。また、地域毎に需要も違うので、その対応等にバランスをとって地域毎に対応していく。米国メキシコ湾岸からの輸出の問題点があり、市場が拡大していく中でターゲットを絞っていく必要がある。運河にも問題あるが、テキサスより北のパイプラインを活用して対応していく。

ニアジ
 サウジの生産が回復し、ロシアと米国も増産されるので、今後は地中海の供給者と競合になり、価格は下落する。

アップルトン
 アジアの需要増は確実かというと、中国はPDHの新設次第であり、インド市場はかなり飽和状態に近づき、インドネシアのLPG普及率は95%に達している。アジア全体で2020~2021年は7~8%程度の伸びであろう。また、米国の景気悪化がみえてきたので、LPG業界にも影響が出てくるだろう。

ハート
 2020~2030年は需要の伸びが落ち、需給は均衡していく。その後供給は伸び続けるが、どこかで需要とバランスせざるを得ない。
 バイオLPGは年産2,000トンであり、現在の世界のLPG需要量3億トンをカバーするにはるかに及ばない。さらに、バイオLPGを商業生産スケールにすることが難しいのが問題である。


モリス
 ノルウェーの生産者として、2050年のエネルギーがどうなるのか考えている。そこは炭化水素燃料である原油、天然ガス、電力、LPGがなくなる世界である。代替として、クリーンなエネルギーを供給しなければならない。

ハート
 PDHの生産は増え、プラスチック製造は減らないであろう。

アップルトン
 再生プラスチックへの期待は大きい。
大型プロジェクトとして、モザンビークガス田の探鉱が期待されているが、安定した調査結果が出ていない。


ハート
 
アフリカのガス田はまだドライで、東側のガス田は量がすくなく、投資とインフラ整備がもっと必要である。

アップルトン
 
バイオLPGは産業として供給できる見込みがないが、サプライチェーンの中にバイオLPGを導入することが望ましい。本当に必要なら誰かがイニシアチブをとって資金を投下する必要があるが、ここ数年では起こりそうにない。

ニアジ
 CO2の排出に影響する燃焼に関し、規制が国によって異なる。フレアリングに関する規制も様々である。

アップルトン
 
LPGの価格については需要マーケットが増えてきているので、上昇するだろう。

ウィリアムズ
 
IMO2020対応として、LPGでも多くの投資が行われ、海運業界としても対応しているが、この分野での需要は小さいためLPGの消費としては多くは期待できない。

 

16:00-17:30  セッション2:過渡期にある需要
進行:パム・インダルイェーツ、DMG、Oryx Energies社
   Ms. Pam Indurjeeth, Deputy Managing Director,Oryx Energies

 このセッションでは、まず各パネラーにプレゼンをお願いする。

バート・ファン・エール、Vice President、Westport Fuel Systems社
Mr. Bart Van Aerle, Vice President, Westport Fuel Systems

「過渡期にある需要‐自動車」
 カナダ、スウェーデン、オランダ、米国の自動車におけるサプライチェーンの一部を担っている会社である。自動車エンジンは、1940代からシングル・ポイント・インジェクション、コンバインド・ポート、ダイレクト・インジェクションと進化している。
 オートガスについては、炭素排出が減少し環境汚染を減らす。バイオLPGとオートガスを持続可能エネルギーとして期待している。今後の進展には以下の4ポイントを挙げる。まずは製造におけるテクノロジーで、EV車やハイブリッド車がこれにあたる。次は代替エネルギーの提供。さらに政府の税制面のインセンティブと規制面のインセンティブ。最後が新しい市場におけるインフラの整備と価格メリットの提示である。

マリア・マルムクヴィスト、Managing Director、スウェーデンLPG協会
Ms. Maria Malmkvist, Managing Director, Swedish LPG Association

「産業におけるLPG‐スウェーデンの見通し」
 スウェーデンにおけるLPG事情を説明する。当協会は1915年に設立され、会員が160いる。スウェーデンのLPG需要は欧州需要の4%の割合。88%が産業用で、その内55%が鉄鋼向けである。ガスはエネルギー総需要の3%を供給している。スウェーデンは気候変動対応に注力している国で、2045年までNet Zero Emissionを目指し、グリーンハウスガスの導入、天然ガスのバイオガスへの転換、液化天然ガス(LNG)の液化バイオガス(LBG)への転換、LPGのバイオLPGへの転換、水素の活用を図っていく。スウェーデンではバイオガスの生産が安定している。バイオLPGは、価格競争力、税制面での優遇、排出取引が課題で、それまではLPGが非常に重要なガスとなる。

アンドレイ・ボルグメスタルス、Senior Manager、Waertsilae Finland社
Mr. Andrej Borgmaestars, Senior Manager, Waertsilae Finland

「LPG:世界で利用できるクリーンガス発電」
 ここ4~5年で建設してきたLPG発電により大きな需要をつくっていく。わが社の事業は、海洋ソリューション、エンジン製造、発電用エンジン製造、エネルギーソリューション。これまで177ヵ国で様々な燃料を使う発電所を建設してきた。LPG発電の利点は、CO2排出量の少ないこと、燃費を削減できること、LPG供給が安定していること、発電技術が容易なことであり、カーボン・フット・プリントは天然ガスより低く、硫黄化合物も天然ガスより低い。LPGとLNGを比較すると、入手の容易なこと、ロジスティクス、貯蔵にLPGは優れている。LPGはLNG導入までの繋ぎのエネルギーとしても最適である。LPGは200~500MWキャパの発電に最適である。

ジョン・リキュリス、CEO、Dorian社
Mr. John Lycouris, CEO, Dorian

「過渡期にある需要‐海運におけるチャンス」
 わが社はLPG船運航会社で、VLGCも多数保有している。わが社の船団の特徴は、船齢が2~3年の新しい船舶が大半であること。
 ここ数年、海上輸送マーケットが急激に伸びている。米国からの海上輸送が急増、中国の石化/家庭用需要は今後も伸びるであろう。中国向けの多くは中東からの出荷である。インドも家庭用を中心に伸び率が高い。韓国は石化(クラッキング)用需要が高まっており、今後10年で二倍に伸びるであろう。
 IMO2020に対応したLPG船舶エンジンの研究をしていきたい。今後多くの船舶にLPGエンジンが使われていくだろう。LPGエンジンで全ての排出基準をクリアできないか、CO2、SOXの排出をいかに少なくすることができるかが今後の課題で、かつLPGによって燃費のよい船舶エンジンにしたい。IMO2020で基礎となる大事なものはOXの減少。まだシステムの準備ができておらず、燃料の適合性と供給体制がはっきり確立していない。エンジン対応のみならず船舶の安全性への配慮も重要で、OX減少には添加剤が必要だが、これの供給の安定性が課題である。

ボルグメスタルス
 小火力発電では、まだ軽油を使っている。特に経済性が弱い島嶼でその傾向が強い。IMO2020対応が進めば、今後軽油等環境対応した改良燃料の価格代の上昇に直面する。
 LPG発電とLNG発電を比較すると、貯蔵コストでLPGが有利。LPGは簡単なタンクで済むし既存のインフラも使える。LNGの場合は、受入ターミナルの建設から始めなければいけないし、タンク建設費も高く、時間とコストを要する。試算するとLPGの三倍以上の建設コストとなる。運営コストでは、カリブ海諸国はLPGがLNGより半分位安くなる。

リキュリス
 LPGエンジンは様々な船舶で使用できる、使えない理由がない。LPGを供給できるターミナルは既に存在しており、あとはエンジンをLPG燃料用に替えるだけである。

インダルイェーツ
 エンジンシリンダーについては、VLGCには6シリンダーが必要で、大型LPGエンジンとなり、現在開発が進んでいる。船舶専用LPGエンジンの開発がポイントとなる。LNG船舶エンジンは、政治的に先行した。
 その点では、LPGは紹介するプロモーションが足りない。

 

 (調査研究部/亀川 泰雄)