LPGC WEB通信 Vol.60 2019.03.11発行
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平成30年度LPガス地方懇談会を振り返って |
LPガス地方懇談会は、LPガス取引適正化の観点からLPガスの諸問題について、消費者団体、事業者団体、行政、学識経験者が一堂に会して意見交換・議論・提言等を行うことで、関係者相互の理解を深め、LPガス産業の健全な発展に資することを目的とする、資源エネルギー庁の委託事業です。 効果的な懇談会とするため、消費者委員の意見表明を中心に双方向の議論展開となるよう、進め方等の懇談会運営方法を毎年見直していますが、本年度はより一層議論が深まる様、従前主に県毎に行っていた各委員間の意見交換を、予め設定したテーマに基き自県を越えて意見交換する形式としました。その結果、各県同士のやり取りではなく、圏内全域の共通課題について、文字通り一堂に会した意見交換となりました。 1.主なポイントと得られた効果 (1)テーマ設定と進め方 昨年度・一昨年度は、経済産業省による料金透明化・取引適正化に係る液石法省令等の改正及びガイドラインの制定で、このテーマへの取り組み状況や制度進捗を中心に活発な意見交換が行われましたが、本年度はこの進捗を確認するとともに、本年度多発した震災や台風・豪雨豪雪等の大災害を振り返り災害対応力の高いLPガスの有用性に着目し、需要発展に繋がるようなテーマ、地域の特性を意識したテーマ等を設定し議論しました。 テーマの数及び具体的名称については、地方により若干異なりますが、各懇談会ともに ① 料金透明化・取引適正化の現状と対応について ② 災害対応の現状と課題について ③ LPガスの地域貢献、需要開拓について を主たるテーマに設定しました。 懇談の進め方は、まず消費者委員、事業者委員、有識者委員、学識経験者委員、自治体の中からテーマに基づいたプレゼンテーションがあり、続いて消費者委員及び事業者委員からこれに対するコメントをいただいた後、参加者全員での自由討議に移る形式としました。 これをテーマ毎に行い、最後に学識経験者委員より総括コメントをいただきました。 この進め方により、昨年度までの県別での消費者委員/事業者委員間の質疑応答スタイルではなく、設定した共通のテーマ毎に、県を越えて各地方の一体感が得られる委員間討議となりました。 消費者委員には、予め事前質問(意見)票にて、 ・LPガスの料金透明化・取引適正化が進んでいると感じているか。 ・エネルギーを自由に選べるようになり、賢く選ぶ上でどのような啓蒙活動を行っているか。 ・災害対応策としてLPガス事業者に期待される役割は何か。 ・災害時におけるLPガスの有用性については、どのように情報共有しているか。 等々について質問・意見をいただき、之を基に消費者委員とは異なる都道府県事業者委員が回答を用意しました。 ここまでで、全ての消費者委員及び事業者委員による発言がなされ、続く自由討議ではさらなる意見表明が積極的に発出され、議論が深まりました。 (2)委員の変更及びプレゼンターについて 消費者委員は、例年各都道府県より消費者団体を代表して就任いただいていますが、必ずしも固定化しておらず、設定テーマにより合致した方への変更、また消費者団体のご都合により変更となることもあり、本年度は全国で約半数が消費者委員に新任されました。 尚、全国の都道府県自治体の液石法担当部署及び消費生活相談担当部署には、例年通り極力出席していただきましたが、懇談時間の関係で本年度は発言を予定せず、資料による取り組みや状況報告を行っていただきました。 また、本年度は主に消費者委員及び事業者委員よりテーマ別にプレゼンを行いましたが、総括コメントをいただく学識経験者や有識者委員等にも一部プレゼンをご担当願い、時流に沿った幅広い視点から意見願い、新たな指摘をいただきました。 ① 学識経験者によるプレゼン 東北地方:東北大学大学院 経済学研究学科 吉田教授「高齢化とLPガス事業展望」 近畿地方:甲南大学法科大学院 土佐教授「料金透明化・取引適正化」 ② 有識者委員によるプレゼン 北海道地方:日本ガス協会 角田理事「地域活性化・災害対応」 北関東地方:富士瓦斯株式会社 津田社長「LPガスの新たな展望」(新規需要開拓) 日本ガス協会 角田理事「LPガスが選ばれるために」(料金透明化・取引適正化) 四国地方 :日本ガス協会 角田理事「料金透明化・取引適正化」 ③ 自治体によるプレゼン 南関東地方:埼玉県危機管理防災部 森田主幹:災害対応バルクシステム (3)対象県の一部入れ替え LPガスのマーケットエリアの観点から、昨年度まで北関東地方懇談会の対象であった埼玉県を南関東地方へ、また南関東地方の対象であった長野県を北関東地方へそれぞれ入れ替えました。 (4)FRP容器の展示 FRP容器による災害対応も安心である旨の意見もあり、消費者委員からはその普及への期待が寄せられています。昨年度同様、実際にFRP容器を会場の一角に展示し、休憩時間や会議終了後に実際に触れていただきました。 2.全懇談会を通して これまでのWEB通信・各地方懇談会開催概要でもご案内しましたとおり、各地方懇談会では「料金透明化・取引適正化」の問題について、国は2017年及び2018年の法省令改正・ガイドライン制定及び改正を進めましたが、これらに取り組む事業者委員からは、進む改善もあるが苦慮する一面も報告され、また消費者委員からの意見表明からは、前進はしており評価はあったものの、全体としては未達成の状況であることがわかりました。資源エネルギー庁は、「平成」のうちにこの議論を終結させようと業界を喚起するも、引き続き本件における関係各位の努力と進捗確認が必要であるとの認識を共有することとなりました。 一方で、多発した大災害において途絶しなかったエネルギーとしてLPガスの強靭性があらためて評価され、「最後の砦」の位置付けが検証されるとともに、実際の災害時に避難所で求められたエネルギー需要から、空調や発電はLPガスで進めるべきであることも報告され、次世代のエネルギー政策検討に繋がる議論ともなりました。 元来の優位的特性に加え、平時では信頼される料金・取引関係を構築し、有事ではLPガスによる設備強化を推進することが、LPガスは災害時のみならず常備すべきエネルギーであるとの認識を高め業界の発展につながるとの総括コメントが、多くの学識経験者からありました。 3.事後アンケートの結果 例年、今後の参考とすべく懇談会開催効果及び課題について意見を求めるため、アンケートの当日提出を要請してきましたが、次の設問の通り本年度は記述式部分を増加したため、後日提出としました。 (設問と回答結果の抜粋) ①懇談会の満足度について(5段階) 結果 |
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②懇談会で得たこと、良かったこと 結果(多数意見を集約表記しています) |
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○他県の消費者の意見、事業者や行政の取り組み、認識の違いを知ることができた ○テーマ設定による意見交換が良かった ○消費者・事業者が一方的に意見するだけでなく、双方が主張を交え意見交換された点 ○経済産業省による説明が良かった ○総括コメントの内容が良かった ○年1回だが定期的にこの懇談会を継続してほしい |
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③懇談会で不要または改善が必要だと感じたこと 結果(集約表記しています) |
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●多かった意見 ●自治体の発言が必要、発言しないのなら出席不要? ●意見交換の時間が足りない、時間配分の検討が必要、発言者も要点を絞って ●議論が噛み合っていない、生煮え ⇒ 事前擦り合わせが必要 ●3テーマは多く議論が深まらない、もっと絞った方が良い ●消費者委員の選定(オール電化や無関心な委員) ○その他挙がった意見 ○辛口意見の収集方法を検討願いたい(その場では発言しにくいので匿名意見の紹介等) ○消費者委員からの業界に対する要望・課題を提示に対し事業者が回答する進め方を希望 する ○業界用語の統一化が必要(懇談会名称が「LPガス懇談会」に変更はOK、シリンダー は×・・) ○もう少し資料をコンパクトに ○保安の説明は不要 ○消費者委員の意識レベルの問題 ○消費者委員には、共働きの主婦や20~30代もできればいた方が ○消費者委員への早期のテーマ周知により所属団体でのリサーチが必要(委員個人の意見 ではなく) ○座談会形式のフリートークで内容を濃くしては? ○自治体からの発言が無かったのは準備不足もある(自治体意見) ○料金透明化・取引適正化問題は今後業界と行政の話となり、この問題での懇談は終わり にしては(事業者) ○学識経験者委員は総括だけでなく議論に加わってほしかった |
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④テーマ設定での議論展開について 結果 |
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4.今後の課題 本年度の懇談会では多くの成果も得られましたが、前述のアンケート結果にもあるとおり、課題も浮き上がっています。 懇談会の役割にはさらなる期待が年々高まっており、次年度も当事業を受託すべく準備する中で、LPガス政策と時代のニーズに沿ったテーマ設定と併せ、懇談会運営上の次の課題についても検討すべきと考えています。 ①経済産業局、自治体、事業者を含めた政策浸透と業界動向の進捗確認 ②このための適切な情報提供者、プレゼンターの選定 ③建設的かつアウトプットの強いテーマに適した消費者委員の選定 …等々、引き続き消費者・事業者・行政が一体となり、より一層充実した意見交換により、懇談会がLPガス政策の早期浸透への足掛かりとなり、健全なLPガス産業の発展に寄与するよう企画して参ります。 【ご参考】本年度各地方懇談会の概要(LPGC WEB通信掲載順) 1.南関東地方 https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201808contents3.html 2.北関東・北海道地方 https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201809contents4.html 3.東北地方 https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201810contents3.html 4.近畿・中部地方 https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201811contents2.html 5.九州沖縄・四国地方 https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201812contents3.html 6.中国地方 https://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201901contents3.html |
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(広報室/野村 晃久) |