LPGC WEB通信 Vol.60 2019.03.11発行
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【特別寄稿】 AOTS(一般財団法人海外人材育成協会)が実施するミャンマーにおける LPガス安全法制度構築事業について |
株式会社アラハタLPGコンサルティング 荒畑 誠 |
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1.はじめに 標記事業は、経済産業省 資源エネルギー庁石油流通課の提案に基づきAOTSが、2017年度より実施している事業です。本報ではこの事業の概要等についてご紹介します。 2.本事業の背景 (1)本事業は2016年度に実施されたエネルギー経済研究所受託「石油産業体制等調査研究 石油ガス国際市場調査」(以下「市場調査」という。既報Vol.40)を実施した際、ミャンマー政府機関であるMOEE (Ministry of Energy and Electricity)傘下のMPE (Myanmar Petrochemical Enterprise)に対して、日本の調査団メンバーが日本のLPガス設備に関する法規制等について説明を行ったところ、MPEがその内容について非常に興味を持ち、具体的な基準やその運用方法に対して多くの質問が寄せられたことに端を発しています。 (2)市場調査において、調査団はミャンマーにおけるLPGのビジネス環境について、保安上以下の問題点等を指摘しました。 ○ミャンマーでは、そもそもLPGの貯蔵、移動、販売等に関する保安を含めた規制がない。 ○ミャンマーでは、日本製の中古容器が相当数流通しているが、上述のようにLPG容器に関しても規制が無いため、再検査が行われずに使用されている。 ○LPGの旺盛な需要に応えるため、タイとの国境貿易により陸送でLPGを輸入しているが、最大需要地であるヤンゴンまでは、道路事情も悪く、紛争地域を通る等危険がある上、輸送方法等についても保安上問題がある。 |
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タイとの国境のミャワデイーから容器を200本程度積んで、ヤンゴン近郊まで5時間程度かけて運んでいる。 トラックの上では、容器が横積みされていることがわかる。 |
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(3)MPEは、当時MOEEからLPGに係る法律、規則等の草案を策定することを求められており、日本側に、これらの策定に係る強い協力要請がありました。 (4)経済産業省は、これらの状況を踏まえ、未だ保安基準が未整備であり、LPG市場もまだ途上段階であるが、ミャンマー政府当局は我が国の保安基準に高い関心を有しており、我が国のLPG業界等がそのノウハウを提供することで、LPG市場そのものが拡大し、そこに我が国企業が進出できるチャンスも広がってくると考え、本事業が開始されました。 3.事業の実施状況 (1)本事業の第1回目では、2017年6月に日本側がミャンマー連邦共和国ネピドーにあるMPEのオフィスを訪れ、MPEと意見交換を行うとともに、今後の事業の進め方等について提案・協議を行いました。(日本側参加者 : 経済産業省資源エネルギー庁、AOTSヤンゴン事務所、高圧ガス保安協会、エルピーガス振興センター、筆者) |
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第1回専門家派遣における会議の様子(MPEオフィス) | |
(2)その後、(1)の協議に基づき、2017年11月に本事業において初めてMPEの研修生をAOTS東京研修センターに招き、座学、工場見学等を実施しました。 |
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第1回受入研修開講式の様子(AOTS東京研修センター) | 第1回受入研修の様子(工場見学) |
(3)以降、(1)の協議に基づき、2018年2月、7月、9月にMPEのオフィスにおける専門家派遣を行い、2019年1月には第2回目のAOTS東京研修センターにおけるMPE研修生の受入研修を行いました。 (4)これまでの研修では、LPG事業の上流である輸入、貯蔵から下流の販売等までの各段階における様々な規制や技術基準等について、多くの団体、企業様の専門家の方々にご協力を頂きながら座学による情報提供、見学等を行ってきました。 4.ミャンマーにおけるLPGに係る規制の状況等 現在ミャンマーにおけるLPG事業は2017年8月に発効されたPetroleum and Petroleum Products Lawによって規制されています。しかしながら、この法律には詳細な技術基準等の定めはなく、規制当局であるMPEは現在、米国のNFPAやAPI等の基準を参照しつつ規制を行っているのが現状です。 今後、この法律に基づく規則等で詳細な技術基準等が定められる予定です。それらの草案の作成をMPEが行っており、当初は、中国や韓国等からその草案作成のサポートの申し出があったようです。しかしながら、MPEは安全性が確立された日本の技術基準を含む法制度に倣った法制度の構築を行うことを希望しており、本事業による情報提供やサポートに大変期待している状況です。 5.おわりに 今後とも本事業において、LPG関係業界の専門家の方々にご協力を頂きつつMPEに対して研修等を通じて日本の保安制度や技術基準に関する情報提供等を行っていく所存です。 これらにより、MPE関係者には日本の高圧ガス保安法、LP法等についての相当な知見が集積されていると思います。また、受入研修において、MPE側は法制度のみならず品質の高い日本の機器についても大変興味を持っていることがわかりました。 今後、本事業の成果が結実された暁には、日本のLPG事業関係者様にとって、彼の地が大きなビジネスチャンスとなることを期待しております。 |
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以上 |