LPGC WEB通信  Vol.56  2018.11.12発行 

平成29年度石油ガス流通合理化対策事業費補助金
石油ガス地域流通事業モデル実証事業 報告書(概要)について

 当エルピーガス振興センターでは、平成28年度に引き続き、平成29年度石油ガス地域流通事業モデル実証事業モニター実施を行いました。モニター結果の詳細内容等および欧州・米国における海外調査報告内容の報告書を当エルピーガス振興センターのホームページに掲載しておりますことをご案内します。

 石油ガス地域流通事業モデル実証事業は、経済産業省資源エネルギー庁の補助金事業として「繊維強化プラスチック容器(FRP容器)の普及に向けて」モニター調査を平成28年度、29年度実施、当エルピーガス振興センターが受託した事業です。
 背景として、平成26年4月「エネルギー基本計画」でLPガス料金透明化が求められ、平成28年2月総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会石油・天然ガス小委員会の下に「石油ガス流通ワーキンググループ」が設置され、5月の報告書において、「繊維強化プラスチック容器(FRP容器)の普及に向けて保安分野も含めた国としての施策の検討に資するよう、国の予算を利用した実証事業等を通じて、流通形態のあり方や保安の確保等の課題への対応策をまとめ、速やかな環境整備の構築を目指す」と提言されました。
 実施した内容は、消費者が実際にFRP容器を安全・安心に使用できるよう、取扱説明書を含め周知徹底し、FRP容器等を使用する上での安全上の問題点等の把握やLPガス販売事業者等による緊急時対応等の保安管理体制の検討等に必要となる情報収集を実施しました。
 しかし、平成29年度のモニター実施開始前にFRP容器のバルブガス漏れ事象が発生したため、その対応等に多くの時間を費やしました。その間、平成28年度委員会で要望があったFRP容器に特化した海外調査として、欧州(ノルウェー、フランス、イタリア)や米国の最新の普及実態、保安等の規制や使用期限、再検査、廃棄リサイクル等の調査を実施し、併せてFRP容器バルブの調査も行い、普及に必要な取組みの参考となる情報を収集しました。
 さらに、上記安全調査と欧米調査結果について、幅広い方々が参加できる有識者懇談会を開催し、意見等を聴取、実証事業から得られた課題と今後の取組みの方向性をとりまとめました。

1.モニター調査
【モニター実施の調査結果】
 石油ガス地域流通事業モデル実証事業モニター実施は、平成28年度と29年度で行い、液化石油ガス法の質量販売の下で7.5㎏FRP容器の使い勝手や安全に使える等のアンケート調査を実施しました。モニター実施に協力いただいたLPガス事業者は、28年度5社、29年度7社で、地域は東北・関東・中部・近畿・九州エリアで行いました。
 アンケート調査結果から、FRP容器の認知度は約20%以下と低かったものの、実際の取扱いでは「接続のしやすさ」「不具合について」大きな問題はありませんでした。しかし、接続・脱着時のガス漏れの認識が「シュの音」や「着臭剤の臭い」の事象でガス漏れしたと錯誤された消費者の回答がありました。
 安全面は、「不安を感じることなく消費者責任で使用できるか」の問では、一定の知識があれば使えると回答した方が大半を占めました。また、消費設備の消費者責任の認知度は半分に満たない実態、LPガス販売事業者等の緊急時対応等(30分駆けつけ)の関連質問も消費者の認知度が必要となる結果でありました。
 一方、FRP容器等の普及に関する意識動向では「普及を望む」が約59%に達しており、特に都市ガス・電化世帯の声が強い傾向であり、使用用途は災害時用、屋外利用、衣類乾燥機用の順でありました。また、FRP容器1本の購入価格は、希望2,000円以下が半数以上を占め、今後の普及にあたっては重要になってくると思われます。
 改めて①FRP容器等の使用方法や利用時に起きうる状況の周知の重要性、②安全性の高い器具等の普及を前提に消費者責任の認識を広めることの重要性が明らかになりました。

【今後の普及に向けた課題と取組み】
 平成29年度実証事業開始前に起こったFRP容器カップリングバルブのシート部からのガス漏れの事例が発生し、その対応に大半の時間を要したこともあり、モニター実施期間が大幅に短縮されました。(現在は、改良品バルブと元バルブ連動のガード対応となっている)
 消費者が接続できるFRP容器カップリングバルブの特性を活かし、本格的な普及を図るためには、より一層の安全性や調整器等の接続し易さを追求した製品の開発と、これらの製造する関係団体の垣根を超えた連携と努力が望まれます。
 平成30年1月、50ℓ以下(20㎏)FRP容器技術基準が承認され、今後、流通用容器が国内生産・販売も開始されることもあり、FRP容器の廃棄リサイクル等の整備が必要と思われます。また、FRP容器の再検査は、全国高圧ガス容器検査協会の会員会社で実施を進めていますが、現段階では実施できる都道府県の検査所が少ない状況です。
 FRP容器は、軽量(鋼製容器より)、ガス残量可視性、安全性(爆発しない)などの特質が有ります。7.5㎏FRP容器は消費者サイドの期待も大きいことから、積極的に取り組むLPガス販売事業者への支援策と質量販売の保安規制の的確な見直しなどの環境整備することが必要と思われます。


2.海外調査
 海外調査は、平成28年度モデル実証事業の委員会での「FRP容器に特化した調査」の要望を受けて、9月欧州地区、10月米国を調査して報告会「有識者懇談会」で概要を報告し、詳細な内容等を事業報告書にまとめました。
 欧州調査は、FRP容器の製造・販売会社より①FRP容器の製造技術等②出荷・販売状況③廃棄リサイクル等の対応等を情報収集。フランスのFRP容器実態を販売事業者2社とフランスブタンプロパン協会より①FRP容器の販売実態②FRP容器販売に関する保安関係の規制等③その他関係基準等を情報収集。併せてFRP容器バルブの日本との相違点等(取扱い差や機器の構造等)も調査しました。
 米国調査は、FRP容器の価格が高いとの意見等があり、鋼製容器が中心となっている現状で、ほとんど普及していないのが実態でした。米国の協会3団体と販売事業者2社を訪問してLPガスの法規制に関する内容や質量販売中心の保安関係および販売の実態等を調査しました。
 この調査で感じたことは、質量販売中心で、責任区分が製造者、販売者、消費者おのおの明確化している点と、FRP容器の取扱い等が消費者フレンドリーで流通しているように思われました。
【お詫び】
FRP容器の使用期限を再度、Ragasco社に確認依頼して回答に時間を要したため、この時期の報告となったことをお詫び申し上げます。

おわりに
 質量販売におけるFRP容器の実証事業は、この2年間で終了しますが、今後、更にエネルギー間競争が進む中、LPガス販売事業者には新たなサービス形態が求められて行きます。FRP容器の普及促進が新たなLPガス需要拡大の有望なツールとなる得ることを期待します。


(調査研究部/柳田 時男)