LPGC WEB通信 Vol.55 2018.10.10発行
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東北地方LPガス懇談会の概要 |
去る9月3日に東北地方LPガス懇談会(青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県)、を開催しましたので、次の通り概要を報告します。 東北地方では、 ①料金透明化・取引適正化の現状と対応 ②東北地方の人口高齢化とLPガス事業の展望 ③災害対応への取組と期待 の3テーマに基き、消費者委員、学識経験者委員、事業者委員の各1名よりそれぞれプレゼンいただき、テーマ毎に委員間の活発な意見交換が行われました。 今後、近畿(10月5日大阪市)、中部(10月16日名古屋市)、九州・沖縄(10月 30日福岡市)、四国(11月12日高松市)、中国(11月30日広島市)の各地方懇談会を順次開催し、このWEB通信にて概要を報告してまいります。 |
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1 LPガス懇談会の概要 |
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(1)目的 LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、 事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、 関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。 (2)方法 全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。 (3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等 事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等 学識経験者委員……知見を有する大学教授等 有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等 自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署 経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部 オブザーバー………LPガス業界関係者等 |
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2 議事次第 |
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(1)開会挨拶(北関東・南関東共通) 東北経済産業局 資源エネルギー環境部 瀧川 利美 部長 エネルギー自由化で、電力、都市ガス、石油、LPガスの垣根を越えた競争が進む中、人口 減少や技術革新等エネルギー需要構造の変化への対応が課題である。供給源の拡大、脱炭素 社会の実現に向けたエネルギー政策の方向性が第5次エネルギ基本計画に示され、LPガス は引き続き災害時エネルギー供給の最後の砦と位置付けられた。課題である、料金透明化・ 取引適正化を更に進めるべく、忌憚ない意見をいただきたい、と述べました。 (2)資源エネルギー庁からの説明 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 目黒 浩 課長補佐 昨年度のLPガス料金公表状況調査で、青森県は前回のワースト3位から今回トップ2位に 伸びたほか、東北各県は全て公表率70%超となったことは、各県協や行政、東北経産局の 尽力の下、事業者が本気で料金透明化・取引適正化に取り組んだ結果であり、この気運をさ らに伸ばしてほしいと要請。また、「LPガス料金不透明・エネ庁が全国調査へ」との前日 (9月2日)の新聞報道に触れ、集合住宅のLPガス料金への屋内設備費用上乗せ問題等に 対し調査を開始すること、災害対応バルク設置補助金予算の増額について概算要求したこと が示されたほか、当該予算を利用しGHP等の設置によるLPガス常用常設に向けた事業者 及び自治体の取り組みを希望する旨の呼びかけがありました。 (3)産業保安監督部からの説明 「管内の液化石油ガス一般消費者等事故について」 関東東北産業保安監督部 東北支部 保安課 宍戸 浩紀 課長補佐 東北地方では全体的には事故数は漸減傾向にあるが、消費者の誤操作による事故の割合が高 く注意を呼び掛けるとともに、雪害も多いため冬期に向かい監督部としても注視していきた いとのコメントがありました。 |
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(4)懇談 テーマ1.料金透明化・取引適正化の現状と対応 「LPガスの消費生活相談事例から販売方法を中心に」 消費者委員:日本生活協同組合連合会 組織推進本部 北海道・東北地連 井形 貞祐 事務局長 井形委員は、LPガス料金の不透明性について資源エネルギー庁が集合住宅関連の調査に踏み込むことを高く評価する一方、地方ではLPガス事業者の自由競争継続の困難さ、自由に事業者を切り替える環境にない点を指摘、その上で同連合会による調査結果をもとに、東北地方において料金透明化・取引適正化が未だ実態として進んでいない点があること、同一使用量でも消費者により料金のバラつきが大きいこと、検針票・請求書・領収書の実例を紹介し、料金内訳が不明確な例を挙げ、事業者からの十分な説明と、引き続きの安全の確保、持続可能な適正な価格、安定供給の三要素を求めました。 目黒課長補佐は、この競争環境にないとの見方、及び事業者委員からも消費者が昔からの付き合い重視で競争を求めていない点が挙がったことに対し、これらはオール電化との競争という点では当てはまらず、LPガス事業者は料金透明化・取引適正化を進め信頼性を高めないと、自由化となったエネルギーの中でLPガスが選択されないと警鐘を鳴らしました。 また、学識経験者委員の東北大学大学院の吉田教授からも、不透明なものは即避ける傾向のある若い世代から選ばれるためにも、料金についての説明はコミュニケーションの一として捉え、敷居の低い料金透明化への取り組みの提案がありました。 テーマ2.東北地方の人口高齢化とLPガス事業の展望 学識経験者委員:東北大学大学院 経済学研究科 高齢経済社会研究センター長 吉田 浩 教授 吉田委員は、日本の高齢化予想の研究から、今後生産年齢(勤労)層は減少するが65歳以上の高齢層は減らず、いかに少ない労働力で多くの高齢層を支えるかが課題であるとして、特に東北地方はその傾向が顕著であることを指摘しました。 東北地方での高齢化予測で、2045年では東北6県のうち宮城県を除く5県が全国の高齢ベスト5となること、また全国の世帯数の将来推計で単身世帯女性の比率は、今後益々増加し、男性も同様であることを挙げ、LPガスの家計における支出割合が沖縄県を除き最も高い東北地方(平成29年総務省家計調査)においては、今後益々LPガスの役割が高まり、需要者としての高齢者が利用し易く、安定的な家庭用エネルギーの環境の確保が必要であると指摘しました。 事業者委員からも、LPガスは高齢化に合致した事業であり、保安を中心にコミュニケーションを深めていきたいとの表明があり、この点については複数の消費者委員より要望意見として挙がりました。反面、事業者側の高齢化や事業者数の減少により、見守り活動が厳しい状況にあるとの実状も示されました。 目黒課長補佐からは、この説明を受け、政策立案する立場としてより一層真剣に高齢化対策に取り組む必要性を感じたとして、LPガスの運び手減少の問題を挙げ、燃料供給インフラの方向性をワーキンググループで検討した結果の一部として、配送回数の合理化と見守りサービス維持の両立を図るべく、AIやIOTにより過疎化や少子高齢化に対応していく等、工夫の必要性について示唆がありました。 テーマ3.災害対応への取組と対応 事業者委員:宮城県LPガス協会 渡邉 政博 会長 渡邉委員は、宮城県内10カ所の中核充填所の配置状況や情報伝達・稼働訓練の状況、自治体との防災協定締結状況、及び災害対応バルクの設置状況等を説明しました。また、同協会が用意した包装食袋を配付し、これを使用して炊飯する非常炊き出しを紹介しました。 これを受け、消費者委員の岩手県婦人消防連絡協議会の千葉会長より、東日本大震災で炊き出しを担当した際の実例紹介がありました。高齢者やひとり暮らし世帯の安否確認にはじまり、ライフラインはLPガスを除きすべてストップの状態の中で、LPガスで暖かい味噌汁と握り飯を提供できたのは何よりも救いであり、以降LPガスと炊き出し釜をトラックに積み支援活動を拡げた経緯を説明すると共に、事業者・行政・消費者の連携と情報共有は、日頃のコミュニケーションから培われると力説しました。 |
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(5)総括コメント | |
東北大学大学院 経済学研究科 高齢経済社会研究センター長 吉田 浩 教授 | |
本日の意見交換は、料金透明化と地域とLPガス事業の関わりに集約されるが、前者は全国レベルの市場競争への対応、後者は東北の地元、競争というより消費者、事業者の連携や協力を通じた高齢化や災害への対応と、方向性が大きく異なる。 しかしこの2点は全く別の話ではなく、LPガス及びその供給事業者に対し、消費者に信頼を持ってもらうという点で繋がっており、料金・契約の内容をきちんと消費者に示すことが信頼を生み、災害時のみならず日頃の生活でLPガスが使い易く馴染み深いエネルギーとなっていることが大切である。 この消費者との信頼、地域の持続を通じて共存共栄していくには、幅広い意味でのコミュニケーションが重要。1つは料金の内訳を示し定期的に契約内容を伝えていくという取引を通じたコミュニケーション、もう1つは地域への貢献を通じてLPガス市場を持続させていくための、事業者間及び監督官庁とのコミュニケーションであり、これらを進めることでLPガス需要市場の近代化を図るべきである。 高齢化と震災の経験においてトップランナーである東北がモデルを示し、全国の参考となってほしい。 |
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3 開催風景 |
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仙台市で開催した東北地方LPガス懇談会での会議風景 |
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東北経済産業局 資源エネルギー環境部 瀧川部長の開会挨拶 |
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LPガスの災害対応の重要性について説明する資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 目黒課長補佐 |
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「料金透明化・取引適正化の現状と対応」についてプレゼンする井形委員 |
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「東北地方の人口高齢化とLPガス事業の展望」についてのプレゼンと総括コメントをいただいた吉田委員 |
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熱心に意見する消費者委員 |
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取り組み状況を説明する事業者委員 |
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(広報室/野村 晃久) |