LPGC WEB通信  Vol.54  2018.09.10発行 

北関東地方及び北海道地方LPガス懇談会の概要

 去る7月27日に北関東地方懇談会(茨城県・栃木県・群馬県・新潟県・長野県)、8月17日に北海道地方懇談会を開催しましたので、両懇談会の概要について報告します。
 本年度はより一層議論が深まる様、予め設定したテーマに基き議論する形式とし、圏内全域の共通課題について、文字通り一堂に会し活発な意見交換となりました。
 今後、東北(9月3日 仙台市)、近畿(10月5日大阪市)、中部(10月16日名古屋市)、九州(10月30日福岡市)、四国(11月12日高松市)、中国(11月30日広島市)の各地方懇談会を順次開催し、このWEB通信にて概要を報告してまいります。

LPガス懇談会の概要
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等
       報道関係


議事次第
北関東地方LPガス懇談会
(1)開会挨拶(北関東・南関東共通)
       関東経済産業局 資源エネルギー環境部 長嶋 繁 地域エネルギー振興企画官
  様々なエネルギー及び事業者を自由に選択できる状況となり、LPガスが選ばれるため
  に、料金透明化及び取引適正化の推進が必要である。懇談会は地域単位に全国で開催さ
  れ、ここでの意見は経済産業行政の参考ともなり、意見交換が賢い消費生活と業界の健
  全な発展に寄与することを祈念する、と述べました。

(2)資源エネルギー庁からの説明
              資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷 浩 企画官
  先の西日本豪雨災害時や、大阪北部地震の際に避難所で活躍した、LPガスの自立型G
  HPを、今後避難所となる小中学校に導入すべく、自治体の取り組みと消費者・事業者
  からの働きかけを是非お願いしたい。また、料金透明化では、先の南関東懇談会におい
  て、神奈川県の消費者団体より、電話での料金問い合わせに応じない事業者が半分近く
  あったとの報告があり、まだ料金公表が進んでいない状況もあるので、是非厳しい意見
  が欲しい。更に、取引適正化については、集合住宅問題に関し、入居者6千人等へのア
  ンケート調査を近々行う予定である、との説明がありました。

(3)産業保安監督部からの説明
 「液化石油ガスの保安を巡る状況」
                  関東東北産業保安監督部 保安課 白井 守 課長補佐
  昨今の事故の傾向や、供給設備と消費設備の区分について、また販売事業者・保安機関
  による保安業務の時期と頻度等について説明があり、LPガス保安については、事業者
  だけではなく、消費者も注意してほしい旨のメッセージがありました。

(4)懇談
テーマ1.LPガスに今後求められる需要と販売・供給形態
    「LPガスの新たな需要」
                有識者委員:富士瓦斯株式会社 津田維一代表取締役社長
東京都の事業者である津田委員によるプレゼンでは、非在来型の消費機器として同社が取り扱う、電源不要の屋外暖房機「パラソルヒーター」、LPガスの燃焼で発生するCO2で蚊を寄せ集めて採る「モスキートマグネット」、LPガス発電機、FRP容器について紹介があり、LPガスの特徴を活かしたこれらの消費機器による需要創造は、家庭業務用需要が減少傾向にある中で、有望であるとの解説がありました。
また、災害時にLPガス事業者が連携して機能すべく組織され、同委員が主宰する「NPO法人 LPガス災害対応コンソーシアム」の活動内容について説明がありました。
BCP・BCMS構築の支援や、災害時のシステム連携、広報活動や災害需要の開拓のためのノウハウ共有が同コンソーシアム設立の意義と役割であり、今後の活動が期待されます。

これに対し事業者委員より今後の取組について、消費機器による需要構築に関しては、安全・便利・快適を追求した最新機器のメリットを、キャンペーン等での積極的なPRやホームページ、パンフレット等で確り説明し理解を得ることで、LPガスの需要維持を図っていくとの意志表明があり、一方で、FRP容器の普及には、質量販売に対する厳しい規制と煩雑な手続きで積極的になれない事業者が多く普及速度に影響しており、経済産業省に対し質量販売に取り組みやすい環境づくりを求めました。
また、災害対応コンソーシアム活動に対する賛同と期待に加え、災害対策マニュアルの策定や中核充填所における防災訓練の状況等、県協会ベースでの活動紹介がありました。

津田委員や事業者による、LPガスのメリットを活かした消費機器や災害時に最も有用なエネルギーであるLPガスについての説明に対し、消費者委員はより一層の関心を深め、実際に最新消費機器を見たい、集会所や公民館に設置してほしい、FRP容器はより一層のPRを望む、との声が上がりました。また、料理はLPガスが一番としながらも、災害時を強調し過ぎると、LPガスは災害用エネルギーでエネルギー政策としてはオール電化なのではと誤解されないかとの指摘、流通合理化による価格低減を望む意見、震災時に倒壊しない容器や設置の考案を望む声等が上がりました。

これらの意見交換を受け、谷企画官より、災害時は特に公共施設ではカセットコンロでは不安であり、LPガスの常備は必要と考え、また料理や空調・給湯以外にもLPガス車のタクシーが大活躍したことで、大分県や神奈川県の公用車にLPガス車を採用しており、様々な場面で災害への強さが発揮されるLPガスの起用を、公共における取組として必要と考える、とのコメントがありました。


テーマ2.エネルギー自由化時代においてLPガスが選ばれ続けるために
          有識者委員:一般社団法人日本ガス協会 地方支援担当 角田憲司理事
角田委員によるプレゼンでは、都市ガス業界出身かつLPガス事業経営の経験から、都市ガスとLPガスを俯瞰しながら、①「料金透明化・取引適正化問題に関して、どこまで根本的な解決を図るか?」及び②「LPガス需要の負のスパイラル化に、どのように歯止めをかけるか?」の二つのサブテーマで解説がありました。

①では、標準的料金メニューの公表は「1丁目1番地」であり、戸建・集合住宅ともに「平成」のうちに実現すべき。その上で、料金透明化・取引適正化指針の各項目ごとに業界団体等が自主的公表ルールを作成し、事業者が取り組み状況を自主的にホームページで公表する「LPガス版ミシュラン制度」の提案があり、国の関与の強化も必要だが、北海道生協連による調査を例に消費者団体からの問題提起に応えていく事業者の自主努力が必要と提言しました。
また②では、売れ行き好調な「LPガス衣類乾燥機」を例に、成り行きではなく、コミュニティユースや屋外設置、FRP容器との併用やリース・レンタルの提案等、発想を転換してマーケティングを行って需要減少を、さらに同様に好調であるGHPを例に、業界団体による普及活動への取り組みについて提案がありました。

これらの説明に対し、事業者委員としても、料金透明化・取引適正化については消費者の要望が省令改正やガイドラインの形となったと解し、直ちに料金メニューの公表を終えた上で、原点に戻りお客様目線で改善対応していくとの姿勢や、配送事業の効率化によるLPガス事業継続と経営の安定化を果たした上で、高安全・高効率機器のPRやヒートショック・悪質訪問勧誘等の消費者への情報提供、自治体による省エネサポート制度への参画等の取り組みについて表明がありました。

料金透明化・取引適正化について、消費者委員から、プレゼンにもあった「顧客の囲い込み」で事業者間競争やアパート家主への便宜供与に消費者が翻弄される実情を浄化し、消費者の信頼につなげてほしい、との厳しい指摘と要請がありました。
これに対し谷企画官からも、(アパート家主への便宜供与について)事業者も先んじると不利益を被ることとなるので、共通の敵に対し一致団結して、大家に貢げ続けることをやめてほしい、そして料金公表は、県協や支部単位の牽引で平成のうちに終えてほしい、との提言がありました。

(5)総括コメント
                       青山学院大学 総合文化政策学部 内山 隆 教授
数十年に一度の大災害が、県を越えて多発しており、経済産業局の管轄も跨る一段広いレベルで連携することが重要となっている。
また、避難所では、スマートメーターによる常時監視も検討する必要がある。

LPガス料金については、自由料金というからには原価は言い訳にならず、消費者が認める価格を提示したところが勝ち、という状況が到来する可能性がある。
「ハガキ」は原価を反映せず、全国均一に62円で届くユニバーサルサービスであるが、LPガスの世界ではこの概念が欠けている。今は、競争料金でいこうとのトレンドなので、現時点でその深堀が急務ではないが、消費者側の意識が変化する可能性がある。

「モノ」を売ってはいけない、とはマーケテイングの教科書にある鉄則だが、売るべきは消費者が抱える問題を解決する「サービス」であり、何がベストソリューションになってくるか、との発想で問題解決を図ってほしい。


北海道地方LPガス懇談会
(1)開会挨拶
        北海道経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課 清野 正樹 課長
LPガスは、第5次エネルギー基本計画でも引き続き「最後の砦」の位置づけとなり、垣根を超えてエネルギーサービスを競う時代において、選択されるエネルギーであり続けるために、消費者とのさらなる信頼関係の構築が期待されている。北海道や札幌市との情報交換や資源エネルギー庁とも連携の上、懇談会での意見等を今後のLPガス行政の施策に反映させていく所存であり、活発な議論をお願いしたい、と述べました。

(2)資源エネルギー庁からの説明
              資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷 浩 企画官
エネルギー自由化で大きな変動の時期にある中、料金の公表(料金透明化)及び設備費用との合算表示(取引適正化)については、北海道LPガス協会やその支部ベースで更に進めてほしい、またLPガスの災害対応への取り組みについては、命に関わる事であり是非自治体ベースで取り組み、消費者や事業者も自治体への働き掛けを強めてほしい、と述べました。

(3)産業保安監督部からの説明
「最近のLPガス事故の発生状況について」
                  北海道産業保安監督部 保安課 多久和 誠 課長補佐
昨今の事故事例や傾向及び起因等についての、全国及び北海道における状況の説明と、通常の使用における注意事項に加え、雪害等の自然災害時の注意喚起について、消費者向けリーフレットを使用してのメッセージがありました。

(4)懇談
テーマ1.「料金透明化・取引適正化問題」の根本的解決に向けて
①有識者委員:一般社団法人日本ガス協会 地方支援担当 角田憲司理事
②消費者委員:北海道生活協同組合連合会 川原敬伸事務局長

このテーマについては、上記2委員によるダブルプレゼンを皮切りに議論に入りました。

①の角田委員によるプレゼンでは、前述の北関東LPガス懇談会で行った内容と同様、エネルギー自由化が進む中で、LPガスの標準的料金メニューの公表は「1丁目1番地」で、直ちに実現し、その上で、事業者が自主的に透明化のルールを策定し取り組み状況を公表するLPガス版ミシュラン制度の提案、北海道生協連の問題提起を例に、それに応えていく事業者の自主努力こそが、国の関与に加えて必要であることを訴えました。
また、需要開発については、優良機器の販売、料金メニュー、マーケティング等のHEMSによる見える化を推奨し、北海道ガスが、そのベンチマークとなるとの紹介がありました。

②の川原委員によるプレゼンでは、同生協連を含む「LPガス問題を考える会」として4年前からの調査と分析、即ち広大で過疎化が進みLPガスに頼らざるを得ない北海道において、料金体系の不透明さ、料金の格差(他県比及び同業者間)、解約時のトラブルの実態を整理し、このエビデンスが国の動きにもつながったとして、現時点での到達点と直近の調査結果、課題について詳しい説明と、厳しい提言がありました。
事業者には、適正価格・安定供給・安全確保の三つを望み、消費者の知る権利と選択の自由を訴えました。また、総務省北海道管区行政評価局による、「液化石油ガスの取引適正化に関する調査」(4月23日総務省報道 http://www.soumu.go.jp/main_content/000547222.pdf)は、経済産業省の動きを評価したものと捉え、全国レベルでの実施と調査結果(現時点では未発表)の波及を望むとしました。
さらに、ホームページでの料金公表については、資源エネルギー庁調査(エルピーガス振興センターによる実施)でホームページ公表を行っていると回答した事業者のホームページを実際に確認したところ、ホームページ開設の有無や料金公表の有無について事業者による過大申告と見受けられる点があることや、そもそもホームページ開設が少なく、消費者に伝える内容として希薄で分かりづらいなど、公表の姿勢について課題が残る点を指摘しました。

続いて、他の消費者委員からは、法対応は進んだが実際の料金格差の変化に実感がないこと、二部ではなく三部料金制の実現への期待、集合住宅の料金問題は大家の過大投資にも起因し社会構図を見極めることが必要との意見、さらに大学生協が学生に斡旋するアパートでのLPガス料金に関する詳細な調査結果が紹介され、単位消費量当たりの入居者間の料金格差が2倍以上となる例や、契約や料金に関する説明が徹底されていない点を挙げ、料金透明化と取引適正化を「制度」として進めてほしいとの強い要望がありました。

これらの意見に対し、事業者側としての取り組みについて説明、中小販売事業者多くホームページ開設が難しいこと、広大かつ寒冷地故の物流コスト高、及び自由料金だからこそ多数の料金表が存在する実情に理解を求める一方、集合住宅の料金問題については苦慮しており、LPガス販売事業者と大家、管理会社、消費者間で協議する必要性を唱えました。
この高物流コストの説明に対し、北海道消費者安全課より、事業者は何がどの程度といった本州との具体的な格差について見える化し、納得性のある説明が必要であるとの提言がありました。

また、事業者委員より、需要開発については、Siセンサーコンロの普及に力を入れ、北海道が全国トップの販売台数を維持しており、事故防止にもつながっている旨が紹介されました。


テーマ2.LPガス事業者に期待される役割としての「地域活性化」と「災害対応」に
     どう取り組むべきか?
          有識者委員:一般社団法人日本ガス協会 地方支援担当 角田憲司理事
角田委員より、地域の過疎化が深刻な課題であり、LPガス業界として、自治体が進める地域エネルギー事業への参画や自治体と融合して地域活性化を図っていくことが得策であるとして、奈良県川上村や北海道上士幌町での実例や、地域の災害対応力を高めるべくLPガス災害対応バルク等の導入促進の必要性について、解説がありました。

事業者委員からは、地域活動として防災訓練や出前教室の実施、災害対応バルクの設置事例等が紹介され、消費者委員からも、JRの廃線が進む中で「地域滅亡」とならぬよう、LPガスのメリットを活かし地域活性化につながる事業の発展を望む声が上がりました。
また、北海道経済産業局からも、同局の広報資料により、LPガス災害対応バルクシステムに対する補助金の説明と、砂川市における同システムの設置事例紹介がありました。

(5)総括コメント
              資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷 浩 企画官
当初、東京理科大学大学院の橘川教授より総括コメントをいただく予定でしたが、急遽欠席されたため、谷企画官が次の通り総括されました。

過疎が進むからこそ、消費者に選んでもらい需要を維持していくため、自ら改革し、消費者には客観性、合理性を担保し、丁寧な説明をお願いしたい。LPガスは不透明だ、は平成時代の(昔の)話にしてほしい。
無償配管も価格高の一因と事業者委員からあったが、この商慣行も国や自治体、消費者団体の協力に頼ることなく、また規制があるから、役所が言っているからではなく、自ら変わる必要がある。
熊本県益城町で復興が進んでいるが、ハウスメーカーは建て替え時に、料金が不透明なLPガスをプランに入れないため、LPガスの有難さを痛感した地域にも拘わらず、オール電化の割合が8割となっていることは、大きな課題であり、全国のLPガス協会はLPガス事業の健全な発展を通し国民生活の向上に資する義務があり、改善を期待する。



開催風景・北関東地方LPガス懇談会

東京都中央区で開催した北関東地方LPガス懇談会での会議風景(7月27日)


関東経済産業局 資源エネルギー環境部 長嶋地域エネルギー振興企画官の開会挨拶

災害時のLPガスの活躍について説明する、資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課 谷企画官

「LPガスの新たな需要」についてプレゼンする津田委員

「エネルギー自由化時代においてLPガスが選ばれ続けるために」についてプレゼンする津田委員

 
熱心に意見する消費者委員

取組状況を説明する事業者委員

自治体によるコメント

テーマ毎に総括コメントする内山教授


北海道地方LPガス懇談会
札幌市中央区で開催した北海道地方LPガス懇談会での会議風景(8月17日)

北海道経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課 清野課長による開会挨拶

料金透明化・取引適正化について説明する、資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課 谷企画官

「料金透明化・取引適正化問題」の根本的解決に向けて についてプレゼンする角田委員

同じく「料金透明化・取引適正化問題」の根本的解決に向けて についてプレゼンする川原委員

諸調査に基づき意見する消費者委員

 
 取り組みの現状に理解を求める事業者委員

 消費者が納得する料金説明を事業者に要請する自治体

(広報室/野村 晃久)