LPGC WEB通信  Vol.43  2017.10.10発行 

【特別寄稿】
 日本企業の海外展開の各方面に応じた総合的支援を提供します

一般財団法人海外産業人材育成協会
AOTSについて
 一般財団法人海外産業人材育成協会(The Association for Overseas Technical
Cooperation and Sustainable Partnerships, 略称AOTS (エーオーティーエス))は「経済
技術協力による開発途上国への貢献と相互の経済発展、並びにヒューマンネットワークの構
築による友好関係の増進」という事業目的のもと、50年以上にわたり主に開発途上国におけ
る産業人材の育成に携わってまいりました。管理者や技術者を日本へ招聘し研修を実施した
り、講師を現地へ派遣しセミナーを開催したり、技術指導のため現地企業や団体へ専門家を
派遣したり、といった活動を展開しています。今回は誌面をお借りして、AOTSの事業をご
紹介します。

企業の海外展開に役立つAOTSの人材育成制度
 冒頭で触れた事業のうち、AOTS設立当初から行っているのが海外現地法人や取引先ローカ
ル企業等の現地人材を対象とした育成支援事業です。人材育成の方法としては、現地従業員
を日本に招聘して研修を行う受入研修、専門家を現地に派遣して指導を行う専門家派遣の2
つの形態があり、いずれも海外に初進出する企業や、進出後の現地人材育成を希望する企業
から多く利用があります。
 受入研修では管理者や技術者を日本に招聘し、受入企業にて固有の技術の研修を実施しま
す。AOTSの制度を利用すると、研修にかかわる費用の一部に国庫補助金が適用されるほか、
「研修」査証取得のサポートや、導入として来日直後にAOTSにて基本的な日本語や日本文
化・社会についての研修を受けられます。また、受入企業での研修では、研修生は異なる文
化圏で生活をしながら、ほとんどの場合、日本語で研修を受けることになるため、AOTSでの
導入研修は利用企業から好評をいただいています。受入企業での研修では日本の優れた技術
やノウハウを実際に目にし、日本人の考え方に対して理解を深めることができるという利点
があります。2016年度は905人の研修生がAOTSの制度で来日しました。利用企業の業種は
製業のほか、IT産業や建設業など多岐にわたり、LPガスの分野では、ガス機器製造・販売会
社からのご利用もありました。



AOTS東京研修センター(上:足立区)と関西研修センター(下:大阪市)
来日した研修生は研修センターに宿泊し、導入研修を受ける。

 一方、専門家派遣では、日本企業の社員等を専門家として海外へ派遣して現地従業員に対
してOJTによる技術指導などを行うことができます。専門家が直接現地の状況や課題を確認
することができるので、具体的かつポイントを絞った指導になります。現地の従業員全員を
日本に招聘することは難しくとも、専門家派遣制度を利用すれば、部門もしくは組織全体を
対象に指導することができます。受入研修同様に経費の一部に補助が適用され、また派遣さ
れる専門家の危機管理など現地におけるサポートもAOTSが行っています。
 2016年度は製造業を中心に83件の案件がありました。LPガス関連では、2015年度にLPガ
ス供給器等の製造企業の株式会社桂精機製作所様に制度をご利用いただきました。同社では、
現地法人を中心に海外展開する計画があり、現地従業員のみで高品質の製品を製造できるよ
うに体制を整えるため、日本から社員の方1名が半年間現地に赴き、生産技術や不良率削減等
の指導を行いました。現在では日本国内と同等の品質管理体制も整い、現地従業員だけで3
交替24時間体制で生産対応が出来るまでになっています。



その他の人材育成支援事業
 AOTSでは、上述の企業向け人材育成事業のほか、省庁から委託を受け、途上国の発展に資
するインフラや法制度の整備に必要な人材育成の事業も行っています。リサイクルシステム、
流通政策、発電技術などテーマは様々ですが、そのなかで本年より、ミャンマーにてLPガス
の安全法を確立するべく新たなプロジェクトが開始しました。
 現在のミャンマーは、エネルギー不足の状態にあり、いずれLPガスの需要が急速に増加す
ると予測されています。一方でLPガスについては、安全管理の法律が整っておらず、安全規
制がない状況です。そこで今後のLP需要を見越し、ミャンマー石油化学公社をカウンター
パートとして受入研修や専門家派遣を通じ、日本の安全法制度に関する情報提供を行うことに
なりました。AOTSでは本プロジェクトの実施に際し、カウンターパートと協力し、受入研修
の企画、専門家派遣の調整、研修生受入に関する手続きなどを行っています。
 今年6月には一般財団法人LPガス振興センター、高圧ガス保安協会を含む関係団体・企業の
方々が専門家として現地へ赴き、ミャンマーの現状に関する情報収集及び日本の法制度に関
する情報提供を行いました。今後、ミャンマー石油化学公社の職員向けに日本で約1週間の研
修、続けて現地での専門家による指導が実施される予定です。ミャンマーに日本式のLPガス
関連法制度導入を促すことで、将来、日本企業の同国への進出を円滑に進めていけるような
環境が整っていくよう期待されています。

AOTSの海外ネットワーク
 最後にAOTSの海外ネットワークについて触れさせていただきます。これまでご紹介したよ
うなAOTSの事業で来日した研修生は昨年度までで延べ約18万6千人を超え、派遣された専門
家は延べ約8,600人にのぼります。そのなかでAOTSに特徴的なのは、元研修生が日本での研
修という共通の経験を基盤とし、帰国後自主的に同窓会を組織していることです(43カ国71
地域に結成)。同窓会は現地で日本語や日本的な企業文化などの普及活動を展開し、日本と
各国の橋渡し役として活躍しています。近年AOTSでは、この貴重な海外ネットワークを活か
し、同窓会や関連団体と連携しながら新規の自主事業として個別の企業・団体のニーズに応
じたセミナーの企画実施、海外の情報配信、ビジネスパートナー紹介、ビジネス交流などの
独自のサービスを開始いたしました。


 4年に1度、世界各地にある同窓会代表者が集まって会議を行う。2014年度の第9回同窓会
代表者会議では38カ国から235名が東京に集まった。

*2017年7月1日より、英文団体名称変更に伴い団体の英文略称がHIDAからAOTSになりま
した。


 パートナー紹介の一例。日本国内でブラジル金型協会の会員企業と日本企業との商談会を
実施。


 このようにAOTSでは人材育成を柱とし、企業の海外展開、途上国の発展を支えています。
もし、本稿をお読みになり、AOTSの活動に関心をもたれましたらぜひお問い合わせくださ
い。(URL: http://www.aots.jp/