LPGC WEB通信  Vol.37  2017.04.10発行 

LPガス国際セミナー2017 講演内容(前編)
  LPガス国際セミナー2017を、3月7日(火)~8日(水)にわたり日経ホールを会場に開催
しました。今月号では、3月7日(火)それぞれの講演者のプロフィール、講演内容をご紹介
します。




Ⅰ.講演内容

1.基調講演:IHSマーキット社(米国) バイスプレジデント ウォルト・ハート氏
「成長するLPガス供給に対する世界末端消費マーケットの最新状況」



【略歴】
2006年パーヴィン&ガーツ社に入社、2011のIHSマーキット社によるパーヴィン&ガーツ社買収により、
今日に至る。ヒューストンオフィスを本拠に、主としてNGLとライトナフサの分野を担当しているが、石
油化学、代替燃料、バイオ燃料でも顕著な経験を有する。ノートルダム大学でケミカルエンジニアリング
学士号、チャールストン大学でMBAを取得し、ウェストヴァージニア大学でケミカルエンジニアリング博
士号を取得している。公認プロフェッショナルエンジニアであり、ガス処理協会と米国化学工業会のメン
バーでもある。


【講演内容】
・米国の天然ガスの需要は、発電用のみが伸びており、今後も電力とLNG輸出にけん引され
 て成長する。
・米国の天然ガス生産は2017年半ばに上昇に転じる。
・米国の原油供給も底をうち、現在の価格は$50台よりも高いレベルになりつつあるが、原
 油市場はほぼバランスをしており、さらなる価格の上昇が限界になりつつあることを示し
 ている。
・原油と天然ガスの価格差は維持されると予想している。
・天然ガス生産が増えることにより米国とカナダのLPGは引き続き高い伸び率で増産され、
 他の地域も増大している。
・世界のLPGの供給は、4つの主なソースである中東、米国、ロシア、中国がけん引してい
 る。
・LPGの生産は、米国とロシアはガスプロセッシングによる供給が、中国とインドは製油所
 生産が、増えている。
・中東のLPG生産も成長が続くであろうが、全てが輸出されるわけではない。トランプ大統
 領の政策でイランの生産と供給は変わる。
・米国のプロパンは、価格が低くても国内需要がガスプロセッシングからの供給に追いつけ
 ないので、輸出せざるを得ない。米国のブタンは、プロパンより国内需要があるものの飽
 和状態であり、出荷基地能力が向上したので、輸出が増えるだろう。
・米国のLPG輸出の劇的な増加が、世界のLPG貿易の流れを大きく変えた。米国は世界最大
 のLPG輸出国であり続ける。
・世界のLPG需要の成長の大半は限られた地域がけん引しており、既にそれらの地域に対し
 ては必要とするよりも多くのLPGが供給されている。
・世界のLPG需要の約半分をしめるのは、米国、中国、インド、サウジアラビア、日本の5ヵ
 国である。
・米国は国内需要が伸びておらず、中国は家庭業務用と石化用が伸び、インドでは家庭業務
 用が伸びている。サウジアラビアのLPG需要は石化用に特化されており、石化需要が増大
 する中で 原料をエタンでなくLPGを使うので伸びている。日本では需要が下がってい
 る。
・世界の家庭業務用LPGの需要は堅調に推移し、石化用の需要はより急速に成長する。世界
 のLPG需要はアジア(特に中国とインド)と中東がけん引し続けるであろうし、供給と需
 要のバランスは石化用がとるであろう。
・家庭業務用のような特別な需要の成長が我々の予測を下回れば、世界のLPG価格は下方傾
 向になり、石化原料需要を刺激する。世界の需要は家庭業務用により支えられているが、
 石化原料用途がマーケットを浄化するメカニズムは続く。
・LPGを原料とする石化マーケットの上位10ヵ国は、米国、サウジ、中国、日本、オラン
 ダ、イラン、英国、ロシア、タイ、韓国である。
・世界のエチレン生産の成長をけん引するのは、主にエタンを原料とするエチレンである。
 エチレン用にはエタンが最も得率が高く80%の収率である。
・世界のプロピレン生産の成長をけん引するのは、主にPDHのような目的生産製法によるプ
 ロピレンである。
・PDHによる生産量を消費するのに十分なプロピレン需要そのものはあるものの、他の目的
 生産製法によるプロピレンとマーケットで競合すると思われる。
・増加を続ける米国のLPG輸出は、飽和している南米や競合が激しい欧州よりも、北東アジ
 アにシフトする必要がある。北東アジアの輸入の大半は、今後の10年の終わり頃には、米
 国とカナダからになるであろう。
・中東のLPGは、東南アジアの輸入の独占を続け、成長が続くインド等の南アジアにも向か
 う。
・世界の海上輸出はプロパンリッチになりつつあるが、需要はブタンも欲しているのでブタ
 ンにはプレミアがつく。
・プロパン価格は今後10年間、原油価格に対して弱含みである。
・米国のプロパン価格は、輸出基地設備の不足により低く抑えられてきたが、設備も増強さ
 れたので国際指標価格との差異が変わっていくであろう。もし米国輸出基地能力が輸出需
 要に追い付けば、米国LPG価格のトレンドは国際指標価格のトレンドにもっと近づくであ
 ろう。



2.田久保憲彦氏(経済産業省 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 企画官)
「我が国の液化石油ガス産業の現状」




【講演内容】
・IHSマーキット社からの講演の世界のLPG需給の通り、我が国の需要は伸びていない。
・自然災害が多い我が国で、LPGは役に立ってきたエネルギーである。受給は自然原理に任
 せているが、LPGをいかに残していくか腐心している。
・現在の需要は1,400万トンで、家庭業務用が44%、産業用20%、石化用20%となってお
 り、ピークの1996年の1,970万トンより減少している。特に家庭業務用の減少が大きい。
・需要創出については、家庭業務用を小売価格低廉化により増加させる。小売事業者は全国
 に2万店あるが、小売価格が示されていないので一般消費者はLPG価格が高いとのイメー
 ジを持っている。そこを改善していきたい。
・一方で、2012年より米国産のシェールガス随伴LPGは輸出が増加しており価格も下がって
 いる。米国産LPGの輸入等による供給元の多様化を国も後押ししている。
・供給多様化等により輸入価格が下がっても、小売価格は弾力的でない現状である。
・国家備蓄は150万トンのタンクを2017年中に満タンにする計画である。民間備蓄は1981
 年から輸入者に50日分を義務付けているが、民間備蓄義務軽減を考えている。
・LPGからオール電化への流れがあるが、その逆もある。いかにLPGの需要を確保していく
 かが問題である。
・カラフルで軽量のプラスチック製のFRPの普及も課題である。
・オートガスについては災害時に活躍したが、直近5年間で4万台減って21万台となった。検
 討課題として、ブタン価格が高いのでブタン混合ガスを考える必要がある。
・LPG産業の基盤強化として、維持管理コストが高いので、これを削減するために状況把
 握、遠隔操作、保安が一体となった集中管理システムに補助を出して普及を図っている。
・LPG関連産業の国際展開では、日本基準をベースとしてベトナムと販売提携した日本販社
 がベトナムで2位となった事例と、バングラデシュでも6万台のプリペイド式機器を受注し
 た事例がある。
・ベトナム、ミャンマーでは国として海外市場調査を行った。民民レベル、官官レベルで対
 話し、需要の見込まれる答案アジア諸国でのLPG拡大をサポートする。



3.松澤 純氏(日本LPガス協会 会長)
「エネルギー環境の変化と日本LPガス協会の取組み」



【講演内容】
・2015年度の消費量は1,440万トンとピーク時の7割強であった。各用途で緩やかに減少して
 いる。
・供給は、輸入が8割弱、石油精製と石油化学からの国内生産が2割強である。
・輸入ではシェールガス革命以降、米国が大きくシェアを伸ばし、2016年実績で3割のシェア
 となりトップに台頭した。拡幅工事が完了した新パナマ運河を利用すると、ヒューストンか
 ら日本への航海日数は従来のアフリカ喜望峰周りの約45日から22日程度まで短縮された。
・価格は、米国からの輸入量増加に比例し、中東産価格がマーケットリンクの米国価格に追従
 する傾向にある。2011年からCP熱量比では年平均で原油以下の価格レベルで推移してい
 る。
・世界のLPG生産量は2025年に3億5千万トンを超える見込みである。米国を中心にさらに輸
 出数量の増加が見込まれている。
・日本政府の「長期エネルギー需給見通し」で、一次エネルギー供給においてLPGは2013年
 度実績で3%であったが、エネルギーミックスにおいては2030年度も3%程度と明記されて
 いる。
・当協会では2030年度の需要目標を、ピーク時の1,970万トンに設定した。LPガス業界の存
 亡を賭ける意気込みをもって実現に向けた努力が要請される。
・新しい事案として、国土交通省が定める「公共建築工事標準仕様書」にバルク貯槽が記載さ
 れた。また、トヨタ自動車の次世代型タクシーであるハイブリッドLPG車「ジャパンタクシ
 ー」が2017年内に発売される予定である。
・熊本地震備蓄法に基づき、災害時石油ガス供給連携計画が、初めて経済産業大臣名にて発動
 され、LPG燃料の移動式発電ユニットは、遠くは北海道から地震発生5日後に移動・配備さ
 れた。
・災害対応型バルク供給システムは、2017年度の補助制度拡充に伴い、さらなる普及が進
 む。発生直後の3日間程度をいかに乗り切るかが重要な課題である。さらに、移動式電源車
 を配置する等の災害時における輸入基地出荷機能の強化を図っている。
・これまで地域独占型であった電力と都市ガスの自由化に向けた段階的な規制緩和措置が進め
 られている。LPG業界においても、「料金の透明化」「流通の合理化」等、流通環境の整備
 に力を注ぎ、消費者から支持され選択されるエネルギーとして、さらなる競争力の強化が必
 要である。



4.エンタープライズ・プロダクツ社(米国) マネージャー ジョー・ファスロ氏
「国際的な重要性が拡大する」



【略歴】

2008年マイアミ大学卒、クレディ・スイス・プライム・サービシーズで勤務後、2011年にエンタープライ
ズ・プロダクツ社に入社。現在、全NGL船荷の長期・スポット実行責任者である。


【講演内容】
・原油マーケットは2017年の後半までバランスすると予測されている。
・米国の全ての原油井と天然ガス井は収益を生んでいる。
・米国の原油、コンデンセート、天然ガス、NGLの供給は、マーケットに対し十分である。
・LPGの全ての道はモントベルビュー(MB)へ続き、MBから出ていく。
・米国では今、全世界のLPGマーケットの在庫機能を持っている。米国内需要と米国輸出を大
 きく上回る量のプロパン貯蔵がある。
・エンタープライズ社は49千マイルのパイプライン、2億5,000万バレルの貯蔵タンク、25の
 ガスプロセッシングプラント、22の分溜装置、10のコンデンセート蒸留装置、7のバース
 を持つ港湾輸出施設を保有している。
・2015年と2016年はエンタープライズ社が世界最大の輸出者であった。


5.三菱化学テクノリサーチ社(日本) 客員研究員 中山暢征氏
「世界のLPガスを原料とする石油化学製品の受給動向」


【略歴】
東京工大卒、三菱化学入社。三菱化学グループで主にプロセスエンジニアとして活躍してきた。

【講演内容】
・今日は、石化はどんな原料からできているかという点と、エチレンとプロピレンの需給の2
 点からプレゼンする。
・石化原料製造の大きな生産経路の一つが、原油→ナフサ→ナフサスチームクラッカーと流れ
 て生産されるエチレン、プロピレンの経路。もう一つが、天然ガス→NGLセパレーター→エ
 タン/プロパン/ブタン/NGL/天然ガソリン→ガスセパレーター→ガススチームクラッカーと
 流れて生産されるエチレンの経路。さらに、石炭から合成ガス→メタノールを経由してプロ
 ピレン、エチレンを生産する経路が、中国を中心に増加している。
・エチレンの原料は、エタン、プロパン、ブタン、原油からの直接分溜ナフサ、軽油である。
 ナフサとエタンが最も主要なエチレン生産原料である。
・2016年の世界のエチレン生産は1億7,000万トン、需要は1億5,000万トンであったが、
 2025年の生産は2億3,000万トン、需要は2億トンと予想され、需要は平均年率3.6%で増加
 すると予想。
・米国、中東、中国が世界最大のエチレン生産国/地域であり、1億5,000万トンをしめる。米
 国、中東の主要なエチレン生産原料はエタンである。中国、西欧、日本の主要なエチレン生
 産原料はナフサである
・プロパン、ブタンを原料とするエチレン生産があるのは、米国、欧州、中東であるが、比率
 は圧倒的にエタンとナフサが多く、プロパンは9%、ブタンは5%と補完原料である。
・2016年の世界のプロピレン生産は1億2,000万トン、需要は1億トンであったが、2025年の
 生産は1億6,000万トン、需要は1億4,000万トンと予想され、需要は平均年率4.0%で増加
 すると予想。
・米国、中東、中国が主な生産国/地域であり、中国が世界最大のプロピレン生産国である。
 中国のプロピレン生産は今後10年、年間6.9%の伸び率で増加する。米国と中東の生産量は
 年率2.3%、4.2%で増加する。
・大部分のプロピレンはスチームクラッカーとFCCの副生品として生産される。今後はプロパ
 ン脱水素装置(PDH)と石炭からのオレフィン生産装置(CTO)が伸びると見込まれる。
・西欧、東南アジア、日本ではスチームクラッカーが主なプロピレン供給源である。中国で
 は、スチームクラッカー、FCC、CTOが主なプロピレン供給源である。
・プロパン脱水素プロセスは、触媒プロセスでプロパンをプロピレンに変換する装置である。
 中国、米国、中東が主要なPDHによるプロピレン生産国/地域である。
・2016年のPDHによるプロピレン生産量は900万トンで、今後10年間は年率8.9%で増加す
 る。
・米国、中東、中国、西欧が世界の主要な石化原料向けプロパンとブタンの消費国/地域であ
 る。
・2016年の石化原料向けプロパンとブタンの消費量は5,900万トンであったが、2025年石化
 原料向けプロパンとブタンの消費量は8,100万トンになると予想されている。
 <2016年>
  スチームクラッカー向けプロパン消費量 3,100万トン
  PDH向けプロパン消費量 1,000万トン
  スチームクラッカー向けブタン消費量 1,800万トン
 <2025年>
  スチームクラッカー向けプロパン消費量 3,500万トン
  PDH向けプロパン消費量 2,200万トン
  スチームクラッカー向けブタン消費量 2,400万トン
・中国の石化原料向けプロパンとブタンの消費量は、2016年の600万トンから2025年に
 1,300万トンに、年率8%で増加する。中国のPDH向けプロパンの消費量は今後10年間、年
 率12%で増加するが、スチームクラッカー向けプロパンとブタンの消費量はあまり変化しな
 いと予測する。
・石化原料向けプロパンとブタンの消費量は、今後10年間米国は横這い、中東は増加、西欧と
 日本では減少する。



6.フィリップス66社(米国) ダイレクター ビル・ブリックス氏
「米国のLPガス輸出:世界の輸入マーケットに与える現在と将来の影響」



【略歴】
1996年ニューヨークのUSマーチャントマリーンアカデミー卒、20年以上に亘り石油とガス業界に身を置いて
いる。フィリップス66では12年以上海上傭船と管理に従事し現在はLPGオリジネーションを担当している。

【講演内容】
・フィリップス66はエネルギーの製造とロジスティックスの企業である。ミッドストリーム、
 石化、製油所、マーケティング、スペシャリティが主要分野である
・LPG輸出港であるフリーポート港は、開水域まで3マイル、水路の広さは400フィートで水
 深45フィートあり、年間3,500万バレルの出荷、3,000隻(バージを含む)の受入れをして
 いる。霧や混雑が少なく、安全な港である。
・同社のフリーポートターミナルは、24万トンの輸出用岩塩ドーム貯槽、4.4万トンの冷凍プ
 ロパンタンク、4基の冷凍トレイン、VLCC2隻着桟可能なバース、バースあたり2基のロー
 ディングアーム、Max2,000トン/時のローディングレート、の設備をもつ。
・米国のシェール生産は、低価格下でも続いている。
・米国のNGL生産は成長を続ける。
・生産の伸びは、短期的に以下の要因によってスローダウンする。
 -コストデフレーション
 -高規格化
 -イノベーション
 -合併統合
 -世界の経済基調
・ガスプラントの分溜で抽出されるNGLから生産されるメタンは発電用と産業用/家庭用に、
 エタンは石化用に、プロパンは石化用と産業用/家庭用に、ブタンはガソリン添加用と石化
 用に、ナチュラルガソリンは自動車用ガソリンとなる。今、イソブタンはガソリン添加用
 と石化用として米国内に出荷しているが、ノルマルブタンと混合して輸出する動きがあ
 る。
・米国のLPGの需要は横這いか微減で、輸出によって需給バランスをとっている。
・米国の新規のクラッカーはエタンのみを原料とし、プロパンとナフサの需要を増やさない。
・原油価格が元に戻れば、生産もあとに続きNGLの供給が増える。
・モントベルビューハブの現況は以下の通り。
 -供給余剰となった米国中のLPGは、最大の貯蔵設備をもつモントベルビューに集積される。
 -米国最大のLPG貯蔵施設である。
 -一般に開放されたものと非公開の岩塩ドーム洞穴からなる。
 -モントベルビュー及びその近隣に民間の貯蔵施設が追加されている。
 -常時50社以上がこの複合貯蔵施設を活用しているとみられる。
 -毎日平均して6~800万バレルの現物及びペーパー取引があるとみられている。
 -価格はローンスターと非ローンスターベースで付けられる。
・ベルビュー価格の決定要因
 -生産からの供給量
 -国内と世界の市場取引
 -季節要因
 -石化需要
 -貯蔵在庫量
 -計画されたまたは突然の停電や破損
 -輸出(MB価格は輸出に影響されるが、輸出だけで決まるわけではない)
・ベルビュー価格は国際マーケット指標価格に影響を与える。
・世界のLPG輸入マーケット動向
 -欧州の需要は横這い
 -中南米は家庭業務用が3/4をしめ、2016年の100万BDから2025年には120万BDに増加す
  る。
 -アフリカは発展するマーケットである。ブタンの需要が多い。
 -アジアは家庭業務用が新興国を含めて急伸しており、石化需要の伸びも大きい。


7.世界LPガス協会(フランス) ダイレクター アリソン・アボット氏
「影響が大きくなると効果が増す」



【略歴】
英仏でテレコミュニケーション系やソフトウェア系企業でコミュニケーション及びブランドマーケティング
の実績を積み、2010年から世界LPガス協会で勤務。同協会ではマーケティングとコミュニケーションのダ
イレクターであり「エクセプショナル・エネルギー」ブランドの国際普及を担当するとともに、
Women in LPG Global Networkの推進者である。


【講演内容】
・世界LPガス協会(WLPGA)は全てのLPG産業のバリューチェーンを代表している協会で、
 125ヵ国の250のメンバーが参加している。
・世界のエネルギーは不足しているにもかかわらず浪費されている一方で、炭素排出等で環境
 に悪影響を与えている。その中で、LPGは環境に優しいエネルギーとしてチャンスがある。
・2015年の世界のLPG需要は285百万トンで、供給は292百万トンで、需要の伸び3.7%に対
 し供給は4.0%と供給が上回り、プロパン価格は下落している。
・2020年までの供給の伸びは米国が著しい。イラン産LPG輸出は湾岸諸国のLPGの中でもア
 ジア、特にインド向けに潜在性を持っている。
・需要は家庭用/産業用は減少傾向が続き、オートガス市場は上昇基調にある。
・将来は経済が回復し、環境に対する圧力が強まり、LPG需要が成長する。米国の輸出は続
 く。不確定要素としては、気候、戦争、英国のEU離脱、新しい米国政権がある。何か一つ
 が我々を驚かすことは確かであろう。
・LPGには世界的な課題とチャンスがある。
・LPG需要を主にけん引するものは、経済成長、人口増加、ガスインフラへのアクセスと投
 資、環境政策、成功事例を活用し適切に制御された枠組み。
・オートガス消費、都市環境問題への対応、発電用等に将来の機会がある。世界では、30億人
 がバイオ燃料で生活している。2030年にはエネルギー効率が2倍になる。クリーン、大気汚
 染対策、健康被害除去にLPGは威力を発揮する。世界中で都市化が進み、合算すると毎年リ
 オ程度の規模の街が生まれていることになる。
・WLPGAの活動事例を紹介したい。
 -オートガスについてGAINという推進母体をもちWEBもある。
 - Cooking for Life は2012年から活動している。
 - 女性によるLPG推進活動としてWomen in LPG Global Network(WINLPG)が活動してお
  り、ナイジェリアやインドでシンポジュウムを開いた。
・LPGは可搬式で多様性をもったエネルギーであることを訴えたい。
・最後にLPGの需給面に触れる。
・2015年米国は最大のLPG生産者になった。供給ではイランをグラフに乗せた。16百万トン
 ―20百万トン生産するように予想されている。中国とインドは家庭用のLPG需要が急伸して
 いる。日本は若干需要を落としている。
・パナマ運河拡張により北米からの出荷フローが変わった。日本船が第1船として通過したの
 は象徴的な出来事であった。
・価格は下げ止まり感がある。
・欧州需要は3,700万トン、石化が41%、オートガス27%、家庭用19%、産業用11%であ
 る。オートガスの普及にはインセンティブが必要であり15カ国で政府が支援している。
 LPGは1,000万トン、車台数1,400台、スタンド数4万4,000となっている。英独仏の伸び
 は横這いでスペイン、ポルトガル、東欧が急伸している。
・国際マーケットは米国の輸出、英国のEU離脱、トランプのエネルギー政策で混迷している。
・需要もガスインフラ、投資、環境インフラにより堅調である。
・オートガスは世界15億台の車輛のわずか2%である。ロンドン、パリではディーゼル車を
 減らそうとしている。オートガスはいい解決方法だ。
・都市化が進むインドでは大気浄化に貢献している。技術が大事である。
・Exceptional Energy in ActionではWebを設けており、発電を需要拡大の面からも重視して
 いる。バージン諸島(>100MW)やガーナ(194MW+206MW)でLPG大型発電の実績が
 ある。
・WLPGAは世界ガス連盟との協調を始めた。ワシントンDCで会議を行い、 LPGはLNGの先
 行指標であり、将来の可能性を語った。

8.サウジアラムコ社(サウジアラビア) マーケティングコーディネーター
                   アリ・E・アラム氏

「エネルギーが拓く世界」

【略歴】
2011年関西大学卒。専攻は化学とマテリアル・エンジニアリング。マーケティングコーディネーターとして
COSMDに勤務し、CP推薦レポートに加えLPGターム・スポット販売、マーケットアナリシスとスタディズを
担当している。他に5年間OSPAS基地とガス部にて経験を積んだ。ラビーグ2プログラム実施部で韓国とラ
ビーグで詳細なデザインと建設フェーズを担当した。


【講演内容】
・来週国王が来日する。日本との好関係が築けるであろう。
・サウジ・アラムコは84年間総合エネルギー企業として活躍してきた。原油は2,600億バレ
 ル、ガスは300兆SCFの埋蔵量がある。
・サウジ・アラムコは1961年豪州丸で最初の冷凍船でラスタヌラから川崎までLPGを輸送し
 た。冷凍船の輸送によりLPGのマーケットを変えた。
・LPGチームはダーランを中核として、東京、ソウル、北京、シンガポール、ロンドンとニュ
 ーヨークに国際事務所があり、情報交換を密にしている。
・サウジ・アラムコはLPGのビジネスだけではない。緊急支援を2009年3月に開始し2011年3
 月の東北大震災にはカセットコンロを提供し、大いに感謝された。また熊本地震の時もお役
 に立てた。
・世界のLPGの価格は原油価格の低廉化と世界のLPG輸出拡大で影響を受けた。
・CPは始まって23年経つが2016年は競争力があった。サウジ以西の裁定取引と比較しても平
 均すると「0」であった。最低取引はスポットフレートに基づいて調整されており、ターム
 ベースで計算するとさらに悪化する。いかにCPが代替の価格より優れているかの証左であ
 る。
・2016年、サウジ・アラムコは2008年以降では最高の940万トン輸出を記録した。ブタンが
 500万トンをしめ。インドネシア、タイ、ベトナム、モーリシャス、モザンビークという未
 知の世界へ輸出した。
・2017年は840万トンのターム契約を結んでいる。信頼できる供給者として供給していきた
 い。顧客のケアとしてフレートの調整も行う。ヤンブー積みはフレート調整を行った。
・「極」サウジに来ていただきたい。

(調査研究部/亀川泰雄)