LPGC WEB通信  Vol.35  2017.02.10発行 

九州・沖縄地方液化石油ガス懇談会概要

 本年度の懇談会最後の場所となる九州・沖縄地方液化石油ガス懇談会を、去る平成28年12
月8日に熊本で開催しましたので、概要を報告します。
 (九州・沖縄地方:福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄
  県)
 本懇談会をもって、本年度予定した9場所の全懇談会が終了しました。


 液化石油ガス懇談会の概要
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、産業の健全な発展に資する。

(2)方法  平成28年度は全国を9ヵ所に区分し開催する。

(3)参加者 消費者委員…………(消費者団体等の幹部等)
       事業者委員…………(都道府県LPガス協会の幹部等)
       学識経験者…………(知見を有する大学教授等)
       自治体………………(都道府県、市町村等)
       経済産業省…………(経済産業省、地方経済産業局等)
       オブザーバー等……(業界関係者等)
       報道関係

 議事次第
(1)開会挨拶
     九州経済産業局 資源エネルギー環境部 部長 阿由葉 信一 氏

(2)基調説明
   ①「LPガスの料金透明化等に向けた取組」
      資源エネルギー庁 資源・燃料部石油流通課 企画調整係長 鈴木 裕也 氏

   ②「液化石油ガスの保安を巡る状況」
      九州産業保安監督部 保安課 課長補佐 石丸 博之 氏

(3)地方自治体からの意見・相談事例紹介について
      各県消費生活担当部署より、昨今の相談事例について紹介がありました。

(4)懇談
   ①料金透明化に関する意見交換
    消費者委員を代表し、エフコープ生活協同組合より、日本生活協同組合連合会でま
    とめた調査報告書「わが家の電気・ガス料金調べ」とその中の九州地方の状況及び
    石油情報センターによるLPガス料金比較データをもとに、LPガス料金は都市ガ
    スと比べ高く、戸建/集合住宅間の価格差も大きく、またガソリンや灯油と同じ自
    由料金であるものの、同事業者間で大きなばらつきがあり、電気や都市ガスと比較
    して消費者にとり不透明な部分が多いとの指摘がありました。



    この様な状態では、消費者の選択する権利や知る権利、また自由料金での価格競争
    によるメリットを享受できず、消費者に不利益が発生していることは明らかであ
    り、電気・都市ガス料金の自由化を契機に、料金構成の明確化等、これまで以上に
    LPガス料金の透明化を進め、更に災害時におけるLPガスの優位性をアピールす
    べきである等、業界からの情報発信の必要性と期待について意見表明がありまし
    た。

    事業者からは、都市ガスの場合は(屋内)設備費を最初に消費者が負担することにな
    っているが、これに対しLPガスの場合は、当初は事業者が負担し消費者からはガ
    ス代で回収するシステムであること、また料金の変動は、乱高下する輸入価格に影
    響するためであることが、それぞれ説明され理解してほしいとの要請がありまし
    た。

    またエネ庁は、集合住宅の入居予定者に対し、要請があれば入居契約前に不動産業
    者等がLPガス事業者名と連絡先について事前通知するように不動産事業者等に周
    知することを国土交通省に要請済であり、消費者も、こうした場合は、事業者に積
    極的に問い合わせる様、消費者委員に対し呼びかけました。
    併せて、LPガス料金については、その構成内容について消費者へ十分説明するこ
    とが一番重要であることを、各県協から事業者へ徹底する様お願いすると共に、国
    としても、ガイドライン等で事例説明を行っていく旨の表明がありました。

   ②その他意見交換
    消費者委員からは、「地域を支える頼れるLPガスへの期待」をテーマとして、消
    費者団体による啓蒙活動状況や、LPガスが選択されるために必要なこと、透明化
    以外での料金問題、契約・取引問題等に加え、熊本震災時の事業者の対応に対する
    感謝が、事業者委員からは、「LPガスの地域密着型産業としての地域貢献への期
    待」をテーマとして、サービスと保安活動強化による信頼向上への取組状況、FR
    P容器(会場に展示)普及に向けた取組状況、LPガス利用形態の多様化推進状
    況、熊本震災時の対応やその他災害への具体的対応方法等について説明があり、そ
    れぞれ意見交換されました。
    各テーマは、経済産業省/当センターの3カ年契約に基づき、継続性をもって設定
    しています。

(5)総括コメント
                        福岡大学商学部 教授 笹川 洋平氏

    過去10年間、消費者委員の皆様が指摘してきた「LPガス料金透明化」が、やっ
    とワーキンググループ(平成28年2月~4月に開催された液化石油ガス流通に関
    わる審議会)で検討され、ガイドラインで具体的な対応がなされようとしている
    が、ガイドラインとは、事業者がやるべきこと、やってはいけないことを定める行
    動指針であり、行政の要請に対し無視をした場合は、事業者名を公表する等の制裁
    が行われることが一般的である。ホームページで価格を公表するというだけでは済
    まないと思われ、業界としては、ガイドラインが定まったらすぐに対応できる体制
    の準備が必要である。

    本件が長年実現しなかったのは、零細事業者が多いという構造的な問題もあるが、
    零細事業ゆえに、高齢世帯や独居世帯等を含め消費者とのコミュニケーションを取
    りながら地域を繋げてこられたわけで、構築された関係の中で十分説明を行ってい
    くことが重要であり、料金透明化は形式だけで解決することのないようお願いした
    い。

    FRP容器の普及は、経産省、県LPガス協会、振興センターが三つ巴で積極的に
    推進してほしい。
    また事業者は、有事の際には地域の人命を守るという意味では、「公共」を背負っ
    ており、今般の熊本震災の際も、事業者様の尽力で復旧が早期に行われた。今後も
    サポートを続けられ、その中で取引透明化と消費者利益の実現に取り組んでほし
    い。

  ―― 同教授より、この懇談会での議論や発表に対し、4点ほど具体的な提案がありま
    した。

    まず、災害でLPガスが漏えいしてしまった場合、被災したにも拘わらず事業者か
    らガス代を請求されたとの消費者相談事例(熊本県。県としては事業者及び県協相
    談窓口への問い合わせを勧めた。)については、事業者も大損害を被ることから、
    支払わなくても良いことにはならないという点で、今後想定される災害の頻発に対
    応すべく、この様なリスクに対応する保険制度を提案したい。

    また、エフコープの価格調査は経年的な調査が必要であり、けん制効果も期待でき
    ることから地域事業者にヒアリングする等、理由を特定できる調査として、継続的
    に実施してほしい。

    更に、熊本県での、クーリングオフ適用可否の相談事例に関し、住宅購入時のLP
    ガス事業者との契約書に、耐用年数15年、事業者切替の際は新から旧の事業者に
    42万8千円支払う、とあったのでクーリングオフしたい、との事例は、この件で
    の対応という点とは別に、行政として、クーリングオフ制度が消費者に対し浸透し
    ているとは言えない例であり、より一層の浸透について検討してほしい。

    最後に、ガス漏えい事故においては、様々な要因と関係者が複雑に絡み合うが、正
    確な状況伝達が現場サイドでうまくいかず、不要な事故に繋がってしまうリスクに
    関し、同事故に複数の関与があり申し送りを行う場合は、ステッカーの貼付けで伝
    達を行うことで、事故の減少に繋がるのではないかと考え、産業保安監督部にこの
    検討をしてほしい。

 開催風景・九州・沖縄地方液化石油ガス懇談会

今回は震災のあった熊本で開催。会場のKKR熊本に隣接の熊本城では修復が進めてられていました。


九州経済産業局資源エネルギー環境部 阿由葉部長による開会挨拶
左は中国四国産業保安監督部保安課 石丸課長補佐
右へ順に福岡大学商学部 笹川教授、エネ庁石油流通課 鈴木企画調整係長


日生連の調査結果を説明するエフコープ生協の高田委員と消費者委員


「震災当日に食事を作ることができた」とのLPガスへの称賛と、もっとPRが必要!と激励
を併せて頂いた、熊本県食生活改善推進員連絡協議会理事の芹川委員と消費者委員



多方面にわたり熱心にご質問・ご意見を投げかけられた鹿児島県
地域女性団体連絡協議会監事の長山監事と消費者委員


 
 
料金透明化への取組について説明すると共に消費者委員からの質問に真摯に回答された事業者委員

 
消費者、事業者、行政各委員に具体的な提案を交え総括コメントする笹川教授

 (広報室/野村晃久)