LPGC WEB通信  Vol.33  2016.12.12発行 

第29回世界LPGフォーラム報告



今年の世界LPG協会(WLPGA)の総会とWLPGA主催の世界LPGフォーラムが11月14日(月)~
11月17日(木)にイタリアのフローレンスで開催されました。フォーラムは今回のテーマ「未
来への架け橋」の下で、各講演者の示唆に富んだプレゼンが行われ、また展示会には125社が
出展し盛況でした。日本からは、フォーラムの講演者としてENEOSグローブ㈱の石川副社長
が参加され、展示会にはI.T.O㈱が出展されました。


 フォーラム会場:Fortezza da Basso
会場は昔の要塞(Fortezza de Basso)の跡に建てられています。周囲を城壁に囲まれ落ち着い
た佇まいの建物です。


Fortezza da Basso内のフォーラム会場


Fortezza da Bassoを囲む城壁


 WLPGA理事会/総会/各国協会幹部会
11月14日(月)にWLPGAの理事会と総会がPalazzo dei Ccongressi及びPalazzo degri Affari
で開催され、年度予算、活動計画、新理事選任等が承認されました。WLPGAの新理事とし
て、当エルピーガス振興センターの増田理事長が松澤前理事長の後任理事に選任されました。


理事会が開催されたPalazzo dei Ccongressi


 理事就任に際しWLPGAのYagiz Eyuboglu会長と握手する増田理事長


総会開催前のJames Rockall WLPGA CEOと当センター亀川総括主任研究員



WLPGAの理事会と総会に先立ち、11月13日(日)にWLPGA事務局と各国LPガス協会のメンバ
ーが集まり、活動状況の報告等が行われました。各国協会幹部会には、日本から日本LPガス
協会の吉田専務理事と旦供給グループリーダー及び当センター亀川総括主任研究員が参加しま
した。



3 フォーラム内容
【開会挨拶】

WLPGAのYagiz Eyuboglu会長の開会の辞に続き、来賓としてGiovanni Bettariniフローレン
ス副市長、Cosmo Ferri司法長次官、Ricardo Nencini運輸省副大臣から挨拶がありました。

挨拶するGiovanni Bettariniフローレンス副市長

(1)【Round Table : The Role of LPG in the Energy Future】
          エネルギーの未来におけるLPGの役割


登壇者:進行Roger Harrabin (BBC)、Stephen Rennie (Calor Gas, UK)、David Carroll
(International Gas Union)、Dan Dorner (International Energy Agency)、Ercument
Polat (Aygaz, Turkey) 、Ashutosh Jindal (Government of India Ministry of Petrol
eum & Natural Gas)


S. Rennie氏;
  LPGの将来には、柔軟性がありクリーンなエネルギーであるので楽観視している。今後L
  PG発電のような大型で恒久的な用途が出てくる可能性がある。新技術として最大の変化
  は、来年オランダのロッテルダムで4万トンのバイオLPGの生産が開始することである。
  この他にバクテリアからプロパンを作る研究や燃料電池の開発が進んでいる。

D. Carroll氏;
  天然ガスをクリーンなエネルギーとして将来へ橋をかけなければいけない。天然ガスとL
  PGは補完性があり、また、天然ガスが開発途上国に行き渡るまでの間、LPGは重要な役
  割を果たす。一方、再生可能エネルギーやバイオマス燃料も重要性を増している。
  現在、環境の観点から石炭発電から天然ガス発電へ転換しつつあるが、経済性から石炭発
  電が続く可能性はある。

D. Dorner氏;
  IEAの2016 World Energy Outlookを発表した。今後も人口増が続くため、世界のエネ
  ルギー需要は家庭用燃料を中心に30%伸びる。需要は中国の成長が鈍化しインドが世界
  一の消費国となる。発電用エネルギーとしては再生可能エネルギーに一番将来性があり、
  二番目は天然ガスである。石炭火力発電は減少するものの2040年までになくなることは
  なく、大気汚染は続く。今、世界中で注目されているのは米国新大統領による政策の変更
  が世界に与える影響であるが、IEAとしては新政策の発表内容を見たうえで評価したい。

E. Polat氏;
  Disruption(破壊)は現在のエネルギー産業を表現するのにいい言葉である。現在のエネル
  ギーに占める化石燃料の比率は80%であるが、2060年までに50%となる。LPGは対応
  性、応用性に優れ成長する余地がある。一例としてGEがガーナで推進する400MWのLP
  G火力発電が稼働すると65万トンのプロパンを消費することになる。トルコでは、オート
  ガスの伸長が著しく、天然ガスの供給増により家庭用需要はここ15年減少しているが、
  毎年15%の車がLPG自動車に転換している。

A. Jindal氏;
  インドでは現在LPGを利用している人が7,000万人いるが1億人の潜在需要者が使用する
  可能性がある。調理用LPGは現在の1,000万トンの消費に加え2,000万トンの需要がある
  ことを意味する。また輸送用燃料としての潜在性もある。調理用燃料をバイオ燃料からL
  PGに転換する政策に基づく助成金制度の有効的活用で2030年までにLPGの使用率が30%
  まで上がる見通しである。



(2)【Session 1 : Future Market Outlook】
         未来のマーケット展望


登壇者:進行Walt Hart (IHS)、石川重男 (ENEOSグローブ)、David Appleton (Argus
Media Group)、Rob Donaldson (Targa Resources, USA)、Martin Ackermann (BW LPG,
Singapore)、Pak Basuki Trikora Putra (Pertamina)、Christophe Casabonne (Engie,
France)



W. Hart氏;
  LPGの供給では北米の生産が伸びており、米国では供給に国内需要が追いつかないため輸
  出が顕著である。米国内のLPG需要は石化の比率が大きく石化以外の需要の伸びは期待で
  きない。LPGは供給主導型のマーケットであり、北米の供給の伸びはアジアに流れる。需
  要では、北米が横ばい、中南米は家庭用が少し伸びCIS/中東も同様であり、欧州は石化
  用が少し伸びる。アジアの家庭用の伸びが一番大きい。石化はLPGと他の競合原料の経済
  性に影響される。

石川氏;
  日本政府のエネルギー政策におけるLPGの位置づけと需給動向について講演。政府はLPG
  を災害時に有効なエネルギーとして重要視している。日本は成熟市場であり、家庭用/産
  業用需要は減少が続く。供給では中東メインから北米からの輸入が急増する変化があっ
  た。さらに2016年6月にパナマ運河拡張が終わった後の北米からの輸入動向に注目してい
  たが、8月は日本元売のカーゴキャンセルが続いた。価格の影響と思われ、今後の動向に
  注視している。

D. Appleton氏;
  過去10年、LPGの世界生産は北米、中東、中国/インドの3地域で右肩上がりである。消
  費はアジアパシフィック地域の伸びが顕著でアフリカ/中東もよい。ユーラシアでは横這
  い、欧州では全エネルギーが10%減の中でバイオマス燃料が伸び、天然ガスが10%減、
  LPGと灯油が各20%減少している。アフリカではサハラ以南は木材消費が高くLPG使用は
  少ない。オートガスは東増西減の傾向がある。今後LPGが伸びるマーケットはインド/イ
  ンドネシアである。価格では今後2年は原油が上がり$60になり、それを受けて生産アッ
  プした結果、$45-50で安定すると予想している(Price Capは$30)。LPG価格は2017年
  は$300前後となろう。

R. Donaldson氏;
  米国は世界で供給のパートナーとなっている。米国生産NGLの90%はガス由来である。リ
  グ数は今も増えており、石油価格との兼ね合いであるが、エタンが減少しNGLが増えてい
  く。フィールドプロダクションの成長は続きプロパンの生産増も続き、生産コストが改善
  していく。その結果、米国のLPG輸出量/輸出潜在供給量が増え港湾出荷設備に対しオー
  バーフローしていたが、新規増設したため、米国のLPG輸出はさらに拡大していく。

M. Ackermann氏;
  フレートマーケットはバルチック指標が2009年以降最安値の2万$/日で最高値の40%に
  なっている。要因は船舶数の増加で、2015年-2016年に船舶数が20%増えた。2018年か
  らVLGCのスクラップが行われるのでフレートマーケットは安定するであろう。フレート
  マーケットは北米で高くアジアでは弱く、また北米の出荷設備はコストが高い。LPGマー
  ケットは、米国国内需要は低調(消費は2017年は前年比1.7%減)だが、中国輸入増で価格
  が上昇する。欧州と日本の輸入は引き続き減少する。北米の輸出増は続き世界の輸出増の
  70%を米国が占めることになる、開発途上国の家庭用LPGの伸びが今後の期待である。

P. B. T. Putra氏;
  インドネシア政府による灯油のLPG転換プログラムが功を奏し、LPGの消費量は2011年
  440万トンから2016年は700万トン、2017年は730万トンに増える。一方で供給インフ
  ラが課題で、LPGは中東から直接輸入しているが、輸入量は4,000トン/日から1万7,000
  トン/日に増加したため、輸入冷凍ターミナルを新設したりアルンとボンタンのLPGタン
  クをアップグレードしたりする他に高圧基地も各地に建設する予定である。

C. Casabonne氏;
  LPGは多くの企業が携わるダイナミックな産業である。LNGがコスト積上げ価格であるの
  に対し、LPG価格は生産者価格とスポット価格の双方を反映し、契約内容もフレキシブル
  である。今の買手市場はしばらく続く。アジアのLPG価格はCPの影響が大きいが、北米の
  ガス価格に近づいてきている。北米のNGL価格はMB価格との差が縮まった。LPG/LNG
  は供給増により価格が下がったので今後はガス発電が増えていくだろう。LPGはオペレー
  ティングコストが安く設備投資額も少ないので、中規模発電ではLNG/石炭に勝り、LPG
  は発電用に活用できる。今後、アフリカ/中南米のLPG発電に期待する。アジアではフィ
  リピンとフィジーが期待できる。


(3)【Session 2 : Safety is no Accident】
         安全とは無事故のことである


登壇者:進行Henry Cubbon (DCC Energy, UK)、Panagiotis Haritopoulos (Coral Gas,
Greece)、Blaise Edja (Oryx Energies, Switzerland)、Andrew Bills (Origin Energy,
Australia)




H. Cubbon氏;
  安全はリーダーシップによって培われる、偶然の産物ではない。失敗のコストは高い(操
  業上のダメージの他に、人命喪失、個人賠償責任、ステークホルダー喪失、風評被害
  等)。発表各社の事例を通しHSE Managementを紹介したい。

P. Haritopoulos氏、B. Edja 氏、A. Bills氏;
  各氏からCoral Gas、Oryx Energies、Origin EnergyのHSE Managementシステムにつ
  いて説明があった。各社共通の内容が多く、以下に要点を取り纏めた。
  HSE Managementシステムのレベルは5段階のピラミッドである。
  ①Pathological(病的レベル)…捕まらなければよしとしている段階、②Reactive(反応レ
  ベル)…事故が発生してから対応する段階、③Calculate(算定レベル)…事故内容等の情報
  を収集し事故が発生したらすぐに対応を取れる段階、④Proactive(積極レベル)…事故の
  発生を防止/予防する対応を行う段階、⑤Generative (生成レベル)…HSEのPDCAサイ
  クルを回し常にHSE Managementシステムの改善を行っている段階。
  ピラミッドの頂上の⑤レベルに達することが目標である。まずはHSEに関連するデータを
  収集し、事故のレベルを測定し、損害の大きいリスク/頻度の多いリスクに分類し、リス
  クが現実化したときのインパクトの大きさを測り、リスクへの対応策を分析し、具体的な
  対応を実践する。実践したことをデータで収集する段階に戻ることでPDCAサイクルを回
  し続ける。⑤レベルを達成するために重要なことは「リーダーシップ」と「コミットメン
  ト」である。経営トップ自身がHSEをやり遂げる強い信念をもった上で、社内に常にその
  意思を発し続け、行動を実践する(言動の一致)ことにより、⑤レベルを保持する社風を構
  築し継承していくことである。



(4)【Session 3 : Exceptional Energy in Action】
         実践中のエクセプショナル・エネルギー


登壇者:進行Nikki Brown (Cavagna Group UK)、Christoph Reimnitz (General Elecric
Global Growth & Operations, UK)、Tucker Perkins (Propane Education & Research
Council, USA)、Ali Kizilkaya (Aygaz, Turkey)、Rubens Basaglia (X-Tech,
Switzerland)




N. Brown氏;
  LPGは応用がきく特別なエネルギーであり撤退するビジネスではない。LPGを使用する様
  々な装置や機器がすでにメーカーで開発されている。今回のセッションを通してLPG応用
  の知識を共有し、各国政府へ働きかけたり、LPG業界外へ発信したりすることが大事であ
  る。

C. Reimnitz氏;
  LPG発電事例。LPG発電はクリーンであり、LPG価格は安くロジスティックも有利なので
  ディーゼル発電に対抗できる。燃料価格が一番安い発電は天然ガスであるが、インフラが
  複雑且つ大型で、スケールダウンできない欠点がある。LPGはフレキシブルであり、スケ
  ールアップもダウンも可能で且つ取扱いが簡単である。ディーゼルとの価格比較では、M
  Bプロパン価格はUSGSディーゼル価格より安く。MTBU換算でも5$安い。GE(General
  Elecric)は発電機の最大メーカーであり、現在LPG発電として82MWから1MWの発電機
  まで品揃えしている。LPG発電機は基本的にジェットエンジンの応用発展型であり、一部
  の発電機はLPGと天然ガスの併用タイプである。また、LPG発電機は施工後100日以内に
  稼働可能というメリットもある。GEはVitolと組みバージニアアイランドにてLPG発電を
  今年中に稼働させる予定であり、現在ガーナでも国内ガス田の開発が進む迄の間LPGを使
  用する大型発電プラントを施工中、ナイジェリアにおいてもLPG専焼発電に取り組んでい
  る。

T. Perkins氏;
  米国における農業用途のLPG応用事例。米国では、価格メリット、周囲への環境配慮から
  穀物乾燥、家畜の暖房、ビニールハウス、灌漑(プロパンエンジンを使った散水)等にL
  PGを利用してきたが、最近では農産物そのものに排気ガスが優しいメリットを活かしト
  ラクター、コンバイン等の農業機械・機器にLPGエンジンが使用されている。

A. Kizilkaya氏;
  トルコにおけるSNG活用事例。トルコではSNG(Synthetic Natural Gas=合成天然ガス)
  は天然ガスの冬場の供給減への対策として、品質も同等であるSNGを天然ガスのバックア
  ップ用に発電用や産業用で利用されている。また、最近ではビルや住宅の暖房用に供給が
  安定しているSNGの使用が始まった。問題はSNGは天然ガスと比べ税金面でのメリットが
  少ないことである。

R. Basaglia氏;
  LPGを使用するHeavy Duty Engine (HDE)事例。LNGを燃料とする大型エンジンとし
  て、大型船、クルーズ船、艀、LNG Long Distance Heavy Train、LNG Heavy Mining
  Machineがあるが、LPGもこれらのHDE分野に進出する動きがある。その他の活用事例と
  して、Natural Gas Virtual Pipelineや日本の事例としてタクシー車とハイブリッド機関
  車(燃料にLPGと軽油を併用)が紹介された。


(5)【Session 4 : A Regional Outlook for LPG
               - A Bridge to Where ?】
         LPGの地域展望 - 架け橋はどこへ?


登壇者:進行Michael Panas (Poten & Partners)、Wega Pitya (Laugfs Gas, Sri Lanka)、
Helen Liang (Guangdon Oil & Gas, China)、Agnieszka Stochmal (AmeriGas, Poland)、
Francesco Franchi (Assogasliquidi, Italy)、Ilya Zaymentsev (Sibur, Russia)




M. Panas氏;
  LPGマーケットは2015年以降特に米国のプロパンの輸出によって急成長を遂げた。需要
  では石化が大きなパートを占め、家庭用(暖房、調理)の伸びは地域社会に貢献している。
  南米、アフリカでの需要は伸びておらず、石化は北米とアジアで伸びている。供給の伸
  びに需要の伸びが追い付かず、供給国は大型船による輸出で凌いでいる。今後、石化プ
  ラントが75~80%稼働しないと供給はさばききれない。

W. Pitya氏;
  中国とインドを主体としてアジアにエネルギー需要がシフトしており、世界のエネルギ
  ー消費の50%をこの地域が占める。供給地の中東と需要地のアジアの間にあるインド洋
  が果たす役割は大きい。インド洋の真ん中に位置するスリランカはロジスティックの中
  心として戦略的拠点を目指していく。スリランカではLPG事業は国営企業が担ってお
  り、市場成長率は2015年が30%で、数年で年間50万トンの規模になる。LPG関連投資
  にも積極的に取り組んでおり、Hambantota港に4万5,000トンの貯蔵設備を新設した
  り、バングラデシュのLPG事業者を買収したりしている。南アジアでの展開における課
  題はインフラが不十分なこと(特にバングラデシュ、ミャンマー、インド東海岸)である。

H. Liang氏;
  私が所属する広東石油ガス協会は、中国の30社のメンバーで構成され中国LPG輸入の70
  %を扱っている。中国のLPG国内需要は2016年に4,500万トンに達する見込みで、世界
  消費量の30%を占める。石化用と家庭用が成長を引っ張り、中国需要の年間成長率は11
  %で、需要の伸びは国内生産と輸入で賄われる。国内生産の伸び率は10%、輸入はここ
  3年間伸び続け年率70%の成長である。輸入の伸びは、東中国におけるPDHプラントの立
  ち上がりが大きい。PDH用プロパンは中国の輸入量の50%であり、まだフル稼働してい
  ないが、今後新しいプラントが立ち上がり全プラントが順調に操業すると年間560万トン
  のLPGを消費する。オートガスは年間30万トンで、政府はCNG社に注力しオートガスに
  は補助金を支給していないのでLPG車は一部にしか普及していない。供給では米国からの
  供給が増えており2015年は250万トン輸入し、さらに北米からの供給は伸び続ける。家
  庭用の市場は価格に敏感でLPG価格の上下により需要が変動するものの、中国内で都市化
  が進むことにより家庭用は伸び続けると予想している。政府の環境政策でもLPGへの期待
  は大きく、今後も石化と家庭用がLPGの大きなセグメントであるが、需要の伸びを支える
  のはPDHでなく家庭用である。中国のLPGマーケットに興味がある方は、2017年に成都
  で開催されるChina LPG Conferenceに参加ください。

A. Stochmal氏;
  LPGマーケットは、東欧地域の中でも東側の方がポテンシャルが高い。東欧は所得レベル
  が西欧の50%レベルでLPG生産も西欧の50%レベルである。LPGの供給は旧ソ連諸国か
  らのパイプライン輸入に依存している。ポーランドでは、需要はオートガス、家庭用、農
  業用、産業用の順で、オートガスの比率が高い。所得レベルが低いのでガソリンより価格
  の低いオートガスの需要が大きい。LPG車はポーランド国内でOEMによるガソリン車から
  の改造車が多い。家庭用は調理用が主であったが、収入が増えつつあるので暖房用にも使
  用され始めている。農業/工業に西側企業の投資または直接進出が進んでおり、エネルギ
  ー不足をLPGが補いつつあり、重機でもLPGが使われ始めた。再生可能エネルギー供給は
  低レベルなので、LPGは石炭・木材エネルギーから再生可能エネルギーに転換するまでの
  繋ぎ役である。

F. Franchi氏;
  イタリアは成熟市場であり、ここ数年課題に直面している。消費量はピークの年間400万
  トンから家庭用が大きく減少しオートガスが増加している。家庭用の需要はここ10年の
  間に価格変動と暖冬の影響を受け、特に2012年以降のLPG価格高騰によりバイオマス燃
  料(木材ペレット)への転換が進み販売減が続いている。バイオマス燃料にはLPGより高い
  政府補助金が支給されて消費が増えたが、環境対策の観点から政府はバイオマスへの補助
  金を減らしLPGと同レベルにしたものの、数年来の暖冬の影響もあり家庭用のLPG消費は
  低迷している。オートガスには補助金があったので、需要は伸びた。新規登録車両に占め
  るLPG車は15.7%でガソリン車/ディーゼル車より比率が高い。今最も伸びているのは
  ハイブリッド車と電気自動車だが、新規登録はまだ1%に留まる。環境と効率性がLPG車
  の味方である。

I. Zaymentsev氏;
  SIBUR社は供給と販売が垂直統合された会社で石油・ガスの供給チェーンと石化事業が大
  きな柱である。ロシアは世界LPG生産量の4.7%で、随伴ガスを含めポテンシャルは大き
  い。今後も生ガスからの抽出率を高める等、稼働率を高めて行く。ロシア国内の余剰LPG
  は、国内/ウクライナ向け価格が輸出価格より低いため輸出に力を入れてきた。
  Ust-Luga港の出荷設備整備もその一環である。現在、ウクライナは需要の伸びに伴い価
  格が上昇し、国内価格もオートガス需要の伸びにより価格が上昇基調であるので、今後
  は輸出よりも国内/ウクライナ向けのポテンシャルが上がる可能性がある。



(6)【Session 5 : Driving Change】
         運転の変化


登壇者:進行Marina Terpolilli (Italian Union of Automotive Journalists)、
Corrado Storchi (Landi Renzo, Italy)、Loic Bouttier (Renault Dacia, France)、
Samuel Maubanc (European LPG Association)、 Ercument Polat (Aygaz, Turkey)、
Jeffrey Stewart (Blue Star Gas, USA)




C. Storchi氏;
  イタリアでは2009年に政府補助金が開始されたことによりLPG車が浸透し、補助金がな
  くなった時点で市場は下落したが。今は安定市場となっている。LPG車市場はOEM車であ
  り、メーカー別ではOPEL(25.2)、LANCIA(16%)、DACIA(14.8%)、FORD、KIA、
  FIAT続く。イタリアではフリートにおけるLPG/CNG車の比率は5.7%で、オートガスス
  タンド数は3,800箇所である。今後のLPG車の主流は直接噴射式エンジンになると思って
  いる。間接噴射式エンジンは消費者の信頼獲得が課題である。今後はオートガスのプロパ
  ン比率を90%にしたい。Landi Renzo社ではTOYOTAのPRIUSをLPG車に改造するプロジ
  ェクトもある(後掲する展示会場の写真にPRIUSモデルのLPG車があります)。

L. Bouttier氏;
  Dacia社はどんな車でもLPGへの改造が100%できる。エンジンも1.6リッターで3タイプ
  品揃えし、ターボチャージャー付1.6リッターエンジン車も別にある。欧州全域でオート
  ガススタンドが充実し利便性が向上してきたので、ますますLPG車は増えていくであろ
  う。

S. Maubanc氏;
  欧州LPG協会では、独自に費用をかけて5年間各社のLPG車とガソリン車、ディーゼル車
  の排ガス調査を行った結果、LPG車の排気ガスの質が良いことが判明した。また今年発覚
  したVWのDiesel Gate事件ではディーゼル車が環境に悪いことが周知されたのでLPG車に
  プラスとなった。実際の道路走行実験ではラボ実験よりもLPG車は他の自動車より優れた
  結果(KIAだけEuro 6の規制値を超えた) を示し以下の通りとなった。CO2は目標達成し
  ガソリン車より15%低い、粒子物質はガソリン車より低い、COはガソリン車の45%、
  Noxはガソリン車より100%低い、ハイドロカーボンはガソリン車と同等レベルの結果で
  あった。

J. Stewart氏;
  Blue Star Gas社ではガソリン車からLPG車への改造と燃料供給を行っている。改造のカ
  テゴリーは、乗用車、配送車、警察車両、公用車、サービス車両の5つである。米国では
  警察車両と公用車に広くLPG車が使用されている。普及したLPG使用のサービス車両の一
  例としてスクールバスがある。オートガス給油の新システムとしてPublic Accessを始め
  た。これはシステムに加入するとカードが発券され、チェーン店の全てでオートガスの供
  給を受けられる仕組みである。また、バイオプロパンも開発しており、3年後の供給を目
  標としている。

E. Polat氏;
  トルコのLPGマーケットは、オートガスが76%、家庭用が20%、工業用が4%の比率で
  ある。オートガスは1999年から2016年に8倍に増えたものの、家庭用のシリンダーは激
  減した。オートガスの10年間の成長率は平均7%となっており、これはガソリン価格に対
  しオートガス価格が36%という大きなインセンティブがあるから。燃料別車両台数は、
  LPG車が440万台、ディーゼル車が370万台、ガソリン車が300万台である。



(7)【Session 6 : Good Leaders Keep Learning】
         良い指導者は学び続ける


登壇者:進行Wanjiku Manyara (Petroleum Institute of East Africa)、Y. K. Gupta
(Indian Oil Corporation)、Guilherme Simao Darezzo Netto (Ultragaz, Brazil)、Lucy
Cook (UKLPG)、Gabriele Rizzo (BRC Rally Team, Italy)、Claudio Leal (Prio
Energy, Portugal)




W. Manyara氏;
  LPGのバリューチェーンは再編されている。成熟市場においてもLPGは様々に応用され新
  たな展開がある。発展途上国市場においては、調理や暖房にLPGの利用が始まった。いず
  れの市場においてもLPGは未来への懸け橋である。

Y. K. Gupta氏;
  インド政府のこの2年間の取組を革命と位置付けている。現在の人口は12億7,000万人で
  2030年には14億人になると推定している。2016年、2017年の経済成長率は7.5%と予
  想、LPGの消費量は年間2,000万トンで、その90%が家庭用である。2030年には2,700
  万トンを目指す。需要が大きいためインド政府は外国投資を積極的に受け入れるととも
  に規制を緩和した。政府はLPGを大衆に普及されるため家庭用LPGに補助金を支給してき
  たが、効果を上げるために補助金を消費者の個人口座への事前振込(シリンダーを1本注
  文した時点で注文者の口座に事前に振り込まれる)に改定した結果、急速に浸透した。さ
  らに新しい取組として、貧困女性にLPGを無償で提供するスキーム(対象は1,000万人)
  と、安全にLPGを使うためのパンフレットを配布するキャンペーンを始めた。

G. S. D. Netto氏;
  ブラジルのLPG市場は世界第9位の消費量で、70%は家庭用である。消費者が販売事業者
  を自由に選択できることが特徴である。今後の課題はインフラの整備と、LPGが都市部に
  集中している点である。州政府が保有する供給者がいないことも問題である。Ultragaz,
  では新しい取組として、Sales Forceという情報システムによるプレセール管理とシステ
  ムによる顧客在庫管理を導入した。Sales Forceでは顧客情報を分析し最適化を図るとと
  もに、契約書面を電子化することで手続き簡易化した。在庫管理システムはリアルタイ
  ムで顧客の在庫状況を把握し適時にLPGを配送する、また顧客までの最適な配送トラック
  ルートを割り出す仕組みもある。

L. Cook氏;
  UKLPGが2013年から展開しているIntegral Digital Marketing Campaignを紹介した。
  例えば食品メーカーと連携し食品の広告とLPGのコンテンツをデジタルで同時に雑誌、
  Web、B-logに掲載し、ソーシャルネットワークを活用して潜在消費者に訴える仕組みで
  ある。顧客の反応があると、実際に訪問したりWebサイト上の情報を深めたりして実需
  に繋げていく。一番重要なことは関係者間の情報の共有である。

G. Rizzo氏;
  BRC社ではLPG車を推進するために、国際ラリーにLPG車で参加し性能の良さを見える形
  で訴えてきたが、2016年イタリアラリー2016チャンピオンシップで、初めてガソリン車
  を抑えて優勝した。一般の人にLPG車の性能の良さと安全性がガソリン車に匹敵すること
  を伝えられた。エンジンはLPG直噴システムを開発し採用している。

C. Leal氏;
  ポルトガルのPrio Energy社が展開してきた新エネルギーへの取組が紹介された。2006
  年にバイオディーゼル工場を建設、2010年にPrio Byo Fuelとして認証される。また
  2010年に電気自動車用充電スタンドを新設、2013年にはLPG取扱いを開始しオートガス
  スタンドも始めた。2014年にはAdditive DieselとAdditive Gasolineを商品化。LPGに関
  してはポルトガルではシリンダー需要はマイナス4%と減少しているが、オートガスは8
  %の伸びを示している。Prio Energyではシリンダー取引が主で、同社で展開しているコ
  ンビニエンスストアの店頭でもLPGをシリンダーで販売している。



【公式夕食会】



11月16日(水)の夜に参加者が集うGala DinnerがPalazzo Vecchio(ベッチオ宮殿)の大広間で
開催され、200名以上の方が交流を深めました。会場は壁面と天井にルネッサンス時代の宗教
画が描かれ荘厳な雰囲気でした。



4 展示内容


Fortezza da Basso内の展示会場


展示会に参加したI.T.O㈱のブースと内海代表取締役


日本製のガソリン車をイタリア国内でLandi Renzo社がLPG自動車に改造。
日本車はトヨタの他にも日産、ホンダ、いすゞ、三菱の改造車が展示されていました。



展示会に参加したHexagon社のブースに展示中のFRPシリンダーと接続した調理機器


(調査研究部/亀川泰雄)