LPGC WEB通信  Vol.31 2016.10.11発行 

【特別寄稿】動き出したFRP容器の普及への取組み

富士瓦斯株式会社 代表取締役社長 津田維一 氏
 
フジガスでの取り組み
日本でのFRP容器の普及は平成19年の日団協サミット(5団体会長会合)での実用化検討の決定からスタートしました。そこから、関連企業、業界団体、行政による様々な協議、検討を経て、平成27年2月の省令改正、8月にラガスコ社の7.5kg容器の検査合格、8月の特認販売開始となりました。質量販売に力を入れていた弊社では早々にFRP容器の採用を決めており、関係各位に対する敬意を表するために、広島県呉市で行われた中国工業さんの出荷式に出席させていただきました。出荷式に集まった人たちの間では、「なんとしてもFRP容器を普及させよう」との声があがる一方で、「本当にFRP容器は普及するのだろうか」との不安の声も多かったことが印象に残っています。それから1年が経ち、業界紙での取扱いも増え、行政の後押しもあって、業界内でもFRP容器に対する注目が集まってきています。

弊社では資源エネルギー庁の27年度「構造改善支援事業」を利用し、FRP容器をその販売開始直後に導入いたしました。現在では300本のFRP容器を使って業務用顧客を中心に供給しており、安全で扱いやすいFRP容器はお客さまからは高い評価をいただいております。




業務用バーベキュー


業務用厨房機器メーカーのショールーム

 
 
喫茶店の赤外線ストーブ

FRP容器の特長
FRP容器は「軽い」、「半透明なので残量がわかる」、「カラフルでデザインがいい」、といったことに注目が集まりがちですが、その一番の特長はその安全性です。まず、カップリング付調整器を使うためにバルブの誤開放によるガスの流出がありません。そのため消費者による調整器の脱着が認められています。また、火災時には容器そのものが溶けてしまうために、圧力上昇による容器の爆発がないことが消防関係者からも高い評価を受けています。FRP容器はその扱いやすさだけでなく、安全面から見ても、消費者の方に安心して手軽に使っていただくことを想定した容器だと言えます。

普及に向けた課題
安全で使い勝手も良く、消費者の方からも高い評価を受けているFRP容器ですが、業界内からは残念ながらその普及に疑問を唱える声が少なくありません。これは、当初よりFRPの普及にあたっては小型容器を中心とした展開が考えられており、質量販売を巡る諸問題に対する解決が不透明なためです。今後の普及を考える際には、いわゆる30分問題などの法規制を、保安面を損なうことなく、消費者のニーズに沿った形で見直しをすることが不可欠であると思われます。また、カップリング付容器の充填ができる充填工場がまだまだ少ないということも普及にあたっての大きな問題点となっています。弊社では、設備のリニューアルを行い、回転充填機によるカップリング付容器を行っておりますが、安全性の高いカップリング付容器の普及を促すための施策も今後必要であると思います。

今年度より国からもFRP容器普及のための予算が付き、弊社も「石油ガス地域流通事業モデル実証事業」に参加させていただいております。消費者団体の方からの期待の声も高く、LPガス業界全体でその普及に取り組んで行かなければならないと感じています。LPガス需要の減退が続く中、LPガス本来の特長である可搬性、簡易性、安全性を強くアピールできるFRP容器を普及させることは今後のLPガス市場の成長のためにも不可欠なことだと言えるでしょう。