LPGC WEB通信  Vol.26  2016.05.10発行 

アジアLPガスサミット2016 概要

 アジアLPガスサミットが2016年3月2日~4日の3日間東京で開催されました。
 アジア諸国、途上国等のマーケットを中心としたLPG関連催事としては初めての試みになり
ます。
 メイン会場は東京プリンスホテル。3月3日~4日にかけて開催するLPガス国際セミナー
2016と同時開催となりました。LPガス国際セミナーはLPガスの上流部門を中心とした会議で
あるのに対して、アジアLPガスサミットは下流部門に焦点を当てた催事です。
 同時開催することにより一定のシナジー効果があったのではと考えております。
 運営主体はシンガポールにあり、エネルギー関連の展示会、会議体をアジア、アフリカで経
験が多いAll Event Groupです。

アジアLPガスサミット2016について以下簡単にご報告します。


1.サイトビジット:2016年3月2日
  (株)サイサン ガスワンパーク上尾では施設の説明を受けた後、現場見学となりました。
 容器の自動化された充填プロセス、縦型のLPG貯槽及び自動化された容器再検査設備に加え
 GHP、非常用発電機などの見学となりました。 
  ガスワンサービスセンターについても説明がありました。
  参加者はアジアからの外国人を中心に総勢26名



「株式会社サイサン ガスワンパーク上尾」 にて


2.LPガスサミット:2016年3月4日
   東京プリンスホテル 3階 ゴールデンカップにて

 経済産業省・資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 企画官 田久保 憲彦氏よ
り歓迎の言葉があった。
 日本のLPG需要は減少傾向がつづいている一方 アジア諸国全体では需要が伸びておりLP
G関連のインフラ設備の充実、日本で普及している消費機器、消費者保安システムなどにつ
いての意見交換、情報チャネル構築のきっかけとアジアLPGサミット2016がなることを期待
すると歓迎の言葉があった。

田久保企画官

①A Strategically Important Fuel Integrating LPG into the energy policy
                                   of Japan
 「日本のエネルギー政策の中に戦略的に組み込まれた重要な燃料LPG」

  ENEOSグローブ株式会社 代表取締役副社長 石川重雄氏

東日本大震災以降のエネルギー政策の変化についてふれ、日本政府によるエネルギーの安全
保障(Energy Security)、経済合理性(Economic Efficiency)、環境保全(Environment
Conservation) 所謂 3E+1Sの観点より期待されるLPGの役割に付述べた。
   +エネルギー安全保障:国内依存率 20%を25%まで引き上げる。
   +経済合理性    :東日本大震災以前に比べ現在は電力料金が産業向け30%、
              家庭用で20%それぞれ上昇している。現状より低減する。
   +環境保全:地球温暖化ガスの低減するため欧州及び米国のように厳しく規制する。



ENEOS グローブ 石川氏

②INNOVATIVE LPG BUSINESS PRACTICES AROUND THE WORLD
 「世界の革新的なLPG事業の実際」

  世界LPガス協会(WLPGA)のプロジェクト担当 デビット・タイラー氏
(David Tyler)

東京の路上で見たLPG利用の実例を紹介した。
更に2017年~2019年のWLPGA戦略計画の視点について触れ今後のLPG市場が期待され
る地域でのWLPGAの活動について紹介された。



WLPGA タイラー氏

③OPPORTUNITIES IN THE MODERNIZATION OF TAIWAN’S LPG INDUSTRY 
 「台湾LPG産業の近代化における機会」

  台湾総合研究院所長の呉 森博氏
(Dr. Wu Sen-Po)

台湾LPG市場の概要、問題点、機会等について紹介があった。
  LPG市場の概要:上流(石油精製会社、石油輸入会社、石油開発会社)
          中流(LPG卸事業者9社:CPC6社、FORMOSA 3社)
          下流(120ヶ所の充填所、小売事業者3,137ヶ所)   
 燃料消費は北部から南部に向かうほど燃料需要は少なくなる。台湾東部にはNGパイプラ
インは無く、北部を除き主要な燃料はLPG。需要は減少気味(2010年 1,964千トン、
2014年 1,892千トン)
 課題:小売事業者の配送合理化、配送が労働集約的、流量販売の難しさ
 機会:パナマ運河開通などによりLPG価格が競争力あるものになる。
今後、配送の合理化と様々なLPG消費機器によりLPG産業を高度化する。


台湾総合研究院 センポク氏


④OPPORTUNITIES IN LPG DEVELOPMENT IN EAST AFRICA  
 「東アフリカにおけるLPG発展の機会」
 
  東アフリカ石油協会 専務理事のワンジク・マイヤラ氏
(Wanjiku Manyara)

 +東アフリカ地区はブルンジ、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ、ケニアの5ヵ国、総人口
  152,000千人。タンザニアとウガンダ 2ヶ国以外は内陸国。
 +LPG需要は168,600トン。人口一人当たりのLPG需要は1kgほど、家庭用60%、40%は
  業務用。バイオマスエネルギーが最も重要なエネルギーと成っていて、総1次エネルギー
  の60%~90%を占めている。家庭用燃料需要の多くが薪である。
 +LPG供給は100%輸入。ケニア石油精製会社(KPRL)が45%~55%の供給を行ってい
  る。

 課題:LPGと関連機器が高価格、不十分なインフラと不安定な供給、不十分な消費者教育、
    不十分な法規制
 機会:2016年1月から1年半LPG需要拡大プロジェクト、今後1年~6年で人口1人当たり
    15kg~22kgに拡大する。
 政府が共同使用できる海上受け入れ設備を建設する。KPCを通じ6,000トンの受け入れ設備
と容器充填設備に投資する。 市場のポテンシャルとして2018年 30万トン、2021年 70万
トン2024年 90万トンの需要。ウガンダ、タンザニア、ケニヤは世界LPG業界の協力がもた
らす結果を示すパイロットとなる。



東アフリカ石油協会 ワンジク氏


⑤The Japanese LPG Industry and Asian Market
 「日本のLPG産業とアジア市場」
  東京理科大学 イノベーション研究科 教授 橘川武郎先生

 +LPGは中核エネルギーの一角を占めることを具体的に説明。
 +高いサービスを提供し安全に裏打ちされた高付加価値を持つエネルギーであること、更
  にこれら安全に係る機器・システムはアジアの国々に広めることも可能であること。
 +2011年の東日本大震災により分散型エネルギーとしてその特徴をいかんなく発揮し分散
  型エネルギーの王様と言える、そして様々なLPG関連機器をアジアの国々を広めること
  が可能。
 +LPGは緊急時の“最後の砦”であり、都市ガス地域にも普及することが重要。
課題は高価格体質に取り組みこと、これが需要拡大のカギ。価格を透明化すること。
これらの日本のLPGに関するビジネスプラクティスは備蓄システムも含めアジア諸国のLPG
産業発展に寄与できる 結論付けている。



東京理科大学 橘川先生


⑥UTILIZING LPG AS A RESOURCE IN GENERAL EMERGENCIES
                         AND NATURAL DISASTERS
 「自然災害・緊急事態に対処するエネルギーとしてLPGを活用する」
 
  ITO株式会社 常務取締役 高野 克己氏

 開発型であるITO及び グループ会社、更にユニークな機器・設備について簡単に紹介あ
り。都市ガス会社などでも広く使われ、また特に東日本大震災などで活躍し、都市ガス地域
の需要家の非常用対応設備としても評価されているPA(プロパンエアー)の開発経緯、基
本原理が明された。
ポータブルガス発生装置であり、カロリーの変更やガス事業者の配管工事に対応でき、更に
自然災害や緊急時対応として有効である。
又適用法規、設置事例、PA発生装置に関わる法規制にも触れ包括的な紹介が行われた。
工場での設置事例としてベトナムの場合(最大能力:370Nm3/h)が紹介された。


ITO株式会社 高野氏 


⑦The Role of LPG in a New Growing Economy: Opportunities in Myanmar
 「新たな経済成長の中でのLPGの役割:ミャンマーにおける機会」
  LPG Academy の代表 ジェフリー・リャン氏
(Jeffrey Leung)

成長が期待されるミャンマーのエネルギーに関連する組織・役割について概略説明があっ
た。
 MPE( Myanmar Petrochemical Enterprise)の役割
    原油・コンデンセイトから石油製品を分留・精製
    陸上国内ガス田からLPG分留
    原油・天然ガスから化学品を製造 等
 加えて設備について紹介。
 LPG生産設備:



需要量は年間40,000MT~45,000MT、生産量とのバランスは輸入。

その他、Thanlyin Refinery建設プロジェクトの進捗、Kyaukphyu~Kunming 原油パイプ
ライン建設プロジェクト計画などについても触れる。



LPGアカデミー ジェフリー氏

⑧OPPORTUNITIES FOR THE LPG INDUSTRY IN THE PHILIPPINES 
 「フィリピンにおけるLPG産業の機会」

  フィリピン VOLT社 部長 キャサリン・ジャランド二氏
(Catherine Jalandoni)

 フィリピンは約7,000の島から成り立ち1億の人口を有する。政治的には民主主義であり且
つ政府は安定している。GDPは年間5~7%で成長。人口は1%程度毎年増加。
エネルギー分野では、ライフスタイルの変化により家庭での調理の減少、安全意識の低さ、
オートガスについての間違った認識、エネルギーの貧困があげられる。

LPG産業の概要の報告あり。需要は年間2~3%の伸び。現状のインフラ設備は今後10年間に
見込まれる需要の伸びにも対応可能であること。
古くなったジプニーや公共輸送機関の燃料としてオートガス普及のチャンスあり。
電気の供給が不安定であり、電気が通じていない地域も多い。分散型発電機燃料としてLPG
が期待される。


 
VOLT社 キャサリン氏

⑨LESSON FROM THE AUTOGAS MARKET IN TURKEY
 「トルコのオートガス市場から学ぶもの」 

 トルコの最大LPG事業者であるAygaz社 部長 Ali Kizilkaya氏が講演。

トルコのLPガス需要の76%はオートガスで年間2,800千トンの需要(世界3位、欧州2位)
LPG自動車台数は約4,000千台、普及台数世界1位。
 1999年 オートガス需要 年間40万トン(LPG総需要の11%)
 2015年 オートガス需要 年間310万トン(LPG総需要の75%)
2014 年まで年3%の伸び2015年は8%の伸び。2009年来乗用車で最も使われる燃料はオー
トガス。
自動車の伸び率は年6.9%に対しLPG自動車は7.6%。


Aygaz社 アリ氏


⑩CONSUMER SAFETY IN PRACTECE CASE STUDY APPLICATIONS ON
 ENCOURAGING SAFE USE OF LPG
 「消費者保安の実際:LPG安全使用を促すケース」 

  エルピーガス振興センター 調査研究部 荒畑総括主任研究員

消費者保安の法的枠組みと、それを担保するシステム、機器などを紹介した。



エルピーガス振興センター 荒畑総括主任研究員


3.展示会
  2016年3月3日~4日 東京プリンスホテル 2階 マグノリアホール
  参加企業:計16社
   国内7社
    ITO、新コスモス、日立オートモーテイブシステムズ、ヤンマー、デンヨー、
    JOGMEC、KHK
   海外9社
    ヘキサゴン・ラガスコ(HEXAGON・Ragasco FRP容器)、カバニヤ
    (Cavagna 調整器など)、グリーンギア(Green Gear LPG消費機器)、
    ジガー(GDIGGER 圧力容器製造)、ツグル・マキナ(Tugra Makina 容器製
    造)、テンロン(TianLong 容器、バルブ等メーカ)、エスエムピーㇱ―(SMPC容
    器メーカ) 、アイガス(i-Gaz 安全シール等メーカ)、テイーピーエイ(TPA、
    調整器、ガス機器メーカ)


展示会場の様子

エルピーガス振興センターは今後ともこのような機会を設けていきたいと考えております。

 

(調査研究部)