LPGC WEB通信  Vol.24  2016.03.10発行 

兵庫県伊丹市でLPガス事業研究会(北嶋一郎会長)が甲南大学法科大学院の土佐和生教授を招聘し、「エネルギー選択競争の時代における液化石油ガス事業の展望と課題」について講演会を開催

 LPガス事業研究会(北嶋一郎会長)が平成28年1月29日(金)兵庫県伊丹市の伊丹
シティホテルで講演会と賀詞交換会を開催されました。講演は、甲南大学法科大学院の土佐
和生教授による「エネルギー選択競争の時代における液化石油ガス事業の展望と課題」。
 土佐教授は、経済産業省/当センター主催の「液化石油ガス懇談会」の学識経験者代表を
10年に亘り委員としてご活躍され、また、2月5日開催された経済産業省「総合資源エネ
ルギー調査会 資源・燃料分科会石油・天然ガス小委員会 液化石油ガス流通ワーキンググ
ループ」の委員として招聘されています。
 社会とライフスタイルの変容がエネルギー産業にもたらす影響、平成28年4月よりの家
庭向け電力市場の自由化、平成29年よりのガス自由化を背景とした、液化石油ガス事業の
展望と課題、強みと弱みを分析・整理されました。
 今回は、土佐教授のメッセージを中心に配信させて頂きます。

 □開催日  平成28年1月29日(金)11:00~
 □講 師  甲南大学法科大学院教授 土佐 和生 先生
 □主催者  LPガス事業研究会 北嶋 一郎 会長
 □参加者  150名
 □開催場所 兵庫県伊丹市中央6-2-23「伊丹シティホテル」


開会挨拶をされる北嶋会長


講演をされる土佐教授

【講演概要】

「エネルギー選択競争の時代における液化石油ガス事業の展望と課題」

 〇社会とライフスタイルの大きな変容により、各業界がエネルギー産業として対峙するエ
  ネルギー選択競争時代となる。それは意識や価値観も含め社会が変容していくことを指
  している。
 〇電力・ガス事業の完全自由化は従来の縦割りの垣根を取り払い、総合的なエネルギー市
  場を創り上げることとなる。現在は変革の波に飲まれるかどうかの岐路に立っている。
  その中で、液化石油ガス事業の強みと弱みを把握し、従来型の思考や慣行を廃して、顧
  客との結びつきを一層強くする施策を施す必要がある。危機は飛躍のチャンスでもあ
  る。顧客価値を高め自らの発展に活かす提案を実現することが大事。


1.社会とライフスタイルの変容がもたらすエネルギー産業における地殻変動
 *国立人口問題研究所からのデーターにより、2010年をピークに人口が減少傾向。
  特に、2040年からは一段とそのスピードは増すであろう。
 *年齢区分にみると老齢人口が増えていくのに対し、生産年齢人口は落ち込む。同様に世
  帯数も減少し、マーケットが縮小する傾向となる。内需産業は苦戦を強いられるであろ
  う。教育産業も斜陽の傾向。
 *大変動の時代⇒スマートコミュニティの進展により、高効率化が推進されエネルギー消
  費量自体が減少する。また、テクノロジーの進歩により、これまでとは異なる意識や価
  値観が醸成される可能性がある。
 *国内のエネルギー供給サイドのデーターを見る限り、日本社会はエネルギー消費量を増
  やさなくともGDPを伸ばせるポテンシャルを持っている。



2.電力・ガス事業における完全自由化の諸相
 *大改革の前提⇒縦割り事業規制を廃して、総合的なエネルギー市場を創り上げる。
  これが、業界を直撃するインパクトを持つ革命である。
 *30年前の通信業界や10年前のネット通販業界では今やリーディングカンパニーとな
  っている会社もある。時代の波を自分たちの事業発展にいかに乗せるかが課題。 
 *公正な取引のもとで、顧客に選ばれる事業者とならなければ存続できない。
 *電気・ガスは事業法の下で成長、LPガスは石油類型として保安・取引の適正化が規
  制。






3.液化石油ガス事業の強みと弱み
 *これまでの慣行(営業権の売買など)は通用しないであろう。アンフェアな商慣行
  (14条書面の軽視、契約書で投資資本回収などが不明確)は使えなくなり、独占的供
  給も維持ができない。
   ⇒契約関係に疎くてはいけない。
 *もっとも川下に位置するため、顧客との顔合わせができ密度の濃い関係を築ける。
  料金設定・供給区域についての経営の戦略的機動性が極めて高い。
   ⇒顧客情報を収集しやすく、素早い対応が可能である。
 *川上・水平事業者との戦略的連携を模索する必要がある。
   ⇒ポイント制度やバンドル販売(電気・ガス、もしくはその他の商品のセット商品の
    プラン→住宅設備機器や水回り等、リフォームとのタイアップも一案)など多種多
    様な企画が想定できる。
 *小規模事業者が多数を占めることは弱みである。
   ⇒ある程度の規模への集約の必要性がある。
 *契約関係についての知識、理解が不十分。
   ⇒情報開示が必要となるため、事業者は法律に詳しくなる必要がある。独禁法を遵守
    し、財務と法務を強化する。
 *これまでの参入障壁はなくなるため、独占的供給の維持は不可能。他業界からの参入は
  LPガス業界のこれまでの在り方に対応するものではない。
   ⇒LPガス業界が自己変革し、打って出なければ撤収を余儀なくされる。








4.エネルギー選択競争の時代を生き抜く液化石油ガス事業の展望と課題
 *顧客接点の一層の強化、顧客価値の向上に役立つ提案を積極的に企画し、どこよりも早
  く実現する。⇒顧客の情報を徹底的に収集し、生活の中で見落とされがちな需要を見出
  す。その需要開拓のための企画を実現する。⇒川上・水平事業者との提携は一策であ
  る。
 *「御用聞き商売」は普遍的な関係維持、絆の原点。(アニメ「サザエさん」に登場する
  ”三河屋のサブちゃん”がお手本)
 *企画力・法務力の強化が急がれる。そして、それを支える財務力の充実が課題となる。
  単純な守りに入らず、下記のサイクルをどれだけの規模とスピードで循環させることが
  できるかが問われる。




★所感
 
土佐先生に於かれましては、LPガス産業の強み・弱みをとってもわかり易く分析・整理
され理解を深めることができました。顧客接点強化の重要性を、「御用聞き商売」は普遍的
な関係維持、絆の原点。(「サザエさん」の”三河屋のサブちゃん”がお手本)との話が印象
に残りました。
 また、事業規制が保安と取引適正化以外にない戦略的機動性の高さをLPガスの強みと
し、逆に、アンフェアな商慣行・取引を防ぐことが必要と指摘。LPガス業界に対する自己
変革への大きな期待を感じ入りました。

 今般の講演会に関し、聴講の機会を与えて頂きました関係者の皆様には改めて感謝申し上
げます。

 (広報室/酒井賢二)