LPGC WEB通信  Vol.18  2015.09.10発行 

IHSアジアLPGセミナー 講演紹介 part.2

 今月号では10人目のマイケル・ケリー氏(WLPGA常務)から23人目のデブニル・
チョウドリー氏(IHS 北米NGL ダイレクター)までの講演者のプロフィールと講演要
旨を紹介いたします。


10 「石油低価格下における開発途上国のLPGマーケットの成長」

【プロフィール】ジョージ・ワシントン大学国際部修士、4ヶ国語に堪能。WLPGAには2006年に加入し
た。WLPGAはLPガスの普及推進の世界的団体である。幅広いバックグラウンドを基に、WLPGAでは企
業、政府、市民社会の連絡役に重点を置く。WLPGAの前職は、国際商業会議所(ICC)の環境・エネルギ
ー政策ポートフォーリオのマネジャーとして、環境、エネルギー、気候変動、持続的発展に関する国連財界代表
団のコーディネーターである。2010年より現職。

【講演要旨】
1.WLPGA紹介
    メンバー225。国数125。上流から下流までのメンバーを網羅している。
2.世界のLPG需給の現況
   供給2.8億トン、需要2.7億トン(2014)
   2013年12月CPから2014年は半値になった。
3.世界の需要
   2013年は対前年3.5%の伸び。
4.アフリカは世界の生産の6.2%を占める。しかし需要は低いので余剰は輸出に回る。
5.セクター別ではオートガスの需要の伸びが飛びぬけて(65%)いる。2010年から
  12%の伸長である。  
6.次のアジアの形勢は前向き アジアは2000年から2013年まで平均7.3%の
  伸び率、全体的には供給が増え市場は緩むであろう。



11 「中国のLPGマーケット概観」


【プロフィール】インフォメーション担当ダイレクター。LPG、LNG、ガソリン、ディーゼル軽油、燃料油、
ガス、産業用ガスのOGA調査に参画。国際会議での講演に加えフィニックスTVや日経の産業動向についての
取材に応じている。

【講演要旨】
1.中国のLPG生産と輸入
   2014年:生産26.6百万トン、輸入7.1百万トン、輸出1百万トン。
2.PDHと従来のマーケット
   全中国 2015年:PDHキャパ6百万トン、プロパン需要7.2百万トン。
3.中国のLPGマーケット予測
   需要の特徴は家庭業務用が66.6%と世界の平均より22%も多い。しかしPDH
   の稼動で石化5%が比率を伸ばすだろう。 



12 「石化原料用LPG概観」


【プロフィール】化学インサイト担当VPとしてシンガポールと日本のチームとアジアパシフィックの化学に
ついて調査と分析業務を主導する。ヨーロッパ、中東、アジアの化学産業に30年のキャリアをもつ。英国エ
クソン化学で1983年に就業し、ブリュセルのエクソンヨーロッパ本社で要職を歴任。IHS入社前に一時
自分のコンサルタント会社をもったこともある。英国インペリアルカレッジでで化学工学士を得た。

【講演要旨】
1.アジアのスチームクラッカーは、夏場のLPGの低い価格を生かして供給柔軟性に投資
  してきたが、原油低価格の今日、この季節有利は低い。
2.北米と中東の軽スチームクラッカーの供給の優位性は、プロピレンとブタンの供給ギャ
  ップになりつつある。
3.アジア、特に中国は、意図的にプロパンとブタンからプロピレンとブタジエンの生産に
  投資している。
4.意図的なプラントは、限界生産者で収支が製品価格を決定する。
5.意図的な生産は、冬場のLPG高価格時には非経済的であろう。生産を継続するか、そ
  れとも派生経済と代替品の欠如は、年間を通して継続することになろう。



13 「米国ペーパーマーケットのLPG先物取引」


【プロフィール】ICE(Intercontinantal Exchange Inc.)には、2012年入社。特にアジアのLPG、
LNG、石炭産業を追跡する。アジア中の国際エナジー契約を市場化すること、ビジネス成長とICEの決済
業務を担当する他、オンラインの取引プラットフォームWebICEの準備にもあたっている。ICE入社前
は、コンコルドに勤務し、原油と石油製品の現物を担当していた。

【講演要旨】
1.米国NGL生産と構造
   ガス処理装置+ガスプラント+分留装置の拡充が、NGL生産を増加させLPG輸出
   拡大に貢献。
2.米国の生産の伸び率と輸出入量動向
   2013年1月 20万トンから、2016年10月 125万トンへ急拡大。
3.ヘッジの可能性
   WebICE NGL Platformで日々の先物を売買する。
4.アジア企業の米国LPG輸入動向
   シンガポール1.9%、韓国0.2%、日本0.7%
5.LPGフレート契約
   バルチック・インデックスに基づく千トン単位でのフレート予約。



14 「オセアニアのLPGマーケット近況」


【プロフィール】オーストラリア、ニュージーランド全土のエルガスとBOCのLPGビジネスのLPG供
給、バルク配送、主要基地操業の責任者。エルガスはオーストラリアのリーディングLPG流通業者でオー
ストラリア主要輸入基地とシドニーの6.5万トン洞穴備蓄のオペレーター。LPGの広い経験をもち、B
OC、エルガス、シェルの供給、流通地位に。現職の前は4年シンガポールで、シェルガスLPGアジアパ
シフィックのLPG供給チェーンマネジャーをした。シドニー大学から経済学士、オーストラリア経営大学
院からMBAを取得。

【講演要旨】
1.豪州の主要LNG
   既存27.5MT。イクシスとプレリュード等開発63MT、2020年90MT。
2.LPG生産プロジェクトの最新情報
   既存3MT。イクシスとプレリュード等開発2MT、2020年5MT。
3.LPG生産と主要製品の動向
4.生産展望
   2016年から急拡大。2020年には550万トンへ。
   (プレリュードNLG、イクシス、チモール、シェール)
5.生産と消費の概要
   生産は2017年より急拡大するも消費は減退基調。
6.輸入/輸出展望
   輸入50万トンで安定。輸出は1.8MTから3.8MTへ。



15 「アフリカのLPGマーケット」


【プロフィール】パリのエネルギー・アフリカ・プラクティスのダイレクター。アフリカと競合戦略分析に焦
点をあてコンサルティング活動をしている。アフリカで操業する石油会社とナンビア、ウガンダ、マリ、ケニ
ヤ、ボツワナ、モザンビーク、ガーナ、南アの政府関係者にワークショップを実施している。IEAのワール
ドエナジーアウトルックのアフリカ担当解説者である。IHS入社前はモーリタニアのUNデベロップメント。
プログラムの戦略アドバイザーの補佐であった。フランスのEDHECビジネススクールより修士、インドの
グルガオン・マネジメント・デベロプメント・インスティチュートでも学んだ

【講演要旨】
1.西アフリカのLPG消費量は2000年から倍増した。しかしこの地域は、輸入に完全
  に依存しているため、適切なインフラの欠如というボトルネックに直面している。
2.それゆえ潜在的な需要は手当てされず、供給は不安定である。家庭用は伝来の炭や薪に
  よっているが、灯油も使用しておりLPGの4倍である。
3.クリーンフュエルとしてLPGは大いに有利であるが、マーケットは発展させなければ
  ならず、規則も適切に施行する必要がある。 
4.低レベルからの成長なので、操業者には大いなチャンスが見込まれる。この数年LPG
  に投資した企業も、潜在的可能性を認識している。



16 「インドのLPGマーケット概観」

【プロフィール】ビルラ工大工学士、国立工大工学修士(オペレーションズ・リサーチ)1992年のイン
ド石油公社入社。製油所メインテナンス、LPGプラントオペレーション・メインテナンス、バラウニプラ
ントマネジャー(3年間)、LPGロジスティック・オペレーション、全インドのLPG供給と配送の責任
者(2010年から)。

【講演要旨】
1.インドのLPGビジネスは3大石油公社で独占。
  IOG47.5%、HPC26.7%、BPC25.8%。
2.2014年:供給9.720MT、輸入8.195MT、需要17.892MT。
3.2021年:供給14.676MT、輸入10.802MT、需要25.478MT。
4.農村地域へLPGガス普及に取り組む。
  普及率:全国平均68%。17州平均以上、6州50%未満、13州平均未満。



17 「アジアと太平洋州におけるLPGマーケットダイナミクス」 


【プロフィール】アジアパシフィックと中東のNGLマーケットを主導する。各地マーケットと各種専門分
野を網羅するエネルギー産業に14年の経験をもつ。IHS入社前は、ボストン・コンサルティング・グル
ープで、5年間北米のアップストリームとミッドストリーム・エネルギー・リサーチで要職に就き、非在来
原油とNGLを担当する。また4年間、ダイレクト・エネジーにてリスク・マネジメント、マーケット・フ
ァンダメンタル調査、天然ガストレーディング戦略の責任者であった。清華大学で学士・修士、セントルイ
スのワシントン大学でPhDを取得した。


【講演要旨】
1.家庭業務用がアジアの需要を牽引するが、伸びシロは国ごとにばらばらである。
2.石化の需要は、家庭業務用より成長が速いが、中国のPDH新工場とクラッカーのナフ
  サの代替による。
3.都市ガスの普及は、たいていLPG需要の純減になる
4.アジアLPG生産は増加するが、需要に見合う輸入への依存が続く。
5.鍵となるリスク要因は、米国LPG輸出、中国のLPG需要、地域経済の景気である。


18 「PDH用プロパンの概要」


【プロフィール】上海の復旦大学国際経済学と国際トレードを専攻。その後、米国フィラデルフィアにてファ
イナンスの修士号取得。2012年7月ー9月 長江証券、2013年8月ー2014年9月 ICIS C
1エナジー、2014年9月から現職。現在は産業情報を収集し、マーケット分析を報告書にまとめる、現物
とペーパー取引実務担当。

【講演要旨】
1.需要
   2013年4.21MT、2014年7.1MT、2015年4月まで3.25MT、
   2015年10MTの見込。
2.現状の問題点
   コスト、安定性、運転の難しさ、許容範囲。
3.懸案事項
   設計不良、高離職率、従業員の不十分な専門性、設備の問題。
4.参加企業とトレーディング数量の不足 



19 「LPG海上輸送の傾向」


【プロフィール】ヒューストンのダウンタウンを拠点とする。以前は、ウオーターボーン・エナジーのパート
ナー、21年間LPG海上輸送を専門とした。海上輸送LPGレポートの主任リサーチャー、編集人、発行人
として、国際LPG市場の広範で長期的視野を持ち、5月にIHSに一員となった。1992年5月にウオー
ターボーン・エナジー入社までICIS-LORで6年間石化マーケットに従事した。サウスウェストテキサ
ス州立大に通学した。

【講演要旨】
1.国際的に海上輸送のLPG引取り量は上昇する。
2.VLGCの運賃は、不安定の時期を迎えたようだが、最終的には下降に向かう。
3.地域別の海上輸送のLPG引取り量は増えるが、多くは北米を中心に動く。
4.米国ターミナルフィーには圧力がかかるだろうが、急には下がらない。



20 「米国NGL輸出とフィリップス66ターミナル」


【プロフィール】石油・ガス産業で商船と製品に18年の経験をもつ。1996年、USマーチャント・マリ
ーン・アカデミーを卒業。アメリカン・コマーシャル・バージ・ラインでキャリアをはじめ、コスタル・コー
ポレーションで石油タンカーへと進む。エルパソエネジーで初めてチャ-タリングをした。クラークソンを助
けてヒューストン事務所の設立した。近年はコノコフィリップスとフィリップス66で11年のキャリアをも
ち、LPG船の傭船、管理、LPG配船を管轄する。


【講演要旨】
1.最近先物価格下のLPG供給見通し
   2005年対比でNGLは20014年+73%。
2.米国生産と需要が2020年LPG輸出に与える影響
   需要プッシュで輸出が拡大する。
3.米国LPGがプッシュならプルはどこか
   パナマ運河とVLGC船隊の影響は、アジア石化、ヨーロッパ石化、南米、フレート、
   パナマ、ナフサ価格が要因となる
4.LPG輸出ターミナルの操業、地理とマーケットのLPG輸出に与える影響
   東海岸キンダーモーガン PB1.85百万トン
   西海岸ペトロガス・ファーンデール B0.9百万トン
   ガルフ フリーポート PB4.2百万トン
5.フィリップ66が国際LPGトレードで果たす役割と資産構築の現況
   エンタープライズのHSC(混雑が予想)に比較し、フリーポートは出荷優位性があ
   る。


21 「フィリピンのLPGマーケット概観」

【プロフィール】LPGの配送・販売に従事するフィリッピンの企業であるPRガスの創立者。同社はフィリ
ピン初のLPGのフランチャイズ。2007年、シェブロンよりデポを買収し、2012年には、SHVより
LPG部門を取得した。企業家としても有名で、フィリッピンのトップ10に選ばれている。サンベダ大学よ
り経済学修士

【講演要旨】
1.ダウンストリームのエネルギー状況
   石油のシェア:ディーゼル43%、ガソリン22%、LPG14%、灯油10%、
   重油7% その他4% 
2.フィリピンのLPG産業
   需要110万トン、供給33万トン、輸入77万トン 
   ・販社とシェア
   ・インフラ
   ・配送
3.セクター別:家庭業務用64%、産業用25%、オートガス11%
4.エネルギー計画部門
   LPG産業はエネルギー部、シリンダーは貿易産業部が管轄 
5.LPG産業の挑戦
   人口増に対し、需要の伸びが弱い。オートガスの採用が遅れている。安全面の不備と
  疑問のある商慣行。



22 「ロシアとCISからのLPG輸出の見通し」


【プロフィール】シブールで炭化水素部門の販売を担当。2011年に入社し、オーストリアのウィーン支店
のLPG、ペンタン、ナフサ、貿易のセールス部隊を率いている。前は6年間BPに勤務。その前には、ロシ
アとイギリスの合弁企業TNK-BPに勤務していた。石油・ガス産業で17年の経験をもつ。オスロのノル
ウェー・シッピング・アカデミーで貿易と海上経済を学び、モスクワ商科大学で国際経済関係の学士を得てい
る。


【講演要旨】
1.ロシアLPG生産の展望
   ロシアは世界のLPGの4.5%を生産する。
   LPGの50%は随伴石油ガスから取れる。
2.ロシアのLPG
   需要:2014年12.3百万トン、2018年17.2百万トンと予測。
3.シブールのLPG北東アジア向け輸出の発展
   シブールは、ロシア最大の輸出会社で、2014年には2.6百万トンを輸出した。
  ヨーロッパが輸出先だが、アジアへの供給も模索している。



23 「世界LPG価格の動向」

【プロフィール】NGLリサーチダイレクターで、北米NGLサービスを主導する。IHS入社前は、ヴァレ
ロのシニア・マーケット・アナリストだった。その前にはハリバートン/KBRでプロセス・エンジニアだっ
た。IHSでは、石油製品マーケットで価格、新規参入戦略のコンサルタントである。また長期エタン価格予
想モデルをつくり、エタンの需給と長期価格の洞察を提供している。ジョージア工科大学で、化学工学と国際
問題の学士号、MITスローン校でマネジメントとリーダーシップの学位、ノースウェスターン大学で予測分
析の修士を取得す。

【講演要旨】
1.原油価格は、依然としてLPG価格の指標である。原油は2015年2Q底を打つだろ
  う。低価格は、効率の改善益にもかかわらず、掘削と完工を遅延させる。イラン取引や
  地政学的要因で原油価格は乱高下する。原油低価格でも、LPG生産は伸展しようが、
  何年か成長率は鈍化する。
2.原油価格予測は、LPG価格と米国の石化需要に影響する。
3.米国LPGの在庫は非常に高く、輸出ターミナルのUSGCキャパは限界まで来ている。
  テキサス・ネダーランドの新海上ターミナルの操業開始は、プロパンクラッキングを増
  加させ、寒い2月がLPG貯蔵改善の一助となった。
4.北米の天然ガス価格は3月、2014年4Q対比で低い。2015年は、横ばいで推移
  しよう。
5.米国プロパンとブタンの価格は、他地域より低く推移しよう。裁定取引が、米国マーケ
  ットの均衡化のために継続させねばならない。エタンは天然ガス平価に近いままだろう。
  新エチレンクラッカーとエタン輸出ターミナルが価格を押し上げるまでは、輸送と分留
  のコストに合わせて調節する。
6.世界のプロパンとブタンの長期価格は、供給増加により、原油に比べても低いままだろ
  う。


(調査研究部/岩田稔)