LPGC WEB通信  Vol.15 2015.06.10発行 

地域エネルギーシステムの動向

 総務省は「分散型エネルギーインフラプロジェクト」を立ち上げました。これは、地域で
の最適一次エネルギー源の組成と最大エネルギー効率による供給システムを構築するもので、
バイオマス(主として木質系)や廃棄物(農作物残渣)等の地域燃料をベースに、ガス等を
最適に組み合わせるものです。
 LPガス利用の観点からは、

 ●バイオマスコジェネまたはバイオマスボイラーを導入するケースでは、
  助燃燃料としてLPガスまたは都市ガスの必要性の有無の検討
 ●ガスコジェネを導入するケースでは、
  LPガス利用または都市ガス利用かの検討
 ●ボイラー(バックアップボイラー)を導入するケースでは、
  LPガスボイラー、都市ガスボイラーまたは石油ボイラーかの検討

等々となります。今回は、これらの概要と14ヵ所の自治体事業計画イメージについてまと
めました。将来は数十ヶ所~100ヵ所以上に拡大する可能性もあります。また、資源エネ
ルギー庁でも製材端材や農作物残渣によるバイオマス発電が2030年には2014年対比
で40倍の400万kwと想定しています。現地プロジェクトに関する情報収集等が重要です。
 具体的なシステム図の一例を下記に示します。




 





 分散型エネルギーインフラプロジェクトの基本骨子



 分散型エネルギーインフラプロジェクトの背景

(1)防災的な観点や人口減少・高齢化社会対応からの要請

   公共施設等を中心に自家発電等の自立型のエネルギー設備を導入し、平常時での地域
  エネルギーコストの減少、災害時での地域のエネルギー自立を図るものです。

(2)電力改革を踏まえた地域経済の成長戦略
  ●電力の小売り自由化を踏まえて、電力市場において、いかに新たな価値を生み出し、
   成長戦略につなげるかが課題。
  ●再生可能エネルギーや分散型エネルギーを活用した多様な需要地密着型の発電事業の
   創出。
  ●エネルギー分野に限らず、自動車、住宅、電機、ICTなどの企業を含むビジネスプ
   ラットフォームの創出。

(3)長期の取り組みを担保する必要性
  ●熱供給管等は道路占用スペースも大きくなることから、都市計画、まちづくりと一体
   となって進めることが必要。
  ●長期間にわたる建物や設備の新設・更新とともに、エネルギーシステムとして最適化
   の方向に進めるため、自治体が主体的に取り組む必要があり、マスタープランの中に
   うまく組み込んでいくなどにより、長期の取り組みを担保する必要。
  ●施設等のハード面だけでなく、それを構築し活用していくためのソフトな仕組みづく
   りも重要。


 最適ビジネスモデル構築のための条件

(1)住民・企業の熱需要の集約化・平準化

  ① まちづくりとの融合により、熱需要密度を可能な限り高める。
  ② 複数の熱需要を重ね合わせ、時間変動を平準化。
   (蓄熱、ピークカット、コジェネの活用)

(2)地域での最適一次エネルギー源の組成と
            最大エネルギー効率による供給システム

  ① バイオマスや廃棄物等の地域燃料をベースに、
ガス等を最適に組み合わせ。
  ② 熱需要をベースにシステムを設計。条件が合えば熱電併給を検討。

(3)木質バイオマスの利用・供給システム
  ① バイオマスの特性(負荷追従性の弱さなど)を理解したシステム設計。
  ② 木質バイオマス燃料確保のための方策。
   (公有林の活用、林業界との連携など)
   ※日本では発展段階であり、地域でのノウハウ強化が必要。

(4)熱と電気の融通・需給調整を通じた
            スマートなマネジメント・システム

  ① デマンドサイドとサプライサイドを繋ぐ最適タウンマネジメントシステムの導入。
  ② 地域サービス・イノベーションクラウドと連携。


 分散型エネルギーインフラのシステムイメージ
 下図は、バイオマスや廃棄物等の地域燃料をベースに、
ガス等を最適に組み合わせるシス
テムです。負荷追従性の弱いバイオマスの最適な利用法の一例です。


 下図は、熱需要をベースに設計し、条件が合えば熱電併給を検討するというものです。
「地域は実は熱需要が主である」「電力システム改革で売電が容易になった」という条件下
で有効なシステムの一例です。




 
 分散型エネルギーインフラプロジェクトのタイプ別分類
 マスタープラン策定中の14自治体のタイプ別分類を以下に示します。




 

 



 
 

 まとめ
 前述いたしましたように、地域エネルギーシステムの一つとして「分散型エネルギーイン
フラプロジェクト」がスタートし、現在14ヵ所で検討が進められています。地図を見てお
分かりのように、バイオマスを得ることのできる地域は地方都市ばかりではなく、その郊外
や山間地等もあります。このようなエリアはまさにLPガス、石油の供給エリアで、今後、
さらに増加するものと思われます。
 また、背景の一つに「公共施設等を中心に自家発電等の自立型のエネルギー設備を導入し、
平常時での地域エネルギーコストの減少、災害時での地域のエネルギー自立を図る」とある
ように、災害に強いLPガスの特徴を最大限に活用できるケースも多くあるものと思われま
す。
 是非、地域での動向をウォッチしていただきたいと思います。

 総務省の「自治体主導の地域エネルギーシステム整備研究会」の資料については、下記の
URLをご覧ください。
 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/jichitai_energy/index.html

 当センターのWEB通信では「温泉街の生ごみによるバイオガス発電と高付加価値農産物
の栽培事業の先進事例」について取り上げていますので、ご参照ください。
 http://www.lpgc.or.jp/corporate/webreport/201405contents3.html


(事務局/大森栄治)