LPGC WEB通信  Vol.15  2015.06.10発行 

LPガス国際セミナー2015報告 Part.3 講演要旨

  今回は5月号のpart.2に引き続き「LPガス国際セミナー2015」part.3のご報告をい
たします。part.3では第2日目の3人の講演者の講演要旨と総括質疑応答を掲載いたします。
LPガスの最前線の情報を共有でき、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
 なお、当センターのホームページに「講演資料集」をアップしておりますので、併せてご
覧ください。
 URL:http://www.lpgc.or.jp/corporate/information/seminar2015.htm


10 2日目の講演

【プロフィール】
アジア部門運営のためOPISへ入社。1998年プラッツの価格報告分野でキャリアを開始する。ロイター
に移り2003年に上席エネルギー記者となる。オハイオのアシュランド大学より経営学士、慶応義塾ビジネ
ス・スクールでも学んだ。多くの業界の会議で講演をしている。


【講演要旨】
①MB価格とCPのスプレッドはここ何ヶ月か概ね一定。
②MBは最大のNGLハブであり16の分留プラントがあり、定格1.483百万バレル/
 日の能力を有する。海上出荷はエンタープライズ社とタルガ社のみ。両社は12基、能力
 1百万バレル/日を有する。
③エンタープライズは2013年に発表した第2LPGターミナルの代わりに2015年第
 4四半期までにプロパン、ブタンの輸出能力を16百万バレル/月以上に増強する。
④タルガは2014年第2ドックの完成により、2014年第3四半期には月に6~8船の
 受入れ能力になり、2015年には4百万バレル/月レベルから5.5~6.0百万バレル
 /月まで拡大。
⑤フィリップス66は能力4.4百万バレル/月のフリーポートLPG輸出基地を2016年
 中にスタートする計画で月8隻のVLGCを受け入れ。その他、輸出基地建設計画が幾つ
 かある。
⑥MBの重要性について:グローバルなクリアリングマーケットとして。透明な価格、米国
 の輸出増によってどこかのLPG輸出が減少している。中東、アルジェリア、西アフリカ
 の輸出量が減少。
⑦化学原料へのシフトについて:北東アジアの化学原料は構造的に中東ナフサを原料として
 きた。中東ナフサの高騰はアジア化学業界に影響。これら化学業界はナフサからの代替原
 料を指向。様々な原料を投入できるプラントを建設、新たな原料を模索。
⑧MBからのLPG増を受けエンタープライズ、タルガは直接契約によるLPGの販売先を
 模索。パナマ拡張による米国産LPG輸出増を受け、欧州、アジアでのLPG価格のベン
 チマークにMB価格がなりつつある。




【プロフィール】機械工学で優等学位、経営学修士を取得。25年間にわたりシェルインターナショナルに勤
務し、英国、サウジアラビア、インドネシア、中国、豪州と豊富な勤務経験を持つ。内15年は独立コンサル
タント。2009年3月よりWLPGA勤務。英国人。


講演要旨】
①2013年世界のLPG消費は2.65億トン。LPGは2,500億ドル以上の産業。
 LPGはバイプロであり、井戸元ではフレアーされてもいる。しかし大変価値あるエネル
 ギーである。需要は拡大、特にアジア、太平洋諸国において大きな需要増が見込まれる。
 生産も増加。
②成熟した国がある一方、未だに近代的なエネルギーに手が届かない人々もいる。
③産業用、農業用需要など様々な用途が見込まれる。”Exceptional Energy in Action"には
 様々な機器、用途が紹介されている。
④自動車用燃料としてのLPG需要も拡大(ガソリン、ディーゼルからLPGに)世界では
 25百万台のLPG車が普及。ディーゼル車の排ガスは大きな問題。ディーゼル代替燃料
 としてのLPGは成熟市場の大きな成長機会となり得る。
⑤LPGの供給は十分にある。




【プロフィール】
2014年5月よりNGL販売供給のダイレクターで、国際NGLビジネスの責任者となる。前職はシーウェ
イPLとクッシングターミナルのダイレクター。2011年5月にエンタープライズに入社し、NGLトラッ
ク・鉄道輸送のマネジャー。エンタープライズの前は2002年から2011年までBNSF鉄道に勤務して
いた。


【講演要旨】
 ①投資組合組織(MLP)とは:各出資者が自分たちの持ち分について、課税対象利益に
  対してのみ税金を払えばいいわけで普通の株式会社よりも資本コストが安くて済むとい
  うこと、そして資本市場からの資金調達がしやすい。
 ②上場されているエネルギー関係の投資組合組織(MLP)としては最大級で、時価総額
  は850億ドル、フォーチュン500では56位。顧客は生産者と消費者の両方で、天
  然ガス、NGL、原油、精製品、石油化学が商品である。
 ③エンタープライズはシステムをつくる会社であり、単に何かを買い集めるところではな
  い。100のパイプライン・コネクトがある。2014年51,000マイル(81,
  600km)のパイプライン長さとなっている。
 ④日量67万バレルの分留能力を持っており、9号機ができると、これが日量77万バレ
  ルに上がる。MB以外にも持っているので、全て合わせると分留設備量は日量110万
  バレルとなる。また、貯蔵能力は、35本の坑井があり、全部合わせると1億1000
  万バレルを貯蔵できる。
 ⑤10年前に掘削・フラッキングをした坑井をもう一度再フラッキングして、もっと新し
  い、効率的で効果の高い技術を使うことによって、さらに生産できるようにするという
  こと。
 ⑥今から2020年までの間で、アメリカの坑井から出てくるものは少なくとも日量13
  0万バレル増えるだろうということです。その影響はどこに行くのかというと、海外市
  場だと強く信じている。
 ⑦生産者はどこを掘削するかということに関して採算性を非常に注目しており、バランス
  シートやキャッシュフローを守り、そして分配金をきちんと出せるようにした。したが
  って、仮に原油価格50ドルになっても採算性が出るようなところに特化して活動して
  いる。
 ⑧インフラ拡張でLPG輸出7.5MMbbl/月、 16MMbbl/月に倍増し、29
  船/月の出荷荷役が可能になる。2024年までの間に、1,800回分の出荷を見込
  む。それに積み込むプロパンも十分にある。
 ⑨2014年には500万バレル分のエタン・エチレンの輸送能力があったが、2017
  年には4,800万バレル分の輸送能力(船腹)ができている。



10 2日目の総括質疑応答




Q1 VLGC引渡し遅延について
●タルガリソーシズのスコット・プライヤーです。ニコラさんへの質問です。昨日の話では、
今後数年で非常に堅牢なVLGCが新造されるということでしたが、船舶のオーナーが建造
のプログラムを遅らせるということはあり得るでしょうか。あるとするなら、そのオプショ
ンは何でしょうか。

A1 クラークソンズ・ガス/ニコラ・ウィリアムズ氏
●ご質問をありがとうございます。オプションとして引き渡しを遅らせるものがあるわけで
はないのですが、実際に話として最近よく出ているのが、引き渡しが遅れることはあり得る
ということです。昔は少なくとも天然ガス運搬船ではありませんでしたが、最近の引き渡し
に関しても、もともとの予定よりも遅れています。それは船自体の問題や造船所の問題でし
たが、この先、いろいろな理由で引き渡しが遅れることもあるかもしれません。そうすると、
結局、市場の需給が少し締まることになるかもしれません。特に大きい船が入ってくること
になっていたところが、少し遅くなることはあるかもしれません。


Q2 ①イラン玉 ②CPとMBの価格差について
●おはようございます。KPCのチャールズ・アツムースと申します。イランの制裁が解除
されるかどうかということもありますが、アラビア湾から出てくるものの今後の見通しにつ
いて教えてください。
●また、モントベルビューの価格は均衡するのでしょうか。つまり、スプレッドが最小化し
て、それが新規市場に入っていくことにつながるのかという、そのあたりの見通しをどなた
かお答えいただけますか。

A2 OPISアジア/ジーウォン・チュウン氏
●ありがとうございます。イランのカーゴが出るという話があります。まだ制裁は解除され
ていませんが、今年のどこかで解除されるといううわさがあります。そうなると、イランの
カーゴがこの地域にも入ってくるのではないかと思われます。ただ、イランはまだ制裁が解
除されていないので、中国はイランのカーゴをたくさん買っており、イランはCPリンクの
価格がほとんどです。今の質問について、中国の市場を考えています。中国市場と日本市場
は、イランカーゴが入っているかどうかということが大きな差になっているので、スポット
としてこれをどうにかして入れられないかということを考えています。
●モントベルビューとCPの間のスプレッドですが、グラフでお見せしたように、同じよう
な形で動いています。このトレンドはこれからも続くと考えていますが、CPとモントベル
ビューの間のスプレッドで言うなら、FOB価格では200~300ドルぐらい下がるので
はないかと思います。今、フレートが非常に高いので、スプレッドがかなり縮まっています。
CIF価格では、アメリカのLPガスはシッピングコストが高いので、そこにあまりうまみ
はありません。先ほどもありましたが、VLGCが倍になるとアメリカの積荷のシッピング
期間が80日から44日に短縮されることになるので、これは大きくプラスに働くでしょう。
アメリカのLPガスの積荷をCIF価格で受け取ったときに、とても大きな魅力になります。
ですから、来年はモントベルビューとCPのスプレッドはもっと拡大すると思います。これ
でお答えになっていますか。

A2 ファクツ・グローバル・エナジー/コリン・シェリー氏
●ありがとうございます。一つ追加して申し上げます。昨年にイランのLPガスの輸出が反
発したのは今お話があったとおりですが、増分は中国に向かいました。基本的には中国が船
を出して、そこに積めと言ったわけです。結局、フジャイラから積み替えて出しているので、
なかなか数量をトラックしにくいため、数量的にどうなったのかはよく分かりませんが、私
どもの推定では昨年の輸出は300万~350万トンぐらいだったと見ています。
●イラン国内ではサウスパースの新規のものとの競争が問題になっており、この先、新しい
LPガスの設備が稼働して、少なくとも200万トンぐらいイランで生産されます。もちろ
ん制裁問題がどうなっていくかということが不確定要素としてありますが、私の想定では、
生産が増えてくるサウスパースからの分は海外取引市場に出てくるのではないかと考えてい
ます。これは2015~2017年にかけて段階的に出てくるもので、全て合わせると20
0万トン分の新しいLPガスの生産能力がサウスパースから出てくるということになります。
聞くところによれば、かなり完成に近くて、間もなく稼働するそうです。

A2 IHS社/ウォルト・ハート氏
●確かに今おっしゃったとおりだと思います。実際に一部のサウスパースが稼働して生産さ
れ、さらに制裁が解除されれば、かなり増えると思います。上流工程で必要なものが全部あ
るのかということがあるので、川下まで回ってくるまでには時間があるかもしれませんが、
制裁が解除されれば、当然、かなりの量が出てくると思います。





Q3 イラン玉の影響について
●おはようございます。プラッツのラムザン・フセインと申します。イランについてもう少
し質問させてください。イランだけではなく、オーストラリアがここ2年ぐらいの間に増産
するのではないかと期待されています。そこで、アメリカのティーガードゥンさんとサウジ
アラムコのマスードさんにお伺いしたいと思います。イランで制裁が解除され、増産が出て
くると、輸出はどのようになるのでしょうか。そして、それが世界のLPガス市場の価格に
どういう影響を与えると見ていらっしゃいますか。今、コリンさんもおっしゃったように、
イランは昨年に既に300万トン弱を輸出しているわけですから、さらにサウスパースから
200万トンも出てくるとなると、アメリカやサウジアラビアのような産油国あるいは産ガ
ス国はこれをどのようにご覧になりますか。ダウンサイドがさらに急激なものになると考え
ますか。

A3 サウジアラムコ/アリ・アル・マスード氏
●ご質問をありがとうございます。アメリカからどんどん生産が増えて、輸出が増えてくる
ということで、基本的には価格は落ち着いて下がってきました。イランだろうがオーストラ
リアだろうが、生産が増えれば、相対的な意味では価格は下がるはずです。私どもは大きな
生産者であり、この先もそうです。輸出も続けるつもりなので、申し上げることがあるとす
れば、基本的にはどんな状況になっても競争力を維持しようと思うということです。


Q4 世界のLPG車について
●東京都LPガススタンド協会の会長の柳です。世界LPガス協会のタイラーさんに、LP
ガス車の台数のカウントの仕方についてお尋ねしたいと思います。世界にLPガス車は2,
500万台あるといわれていますが、このLPガス車というのはモノフューエルのLPガス
のみで走る車の数なのか、それともバイフューエルのガソリンとLPガスの両方で走れる車
も含まれているのかということをお尋ねしたいです。
●そう言うのも、日本のLPガス車の台数は、今、22万台といわれていますが、これはど
んどん減っていきます。国土交通省はLPガスのみで走る車の台数を発表しているからです。
これからのLPガス車のトレンドとしては、昨日展示されていた日産のNV200にしても、
バイフューエルです。つまり、LPガスとガソリンなのです。それから、東京オリンピック
に合わせてトヨタがジャパンタクシーとして発表する車は、LPガスと電気モーターのハイ
ブリッドです。しかし、日本のLPガス車のカウントの仕方は、ハイブリッド、バイフュー
エル、軽自動車が含まれていないのです。ですから、LPガスのみで走る車は、日本におい
てはカウントがどんどん減っていく形になります。世界でカウントされている台数は、バイ
フューエルの車も含まれての台数なのかということをお尋ねしたいと思います。よろしくお
願いします。

A4 世界LPガス協会/デェイビッド・タイラー氏
●今の話を聞いていると、2,500万台というのは実際の報告よりも多いように思います。
毎年WLPGAが出している数値はロンドンのアーガスから出てくるものをベースにしてい
ますが、120の国からいろいろなデータを集めて、生産・消費のデータを見ています。オ
ートガスに関しては、その車がオートガスで走れるのであれば数字に入ることになっていま
す。日本で公開されている数字には、そういうものを入れていないということでしたが、私
どもは、オートガスで走るなら、それがバイフューエルであってもオートガス車とします。
日本の場合はバイフューエルのものを入れていないようですが、われわれと同じやり方をす
るのであれば、それも入れてカウントすべきかもしれません。


Q5 発電用LPガスについて
●アシュレイ・オーです。日協の増田さんに質問があります。昨日の発表の中で、日本の場
合、発電用にもLPガスが使われてといるとおっしゃっていました。韓国も非常にその分野
に興味があるので伺いたいのですが、これは発電所で使うためのものでしょうか。それとも
緊急時に使う分散型・小型の発電のためのものでしょうか。

A5 日本LPガス協会/増田宰氏
●質問をありがとうございました。まず、エネファームという分散型の・小型の発電機能の
ものがありますが、その普及で使われることが一つです。もう一つは、国のエネルギー基本
計画の中で、LPガスは将来的に発電の中におけるミドル電源としての位置付けの可能性が
あることが示されました。今の段階ではLPガス焚きの大型発電所までは結び付いていませ
んが、今後の供給の拡大に伴い、日本国においてLPガス専焼の発電所ができる可能性は十
分にあるのではないかと考えています。




Q6 VLGCの需給について
●センターの岩田です。二コラ・ウィリアムズさんに質問があります。LPガスの海運量が
伸びていくという話でしたが、この海運量の伸びをカバーするVLGCは十分建造されてい
くのでしょうか。

A6 クラークソンズ・ガス/ニコラ・ウィリアムズ氏
●ご質問をありがとうございます。プレゼンのときにもお話ししたように、今、フリートの
うち50%に当たる受注があります。この先、これがかなり増えることになるわけです。そ
うは言っても、2008~2009年にいわれた数字よりは低いと思います。この先、受注
された新造船が引き渡されると、VLGCの船腹量は2017年までに倍増するといわれて
います。そうすると、2017年には10年前に比べて倍の船腹量があることになります。
ただ、もちろん取引量は増えているでしょうけれども、どれだけ増えるかということについ
てはまだ議論があります。昨日と今日に話があったとおり、アメリカやイラン、オーストラ
リア、アフリカからどれくらい出てくるのかということを考えなければいけません。
結果として、需給の逼迫と緩和が繰り返されると思います。これはいつ輸出が出てくるかと
いうことといつ新造船が使えるようになるかということのタイミングのずれによるものです。
●また、長期的にはどんどん輸出されるものが増えると考えています。そして、その引き渡
しの予定は今年の後半にかなり出てくると思うので、上期は強く逼迫して、逆に下期になっ
て実際に引き渡しが始まると、少し落ちてくると思います。2016年にかけても、どれだ
けのものが輸出に回ってくるかによります。ターミナルがどれだけ造られて輸出能力が増す
かということを考えると、もっと輸出が出てくると思われますが、本当にそうなるのか、ま
た、キャパシティ一杯に輸出されるのかということもあります。
●また、新造船の引き渡しのタイミングがどうなるかということも関わってきます。アービ
トラージウィンドーは広がったり狭くなったりしますし、実際の生産のタイミングもありま
すし、それから引き渡しがそれだけ予想されているので、結果として2016年には運賃が
少し下がることもあると思います。その後、2017年の引き渡しに向けた受注は6隻しか
ありませんが、さらに受注が来ないかというと、そうでもないと思います。それは分からな
いので、もっと受注があれば、170億から180億に増えるかもしれません。ただ、今の
受注の状況を見ると、2017~2018年ごろにはそのバランスは厳しく締まってくると
思います。ですが、結局はどれだけ新造船の受注があるかということにもよりますし、引き
渡しの遅れがあった場合は先の引き渡しのスケジュールがなだらかになるので、軟調になる
のが2016年より少し先送りになる可能性もあります。


Q7 パナマ運河通行料について
●二コラさん、ありがとうございました。もう一つ二コラさんに質問させていただきたいと
思います。昨年のこのセミナーで、パナマ運河庁のシルビア・ドゥ・マルッチさんが、20
16年の第1四半期にパナマ運河がオペレーショナルになると明言されました。ニコラさん
にお伺いしたいのは、オペレーショナルになる時期に遅れはないのかということです。また、
もしオペレーショナルになった場合の通行料の情報をお持ちでしたら、ぜひお伺いしたいと
思います。よろしくお願いします。

A7 クラークソンズ・ガス/ニコラ・ウィリアムズ氏
●私どもは既にマスコミで伝えられた情報しか持っていません。また、予備的な料金が発表
された後については分かりません。結局、パナマ運河庁次第だと思いますので、いつ新しい
閘門が使えるようになるかということも運河庁に聞かないと分かりません。われわれはどれ
だけ航海日数が変わるかということを見ようとしていますが、基本的には2016年の下期
から動くことを想定しています。もちろん当初は遅れが出るかもしれないので、コンサバに
見て、2016年の下期から使えるということを想定しています。
●コストに関しては、LPガスどれだけ積めるかという容量ベースになっています。本当に
最終的に数字がそうなるのか、あるいは取りあえずの数字が入っているのかということはま
だ分かりませんが、ラフに計算したところ、VLGCに換算すると、空荷であっても積んで
いても約35万ドルということで、今の状況とあまり変わらないのではないかと見ています。




Q8 リフラッキングの生産割合と競争力について
●アーガス・メディアの長谷川です。エンタープライズさんに質問させてください。リフラ
ッキングの生産技術を利用した生産が増えているとの話でしたが、全体の生産に占めるリフ
ラッキングによる生産の割合はざっくりと言ってどのぐらいでしょうか。また、通常の生産
技術を用いた場合と比べて、リフラッキングの方がコスト的に競争力があると理解していま
すが、どれぐらいのコストが抑えられますか。以上の2点を教えてください。お願いいたし
ます。

A8 エンタープライズ/マット・ティーガードゥン氏
●良いご質問をありがとうございます。どれだけの坑井がリフラッキングの対象になってい
るかという数字は持っていませんが、それは生産者があまり公表していないと思います。そ
ういうことをやっているという話は伺いますが、どのぐらいの比率で何本の構成でやってい
るのか、あるいは、プラスアルファの増分として生産量がどうなっているかということにつ
いては、われわれは何となく探っている状況です。
●それからコストについですが、確かにおっしゃるとおりで、例えば掘削して新しい坑井を
仕上げるよりはずっと安いので、経済性を見てリフラッキングを行っているわけです。それ
に加えて、例えば15~20%のコストの削減余地があることを考えています。しかも、い
ろいろなグループに分かれるのです。単に掘削のリグや労務費だけではなく、フラッキング
に使う砂や液など、2次的、3次的に効いてくるところがあります。結局、全部プラスアル
ファで効いてくるのです。そのことを考えると、経済性という意味でリフラッキングに弾み
がついているということがあります。


Q9 輸出インフラについて
●日本LPガス協会の葉梨と申します。昨日から今日にかけて大変素晴らしいプレゼンテー
ションをありがとうございました。われわれにとっても非常に良いインフォーマティブな情
報だったと思っております。エンタープライズのマット・ティーガードンさんにご質問があ
ります。昨年から今年にかけてシェールガスが進展することに伴って、輸出をしようという
いろいろな動きがわれわれの方にも聞こえています。当協会からの発表の中でも、例えばロ
ングビューの流れの話なども説明させていただいていますが、その他にメキシコからのお話
などもあります。具体的にはメキシコ湾岸からメキシコに玉を動かして、それを貨車とパイ
プラインで太平洋側に移して、極東に持ってこようという動きもあります。具体的にメキシ
コ・ペメックスの動きとしては、2017年前後という話を聞いていますが、そういう話は
実際上、エンタープライズの方にもあるのでしょうか。もしもお話ができるのでしたら、コ
メントいただければありがたいと思います。

A9 エンタープライズ/マット・ティーガードゥン氏
●また良いご質問をありがとうございます。そのプロジェクトの現状の情報で私が持ってい
るものも限られていますが、まず、岩塩ドームがあるので、メキシコの地下の貯蔵の可能性
のあるところでできることになっています。また、パイプを太平洋側に持ってくるという契
約ですが、このプロジェクトは良いプロジェクトで、それなりのメリットもあると思います
が、慎重になる要素もあると思います。そもそもパナマ運河の状況はどうなるかということ
が分からなければいけないところがあります。取っ掛かりとして2017年に始まるという
ことはあり得ると思いますが、具体的に物が動く、あるいは、もう少しきちんと物事が動く
のは、パナマ運河がどうなるかということが分かってからではないかと思っています。




Q10 米国原油の禁輸出と価格下落について
●やはり原油の問題に関心が深まりますが、先ほどの稼働リグとの関係についてお伺いしま
す。昨日もニコラさんが、リグの数は減っても生産性は増えているというグラフをお見せに
なりました。そういうことが実際に起こっているので、アメリカでは原油生産量が今でも9
30万バレルぐらいあるわけです。それに伴ってNGLも300万バレルを超えているとい
う状況なので、私たちは生産量が減っていくことはあまり考えられないのです。
●ただ、問題になるのは、アメリカは原油を輸出していないので、在庫がどんどん膨らんで
4億4400万バレルになっていることです。洋上備蓄も非常に増えています。VLGCで
22~23隻になっています。こういうものが次の原油の急落のリスクになるのではないか
と私には思えるのですが、そのあたりについてチュウンさんとエンタープライズさんのお考
えをお聞かせいただきたいと思います。

A10 OPISアジア/ジーウォン・チュウン氏
●2008年にも同じことが起こりましたが、石油が足りないということはありません。イ
ランでもそうでしたが、値段が落ちた瞬間にVLGCに原油を積み込んで、安いうちに生産
されたものをどんどん在庫に積み上げて、高くなったら売るということが2008年に起こ
りました。先ほど申し上げたように、2008年は急激に急落したので、オイルショックの
中でも落ちるスピードが一番速かったといわれています。ただ、今回はそのようにはいきま
せんでしたし、それに比べると緩めに落ちたので、その分、上がるのにも時間がかかると思
います。先ほどおっしゃったように、積み込んでいる国も結構ありますし、アメリカの原油
があれぐらいの在庫高で、法律が改正されて一気に出たとすれば、下方修正が起きることは
十分に考えられます。
●ただし、私個人的な見解として、ファンダメンタルで決まる高値は、2008年あたりは
ブレントとTIベースで70~80ドルと考えていました。もう少し上げて80~90ドル
としても、そこまで行くには時間がかかって、下方修正しても40ドルまで落ちるかという
のは微妙なところだと思います。そういう懸念もあって、今、私はWTI55ドルで強いレ
ジスタンスがあると思っています。どちらにしろ、小幅で動きが出るのではないかと思って
います。

A10 エンタープライズ/マット・ティーガードゥン氏
●今おっしゃったとおりだと思いますが、もう一つ考えられるのは、コンデンセートとして
出てくるものもその数字に入っているということです。エンタープライズもそうですし、他
もそうだと思いますが、処理したコンデンセートの輸出は許可されました。実際に蒸留加工
した後ならいいということです。そういうものが増えてくると、たまってきている原油の在
庫を消化するのに使えると思いますが、政府がコンデンセートの輸出を解禁したことが非常
に大きな節目になっており、これが大きな変化をもたらすと思います。
●一つ曲がり角を曲がったというか、政府としても、20年もかかりましたが、ようやく原
油の輸出もありかなと思いはじめたという状況だと思います。実際にアメリカで作っている
原油はたくさんありますが、あまりにも軽質で、もう要らないと。われわれの海岸地域にあ
る製油所はもう少し重質に造られているので、エンタープライズとしての立場ではなくて私
の個人的な考えですが、そのパターンを変える第一歩としては、出すものと入るものが1対
1ということです。コンデンセートに関する新しい決定は非常に大きなもので、新しい扉の
隙間が少し開いたという意味では大きいと思います。




Q11 日本の価格体系について
●チュウンです。私から日本LPガス協会に質問があります。現在、日本のLPガスの仕切
り価格は100%CPリンクになっていますが、この2日間で皆さんが議論されているよう
に、アメリカからのLPガスの輸入はこれから増える一方だと思います。それに伴って、ど
こかの時点で、国内の仕切りでもアメリカの影響を反映することは十分に考えられますか。
私の聞くところでは、アメリカからの輸入量が20%を超える時点で考えられるといわれて
いますが、その点はいかがでしょうか。

A11 日本LPガス協会/増田宰氏
●昨日のサウジアラムコさんのご説明でもありましたが、CP価格は非常にマーケットに連
動した形で動いています。従って、今後はCPで連動している部分の比率が下がるようにな
ると、確かに日本における末端の価格は、いろいろなフォーミュラがありますが、ベーシッ
クなリスクはCPに連動している形になっているので、そういう可能性はあると思います。
ですが、ここ数年の間は中東産ガス国のシェアも一定量がキープされることになると思いま
す。また、パナマの開通の後、どのような動きがあるのかということ不透明な段階なので、
その辺が全部ある程度クリアになったところで、次のプライスフォーミュラが出てくる可能
性があるのではないかと思います。


Q12 インドの滞船問題について
●インド石油公社のアスュトシュ・グプタさんに質問があります。ENEOSグローブの宮
武と申します。もし私が聞き漏らしていたら申し訳ないのですが、足元というよりは4月ご
ろの記憶もありますが、インドで輸入する輸入船の滞船がしばしば起こっており、それがフ
レートマーケットにかなり影響を与えていたと思います。こちらに関して、私も詳細は存じ
上げませんが、基地側のインフラの問題だという話も聞いています。そこで、滞船が起こっ
ている具体的な理由、そしてどのタイミングで解消されるのかという見通しに関して教えて
いただければと思います。

A12 インド石油公社/アシュトシュ・グプタ氏
●ありがとうございます。この質問は昨日も出るのではないかと予想していた質問です。
インドはタームコントラクトのみなので、まず、年初で全て決まっています。従って、どれ
だけローディングできるかということによります。また、昨日も言いましたように、ネーム
プレートで50万、そして既に7~7.5ぐらいになっており、今年は800万となってお
ります。そのようなキャパシティですので、積荷をきちんと陸揚げできるかとか、何かある
とすぐに影響を受けてしまいます。既にインドでは、二つ、三つほどの輸入ターミナルの建
設を始めています。コーチは2017年ぐらいに稼働すると思われますし、パラディプも製
油のターミナルを造っており、2017年か2018年に完成すると思います。西海岸の方
でも輸入ターミナルを2~3社で検討しているので、今月中にその発表が出ると思います。
これらが全てオンラインになると、かなり改善されることになります。また、パイプライン
については、確かに滞船の問題はありますし、安定するまでに時間がかかるかもしれません
が、2~3年すれば完全に解消できると思っています。


Q13 プロパンとブタンの価格差について
●シーザー・オリビエラと申します。ペトロブラスから参りました。私の質問はハートさん
に対してです。発表の中でブタンとプロパンの生産が上がるというお話がありましたが、プ
ロパンの生産とブタンとの間の価格スプレッドの見通しを教えてください。また、エンター
プライズの方にもその点についてコメントお願いします。

A13 IHS社/ウォルト・ハート氏
●ありがとうございます。アメリカでのブタンの生産を見ると、ガスプロセスと製油所の二
つがあるので、二つの違いがあります。ガスのプロセスの場合、プロパンは2倍ぐらいの差
があります。製油所の方は、世界でかなり差があります。ディーゼル、ガソリンをどれぐら
い作るかということによって変わります。製油所でブタンを作って自前で消費するため、統
計に示されないケースも多くあります。アメリカの製油所の場合、内部で消費するときは、
直接ブレンドに使う、またはアルキル化に使います。ですが、プロパンはそうではありませ
ん。プロパンの場合、量も少ないので、特に自前で消費をする用途はありません。そうでな
ければ、分離してプロパンとプロピレンのミクスチャーという形も考えられますが、LPガ
スの製油所は80~90%ぐらいのプロパンだったと思います。
●それから価格設定ですが、アメリカはなぜプロパンを輸出してブタンを輸出しないかとい
うと、ブタンはアメリカ国内で消費できるのに対して、プロパンはそれができないからです
。ですから、プロパンの方が余剰があるので、プロパンの方が価格の面でもブタン以上に輸
出しようというインセンティブが働くわけです。これからもブタンよりもプロパンの方が生
産量は多いでしょう。
●ただ、ブタンに関してはかなり余剰があります。アメリカの製油所はただ伸びるのではな
く、横ばいか、あるいは下がってくるであろうということで、これからブタンが内部で消費
しきれなくなってくるかもしれません。もしそれが輸出されなければいけなくなると、それ
が数字にも反映されるようになります。われわれとしては、アービトラージがプロパンほど
安定しているとは思いませんが、一部のブタンについては輸出の方に回さざるを得ないと思
っています。




Q14 顧客管理について
●アシュトシュさんにお伺いします。私どもはバングラデシュでLPガスのお客さまのデー
タベースをつくろうとしていますが、いろいろな問題があります。例えば同じデータが重複
して入っていたり、お客さまが重なっていたり、データベースの中身を開示したくないとい
う人がいらっしゃいます。ぜひ教えていただきたいのですが、インドのような非常に大きな
国で、どうやってお客さまのデータベースをつくっているのでしょうか。お客さまを訪問し
て、調査について話をしたときの反応などをお聞かせいただけますか。

A14 インド石油公社/アシュトシュ・グプタ氏
●質問をありがとうございます。とても重要なことを聞いていただきました。バングラデシ
ュはちょうど10年前のインドの状況ではないでしょうか。当時はカスタマーベースがデュ
プリケートになることすら考えていませんでした。しかし、直接支払い制度に入る中で、「
1家族1コネクション」とすることで、二重にカウントしている部分を随分排除できるよう
になりました。多分、アメリカと同じだと思いますが、今は一人一人へのID番号の割り振
りが進んでいるところです。そのようなID番号が付くと、トラッキングができるようにな
ります。さらに、銀行口座の詳細データも得られるようにしたことで、データベースの中身
がかなり整理されました。1世帯の補助金が二重カウントにならないようにして、また、も
ともと資格がないのに補助金を得ることがないようにして、かなり整理できました。また、
お客さまに関しても、全社的に同じIDを割り振るようにしています。この三者の間で共通
にしています。インドのITインフラがしっかりしていて、ITグループがきちんとここを
やってくれたので、ここは随分と進みました。次回はもっと進捗についてお話しできるかも
しれません。また、具体的にどういうことをしたのか、どれくらいの実績が挙がったのかと
いうこともご紹介できるかもしれません。インドは近隣諸国には常に支援の手を差し伸べて
おりますので、eメールで情報交換してもいいかもしれません。


(調査研究部/岩田 稔)