LPGC WEB通信 Vol.6 2014.09.10発行
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IHSアジアLPGセミナー 報告 part.2 |
本年の6月9日~11日にシンガポールで開催されました「IHSアジアLPGセミナー」 について、前月号に引き続きご報告いたします(part.2)。今回は9人目(ヴィノード・ クマー氏、インド石油公社)から最後の18人目(ロン・ギスト氏、IHS)までの講演につ いての概要です。 講演1~講演8については、先月のWEB通信8月号をご覧ください。 |
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9 ヴィノード・クマー氏 インド石油公社 国際貿易副部長 「インドのLPGマーケット展望」 10 ジウォン・チュン氏 アジアOPIS マネージング・ダイレクター 「MBのLPG価格は、アジア・スポット価格のベンチマークになるか」 11 ロブ・ドナルドソン氏 タルガ・リソーシーズ ダイレクター 「タルガのLPG輸出インフラ-アジアLPガス市場への影響」 12 ジョン・スティーン氏 SAGE・ミッドストリーム VPビジネス・デベロップメント 「米国西海岸のLPG輸出ターミナル」 13 キーファー・ダグラス氏 IHS シニア・リサーチ・アナリスト 「アジアにおける家庭・業務用LPG需要の見通し」 14 ゼン・シュアン氏 広東油気商会 販売分析ダイレクター 「中国のLPGマーケット展望」 15 マット・ティーガードン氏 エンタープライズ NGL国際販売ダイレクター 「米国NGLの輸出-国際的な需要を満たす」 16 トゥリン・ミン・ホアイ氏 ペトロベトナム ガス・トレーディング 「ベトナムのLPGマーケット展望」 17 スコット・グレイ氏 IHS 海上輸送・シニア・ダイレクター 「VLGC船団と運賃」 18 ロン・ギスト氏 IHS NGLリサーチ・ダイレクター 「LPG価格の見通し」 |
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セミナーのパンフレットに掲載された「LPガス国際セミナー2015」の案内 |
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9 インドのLPGマーケット展望 | |||||
ヴィノード・クマー氏 インド石油公社 国際貿易副部長 |
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【プロフィール】LPGに25年のキャリアがある。全インドでLPGオペレーション・供給ロジを担当し拡大 していく需要に対応する輸入の責任者である。バーラ工科科学大学ピラニ校で土木工学士と数学修士を取得した。 同校は名門である。 1.インド石油公社(IOC)は、国営石油3社の中で最大である。 2.インドのLPG販売-その背景と概観- 国営3社で97%のシェアを占め、IOCは48%。農村部のエネルギーに占めるLPG の割合は15%で、これを向上の対象とする。 3.需給シナリオ 実勢 2013年 輸入600万トン 国内需要1,000万トン 計画 2019年 輸入920万トン 国内需要1,480万トン 4.インフラ/ロジ 現在(2013年)の充填キャパは需要1,300万トンに対応。 2022年には2,100万トン以上に拡充する必要あり。 5.国内販売-問題と挑戦- 農村部のLPG普及が最優先課題。 |
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10 MBのLPG価格は、アジア・スポット価格の ベンチマークになるか |
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ジウォン・チュン氏 アジアOPIS マネージング・ダイレクター |
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【プロフィール】アジア部門運営のためOPISへ入社。1998年プラッツの価格報告分野でキャリアを開 始する。ロイターに移り、2003年に上席エネルギー記者となる。オハイオのアシュランド大学より経営学 士、慶応義塾ビジネス・スクールでも学んだ。多くの業界の会議で講演をしている。 1.国際LPGマーケットは裁定取引玉(アービトラージ, Arbitrage)の増加と供給源の多 様化を伴い過去10年より相互関連が進む。 2.CPはアジアで広く受け入れられているベンチマークとして機能してきたが、終焉を迎 えると考える。 3.モントベルビュー価格(MB)は独立し、透明性ゆえに国際LPG価格の指標として好 適なLPG価格ベンチマークである。 4.アジアのLPG価格は、アジア向米国玉がマーケットに相当量を占めるに連れてMBを 考慮すべきである。 5.正確性・一貫性・透明性(明確性)が価格指標には必要であるが、MBは条件を満たし ている。 |
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11 タルガのLPG輸出インフラ-アジアLPガス市場への影響 | |||||
ロブ・ドナルドソン氏 タルガ・リソーシーズ ダイレクター |
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【プロフィール】1996年ワレン石油の西部地区輸送貨車のロジ管理でキャリアを開始した。ワレン石油と ディネギでマーケティングに従事する間、西部でブタンとより重い製品に重点を置く製油所のサービスに直接 係わった。タルガでは国内プロパン販売を担当し、ノースダコタ・ウィリストンガス盆のバッドランドでガス 処理と粗LNGを支援する。 1.タルガ・リソーシーズ紹介 時価7,600億円、企業価値1兆500億円、利益率4.6%、年成長率9%。 利益構成:集積・処理45%(内陸35%、港湾10%) ロジ・販売55%(ロジ36%、販売・輸送19%) 2.米国のLPG価格と供給アップデート 価格:2014年1月29日~2月11日は穀物乾燥と寒波により、価格急騰($90 0/トン)北西ヨーロッパを逆転し、北東アジアと拮抗した。 これを除けばCPの半値~2/3で推移。 供給:ガスプラントNGL伸びは68%と予測(2018/2011)。 1億8500万トン(内LPG3,540万トン)。 3.米国のモントベルビューのLPGソリューション シェールガス田からMBへのパイプライン施設、MBの石化向分留装置への投資、 ガレナ・パーク出荷設備の充実(4桟橋のうち2桟橋VLGC着桟可)。 タルガは好位置を占める。 4.エタン輸出 米国エタン需要(2018)1,050万トン、生産4,000万トン。 エタンが次なる輸出品目。 |
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12 米国西海岸のLPG輸出ターミナル | |||||
ジョン・スティーン氏 SAGE・ミッドストリーム VPビジネス・デベロップメント |
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【プロフィール】SAGEのビジネス向上運動のすべてを管掌する。前職はローンスターNGLのコマーシャ ル・ダイレクターで、ガス処理、NGL輸送、NGL分留装置を担当していた。ヴァンダービルト大学の経済 学・スペイン語学士、ペンシルベニア大学国際学部修士、同ウォートン校でMBAを取得した。公認財務アナ リストでもある。 米国西海岸からの新たなLPG輸出港の計画 1.西海岸LPG輸出港(ワシントン州コロンビア川河口、Haven Energy Terminal) の優位性と課題。 2.西海岸LPG輸出港の供給 → どのガス田が優位性をもっているか。 3.需要 → 西海岸MB/ガルフを比較する取引業者の見解。 4.西海岸LPG輸出港を選択する基準とプロセス。 5.ワシントン州、HavenのLPG輸出港概要 対象のガス田:バッケン、モンテレー、ロッキー、カナダ 港湾 :喫水13メートル(実際にはコロンビア川下流域Longview港) 航海日数 :東アジアまで13日間 出荷頻度 :VLGC 2~3船/月 編集注)75000船型ならば110~170万トン/年となる ※位置等は下図を参照 |
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13 アジアにおける家庭・業務用LPG需要の見通し | |||||
キーファー・ダグラス氏 IHS シニア・リサーチ・アナリスト |
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【プロフィール】2007年ワシントンDCを拠点とするPFCエナジーの国際ガスグループに加わった。 2013年6月、IHSがPFCエナジーを買収してからはIHSのNGLリサーチ・コンサルティング・グルー プに所属する。アジア向けの伸びるNGL供給、需要と価格分析を担っている。コンサルティング・プロジェクト とIHS長期NGL需給分析にも貢献している。PFCエナジーの前には北京で4年間コンサルティング会社に勤 務。ブラウン大学より東アジア学士、タフト大学フレッチャー校より法律・外交学修士を取得した。修士論文は中 国エネルギー需要拡大への経済的・地政学的影響。 1.非在来型石油・ガス開発は世界のLPG生産を押し上げ、需要はそれを吸収する必要が ある。 2.家庭・業務用のようなプレミアム需要用のLPGは、価格敏感ユーザー(石化)への量 を決定し、方向も据える。 3.アジアは家庭・業務用成長の鍵を握る。見込みは国によって様々だが、総体とすればア ジアが新規供給の大きな受け皿となりえる。 4.中国、インド、インドネシアは家庭・業務用の成長可能性が高い。 5.マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムは安定成長の見込み。 |
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参加者からの質問に答える講演者 |
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14 中国のLPGマーケット展望 | |||||
ゼン・シュアン氏 広東油気商会 販売分析ダイレクター | |||||
【プロフィール】中国市場のLPGリサーチとコンサルタント。広州が本拠の広東油気商会の主力メンバー。 トヨタ北京、シェル広州、BP広州をはじめ国際企業のケースリサーチを数多く手がけた。ビジネスネットワーク を発展・維持するのを得意とする。カナダ・アメリカへデリゲーションを組んだ。2014年春の珠海で第9回中 国LNG会議、同3月天津で19回中国LPG会議を開催した。商会の前はグラスゴー大学でマネジメント修士を 取得した。 1.中国のLPG需給概観(2013年) 需要 2,759万トン/生産 2,460万トン 輸入 421万トン/輸出 122万トン 2.広東のLPGマーケット発展 輸入の56%を占める。中東から79%を輸入。 3. 中国LPGマーケットに影響を与える主要案件 (1)LNGの消費は、1,475億㎥(2012年)→1,676億㎥(2013年)と 14%拡大。LPGのマーケットを侵食している。LPGは石化に活路を求める。 (2)PDHについては、2015年までに中国全土で600万トンのPDHプロジェクト が稼働し、720万トンのプロパンが必要となる。このプロパンは米国産を輸入する 計画である。 |
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15 米国NGLの輸出-国際的な需要を満たす | |||||
マット・ティーガードン氏 エンタープライズ NGL国際販売ダイレクター |
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【プロフィール】2014年5月よりNGL販売供給のダイレクターで、国際NGLビジネスの責任者となる。 前職はシーウェイPLとクッシングターミナルのダイレクター。2011年5月にエンタープライズに入社し、 NGLトラック・鉄道輸送のマネジャー。エンタープライズの前は2002年から2011年までBNSF鉄道 に勤務していた。 1.米NGL輸出:世界需要を提供する 2013年時点で82,000kmのパイプライン。 1,339億㎥/年の天然ガス、1億2000万トン/年のNGL、1億3000万 kℓ/年の原油・石油製品・石化原料。 2.エンタープライズMBのNGL資産と能力 ガス分留キャパMBは2,800万トン/年(会社全体では4,600万トン/年) 34のガス田(4田を開発中)、20を超える貯蔵タンク、100以上の接続パイプラ イン、MBには13k㎡の敷地を所有し内62%が遊休地。 3.米シェール鉱区と生産の概観 天然ガス:現在72Bcf/d(7400億㎥/年) 2020年ケース 90Bcf/d(9,300億㎥/年) ハイケース113Bcf/d(1兆2000億㎥/年) NGL :現在2,982MBPD(1,246万トン) 2020年5,336MBPD(2,230万トン) 4.米LGL需給展望 2013年 生産5,000万トン/需要4,300万トン/輸出 700万トン 2020年 生産8,100万トン/需要4,400万トン/余剰3,700万トン 5.エンタープライズLPG輸出設備と拡張の最新情報 MBは最大26隻/月受入れ可能。 2015年第4四半期までに16MMBbls/月(130万トン/月)。 6.エンタープライズのエタン・ビジネスの洞察 パイプライン:ATEX(560万トン/年)とAegis(420万トン/年)の2 パイプラインをエタン用に施設する。 処理装置:脱水とメタン除去式2段階冷却装置、気化ガス回収ローディングアーム。 輸出港 :モーガン・ポイント 受入可能船型 全長274m・全幅44m・喫水14m。 |
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16 ベトナムのLPGマーケット展望 | |||||
トゥリン・ミン・ホアイ氏 ペトロベトナム ガス・トレーディング |
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【プロフィール】現職の前はペトロベトナム・テクニカル・サービス(PTSC)でコマーシャルの重責、ジェット スター・パシフィック・航空の経理マネジャー。ホーチミン国立大学から国際ビジネス学士、ボルトン大学よりMB Aを取得。 1.ベトナムの消費量は130万トン、2009年から2013年の伸び率8%。 2.国内生産が54%、2018年には60%に向上。 3.産業用は45万トン(34%)、競合エネルギーと景気停滞のため需要伸びず。 4.マーケットは2層の配送構造になっており1層は調達、2層は卸小売である。 5.シリンダーの1/3が違法に占有され、安全面で支障をきたしている。 6.ベトナムの成功要件はビジネス環境適合、配送チャネル最適化、安定供給、シリンダー 占有回避。 |
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17 VLGC船団と運賃 | |||||
スコット・グレイ氏 IHS 海上輸送・シニア・ダイレクター |
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【プロフィール】ヒューストンのダウンタウンを拠点とする。以前はウオーターボーン・エナジーのパートナー、 21年間LPG海上輸送を専門とした。海上輸送LPGレポートの主任リサーチャー、編集人、発行人として国際 LPG市場の広範で長期的視野を持ち5月にIHSの一員となった。1992年5月にウオーターボーン・エナジ ー入社まで6年間石化マーケットに従事した。 1.VLGC新造船/発注シップヤード 2013年の隻数は158隻 → 2016年で238隻。 〇VLGC発注状況 2014年 9隻 → 2015年 35隻 → 2016年 33隻 〇スクラップ▲9隻、オプション+12隻。 2.運送料マーケットは急上昇 着地:千葉(75000cbm:cubic meter船型) 〇高値 $137.5/mt 2014年 4月 〇安値 $ 15.0/mt 2001年12月 〇平均 $ 36.5/mt 最近のフレート $78.4/mt 2014年5月22日 3.米LPG生産増加 4.VLGC船の米国LPG引取り予測 2010年 311万トン 2011年 328万トン 2012年 504万トン 2013年 938万トン 2014年 1,027万トン 2015年 1,795万トン 2016年 2,648万トン 2017年~2020年 3,193万トン/年 |
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【プロフィール】ヒューストンを本拠。月間LPGマーケット展望を発刊し、世界の主なLPGマーケットの 需要、供給、価格の短期マーケット分析を載せる。エクソン・ケミカルでキャリアを開始しデュポンに移籍し た。コロラド鉱山リサーチ機関でエネルギー部のプロジェクト・マネジャーだった。コロラド鉱山大学より化 学、石油精製の学士と修士を取得。 1.シェールガスとタイトオイル回復によりLPG生産は急上昇。国内マーケットでは吸収 しきれず価格は下降する。 2.裁定取引に道を開き国際マーケットへ輸出される。 3.PBの低価格は欧州・アジアマーケットへの輸出を継続する。プロパン値引き幅はブタ ンより大きい。国際LPG需要は季節変動があり地域裁定価格も変動する。 4.米国ガス処理装置による潜在エタン回復は国内のエチレンプラント需要を優に凌駕する。 エタン価格は、エタンベースのエチレンプラントが立ち上がるか輸出計画が開始されるま で、自然価格によるほぼ底値で推移する。 以上、IHSアジアLPGセミナーの報告を終えます。 |
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(調査研究部/岩田) |