LPGC WEB通信  Vol.3  2014.06.02発行 

LPガス国際セミナー2014報告  Part.3 講演要旨
 4月号・5月号に引き続き「LPガス国際セミナー2014」のご報告をいたします。今回
のPart.3では第1日目のコーヒーブレイクの後から第2日目終了までの7名の講演者の講演要
旨と、参加者からのアンケート結果について、ご報告いたします。
 講演後の質疑応答については、7月号のPart.4でまとめてご報告する予定です。
 なお、本セミナーの講演資料集は当センターのホームページにアップしておりますので、是
非ご覧ください。
 http://www.lpgc.or.jp/corporate/exchange.html
 (パスワード:h260319)
講演「VLGCタンカー市場‐大変化をナビゲートする」

ニコラ・ウィリアムズ 氏
クラークソンズ・ガス社 ガス部ダイレクター
 【プロフィール】ケンブリッジ大学発展途上国政治経済学修士。クラークソンには1995年入社。クラーク
ソン・リサーチ・サービスにてタンカーアナリストとしてキャリアを開始した。1999年からクラークソン
のガス部でLPGタンカー部門のマーケット・ファンダメンタルズとフレート・アナリストを担当している。
責任業務は業績予想、ベンチマーク・レビュー、業務開発、市場分析である。


【講演要旨】
1.LPGトレード量が最大の伸びを示しており、船腹拡大を吸収している。
2.T/Cレートは10年以降概ね安定。多少上昇傾向。
3.スエズ以東 需要増 → 輸入増
  スエズ以西 供給増 → 輸出増
  東西間で潜在的なArbitrage(裁定)取引の可能性。
4.VLGC(Very Large Gas Carrier 大型LPガス運搬船)バランス
  ベースケースでは2017年にWell Balance、オプションを含めればまだ余裕あり。


講演「韓国のLPガス業界」

ジェイソン・チャン 氏
E1コーポレーション トレーディング・チーム・マネジャー
【プロフィール】1978年生まれ。1988~1994年在香港、1994~1995年在カナダ、199
9~2001年兵役。2004年高麗大学経済学部卒業、同年E1社入社。2008年光州支店課長補佐、20
12年マーケティング戦略&分析チーム・マネージャー、2013年トレーディングチーム・マネージャー。


【講演要旨】
1.韓国LPガス消費は2010年以降減少、2012年は1992年比0.7%ダウン。
  2013年需要は1993年比、プロパンで49%ダウン、ブタンで126%アップ。
2.プロパン需要は石化用が一定の伸び、その他は減少。ブタン需要は自動車用が殆ど。
  ブタン供給は輸入依存度が上昇。
3.課題
  ①自動車用ブタンの価格上昇・天然ガスタクシー増・車種不足
  ②LNG用需要減と都市ガスの普及
4.チャンス
  ①郊外ではバルク供給による地域(ミニ)パイプライン
  ②自動車用シリンダーの形状変更、LPガスエンジンの改善・改良
5.対策
  ①LPガス自動車ニューモデルの投入
  ②タクシー向け価格への政府援助
  ③LPガスパイプライン敷設への政府助成



講演「アジアと米国のオレフィン展望2014」

マックス・ヨン 氏
プラッツ アジア石化シニア・アナリスト
【プロフィール】化学処理技術部を卒業。プラスティック工業で23年の経験を有する。樹脂サプライヤー、
トレーダー、コンバーターとしてサプライチェーンの要職を歴任した。プラッツ入社前はニューポリテクノロ
ジー社のダイレクターであった。


【講演要旨】
1.エチレンはアジア全体で輸入(中国・インドネシア・台湾・フィリピンが輸入)。
  韓国・日本・マレーシア・シンガポールが輸出。
2.プロピレンCFR中国価格は史上最高値に接近、CFR東南アジアよりも高値。中国のプ
  ロピレン輸入は増加中。
3.中国のCTO(Coal To Olefin)/MTP(Methanol To Olefin)は特にPP輸入に影響。石
  炭化学は支援されるが新たなプロジェクトはなさそう。
4.米国クラッカー用エタン需要増は1,000万トン。プロピレン生産量は2年間で10%近
  く減少、2018~2019年にはシェール前の水準へ。
5.米国PDH(Propane De Hydrogenation プロパン脱水素)でプロピレンは400万トン
  増。製油所産プロピレンの減少幅が5%程度なら、PDHでの増産の方が大きい。
6.ブタジエンも2015年には120万トンまで減少。2023年には140万トンに増加。
  TPC(米国最大のブチレン、ブタジエン会社)が27万トンのBDH(Butane De
   Hydrogenation ブタン脱水素)を計画。
7.米国国内石化需要が増えても米国の石化原料輸出は増加する。
  プロパン輸出量は2023年に600百万barrel。ペンタンプラスはカナダ向け。
8.中国のPDH/MTPによるプロピレン生産能力増は価格に影響を与え、古い生産設備と輸
  入に取って代る。


講演「サウジアラムコのLPGビジネス‐2014」

ミシャル・コアボウシュ 氏
サウジアラムコ ダーラン本社 LPGマーケティング・コーディネーター
【プロフィール】中国のアモイ大学化学工学士(サウジ・アラムコのファーイースト留学の給費生一期生)。
2005年サウジ・アラムコ入社。中国、日本、韓国向けLPGと硫黄の販売でキャリアを開始した。プラン
トのエンジニアーを経験した後、2013年10月よりLPG販売グループに復帰し、ダーラン本社のLPG
マーケティング・コーディネーターとして活躍中。


【講演要旨】
1.2012年以降、LPG輸出量は800万トン弱、これからもこのレベルで推移する。原油
  生産量と国内需要からそのように推定。
2.輸出の50%強が極東向け。残りがインド、エジプト、ヨーロッパ向け。
3.サウジアラムコのCPも20周年を迎える。最も広く使われるLPガスのベンチマークとな
  っている。CP設定に当たっては、LPガス・原油価格、ネットバック、市場の需給、スポ
  ット契約のレベル、裁定の動き、フレート市況、競合製品、顧客の意見、海外オフィスのイ
  ンプットを参考にしている。
4.2つの供給デリバリー拠点、ジュアイマ(Juaymah)とヤンブー(Yanbu)があることか
  ら、スエズ以西・スエズ以東の、それぞれのオポチュニティーを使える。 
  昨年(2013年)は約200隻船積みした。


講演「パナマ運河拡張‐LPガスへ新たな道」

シルビア・ドゥ・マルッチ 氏
パナマ運河庁 液体バルク部門 シニア・マーケット・アナリスト
【プロフィール】カナダ、コンコルディア大学経済学部卒業。ノバ大学パナマ校でMBA取得。前職はサムソ
ン中南米のオペレーション・コーディネーター。また1992年から1994年は在パナマ日本大使館にてパ
ナマ政府と大使館の連絡担当として、政府・企業への融資推進の窓口を勤めた。パナマ運河庁では船舶通過量、
サプライ・チェーン、運河と国際経済の分析を行い、需要予測、価格政策、運河の競合分析の責任者。運河拡
張の公式スポークスパーソンである。

【講演要旨】
1.2012年のパナマ運河のLPG通過数量は115万Lt
(1Long ton 英トン≒1,016kg)
  2011年対比若干の減少。主要ルートは、西インド諸島--南米西海岸・南米東海岸--米国
  西海岸米国東海岸--南米西海岸。
2.パナマ運河拡張工事完了2015年末→オペレーション2016年1月。
3.拡張後の最大船型は最大長366m、最大幅49m、喫水15.3m。
  VLGC(Very Large Gas Carrier 大型LPガス運搬船)も問題なく通過可能。
4.米国東海岸の価格優位性と南米東海岸の生産増、南米西海岸の成長、アジア向け石化需要
  増、アジア向けVLGCのコスト優位性。
5.米国ガルフコースト--韓国間、5,600nm(nautical mile 海里)約10,400km=
  15日短縮。VLGCならフレート$50引下げ。
 
パナマ運河拡張工事(パナマ運河庁ご提供)

 
パナマ運河拡張前後の最大船型の差異(パナマ運河庁ご提供)
 

講演「欧州LPガスマーケット」

エルンスト・ブランドシュテター 氏
SHVサプライ リスクマネジメント部長
【プロフィール】インスブルック大学ストラテジック・マネジメント学部卒業。1979年SHVホールディン
グ入社。オーストリアのプリマガスの要職を歴任。プリマガスCFO(1981年)、プリマガス中央ヨーロッ
パ(ウィーン)専務(2002年)、SHVガス・サプライ&リスク・マネジメント(パリ、ウィーン、シンガポ
ール)ゼネラル・マネジャー(2008年)。SHVガス・サプライ&リスク・マネジメントは、①世界規模での
供給調整、②国際的リスクマネジメント、③基地の管理と最適化、④トレーディングを行う事業体である。

【講演要旨】
1.欧州におけるシェールは、経済的メリットよりもイデオロギーや政治的配慮が優先。
  何時まで続くのか?
2.欧州で米国並みにシェール開発が進めば、LPG増産が促され、輸入の必要性はなくなる。
3.欧州の需要は80%以上が5ヵ国に集中。伸びている自動車用は2/3がトルコ・ポーラン
  ド・イタリアに集中。
4.欧州での石化用は、経済危機と価格高騰で2008年以降頭打ち。価格が下がれば欧州石
  化にも世界的競争力あり。
5.家庭用・商業用需要は大幅減少、成熟マーケットへ。需要の50%以上が5ヵ国に集中。
6.今後欧州には東西南北各地からLPGが供給される。800万トンのLPGトレードバラ
  ンスはどうなるのか?
7.原油は安くならず、LPG価格は対原油価格で競争力を持つ。
8.自動車用については、障害はあるが増加の可能性は大。現行の課税レベルを維持できるか
  どうか?
9.家庭用・商業用は、潜在的な成長力はあるが確実なものになっていない。
10.「違い」とは、ユーザーが何を欲しているか?価格の安定性・固定・上限設定なのか、他
  エネルギーとの競争力なのか。
11.リスク管理がSHVとしての供給・販売戦略の重要な要素。
12.供給が牽引する市場においては、生産者と配送者との緊密な協力がLPGのベストな価値
  を生み出す。


講演「米国シェールガス概観」

ジェロッド・コッター 氏
エンタープライズ社 ダイレクター・NGLマーケティング 
【プロフィール】2000年コロラド大学経営学部卒業。ベネフィット・アーキテクト社で公務員向け保険
業、ハルシャー・サービス社で鉄道業向け外注整備、緊急対応に従事。エンタープライズ入社後は、配送グ
ループでモントベルビューC3とルイジアナのトラック、鉄道輸送を担当した。現職の前には、モントベル
ビュー地区ヘビーNGLマネジャーであった。


【講演要旨】
1.シェールの可能性は大。Marcellus、Utica、Permian、Haynesvilleなど(いずれも米国の
  シェールガス田)。天然ガスの可能性は2020年で114Bcfd(Billon cubic feet day
  10億立法フィート/日)約1兆1800億㎥。
2.天然ガス供給、生産コストは$5/百万Btu(British thermal unit)以下。リッチガスの
  開発に大きなメリット。
3.NGL供給可能性は、2020年で5,153百万barrel。内プロパンは1,401百万
  barrel。Eagle Ford、Appalachian、Rockies、Permianなど(いずれも米国のシェールガ
  ス田)。
4.西側でのNGLパイプライン拡張計画が進展。
5.LPG供給が需要を大幅に上回り、2020年の余剰数量は1,200百万barrel。
6.エンタープライズ社LPG輸出システムは、蒸留装置670百万barrel。
  プロパン輸出量月間7.5百万barrel(年間7.3百万トン)以上。
7.2015年第1四半期までに月間1.5百万barrel追加、新規拡張は同年の第4四半期に月
  間16百万barrel(年間15.5百万トン)へ。エタン輸出も検討。
8.エタンは供給過多状態が継続。2019年には最大450~700百万barrelの過剰。米
  国エタンはコスト競争力大。
9.エタンパイプラインも拡張中。エタンには大きな可能性。


 
国際セミナー2014 アンケートでの評価
  国際セミナーでは毎回、参加者からアンケートを募っています。
 今回も多数の方々からアンケートをいただきました。ご協力に感謝申し上げます。なお、アン
ケートは国内参加者と海外参加者に区分して分析を行っております。

1.国内参加者対象のアンケート
  国内参加者に対しては、
  ① セミナー全体についての感想
  ② セミナーのテーマについて
  ③ 基調講演について
  ④ 各講演内容について
  ⑤ 今年度の招聘国について
  ⑥ 配布資料について
  ⑦ プログラムの構成について
  ⑧ 同時通訳について
  ⑨ 会議設備について
  以上の9項目についてアンケートで答えていただきました。評価は「とても良かった」
  「良かった」「ふつう」「あまり良いとはいえない」「良くなかった」の5段階です。

2.海外参加者対象のアンケート
  海外参加者に対しては、
  ① セミナー全体の印象
  ② 講演者の平均的な質の評価
  以上の2項目で、「優」「良」「可」「不可」の4段階で評価していただきました。

3.アンケート結果
  アンケート結果を下記のグラフに示しました。


 
 国内参加者の全体的な評価は「とても良かった」「良かった」の合計が81.5%であり、
「良くなかった」は0%でした。合格点をいただけたのではないかと思います。また、海外参
加者も同様でした。
 しかし、国内参加者対象のアンケート⑥⑧⑨の3項目はいずれも満足度が低く、主催者とし
てできる限り改善していきたいと考えています。
 設問⑥ 配布資料について …………… 満足度 66.6%
   ・当日配布した講演資料集は「モノクロ版」であり、色区別がつかないために、写真や
    グラフが見にくかったと思われます。
   ・セミナー閉会後、当センターのホームページに講演資料集の「カラー版」をアップし
    ておりますので、ご活用いただきますよう、お願いいたします。

       http://www.lpgc.or.jp/corporate/exchange.html
    (パスワード:h260319)

 設問⑧ 同時通訳について …………… 満足度 59.1%
   ・今後とも、通訳の質の向上を高めてまいります。
 設問⑨ 会場設備について …………… 満足度 65.4%
   ・予定していた以上の参加者でした。会場が狭い、レシーバーが席にない、スクリーン
    が見難い……等々のご不満かと思います。会場レイアウト等、さらに工夫を凝らして
    まいります。

 来年の国際セミナー2015は平成27年3月上旬を予定しております。多くの会員の皆様
のご参加をお待ちしております。
 (調査研究部/岩田)