LPGC WEB通信 Vol.2 2014.05.12発行
|
LPガス国際セミナー2014報告 Part.2 講演要旨 |
前回に引き続き「LPガス国際セミナー2014」のご報告をいたします。今回5月号の part.2と6月号のpart.3では14人の講演者の講演要旨をご報告し、また、7月のpart.4で は質疑応答総まとめを掲載する予定です。 part.2では、第1日目の基調講演からコーヒーブレイクまでの7名の講演者に登場してい ただきます。 なお、本セミナーの講演資料集は当センターのホームページにアップしておりますので、 是非ご覧ください。 http://www.lpgc.or.jp/corporate/exchange.html (パスワード:h260319) |
|
基調講演「世界LPガス業界展望」 ピーター・マニング 氏 ポーテン・アンド・パートナーズ社 コンサルタント |
|
【プロフィール】エッソ化学フォーレイでキャリアを開始した。トゥリケムのコンサルタント業務と欧州化学 ニュース(現ICIS化学ビジネス)に携わる。1986年にCMAIの欧州事務所を立ち上げ、石油化学マ ーケット調査の業務責任者であった。1993年にピーター・マニング・アソシエーツを設立し、欧州石油化 学製造協会(APPE)に「国際石油化学の製造利益実績」の季刊報告書を提出した。1998年にポーテン・ アンド・パートナーズ社に入社し、石油化学とNGLコンサルタントとして、LPガス業界では30年間以上の 経験を有し、各地でLPガスの講演を行ってきた。ポーテン・アンド・パートナーズ社はIHS社と並ぶ2大L Pガス市場調査、コンサルタント会社の一つ。 【講演要旨】 1.2013年は予期された程の成長は見られず。2014年は順調に成長すると見られる。 一方船腹バランスはタイト化。 2.生産面ではシェールがけん引、需要面では大量バルク消費が成長、中でも石化原料用L PG需要の伸び。 3.シェール出現後の予想を上回るトレードの伸びは西側で生まれている。特に米国である。 4.米国の輸出ターミナル新設案件は数多くあるが、過剰ではないだろうか? 5.米国の輸出LPGはどこに向かうのか?2015年を予測すると、アジアと中南米へ 600~650万トン、欧州へ300万トン。 6.挑戦:石化向けがプロパントレード成長を吸収できるか?VLGC船腹バランスはどう なるか?2015年はバランスするであろう。 7.新たな可能性:LPGフローは西から東、石化向け需要は年間を通じての価格競争力次 第である。 |
|
講演「日本のLPガス政策について」 小島 暢夫 氏 経済産業省 資源エネルギー庁 資源・燃料部石油流通課 企画官 |
|
【講演要旨】 1.日本におけるLPガスの位置づけ ①世界最大の輸入国 ②中東産8割だが、豪州・米国からの輸入も増えつつある ③日本全土の約半数、2500万世帯が使用する 2.東日本震災で再認識したLPガスの利点 ①分散型エネルギー ②軒下在庫 ③迅速な復旧(炊き出等) ④劣化しない 3.国の政策 ①国家備蓄の推進 ②石油備蓄法に基づくLPガスサプライチェーンの維持 ③地方自治体との協力 4.エネルギー基本計画の策定 ①調達先の多様化 ②供給構造の改革 ③コジェネ(エネファーム含む)等による需要創出 5.聴衆の皆さんには2020年東京オリンピックでLPガスによる聖火を見に来ていただ きたい。 |
|
講演「LPガスの新たな可能性と挑戦」 山﨑 達彦 氏 日本LPガス協会 会長 |
|
【講演要旨】 1.LPガスの供給 2013年の全体では減っているが、輸入、石油精製、石油化学の構成比は変わらず。輸 入先もカタールが増やしているものの中東の比率は80.6%に減少し、中東以外は対20 05年116%の伸びである。米国産の寄与が大きい。 2.産ガス国に価格の安定を希望 価格の乱高下は産業界にリスクの大きいエネルギーと判断される。安定した価格について 強い要請がある。 3.シェールガス 2017年には300万トンを見込こみ、輸入量の25%となる。CPに比べ競争力があ ることも重要だが、原油価格に連動しない独自の価格設定がなされ、しかも比較的安定し ていることが極めて重要である。 4.国への提案 輸入価格の低廉化に資する民間備蓄の在り方といったものを提案すべく検討中である。 5.需要家の皆さんにLPガスを選択していただきたい。産ガス国の皆さんには安定供給と 魅力のある価格設定の実現をお願いしたい。 |
|
講演「成熟マーケットにおける需要拡大」 マイケル・ケリー 氏 世界LPガス協会(WLPGA) 常務理事 マーケティング推進担当ダイレクター |
|
【プロフィール】ジョージ・ワシントン大学国際部修士、4ヶ国語に堪能。WLPGAには2006年から勤 務。WLPGAはLPガスの普及推進の世界的団体である。幅広いバックグラウンドを基に、WLPGAでは 企業、政府、市民社会の連絡役に重点を置く。WLPGAの職は、国際商業会議所(ICC)の環境・エルギ ー政策ポートフォーリオのマネージャーとして、環境、エネルギー、気候変動、持続的発展に関する国連財界 代表団のコーディネーターである。2010年より現職。 【講演要旨】 1.世界のLPG産業 2012年世界のLPG消費は2.64億トン。LNG消費量よりも多い。関係する従業員 は200万人以上、消費者は30億人、3000億ドル産業である。 2.石化以外の需要が供給の伸びに後れを取っている。では新たな需要はどこから? ①米国でプロパン芝刈り機が普及すれば130万トンの需要増、大気汚染5%削減。 ②ガスヒートポンプの可能性を追求。日本で普及しているが他地域では? 3.振興地域での普及困難さ 規制の存在、政府支援の欠如、消費者の認識不足、市場へのコンタクト不足などが要因で ある。 |
|
講演「カタールのLPガス展望と発展的市場力学」 サード・アル・クワリ 氏 タスウィーク CEO |
|
【プロフィール】カタール大学化学工学科卒業。オックスフォード大学、コロンビア大学等でキャリアアップ のコースを修了した。1986年カタール石油にプロセス・エンジニアとして入社し、同社製油所プロジェク ト、製油所近代化プロジェクトに従事。2002年からはVPとして同社のガス・液体燃料・石化のマーケテ ィング・マネージャー。2007年コマーシャル・オペレーションのVPとしてタスウィーク社に入社し、20 10年2月から現職。Tasweeqはカタールの天然ガス開発の随伴製品を中心とした国営輸出販売会社。 【講演要旨】 1.LNG 百万トン当たりの随伴生産量 LNG 77万トン、Field Condensate 19.7万トン、硫黄 2.9万トン Plant Condensate 3万トン、LPG 7.9万トン 2.カタールのアジア向けLPG輸出量と仕向地シェアー 2008年→2013年で倍増 ○北東アジア(NE) 91% → 56% ○東南アジア(SE) 7% → 24% ○南アジア 2% → 20% 3.LPG輸出 2012年→2016年の方向性(百万バーレル/日) ○カタール 361(1位) → 375(2位) ○アメリカ 325(2位) → 490(1位) カタールは引続き大輸出国である。 4.LPG輸出見通し LNG次第、長期契約優先、2014年Barzan(カタール沖ノースフィールドガス田から 産出される天然ガスの処理、国内向け)プロジェクトで増産。 国内石化向け需要で2018年以降は減少。 5.LPG需要は旺盛で需給は引続きタイト アジア基礎需要と石化用。カタール国内の石化需要とQPIの投資案件。中国のPDH。 6.信頼されるLPG供給者であり続ける 長期契約優先、ユーザーのニーズに応える対応。多様な契約条件、少ないクレーム。 7.買い手のメリット 確実かつ安定した供給、必要する市場への近さ。ロジの優位性(完備された港湾条件、速 い荷役など)。 |
|
|
|
講演「中国市場概観と新たなチャンス」 フィオナ・チュウ 氏 ICISチャイナ 産業アナリスト |
|
【プロフィール】上海の復旦大学で国際経済学と国際トレードを専攻。その後、米国フィラデルフィアにて ファイナンスの修士号取得。現在は同社の産業アナリストとして中国のLPG輸出入を守備範囲としている。 ICISは世界最大の石化マーケット情報提供者。価格情報、ニュース、分析、コンサルタント業務に30 年を超える経験をもつ。 【要旨】 1.中国LPG生産量は製油所拡張に伴い増加傾向。需要も増加傾向、特に石化向け需要 が増加。 2.2013年の純輸入量は43%の伸び。華東143万トン、華南130万トン。 3.2013年の消費では、石化向けシェアーが26%から34%に上昇。 4.LPG生産・消費共に2018年ごろまで増加を続ける。ただし消費の伸び率は20 15年以降低迷。 5.純輸入量は2013年の295万トンから2014年は500万トン程度に増加する 見込み。 6.PDH(Propane De Hydrogenation プロパン脱水素)向け需要は2014年で18 0万トン程度。建設中のプロジェクトが完成する2015年の総需要は540万トン。 7.プロピレン増産によりプロパン価格は上昇し、プロパンvsプロピレン価格差は縮小 すると見られるが、プロピレンは必要。 8.2014年の中国マーケットは引続き旺盛なLPG需要が期待されている。 |
|
講演「LPガス価格の現在と未来」 コリン・シェリー 氏 ファクツ・グローバル・エナジー マネージング・コンサルタント |
|
【プロフィール】ファクツ・グローバル・エナジーの前はポーテン・アンド・パートナーズのロンドンとニュ ーヨークでコンサルティングマネージャーとして30年間、LPガス、コンデンセート、石化フィードストッ クを専門にしていた。講演活動は多彩で、各国の会議で講演、進行役を務めた。コンサルティングの進言を取 引や市場の読みと一体化し、グローバルなLPG、LNGおよびその他エネルギーの調査・分析では定評があ る。データ的な裏打ちに信頼が置けると業界でも評価する人が多い。ファクツ・グローバル・エナジーは「イ ースト・オブ・スエズ」(スエズ以東)の石油とガスのコンサルタント。 【講演要旨】 1.過去30年以上CP(またその前身)がベンチマークで、他の中東産ガス国も採用。日本 ・韓国・インドも全てCPベースである。 2.中東カーゴの長期契約はCPのみ。FEI(Far East Index アーガス社が毎日発表する スエズ以東の主要LPガススポット標準価格)は使えない。 MB(Mt.Belvieu モントベルビュー市場での取引価格)価格が脅威となるにはまだ数量が 少なすぎる。 3.FEIは現物・先物共にあるが、ブタンに関してはトレーダーのフェイクレポートがあ る。LNGが見本となるか? 4.MOPJ(Mean of Platts Japan プラッツ社が毎日発表するナフサの東京到着価格) 台湾のクラッカー用需要でナフサと比較として存在感向上。ただし中国のPDHは対象外。 5.MB価格が米国輸出プロパン価格のベース。ただし価格形成は国内の需給・在庫に基づ く。 6.MB価格とCFRは北東・東南アジアで格差。 米国ターミナル運営者・トレーダー・船主にチャンス。ただし格差は「何時も」ではない。 7.MB価格が極東マーケットに影響をおよぼすのは、数量が増えてから。2015年14 %、2017年20%、2020年27%。 8.MB価格の影響力で中東価格が下方調整され、米国・アジアの格差が縮小。不確定要素 は米国輸出量・イラン問題・パナマ運河拡幅。 part.2は以上です。残り7人の講演者の講演概要は、6月号に掲載いたします。 |
|
|
|
セミナーと併設 LPガス車展示会 | |
今回の「LPガス国際セミナー2014」と同じ会場(東京プリンスホテル・駐車場)で LPガス自動車の展示会を同時開催いたしました。 写真のとおり、大変多くの方にご来場いただきました。誠にありがとうございました。 また、設営していただいた全国LPガス協会の皆様、車両を提供していただきました日産 様、マツダ様には感謝申し上げます。 |
|
青空のもと、東京プリンスホテルの駐車場で開催されたLPガス車展示会。多くの見学者で賑わった。 左から「日産・シビリアン(マイクロバス)」「日産・NV200バネット(右手奥・黄色車)」「マツダ・ア クセラ(右手前・青色車)」。 |
|
|
|
「日産・NV200バネット」LPガスとガソリンのバイフューエル車。後方ハッチからは車椅子も乗り入れ 可能なUD(ユニバーサルデザイン)LPガスタクシーとして注目を浴びた。 |
|
|
|
海外で人気があり、国内では教習車として実績・定評のある「マツダ アクセラ」。 初めて運転した車がLPガス車だったという話もよく聞く。 |
|
|
|
日産・シビリアン(マイクロバス仕様)。 | |
|
|
LPガス容器はサイドローのハッチ内に収納されている。 | |
(調査研究部/岩田)
|