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第5号  January  2000

 

平成12年 中原理事長年頭所感

 

新年おめでとうございます。
皆様におかれましては、お健やかに新春を迎えられたものとお慶び申し上げます。
当センターは、LPガス産業に関わる技術開発、調査研究並びに普及啓発事業を三本柱として事業を推進するとともに、その成果を関係方面に広く普及することによって、業界全体の活性化、振興とLPガスの安定供給を図ることを目的としております。昨年も通商産業省の委託事業、補助事業あるいは自主事業を推進してまいりましたが、皆様方の多大なるご協力のお陰をもちまして所定の成果を挙げることができましたことを、ここに厚くお礼申し上げます。
技術開発事業では、低品質LPガス利用技術、高効率バーナ及びLPガスエンジンの開発等、調査研究事業では、LPガスの安定供給に係る開発可能性調査、流通合理化に係る流通合理化要素技術調査、販売情報管理システム調査等、普及啓発事業では、国際交流として国際交流セミナーの開催、海外LPガス情報の紹介等に取り組んでおりますが、研究成果についての民間での活用・普及は旧来、必ずしも十分でなかった面もあります。今後は十分活用されるように成果の普及に努めていきたいと思っています。
当センターとしては今後とも業界の要望を把握しながら業界に役立つ事業を進めていく所存です。そのためには、競合エネルギー問題も含め、できるだけ幅広い視野からLPガスを捉え、事業対象を絞り込むことで、成果がより現実的なものとなるよう努力したいと考えています。
昨年末からは、通商産業省とともにエネルギー政策の一環としてのLPガス分野技術戦略の策定に取り組んでいるところであります。LPガス分野における技術開発の長期的なビジョン並びにその達成のための課題解決の方策を検討して行こうというものです。
これを基にLPガス業界全体が活用できる、実用性の高い、かつ、普及できるものを技術開発の目標に掲げていきたいと考えております。
今後の技術開発として、高齢化社会に対応した安全・快適な消費機器の開発、省エネ・環境保全に対応した燃料電池あるいはコージェネレーション等の技術開発に積極的に取り組むことが必要かと考えています。同時に関係する皆様方から「エルピーガス振興センターは、こんな身近な事業も実施しているのか。」といわれるような活動をしていきたいと思っております。
そのためにも皆様方の振興センターに対するご意見、ご要望を是非お寄せいただきたくお願い申し上げます。
本年もこれまで以上のご指導、ご協力並びにご支援をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

 

第9回 成果発表会

平成10年度にエルピーガス振興センターが実施した技術開発、調査研究事業に関する成果について、広く皆様方にお知らせする「第9回成果発表会」が、昨年11月24日に虎ノ門「発明会館」にて行われました。
当日、あいにくの天候にもかかわらず当会場までお越しいただいた関係者各位に感謝の意を表します。
発表会は、当センター理事長 中原晟介の開会挨拶で幕を開け、通商産業省資源エネルギー庁石油部流通課液化石油ガス産業室長 滝本徹氏より来賓を代表してご挨拶いただきました。
引き続き、各テーマごとの10年度成果を発表し、東京農工大学工学部機械システム工学科教授 柏木孝夫氏にご講演いただき、最後に当センター専務理事 黒田克祐の閉会の辞をもって、盛況のうちに幕を閉じました。

発表されたテーマは次のとおり

安定供給のための機器開発

T)低品質LPガス利用技術開発
我が国の品質基準に合致しない海外低品質LPガスを国内で利用可能にするための精製技術開発を行おうとするもので、10年度は低品質LPガスの品質調査や精製プロセスの検討を行い、ベンチスケール実験装置を設計・製作しました。

家庭業務用消費機器技術調査

U)家庭業務用バーナの開発
ブンゼン式バーナに替わる、新しい燃焼方式・燃焼技術を開発するもので、10年度は試作機による評価を行い、経て、高効率化(20%向上)、低公害化(NOx60ppm以下)という目標値の達成がほぼ現実的なものとなりました。開発する燃焼方式は、触媒利用低温燃焼、ターボジェット短炎燃焼及び衝突燃焼の3方式。

石油ガス産業活性化基盤

V)LPG消費国流通消費動向調査
バルク先進国ドイツにおける共同物流システムの実態や動向を調査・研究しました。その合理的なシステムは我が国においても見習うべき点は多く、消費者満足の実現に向け、課題解決に取り組む必要性が示唆されました。
W)石油ガス流通合理化要素技術調査
充てん所以前の一次・二次基地の川上物流を実態調査し、最適配置等のシミュレーションや最適チャネルの検討によって、川上物流のあるべき姿を提言することを目的としています。10年度は関東・中部・近畿の3地区を対象として調査し、物流合理化や経済効果等の観点から分析しました。
X)技術開発波及効果分析調査
LPガスを利用した新技術開発の可能性と波及効果分析を行うもので、10年度は家庭業務用の小型GHPの排ガスにおける異臭を対象に、発生原因等について調査し、具体的な対処方法や課題等について検討しました。

石油ガス開発・需給等基礎情報調査

Y)石油ガス開発計画可能性調査・政策動向調査
開発計画可能性調査は我が国へのLPガス輸入ソースの多角化を図る目的で、10年度はアルジェリア、ナイジェリア、コンゴについて開発計画の可能性を調査した。これらの諸国のLPガス輸出余力は今後増加が見込まれ、政治・経済が安定すれば、更なるLPガス回収・開発計画が進むと考えられます。 また、政策動向調査については、世界最大のLPガス生産・消費国である米国における、LPガス産業の概要や生産動向等について調査しました。
Z)石油ガス需給等基礎動向調査
LPガス需要の殆どを主に中東からの輸入に頼らざるを得ない我が国の現状において、海外需給を中心としたLPガス需給関連のデータベースを構築し、供給削減要因発生時等における代替輸入可能性などの有益な情報を提供するシステムを開発します。10年度は初年度に当たり、情報ソースの検討、基礎データベースの構築及びシステム環境の整備を行いました。

石油ガス販売情報管理システム調査

[)石油ガス販売情報管理システム調査
流通合理化を図るために、販売事業者の系列を超えた充てん所の代行・共同利用を実現させるための情報管理システムを構築します。 10年度は現状における課題や解決策について実態調査し、システム化の現状や容器バーコード等の具体的な課題について検討しました。

なお、発表内容を記載した講演要旨集は、若干部数を保有しております。 ご購読を希望される方は、下記までご連絡下さい。(一部2千円) 担当:守山
ファクシミリ: 03-3507-0048
Eメールアドレス: info@lpgc.or.jp

 

講演「今後のエネルギービジョンとLPガス業界への期待」

− 東京農工大学工学部機械システム工学科 教授  柏木孝夫氏 −

 

今後のエネルギービジョンのキーワード

カナダの燃料電池会社バラード社は、もとはアポロ計画の一環で、宇宙空間という閉環境の中で合理的なエネルギー物質を保持する、つまり莫大な金をかけて燃料電池を開発した会社で、売り先が見つからず探していたところ、ベンツとうまく意志、意見が合い、買収こそしていないが、ベンツがかなり資本を投入し急激に大きくなった会社です。
トヨタがハイブリッドカーを商用化して一歩先に出た。ベンツとしては大型のデラックスの車市場が食われつつあり、しかも日本車が小さい車で儲けるだけではなく、ハイブリッドカーを出してきたので、このまま行ってはベンツの将来が暗いという事で(挑戦状という風にトヨタは受け取っているようですが)燃料電池を商用化するということを選んだわけです。
今まで燃料電池は気が遠くなるようなコストでした。普通のガスタービンですと小振りなもので20万円/kW程度、大振りなものになると10万円/kW程度。それが燃料電池ですと2百万円/kWです。低価格化は遠い世界の話だと思っていたところが、車のような産業が参画してくると強力なコストリダクションを引き出すわけです。
バラードの副社長が言うには、20ドル/kW、つまり2千円/kWでできるって訳ですから、このように安くなってくれば燃料電池車は2010年頃には30%ぐらい普及するかもしれません。

LPガスの消費先も将来燃料電池に変わってくるかもしれません。私としては、技術開発の立場からこの技術開発は遅れずに進めていくよう望んでいるわけですが、先々この燃料電池技術が、車をはじめ家庭用に至るまでどのように変わっていくかを見越しながら、それに対してきちっとした姿勢で、産官学の協調体制で予算を頂きながら技術開発を進めていくことが非常に大事なのです。
長期的な視野で考えれば、例えばベンツが車用の燃料電池を開発すると、気の遠くなるようなコストだったものが一挙に20ドルまで落とす事を目標としています。すると、家庭用にとり入れるとすれば、車の場合6千〜7千時間程度で考えていたライフタイムを、3万〜4万時間、つまり10年程使えるように稼働時間を長くすると、コストは8倍ぐらいになると予想されます。ですから20ドル/kWのものが160ドル/kW、大体2万円/kWですから、長期的に見れば一軒家で3kWとしますと、2万円の3kWですから6万円/kWで周辺機器とかガス給湯が燃料電池に変わる可能性があるという事です。今までの電気冷蔵庫が燃料電池を組み込んだ燃料電池冷蔵庫みたいなものに変わり、LPガスでも天然ガスでも、燃料源は水素さえ持っていれば良いわけですから、ここから電気を出力する。つまり改質だけうまく先に技術改良した方が勝ちということです。
もう少し具体的にいうと、電気が出てきて、熱が出てくる。この熱は70℃ぐらいで、お風呂や給湯にちょうど良い。このお湯で暖房やアンモニア吸収式のような低温駆動の冷凍装置を組み合わると一挙四役になるわけです。実際に燃料電池の車が出現すれば、家庭の中までそれが進入してきます。そしてコストがかなり安くなる。このような世界になると一次エネルギー源を扱っている業者が、極めて大きなインパクトを有するということになります。
市場が開拓され、将来的なビジョンがどうなるかを長期展望として考えれば、プロパン、ブタンでもいいですし、天然ガスでも構わない、一次エネルギー源の水素を持っているガス体からいかにして水素を効率よく取り出していくか、つまり改質ですが、私は、これをやったところが勝ちだと思っています。これができたところは、長期的に見て2020〜2030年の長期間、それはもう2010年頃から先ずっと走り続けるのではないかと思います。そのことを念頭においていただくと非常に結構だと思います。

では、なぜベンツが燃料電池の車を出すような意志決定をしたのか。これは、何かトリガーがなければいけません。大決心して商品開発やったがそのビジョンが間違っていたという事になると、その企業はつぶれてしまいます。これは、私は間違いなく環境だろうと思います。環境性を頭に置くとこれは長期ビジョンですから、まずは外れることはないと思います。環境というキーワードが国民的あるいは国際的なコンセンサスが得られたが故に、これから30〜50年の間は、新たな技術開発をしなければならない羽目に陥ったわけです。 逆にブリティッシュペトロリアム、アモコは、昨年来新築したガスステーションの上にソーラーを積んでいます。石油代替ということになるわけです。今の世の中、日本もそうですが石油は王者です。50%を石油が占め、LPガスだけでも5%も占めているわけですから、王者が故に半端では無いのです。合理的に使って欲しい。石油代替はセキュリティの関係上、あまり頼り過ぎると何かあったときにおかしくなってしまいます。
今、石油業界としては、石油を大切に使うということは当たり前ですが、使用時に排出されるCO
を植林などで吸収させる、あるいは、ガソリンスタンドでは石油販売だけでなく新エネであるソーラーを設置する等を行っています。ヨーロッパ系の企業は環境にはとてもセンシティヴですから、自分が排出したものに対してそれを吸収する、またはそれと同じような新エネルギー源を一緒にペアにして考えるのが、石油消費の持続可能な社会作りということなのです。

よく、ソーラや風力など対し、COは発生しないから、どんどん導入すればいいという見方をされますが、我々はライフサイクルなエネルギーバランスで考えます。例えば、ソーラバッテリを作るのに1という化石系エネルギーを投入したとして、この働きで大体10倍程度のエネルギーが取り出せます。石油で考えれば1の石油を燃やしてしまえば1のエネルギーしか出てきません。これがバッテリに変換したおかげで、10倍くらいエネルギーをもらえるという事は、今ある石油の量を10倍長く使うことができることになります。つまり、新エネルギーというものは石油・化石燃料を10倍にわたって長期に使うことができるようにする技術開発です。また、別の見方をすれば日本は全て石油ベースでものを考えているということなのです。
このあたりの話はエルピーガス振興センターの末木前理事長が総合エネルギー調査会需給部会でLPガスのクリーン性を説くためにLCA(Life Cycle Assessment)的に説明されていました。天然ガスは井戸元からあれほど希薄なものを抽出してきて、そこに投入するエネルギーはどれだけのものか知っていますか、と。井戸元まで戻って、抽出する為に投入したエネルギー、運ぶ際のエネルギー、そこでロスするエネルギー、液化した時のエネルギー、気化した時のエネルギー、全部合計するとLPガスの方がよほど効率が良く、CO
の排出が少なくクリーンであると。私も賛成で、結局、一昨年の長期エネルギー需給見通しでLPガスは天然ガスと同じようにクリーンであるという言葉が使われた。これは画期的なことです。
LPガスは環境負荷が少ない、ということが世の中に浸透してきて、LPガスは天然ガスと同じようにクリーンで、しかもクリーンなという形容詞をつけてクリーンなLPガス業界とか、そのようなことを表現すれば世の中に浸透してきます。 ですから元売り業者の方も、元売りだから売ってしまえば終わりということではなく、LCA的に考えたら、精製してから販売もするし発電もする、デマンドまで出てくる。そこの技術開発を続けていくことがとても大切だと私は思っています。

イントロが長くなりましたが、私が言いたい事は、今の技術開発を考えた際に、何がトリガーになっているかといえば、それは環境というキーワードで、いろいろな事をやらざるを得ない。ですから技術開発の中で迷ったら、どちらが環境性に富んでいるかを考えれば方向性はおのずから決まる、ということが昨今の最も重要なポイントだと思っています。
私どもは大学ですから、方針を間違えますと実績が全く世の中で認められない。今までは、ただベストミックスのために、これまでは新エネなら新エネのためにやったという人が多かったです。しかし、これからはもう少し大きく捉えて、環境という非常に多面性のあるものに対してどのようなビジョンを持っていくか、LPガス業界は何を技術開発に結びつけるかということを考えなければいけないと思います。

現在は国際環境裁判中

では、なぜ環境がこのようにインパクトを持ったかと言えば、我々は現在、裁判の過程であるということをしっかり認識しなくてはいけないということです。
すなわち、COP1から始まりCOP3が皆さん良くご存じの京都会議ですが、COP5がこの前終わり、来年COP6になるわけです。これは毎年開催しますので、間違いなくCOP30まで行きます。COP(conference of parties)は締約国会議なのです。
これは何から始まっているかというと、1992年、リオサミットという環境のサミットでConvention on Climate Chainという、地球温暖化防止枠組み条約が結ばれたのです。環境条約というものは複雑ですが、一番分かり易いのがウィーン条約、オゾン層保護の条約です。これは1985年で、条約とは、例えばCOは長期的に見ると気候変動の原因になる可能性があるので、自由にしておくわけにはいかない。拘束して、少し叩きのめさなくてはいけないということです。

オゾン層破壊もそうです。オゾン層破壊というのは科学的にみてかなり破壊するから、これは逮捕してしまえということです。1985年ウィーンでオゾン層保護の条約ができて、条約というのは逮捕されて裁判にはいるということですから、環境裁判です。環境裁判に入ってから刑を決めるまで、これは裁判過程です。モントリオール議定書というのが1987年にできます。議定書、これは判決です。どんどん特定フロンの規制が厳しくなったというのはご存じの通りですけれども、特定フロン、CFCは全廃ですから、これは厳しかったわけです。

これと同じように、今はCOも裁判過程だということを忘れてはいけないことなのです。
環境裁判の過程ですから、外国でやっていることだから関係ないと思っていたら大間違いです。だからベンツがやるわけです。彼らはそういう言い方をしていないかもしれませんが、化石燃料系を使って経済的な活動を行っていきたいが、こういう国々が今と同じように使っていたのでは人類全体の幸せにはつながらないという事を認識させるための裁判なのです。

では、被告は誰か、原告は誰かという事になります。被告は、環境裁判ですから先進工業国です。原告は、自分が訴えた訳ではないが、発展途上国ということになります。
裁判官はいないし証拠資料がない。証拠資料がないとやはり言い争えませんから、証拠書類はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)レポートでということになります。
たまたま私はIPCCの執筆代表者で、もう5年ぐらい行っていますが、大変な仕事です。英語ベースですから、日本人のハンディキャップというのはやはり語学にあります。第2次レポートの40ページ、Chapter20は私が書いたのです。国語の問題ですから、色々と書きながらアメリカ人が直すのですが、随分厳しい仕事をしてきました。そこで感じたことは、アングロサクソン系の人種は、ソフト絡みのルール作りがうまいということ。嫌という程すぐメモ取り、自分で筆記します。これは違うのだ、こういうことだというと彼らにとって不利なことはなかなか書かないのです。お互いに有利になると文章になります。
このIPCCのレポートというものは、裁判過程の証拠書類ですから、非常に重みを置いてきています。今、アングロサクソンに引きずり回されながら第3次レポートが書かれている最中ですが、いずれにしても、今、環境裁判過程で被告は我々先進工業国、原告は発展途上国、そういう仕組みなのです。

京都会議と京都メカニズム(ET,JI,CDM)

京都会議でどういうことが決められたかという話をしますと、COP3で一応最初の判決が出たと考えて下さい。家庭裁判所の判決のようにどんどんこれから厳しくなるでしょう。日本はこれからCOP2を含めて温室効果性ガスを2008年〜2012年の5年間に平均値で、90年レベルで排出総量に対して6%削減をしなさいとなっています。これは、無理だと思います。公約後、先進国はまだどこも批准していません。もう少しルールが決まってから批准することになりますので、これからです。
そのルール決めが京都会議から始まっています。一次判決で細かいルールを作り、このルール作りで日本がどれだけ優位に立てるか、というのが最も大事なわけです。いずれにしても、京都で1回目の判決を出せたということは我々日本人にとっては大きなインパクトを持ったという風に考えていい。この中で柔軟的措置というものがありまして、これは何かというと京都メカニズムという話です。

皆さんも良くご存じだと思いますが、ET、JI、CDM、この3つを達成できない国がたくさんあるでしょう。あまり省エネに興味がない、自分の国には殆ど新エネルギーなど無い。そうするとどう逆立ちしても先進国の中で達成できないという国があるかもしれない。国情によってアプローチが違うわけですから、やはり公平でなくてはいけない。全部同じ公平なラインでなければならない。最後はお金だと、そういう話なのです。その排出権ができた人は売ればいいし、できなかった人は買えばいい。結局、先進国間ではお金のやり取りでけりをつける。すなわちこの裁判というのは、経済犯なのです。これは刑事犯ではなく経済犯です。
経済犯の裁判というのは、経済的なもの、保釈金を積んでけりをつけるというのは当たり前のことです。ですから税制改革、TAXをつけて柔軟的措置と言いますが、それに即座に反対するがサウジアラビアです。国際競争力を考えると、全世界の工業化社会の先進国は一律にTAXをつけなくてはならない。そうするとTAXで持ってかれる分、オイルが高くなります。したがってオイルの売れ行きが下がります。
タクセーション、市場メカニズム、排出権の取引、もめている最中ですが、今の世の中で考えればCO
の削減効果は市場メカニズム、先進国間での場合であって先進国対発展途上国ではダメです。先進国間でCOを削減していこうという事になると、やはり経済ベースで市場メカニズムに則って削減していくということが最も効果的だと考えられます。

そこで、このET、JI、CDMがどういうことになるかという話になります。ETはEmission Tradingですから排出権取引、JIは共同実施なんですが、ある国とある国が一緒に共同してCOの削減をしましょう、という時で先進国の間だけです。先進国間で行う場合にはJoint Implementationと呼んでいます。発展途上国と先進国との間で一緒に行うことをCDM、Clean Development Mechanismと分けるのです。だから共同で実施する相手が先進国と発展途上国との場合では削減効果が違います。例えばロシアと組んだ場合、ロシアはCOの削減ポテンシャルが大きいので、日本の技術開発を持っていって一緒に行い、削減できたCO量は折半します。という話です。逆に言えば、お金を出した分、技術提供した分に応じて返してもらうという手もある。ルールはこれから変わるわけです。

排出権を得れば、それは自国でそれだけの容量相当分のエネルギーを再び使って生産活動することができるわけで、国内で取得分だけCOの枠が増えます。このプラス削減量が増えれば増えるだけ国際市場ができますから、これを国際市場に売るわけです。売れるということは逆に言えば新エネルギー、省エネルギー、あるいはその技術、こういうものが長期的に見ると国際市場の中で、株券取引のように売ることが出きるようになる。こう考えられるわけです。ですから、環境性に富んだクリーンな技術開発をすれば、排出権をそれだけ自分たちでもらったことを意味し、これは売れることになります。ただ、国が売ることになりますけれども。そのルール作りが来年、再来年くらいで決まってくるだろうと思います。いつ頃そういう資料ができるかというと、今IPCCをやっている観点からすれば、2008年を目処に国際市場を作ろうとしているわけです。これはできるかできないかわからないだろうと思う人も多いでしょうがが、私はまず間違いなくできると思っています。

どういうことかと言いますと、これは予測ですが、国際市場を作ろうとしているのはアングロサクソンです。彼らはブローカ的な技術を持っており、何かしらのお金の流れを作ってそこで儲ける。その一番いい例が、ISO14000です。あれはうまいこと考えています。ある企業があるレベルまで環境性・省エネルギー性・最新エネルギー性・リサイクルを進め、ある技術をクリアしたとして、それから3年ごとにウォッチングして、前よりも良くなればいい、悪くなってはいけないと言っているわけです。環境というものは持続可能だから、ずっと続けなくてはいけない。続けることは持続可能なもので誰も反対しませんねと。だから3年おきに見直しをして、もう一度チェックを受ける、要するにメンテナンスをかけることです。これは不動産屋と同じです。一旦借りたら、またそこの不動産を通して更新しなくてはいけません。日本人が得意なはずが、環境マネジメントという名前のもとに、アングロサクソンにすっかりやられたわけです。
アングロサクソンと人種差別で言っているわけではなく、彼らの良いところを言っているわけで、英国に代表されるアングロサクソンという人種は、ソフト産業ではスタンダード、基準作りやルール作りは日本、アジア人より秀でています。彼らは、環境はこれからソフト絡みの基準作りで最も経済ベースが上がるビジネスだと思ったのでしょう。先ず何を行ったかというと、British Standard、BS7750。環境マネジメントを先ず国内で行う。必ずこれは国内でやらなくては、そして口だけではダメです。ISOなら先ず自分の国でやって、それをISOに上げる。そうすると国際的な枠組みになる。これが大事なのです。すなわち、自分で行い、EUを取り込んで、マネジメントのテーマを作り、それをISOに上げる訳です。ディビジョンを取るわけです。その中でいくつかのディビジョンに分けて、それぞれのチェアマンを決めていく。その環境マネジメントは、時系列にメンテナンスを持っているということが素晴らしいという事です。それぞれの国に認証機構を置くのです。日本の家元制度、あれをそっくり取られた感じがします。金は、最後にはイギリスに流れるようになっています。

結局、そういうルール作り・基準作りをメインにする国民性と、ハードをメインにする国民性、これはやはりやり方が違うのです。本来はハード無くしてソフトのルールなどできないはずです。そういう意味ではこれからのCO絡みのETの様な国際的な市場、排出権取引市場などは、彼らの頭で進んで行くのだろう。そこへ、いかに我々ジャパニーズが切り込み体制をかけられるかが、最も重要な課題なのです。

そこで、この頃、私はひとつ良いこと考えました。皆さんに言っていただいて本格的にやろうと思ったのですが、2005年に愛知で万博をやります。私はこの万博のエネルギーシステム部会の部会長をしておりまして、万博の総長というのは通産省の通商審議官でいらっしゃった黒田真先生。大変な論客で、輸入規制を緩和した最初の方です。ここで、ISO14000を例に出して万博スタンダードを作り、巻き返しを計りたいのです。
私は今、万博のエネルギーシステムの50%を省エネで50%を新エネの燃料電池を使用した結果、CO
削減が75%という値を出しています。それはひとつの基準で、そのためにどのようなシステムを入れなくてはいけないか、省エネはどういう技術を入れなければならないかという、色々なスタンダードを考えています。スタンダード作りというものは、実際に行わないと上に上げられません。
2005年の万博でEXPOスタンダードを、そしてオリンピックを取り込みたいと考えます。オリンピックはオリンピックスタンダードというルールがあります。一時的な仮設物が多いので、仮設物はこのようなエネルギーシステムにしなさいとか、仮設物の定員数等、全部を考慮して環境負荷を少なくするように、ルールを作るわけです。色々な博覧会がありますから、それを全部取り込んで、オリンピックと万国博覧会とでイベントスタンダードを作ったらどうかという話をしているわけです。スタンダードを取得できれば、その時点における最も進んだ技術がある企業となるわけですから、ISOイベントスタンダードの取得会社とか、それだけでISO14000は取らなくてもいいとか、それよりも超えているという話にすればいいのではないでしょうか。
ISO14000はずっと時系列で行いますから、長期間にわたり付き合い切れないという企業が増えています。それにうまく乗ってイベントスタンダード、それに参画した企業はISOイベントスタンダード取得会社とか、名刺に書けるように、そういうことを今考えているのです。いずれにしてもアングロサクソン系の考え方というものは、少しソフトで網をかけていますから、この排出権取引っていうのは間違いなくできてくると考えています。

強力に動き出した我が国のエネルギー政策と省エネルギー

日本はCOP3の6%削減を受けて、総合エネルギー調査会の中の長期エネルギー需給見通し策定に入っています。それが始まったのが昨年の1月23日です。この需給見通しの中で、COに関しては1990年レベルで安定化させるということが、骨子になっています。この6%をどうするか。植林で3.8%、それから排出権・JI・CDMなどの柔軟的措置で5.6%を達成する。COに関しては安定化というものが今回我々が出した答申の答えです。これで強力に日本は動き出した。産官学をあげて、その後押しをしようということになりました。

ポイントは3つありまして、一つ目のポイントは省エネを進めるべしと。これが5千6百万kリットル相当と言われ、大体が家庭用エネルギー相当です。LPガスは家庭用の約55%を担当していますから大変な量という事になります。ですから、その倍ぐらいの省エネルギーをこれから進めて行きなさいと言っている訳です。二つ目は原子力です。原子力4千8百万kWを入れなさい。三つ目は、新エネルギーを入れなさい。これが今回の骨子です。特に今日は省エネルギーの方に着目して、石油絡みの省エネルギーを進められるかがこれからの切り札になってきます。また、新エネルギーへいかに進出するか、要は2つのポイントです。今後省エネルギーを進めるために、エネルギー使用合理化法案、第二種工場を作る等の規制強化をしたわけです。

ESCOによる新ビジネス

ESCOでは、ひとつの企業に対して、その事業を大きな柱に添えられるようにしましょうということを解決策のひとつにあげています。もちろん技術開発は大切ですが、それと同時に経済面も考慮して、新しい考え方をお届けするべきだと。そのひとつの材料例が、エネルギーサービスカンパニ、ESCOになります。 石油産業活性化センターで都心部にコージェネを入れようという企画があり、関西の大学が受け入れました。当初、某元受会社が営業面、それに助成金をつけて実行する予定でしたが、都市ガス会社と競合になり、結局都市ガス会社になりました。考え方は2つあるのですが、少し無理をしても高めのイニシャルコストを出し、後はランニングコストを安くする考え方と、トータルコストは高くなってもいいから平均値で毎年毎年償却を落としていく考え方。結局大学側は、均等割りを選び、都市ガス会社はある意味ではESCOを入れたわけです。

ESCOとはなにか。例えば、ニーズがあるかどうかは別としますが、熱電比が非常に良くLPガスのコージェネが向いており、何かあったときに防災拠点になるし、備蓄もできるホテルがあると仮定します。その際に、ガスは高いから今まで通り電力は電力会社で、あとはLPガスなり石油で、となると、もうコージェネは入らないわけです。
しかし、そのホテルのエネルギー費が年間1億円かかったと仮定します。1億円のなかでLPガス業界がまとまって診断会社を作り、診断をするとします。その結果、LPガスコージェネを入れると熱電比が非常に良いので20、30%省エネになる。すると3割のコスト削減になり、3千万円が浮きます。診断会社が、3千万円浮くことを保障するのです。そして、システムが1億5千万くらいするとします。そうすると3千万円浮いても、単純計算して5年かかります。ところがESCO事業者は営業を行うので、同じ様なシステムを予算で年間20台売るとメーカーに保障するわけです。20台契約しますから半値8掛けという話になれば、年間1億5千万円が7千万となります。ESCO事業者は7千万円で買える。1台では1億5千万円ですが、まとまるから安く買える。その代わり営業して20件は営業で取らなくちゃいけない。そうすれば保障した3千万円の半分をうちに下さいと。1千5百万円をESCO事業者がもらいます。そうすると7千万円で買って1千5百万円浮けば、ESCO事業者は5年で回収できるわけです。5年で回収できて、あとの10年15年は使えますから後は全部儲けになる。
ユーザーは1億円だったものが7千万円のエネルギー費、プラス1千5百万円をESCO事業者に毎年支払う。これは8千5百万円ですから、何にもしなくても1千5百万円浮くわけです。いつの間にかコージェネが入っているわけです。さらにサードパーティファイナンスの様な格好にして10年後はシステムを原価で売却するようにすればユーザーの方は毎月何もしなくても、10年で1億5千万円浮きますから、5千万円でこれを買います、いや3千万で買い取ってあげますということができるわけですね。メンテナンスを良くしておけば15年使えます。 ESCO業者のは5年間でもとを取り、後5年間は全くただで儲かる。かつ、その儲けの中で最後にその減価償却したものを売れば、またメンテナンスをしてロングライフのものにすればするだけESCO業者も、ユーザーも潤うし、メーカーも量産される。

しかし、省エネルギーが進み過ぎると、さらに良いもの作らなければなりませんから、早く始めるべきです。なるべく早く決断して、このようなフレームワークを取り入れたところが、合理的な省エネルギーが入っていくことになっていくと思います。そういう意味で、今回の関西の一件というのは、石油業界は、精製に対しては非常に技術化も進み合理的なビジョンを持っているが、ユーザーの立場に降りて考えていないというひとつの例ではないかと思っています。これからは、ESCOは国が進めて助成金もどんどん入りますから、仕事を取って半分の助成をもらう。多少は高くてもESCO的なことを入れることによって、省エネ利率が経済利率に合うようなかたちで入るように、つまり国は規制強化をしたら、それなりに達成させるための強制的な措置をしていると、私は理解しています。 行政というのは、そういう意味で素晴らしいと思います。そう考えますと、今この省エネ政策というのはかなりすごい。その中のひとつが、今言ったコージェネという省エネルギーの切り札だと思います。

エネルギーのカスケード利用とコージェネレーションの重要性

私のニックネームはドクターカスケードと言われていますから、一貫して一次エネルギーとお付き合いしています。電気は二次エネルギーでできたものですから、二次エネルギーとはあまりおつきあいしないようにしていたのです。二次エネルギーは、ゴミから、LPガスから、石炭から、原子力から、何から作ってもいい業界です。 ものには気体、固体、気体とありますが、クリーンさなら、もちろんガス体です。 液体ならダーティ、固体なら非常にダーティ。いかにこのガス体のビジョンを築いていくかというのが我々の宿命なのです。そうしますとエネルギーのカスケード利用というのは、エネルギーのその質に応じて色々使っていきましょうという事ですから、エントロピです。熱力学で、エントロピの概念がわからなくなって、諦める人が多いのですが、熱力学には第1法則と第2法則があり、第2法則はこのエントロピの概念に触れないと理解できません。

エントロピとは何か。熱も水も高い方から低い方に流れるわけです。高い方から低い方へ流れると自然現象ですから。ただ流れたら、これは自然現象ですが、エントロピは増大するという言い方をするのです。このエントロピの概念をきちっと把握してないと、カスケードの妥当性というものは言えないのです。
簡単な説明をしますと、ある熱交換器があって、100℃の温水が熱交換して70℃で1リットル流れた。30℃温度降下した。20℃の冷水が温水機で回復されて50℃になってお風呂に入る。例えばです、70℃と50℃に変換されたけれども、100℃と20℃あった温水と冷水が熱交換をされて50℃と70℃にした。この熱交換過程において、熱量は保存されている。Qは失った熱量ともらった熱量は30℃の温度差ですから、これは保存されているわけです。この熱交換過程で損失はなかったと言っていいかどうかなのです。今までの日本のエネルギー会議では、この損失がないという、ヒート損失がないように断熱を良くするとか、ボイラーの効率を良くするとかいうことをやって来たわけです。今、損失がなかったと言ってしまったら、もうカスケードも何にもない。これは熱力学第1法則の熱量ベースの話でしかない。その時代はもう終わったのだと私は言いたい。

ヒートロスがなければ損失はなかった。損失がなければ、50℃のものを20℃に冷却し、熱量Qが出てきます。この熱量Qは70℃のものを100℃に上げるのに、十分な熱量です。ただし50℃から20℃に冷却する、こういう低い温度レベルの熱を、高い温度レベルの加熱に使うことができない、元に戻らないのですから、ヒートポンプか何かの手助けが必要です。100℃と20℃の、温度レベルが2つの媒体があって、熱交換して70℃と50℃のものに変換されてしまったら、元に戻すためには別の努力を必要とするわけです。元に戻らないということは何かの損失が生まれたということで、エネルギーの質の損失が生まれたのです。エネルギーの質をなるべく落とさないで有効に使うことが、これから我が国が求められている熱力学的に妥当な考え方なのです。それがエネルギーのカスケード利用です。
すなわち、熱量Qだけでは保存されていますが、Qだけではどのくらい落ちたのかがわかりません。熱量Qが減っていれば、もらった方からすれば、あげた熱量に対して80%しかもらえなかった、これはエネルギー効率80%ということです。そうすると、どうも熱量Qだけでエネルギーの話をしているのはおかしいなということになります。それで、エントロピという、熱量Qを絶対温度でTで割ったのです。Q/Tはエントロピとする。そうすれば熱量Qが保存されていても、高い温度レベルの熱量というのは分母であるTが大きいので、エントロピの絶対値は小さくなる。これはあげた方ですからマイナスです。Qはもらった方でプラスです、プラスQです。これを熱量は低いからもらえたわけですから、分母は小さいです。それでプラスのエントロピの方がマイナスのエントロピより大きいわけです。加えれば、この熱交換過程ではプラスのエントロピの絶対値が大きいということでエントロピが増大したと、それだけのエネルギーを入れていかないと元に戻らないことを意味します。そのエントロピの発生が、なるべく少なくなるようなエネルギー管理をするのがエネルギーシステムの開発上、最も得策です。

熱交換でエントロピを小さくするには、高い温度レベルと、与える温度と受け取る温度レベルの差を小さくすればいいわけです。小さな温度差で熱交換をすることが最もエントロピの発生を少なくする、すなわち質の低下をきたさない。したがって合理的なエネルギービジョンの一角を構成すべきエネルギーシステムになる、これがカスケードです。何回でも交換していけば温度差は小さくてすむわけです。エネルギーのカスケード利用というのは熱力学的に極めて合理性に富んでいます。
これを実践する手法で最も代表的なものがコージェネレーション、電気と熱のカスケードということになるのです。ガス業界が、温水加熱器、ガス給湯器を売っている。これは営業ですから良いです。しかし長期的に見ると、もったいない使い方をしている場合があるので、高効率な燃焼をする事はもちろん、カスケードの概念から見た技術開発をしなくてはならない。
温水側の熱伝達係数を上げるとか、その伝熱係数、伝熱の温度差を小さくして同じ熱量が移動できるように伝熱促進をする、これはやはり得策ではない。私の考え方から言えば、営業はそれをやらざるを得ないことは分かりますが、できればコージェネ的なシステムをいかに多く導入するかということが、我が国のエネルギーの需給関係緩和に最も大きな影響を及ぼすものだと考えます。

一例として民生用の熱量が100℃以内の低温のものであるならば、200、300℃の廃熱があれば十分熱エネルギーがまかなえますから、1200、1300℃の燃焼熱からダイレクトに47、48℃の熱源へ落として使ってしまったら、もったいないわけです。その間の温度差に相当するエネルギー損失を送り出していく。この概念はタービンを回す、エンジンを回す、要するにLPガスエンジンを回して、そして排熱で民生用熱を賄う。これが電気、熱のコージェネレーションということにもなる。これは熱力学的に合理性に富んでいますから、誰も反対しない。排熱行為をうまく機能させるとか、熱伝永久システムをやるとかです。

クリーンなLPガスコージェネレーションと防災拠点への導入の必要性及びLPガス業界への期待

カスケード利用というものは、これからのひとつの骨子になることは間違いないと思いますが、ひとつ大事なことは、排熱をうまく使い切れるかどうかということです。これがなかなか巧くいかないのです。どうしても排熱で併合しなくてはいけないという時にやはりガス冷房、吸収式だとか吸着式だとか、いかに低温で駆動できる冷凍冷房システム開発をするか。もちろん吸収式は日常的にもうまく回っているわけですが、いずれにしても、技術的なチェーンシステムというか連鎖的なシステムです。エンジンなり、排熱行為なり、ソーラなり、熱供給あるいは冷房という、そういうシステムが全部リンクした形でうまく技術開発をしていただきたい。

最初の話に戻りますが、長期的に見てどういう方向でシフトしていくのか考えますと、間違いなく都心部に入りたいわけです。都心部に入りたいということは、燃料電池、長期的に見たら、燃料電池コージェネレーションです。
燃料電池も比較的大きな場合、例えばリン酸型であるとか、リン酸型でも2百〜4千kWで、もう少し大きな小規模発電所のような溶融炭酸塩型(MCFC)、そして非常に高温で駆動する蒸気サイクルと、要するに燃料電池サイクルとエンジンを回してやるコンバインドで、電力変換効率80%が可能になる固体電解質型(SOFC)。そしてベンツの例を申し上げましたが、車の世界が開発している小型分散型・小型燃料電池の固体高分子型(PEFC−PEM)。
今まさに、21世紀の最初の10年間でほぼそういう燃料電池の技術開発の成果が一挙に現れる時期になる。これがまさに究極の都市密着型省エネルギーかつ環境負荷の少ないエネルギーシステムということになる。そのために各業界が今血眼になってやろうとしていることが改質です。膜を開発しても仕方がありませんから、周辺の技術を固めることです。LPガス業界はどのようにしてその水素の変換技術を合理的にやっていくか、統合的にこの技術開発を捉えたいのです。これでこれから10年間の勝負を決することができるのではないでしょうか。

都市ガスはパイプラインを都市部に引いているが、日本の場合は、神戸に震災がありましたように、いかに防災に強いエネルギーシステムを導入するかが極めて重要だと思っています。要するにこれからは集中型と分散型のミキシングタイプのエネルギーシステムということになって来るのだと思うのです。
電力ももちろんです。今は大規模集中型の発電所から送電も配電も伝わって消費者に送られている。電力会社しか殆ど電気を売ることはできない。今、特定電気事業だとか部分自由化だとか色々始まっていますけれど、まだまだ、部分自由化だといっても特定電気事業ということです。電気の小売りはできるのですが厳しいのです。

例えば皆さんの業界がコージェネレートを作った。あるビルに電気を売ってあげますと、言います。売ろうとしたこのビルには一般電気事業の供給義務が無くなりますから、ピークに合わせて電源システムを負荷平準化する。LPガスコージェネレータが小さなガスエンジンでずっと平行して動かさなければならないとすれば、夏だけのピークをまかなうためにエンジン2,3台買っておくなんてことはできません。どうするか。大規模なネットワークを組んでいる今の電力業界が抱えている問題のそっくりそのままミニ版をやれということです。そういう制度ができてしまった。これはもう少し規制緩和をして融通できるようにしなくてはいけない。
今度の部分自由化は小売りできるわけですが、今と同じです。あなたのところは大口需要家ですから、70%を自社の工場にある電力で、電気を売らせて下さい。ただ30%は危ないから、電力会社の電力を買って下さい。今の特定電気事業の緩和でこれはできるのですが、今度は相対でそれぞれのを調整してくれというわけです。調整できない場合は裁判だと言っているのです。財産権がありますから、裁判まで持ち込んだらまずいでしょう。あそこがそんなものを買うのならうちは売らないなんて。ですから、まだまだ手足を縛られたみたいなもので規制緩和がもっと進まないと合理的なビジョンはできてきません。

コージェネのビジョンというものは、一次エネルギービジョンから見て、これほど間違いないものはないと自信を持っています。世界の中でこれは特許です。その証拠にIPCCのレポートの中には、エナジーカスケーディングというものは、省エネの切り札としてうたわれ、推進すべき事になっています。しかし、その推進のためには、出てきた電力を合理的に実際に配電できない限り、持てる力を十分に発揮できない。この辺が、今も我国が抱えている問題だと思います。 ですから規制はある程度緩和して、アクセスオープンにしてどこかに運びたいわけです。一番いいのは自己託送の規制緩和です。例えばLPガス会社の工場の中で、残渣か何かを利用して発電をした。熱はその精製過程で使った。CO問題からしても非常にいいです。しかし出てきた電力を自分のオフィスビルに運ぶことは、電力の売る形態が業務用と産業用で違うので、ダメです。形態が違うところには自己託送できない。ですから、自分の所有している発電所から出る電力を自分の所有しているオフィスビルには送れないのです。
形態が同じなら送れるわけですが、託送料を払わなければいけない。新しい情報ですと3円5銭/kWです。残渣をいくらに見積もるかによって違いますが、残渣発電も同じ様な値段です。発電コストと送電コストが同じでは、高くてなかなか商売になりません。我々も託送料を安くすべしと言っていますが、まあ、1年くらいはだめだと思います。

イギリスの場合はプール市場でした。送電網はナショナルグリッドで管理し、送電会社は消費者から要求に対し、売ったらいくらかかりますよというようなプール市場、電力の株式市場を作ったわけです。要するにイギリスは国営会社が民営化自由化を一挙にやりましたから、発送電もできるし、自由化もできた。日本の場合は1951年に電力会社を民営化した。送電網から配電網全部の財産権を持っていて、自分の財産だと思っています。では競争の原理が入って送電網を引いてくれたのかというと、掛かったコストを割算して、プラス15%利益が上がるよう高く取っているわけです。これなら社会資本だろうという話になる訳です。ところが今も資本主義の社会では、これは財産権を持っているということになり、ここで裁判をしたら負けます。ですから、人の持ち物をたやすく貸せというのも、今の日本の現状にあっては、時間ばかりかかって合理的なビジョンがなかなか入らないと思い出したのです。

そこで、NTTやJRの洞道、洞穴です。車が通れるくらいの洞道を都市の真ん中に持っているので、そこに電線を引かせてもらう。ガスアンドワイヤーという概念です。あるところまでガスを導管やローリーで輸送し、そこに備蓄するタンクをおいて、コージェネレーションを動かしていく。電気は自分の電線を引く。
2千万円/kmで引けるので10kmで2億円です。出てきた電力を関連の所に託送し、熱は完全に使える。防災設備があってもパイプラインがない、逆に言えばパイプラインとLPガス関係をこれとを併用して、常にバイフューエルで持っていく。防災性に強い都市という条件になる。私は、このシステムが非常に重要だと思うのです。LPガス業界と都市ガス業界が協調し、NTTと協調して、人の持ち物を当てにしないで一緒に電線を引き、出てきた電力をうまく分けてあげるようなシステムを構築できるか否というのが、これからの電力、コージェネ、環境性に富んだコージェネの使い方を十二分に提供できるかの切り札になる。時間が掛かっても構いません、どんどん規制緩和して。所有権を持っている方が利口です。

まとめ

先ず、これからの技術開発、エネルギービジョンを考えるときに何が最も重要か、これは避けて通れない事情というのは間違いなく環境です。その例として、ベンツが燃料電池自動車を、何故あれだけの投資をして開発していくのか。これは環境に対して、石油を扱っている業界が、それで得てきた利益をどれだけ技術開発に持ってくることができるかということです。
それを教えてくれたのが今まさに我々が直面している環境裁判、要するに温暖化防止枠組み条約です。今、我々は裁判の過程だということをきちっと認識をしなくてはいけない。被告は我々、原告は発展途上国です。

そんななか、これからの省エネルギーに続き、あるいは新エネルギーを導入する。今まで、省エネルギーでは売上が下がると思っておられた方もいるわけです。エネルギーの消費量が減って売上が下がると。ただ、逆に今度は下がった分は排出権で売れるようになるかもしれない。その業界が下げた分だけそれを排出権として持っていることができるということで、非常に持続可能な社会になる。 逆に言えばCO問題は既に経済ベースに入ってきたということ教えてくれたのがこの環境裁判だ。その経済ベースを明確にしたのが京都会議で、京都メカニズムと言われている柔軟的措置で、経済ベースが明確になってくる。

これは3つあって、ETとJI、CDMで、この排出権取引市場は大体2008年頃できると言われていますし、できないと言う理由もない代わりにできるという理由も無い訳ですが、アングロサクソン系の基準作りの巧みさを考えると、エミッショントレーディングの市場というのはできるだろうと思います。
それを受けて我が国は、強力なエネルギー政策を打ち出し、3つのポイントがあります。そのひとつが省エネルギー、もうひとつが原子力と新エネルギーで、省エネルギーに着目して話をすると強力な省エネ政策を打ちましたが、それに対して政策としては色々啓発できる事業の創成も考えています。
そのひとつがESCOです。イニシャルコストで商売するのではなく、長期のライフサイクルコストで考えていくという考え方も重要であることをご紹介しました。

省エネの切り札というのは、私の持論でもありますエネルギーのカスケード利用ということで、最も代表的な例がコージェネレーションなのです。コージェネレーションを本当に機能させるということはどういうことになるかというと、やはり電気と熱のバランスを考えて、持てるエネルギーを全てうまく使い尽くすことにあるわけですが、どちらかが余る可能性がありますから、余る方はできれば電気だということにする方が簡単です。電気は今の状況の中では、うまく融通できないのが現状だということも併せて考える必要があります。

今の電力会社の電力網を使ってうまく融通し合っていくのが本当は一番良いわけですが、所有権がありますから、なかなかそういうわけにはいかない。やはりこれからのビジョンを考えるときに、都市部あるいは学校、公共施設等に関して、防災性等を考え合わせ、その辺のネットワークをLPガスタンク、タンクアンドワイヤーという概念を具現化するひとつの時期に差しかかってきたのではないか。自分でワイヤーを持つ時期がやってきたのではないか、と私は思うわけです。これを無くしますと、いつまで経っても人のものを借りてやらなくてはならない訳ですから、自前でできるようにするということです。

最後に、LPガスはタンクで運んでいる場合が多いので、これは防災的な観点から最も優れていると思います。しかし今、世の中にはネットワークがあります。通信ネットワークは無線の時代に入りましたから、地域でどこに行っても空間の概念を無くしたわけです。ところがパワーというのは、空間の概念が最終的に残ってきます。
どのようにネットワークを組むかを、LPガス業界を含めた石油業界が考える時期なのです。その一例は、私はいつも言っていますが、ガソリンスタンドのネットワーク構想をやるべきです。ガソリンスタンドの周りに大規模店舗がある。そこに大規模コージェネを入れて、出てきた電力を今度は送電する。要するに電力会社のケーブルを使い、託送料を払いながら、自分の経営のものは自分の自己託送として調整ネットワークを組んでいく。皆さんはガソリンスタンド、ガスステーション、エコステーションという、非常に良質な拠点インフラを持っている。これをうまくネットワークにできるか否かというのが、これからの日本の中でLPガスを含む石油業界が、日本全体のエネルギービジョンに一石を投じる大きなポイントではないかと思います。

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事務局より

西暦2000年の夜明けはどのように迎えられましたか。
Y2K対応で、事務所のソファーで毛布にくるまっていた方も少なくなかったのではないでしょうか。
某国の大手コンピュータメーカでは、相当の巨費を投じてY2K対応を実施し、実際には大きな問題がなかったことで担当者は胸をなで下ろしたという話を聞きましたが、危機感を持って対応された方々にとっては、実に晴れ晴れしい夜明けであったことでしょう。
さて、我々業界にとっての危機感はどうでしょう。

皆様のご意見・ご感想、LPガス業界の素朴な疑問をお待ちしております

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